自己破産すると非免責債権とされる特殊な債権(債務)以外は返済が免除されるため、借金の免除を認めてもらうことができます。
しかし破産を申立てる人に一定以上の財産がある場合などには、裁判所によって破産管財人が選ばれることがあります。
破産管財人が選ばれた場合、破産手続きは複雑化し、手続きに時間も費用も掛かることになります。
今回は、自己破産における「破産管財人」について解説させていただきます。
この記事をお読みいただくことによって……
- 「破産管財人とは、どんなことをする人なのか?」
- 「どんな場合に破産管財人が選ばれるのか?」
- 「破産管財人が選ばれた場合のメリット・デメリットとは?」
などについて理解していただけます。
自己破産手続きを有利に進めるためにも、ぜひ最後までお読みください。
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1.「破産管財人」とは?
自己破産した場合、地方裁判所で手続きを行うことになりますが、その処理には2つの方法があります。「管財事件(かんざいじけん)」と「同時廃止事件(どうじはいしじけん)」です。
破産の処理方法が管財事件となった場合、裁判所によって破産管財人が選任されることになります。
そして、選任された管財人は、主につぎのような職務を遂行することになります。
- ①破産申立人の財産の調査
- ②免責不許可事由に該当する事実の有無の確認
- ③破産財団に属する財産の換価(売却)
- ④破産債権者への配当
破産管財人の職務は、これ以外にも雑多なものがあります。破産管財人の職務に手間・暇などがかかるため、管財事件は時間も費用もかかるのです。
2.破産管財人が選任されるケース
自己破産を申し立てたからといって、かならず破産管財人が選任されるわけではありません。
破産管財人が選任されるのは、つぎのようなケースに限定されます。
(1)管財事件(少額管財)で処理される場合
自己破産が管財事件として処理される場合、破産管財人が選任されます。
なお現在では、個人の破産における事件処理は少額管財(しょうがくかんざい)で行われることが主流となっています。
「少額管財」とは、破産処理をする際に裁判所にかかる費用が「通常の管財事件よりも少額で済む」手続きということができます。
これに対して自己破産の処理方法が、いわゆる「同時廃止」となった場合には破産管財人は選任されることがありません。
(2)法人が破産する場合
自己破産の申立てが会社などの法人によって行われた場合、破産の処理方法は管財事件となることが原則です。
そのため、法人の破産処理には破産管財人が選任されることになります。
なお、法人ではなくても個人事業などを営んでいる人が自己破産する場合には、その処理方法は管財事件となることが一般的です。
つまり、個人事業主の自己破産では、基本的に破産管財人が選任されることになります。
3.自己破産における2つの処理方法
繰り返しにはなりますが、重要なことなので、もう一度確認しておきたいと思います。
世間ではひとくちに「自己破産する」などと言ったりしますが、実際の裁判所での手続きには2つの処理方法があります。
それが「同時廃止(事件)」と「管財事件」です。
(1)同時廃止(事件)
上記のように、破産処理の手続きには「同時廃止」と「管財事件」の2種類があります。
しかし、自己破産の処理方法は、管財事件が原則です。
ただし、破産が管財事件として処理される場合、裁判手続きに一定以上の費用がかかってしまいます。
破産処理が管財事件となった場合、破産管財人が選任され各種の職務を行うことになりますが、この破産管財人への報酬として基本的に20万円の費用がかかるのです(少額管財の場合)。
自己破産を申立てた人が、その費用を支払うだけのお金を持っていれば問題はありません。しかし、それだけのお金がない場合、自己破産できないのでは困ってしまいます。
お金がなくて借金の返済ができない人を救済するのが破産制度であるにもかかわらず、お金がないために破産できなくなってしまうのでは意味がありません。
このため、破産を管財事件として処理するために要する費用を支払うことができない人が破産する場合には、「同時廃止」という簡易的な破産処理方法が採用されることになっているのです。
つまり、自己破産申立人が20万円以上の財産を持っているかどうかが、その人の破産処理方法が管財事件となるのか同時廃止事件となるのか決定する大きな判断基準となります。
自己破産が同時廃止として処理される場合には、本来であれば選任されるはずの破産管財人が選任されることなく、簡略化された方法で破産手続きが行われることになります。
なお、同時廃止の詳しい情報に関しては、以下の記事を参照してください。
(2)管財事件
自己破産の処理方法には、上記のとおり2種類があります。
その中でも管財事件は、自己破産の原則的な処理方法です。
自己破産が管財事件となった場合、自己破産を申立てた人の一定の範囲内の財産(「自由財産」)以外は売却され、債権者へ分配されることになります。
破産処理が管財事件となった場合、破産管財人が選任され、破産申立人の財産の売却や債権者への分配などの手続きを行うことになるのです。
しかし、破産管財人は無料でこれらの手続きを行ってくれるわけではありません。
破産管財人に対しては、一定以上の報酬を支払う必要があります。
少額管財では、この報酬の基準額が20万円とされることが多いため、自己破産申立人が20万円以上の財産を持っている場合には管財事件とされるのが一般的な処理方法となるのです。
免責調査型の管財事件
上記のとおり、破産を申立てた人が20万円以上の財産を持っている場合、破産処理方法は管財事件となり破産管財人が選任されるのが一般的な裁判所での運用となっています(※)。
ただし、20万円以上の財産を持っていなかった場合でも、免責不許可事由に該当する事実の有無を調査する必要がある場合などには管財事件となる可能性もあるので注意が必要です。
このようなケースで破産管財人が選任されるパターンを「免責調査型(めんせきちょうさがた)」といいます。
少額管財とは?
法人破産など負債総額が大規模で債権債務関係が複雑な案件に関しては、破産処理方法は通常の管財事件となります。
この場合、裁判費用(破産管財人への報酬)は数十万円から数百万円にも上ることがあります。
これに対して、負債総額が比較的少額な個人の破産の場合には、裁判費用を基本20万円とグッと抑えて処理することが現在では一般的となっています。
これが「少額管財」と呼ばれる破産の処理方法です。
※破産処理が管財事件となるか同時廃止となるかの判断基準に関しては、裁判所ごとに基準が異なることが多いので注意が必要です。
4.管財人は弁護士から選ばれる
破産処理が管財事件となる場合、破産申立人の財産の調査・売却・債権者への配当など専門的な手続きが必要となります。
そのため、破産管財人には弁護士が選任されることになっています。
自己破産の申立てを受けた裁判所は、その処理方法として管財事件が適切と判断した場合には、裁判所の管轄区域内の弁護士を破産管財人として選任することが一般的です。
そして選任された破産管財人は、つぎのような職務を行うことになります。
5.管財人の仕事とは?
破産法では、つぎのように破産管財人の立場を定めています。
ここで言う「破産財団」とは、破産申立人が所有する一定以上の財産のことを言います。
ある程度までの現金や家財道具など生活に最低限必要な財産は「自由財産」とされ、破産手続きでも処分されず破産申立人の手元に残されます。
そうでなければ、破産申立人が今後生活することができなくなってしまうからです。
しかし、それを超えた部分の財産に関しては処分の対象となり、「破産財団」に取られることになります。
たとえば、不動産はもちろんのこと、ある程度以上経済的価値のある自動車や生命保険・退職金などは破産財団に組み入れられ処分されることになります。
そして破産財団に組み入れられた財産は、破産管財人によって売却・換金され、最終的にそのお金が各債権者に分配されることになるのです。
破産管財人におけるもっとも重要な職務は、破産申立人の財産を処分換金し、債権者に分配することと考えてよいでしょう。
破産管財人の最大の職務は、上記のように破産財団の売却・換金、債権者への分配ですが、それ以外にも雑多な仕事を行う必要があります。
それでは次に、もう少し詳しく破産管財人の職務内容について見てみることにしましょう。
6.破産管財人の職務を理解する前提知識|「破産手続」と「免責手続」
破産管財人の職務についてご紹介する前に、その前提として破産の手続きの詳細についてご理解いただく必要があります。
破産処理を行う場合には、原則として2つの手続きが必要になります。
それが「破産手続」と「免責手続」です。
(1)「破産手続」とは?|財産を処分・換金する手続き
破産手続は、破産申立人が所有する一定以上の財産を破産財団に組み入れ、売却・換金し最終的に債権者に分配する手続きです。
この手続きをするためには、前提として破産申立人が一定以上の財産を持っている必要があります。
そのため、財産をあまり持っていない人が破産を申立てた場合には、この手続きが省略されます。それが「同時廃止(事件)」です。
しかし、破産処理が管財事件となった場合には、原則どおり破産手続が行われることになります。
(2)「免責手続」とは?|借金を免除する手続き
自己破産とは、返済しきれなくなってしまった借金などの債務(さいむ)を免除してもらうための制度です。
債務を免除してもらうためには、破産手続きを担当する裁判官から「免責許可」を受ける必要があります。
しかし、免責の許可をもらうためには、自己破産申立人に免責不許可事由に該当する行為などが存在しないかを確認するなど一定の手続きを経る必要があります。
この一連の手続きのことを「免責手続」といいます。
自己破産の処理方法が「管財事件」となった場合には、原則どおり「破産手続」と「免責手続」の両方が行われます。
ちなみに「同時廃止」では、この「免責手続」だけが行われることになります。
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7.破産管財人の具体的な職務とは?
以上のように、自己破産が管財事件で処理される場合には「破産手続」と「免責手続」という2つの手続きが行われます。
破産管財人は、この2つの手続きでそれぞれ重要な職務を行うことになるのです。
(1)破産手続での職務
破産管財人は破産手続上、主としてつぎのような仕事を行うことになります。
①破産申立人との面談
破産管財人として就任直後に行う重要な職務として、破産申立人との面談が挙げられます。
具体的には、破産管財人の所属する事務所において、破産管財人の指定する日時に面談が行われることになるのが一般的です。
面談で聞かれることとは?
管財事件による破産開始決定があった場合、同時に破産管財人が選任されます。
選任される破産管財人は、基本的に自己破産を処理する地方裁判所の管轄区域内にある地元の弁護士となります。
破産管財人は通常、自分の事務所で破産申立人と面談をしますが、主としてつぎのような事柄について質問してきます。
- 借金を作った理由
- 大体の収入と支出の額
- 財産をどれくらい持っているか
- ギャンブルや浪費などしていないか
大体は破産申立書や添付書類などから知ることができますが、それだけでは知ることのできない事情などについても適宜質問してくることが予想されます。
しかし、何も隠すことなく正直に答えるように気を付ければ問題ありません。
破産管財人との面談で一番してはいけないことは、嘘をつくことです。
のちにご紹介しますが、管財事件では破産申立人の郵便物はすべて破産管財人に転送され、中身のチェックを受けることになります。
実務では破産申立人が借金を作った事情や、持っている財産などに関して嘘をつく事例がたくさんあります。
しかし、たいていの場合、郵便物から嘘だということがバレてしまうのです。
嘘がバレた場合、破産管財人の心証は悪化し、最悪の場合には破産の免責をもらうことができなくなってしまうことも考えられます。
そのようなことの無いように、破産管財人からの質問には正直に答えることが大切です。
自己破産の申立てを弁護士に依頼した場合、破産管財人との面談にも同行してくれるので、細かい質問に関しては代理人弁護士に確認してもよいでしょう。
面談で気を付けるべきこと|とにかく正直に!
上記のように、破産管財人との面談では特に難しいことを聞かれる可能性はそれほど高くありません。
今まで自分のしてきたことを、質問されるがままに正直に答えれば問題はありません。
破産管財人から怒られたり、きつく尋問されるような心配はまったく不要ですので安心してください。
仮に免責不許可事由に該当する行為がある場合で、最終的には大半の方が免責をもらっています。
破産管財人との面談では、とにかく正直・誠実な対応を心がけていれば、ほぼ間違いなく免責がもらえると信じて自信をもって臨んでください。
くれぐれも、嘘をつくのは厳禁ですよ!
面談の回数|通常は1回だけ
通常の管財事件における破産管財人との面談は、破産開始決定直後の1度だけというのが一般的です。
破産管財人は破産申立人に一定以上の財産があり、その財産を売却・処分・債権者へ分配することを主な目的として選任されるのが原則です。
しかし、破産申立人に免責不許可事由に該当する行為がある場合には、免責を許可するかどうかの調査を目的として管財人を選任するケースがあります。これを「免責調査型」といいます。
免責調査型の場合、破産申立人との面談は1度では済まないことがあります。
たとえば破産申立人にギャンブル癖があり、そのせいで大きな借金を作ってしまったような場合には、定期的に面談をしてギャンブルを止めることができているかどうかがチェックされることがあります。
その面談の際には、自分で作った毎月の家計表などを持参し、ギャンブルをしていないかどうかや無駄遣いをしていないかなどのチェックを受けます。
たとえ過去に免責不許可事由に該当する行為があったとしても、今後繰り返さないと反省しているのであれば、統計上では問題なく破産の免責が下りています。
破産管財人との面談では、自分が過去の問題行動を反省していることが分かるように行動することが大切です。
破産管財人の心証をよくするためには……
- ① 自分の過去の問題点を認識し、きちんと反省すること
- ② 破産管財人の指示に素直に従い、誠実に対応すること
- ③ 反省の態度を示すこと
上記のようなポイントを押さえれば、破産管財人との面談はまったく恐れる必要はありません。
②財産の調査
破産管財人は、破産申立書や添付書類の内容に基づき、破産申立人の財産の調査を行います。
裁判所に提出された書類に書かれている財産の内容が正しいのか、それ以外に隠し財産がないかを調査します。
調査に際して、破産管財人は必要に応じて破産申立人に質問をすることがあります。
これに対して破産申立人は、正直に答えなければいけません。
嘘をついたりした場合には、罰則を受ける可能性もあります。
不当に財産を処分した場合|「否認権」の行使
財産の調査の過程において、破産申立人が自分の財産を不当に処分していたことが発覚することがあります。
たとえば自分の不動産を友人などにタダであげてしまったようなケースがあったとしましょう。
そのような行為は、破産債権者(破産申立人に対してお金を貸したりしている人)に不当な損害を与える行為となります。
このような事実が判明した場合、破産管財人には「否認権(ひにんけん)」を行使することができます。
否認権の行使とは、すでに行われた破産申立人の行為を無効とし、対象となる財産を破産財団に組み入れることができる権利のことを言います。
上記の事例では、破産管財人による否認権の行使があった場合、不動産の所有権は破産申立人の元に戻ることになります。
そして結局、その不動産は破産財団の中に組み込まれ、最終的には売却され債権者に金銭が分配されることになるのです。
③郵便物等の開封・調査
破産の処理方法が管財事件となった場合、破産申立人あてに届けられる郵便物はすべて破産管財人へ転送されるなど、各種の制限を受けることになります。
破産申立人には、借金などの債務や財産に関する郵便物が定期的に届きます。
その郵便物がすべて破産管財人に転送されるため、財産隠しなどをしていても、この段階で発覚することが多いのです。
財産は隠してもバレる可能性が高い
たとえば、借金などの債務を隠したケースに関して考えてみましょう。
実務ではしばしば、ローンで買った自動車を手放したくないため、自動車のことを隠して破産を申立てる人がいます。自己破産した場合、自動車は手放すことになるのが原則だからです。
この場合、たとえ破産申立書の上では自動車のことを隠すことができたとしても、ローン会社からは定期的に通知が送られてくることが一般的です。
しかし、その通知書は破産管財人に転送され、内容が確認されることになります。
このため、破産管財人に自動車やローンの存在がバレてしまいます。
これは積み立て型の生命保険などの場合でも同様です。
生命保険があることを裁判所に隠したとしても、結局はバレてしまう可能性が非常に高いのです。
財産隠しがバレた場合、免責不許可の可能性も!
財産隠しなどが発覚した場合、自己破産申立人に対する破産管財人や裁判所の心証は非常に悪くなってしまいます。
最悪の場合としては、免責を得られなくなる可能性もありますので、そのようなことは絶対しないようにしてください。
④債権債務の調査
自己破産の手続きが裁判所で開始された場合、破産債権者(破産申立人に対してお金を貸しているなど債権を持っている人)は裁判所の指定する期間内に債権の届出を行うことになります。
これは破産債権者としていくらの債権を持っているかということを裁判所に届出をして、破産手続による分配金をもらうために必要な手続きです。
債権額が多ければ多いほど、より多くの分配金を受けることができるシステムになっています。これを「按分弁済(あんぶんべんさい)」といいます。
このため債権者の中には、実際よりも水増しした債権額を届出る債権者も稀に存在します。
しかし、このような不正行為を見逃すと、債権者への公平な分配ができなくなってしまいます。
そのような不正を防止するため、破産管財人は債権者の届出た債権額が法律上正確なものであるのかどうかに関しても調査を行います。
調査の結果、疑いがある場合には裁判を行ってでも正しい債権額を確定します。
⑤「破産財団」の管理・維持
破産申立人の所有する一定以上の財産(「自由財産」以外の財産)について、破産管財人は引き渡しを受け破産財団に組み入れます。
破産財団へ財産を組み入れるためには、ある程度以上は破産申立人の協力が必要です。
万一、破産申立人が財産の引き渡しに応じない場合には、裁判所によって「引渡命令」を受け強制的に実行します。
⑥破産財団の売却・換価
破産管財人は、破産財団に属する各種の財産を売却し、お金に換えます。
このお金は、債権者への分配の元となります。
⑦破産債権者への分配
上記手続きによって蓄えたお金を、各債権者にそれぞれの債権額の割合に応じて分配(配当)します(按分弁済)。
各債権者が持っている債権の中で、分配を受けられなかった残債務額に関しては、もはや返済を受けられなくなるのが通常です。
たとえば債権額100万円を持っている債権者に対して、10万円が分配された場合、残りの90万円については返済されることはありません。
この返済されない額が、破産による免責の対象となるのです。
⑧債権者集会の開催
債権者への配当(分配)が終わると、債権者集会が開かれることになります。
この集会では、破産管財人としてどのようなことを行ったかを報告します。
なお、個人による小規模な破産では、債権者集会には債権者が出席しないこともよくあることです。
(2)免責手続での職務
破産管財人は、免責手続でも重要な役割を負っています。
①免責不許可事由に該当する行為の有無の調査
自己破産が認められ借金を帳消しにしてもらうためには、裁判所での手続きの最終段階において「免責」を受ける必要があります。
免責が認められるためには、破産申立人に「免責不許可事由に該当する事実がないこと」が必要です。
このため破産管財人は、そのような事実がないかどうかについて調査します。
ちなみに、「免責不許可事由」とは、ギャンブルや浪費で借金を作ったりした場合などが該当します。
免責不許可事由がある場合
破産管財人による調査の結果、免責不許可事由に該当する行為が発覚することがあります。
たとえば、ギャンブルで借金を作った人が破産を申立てたとしましょう。
ギャンブルで借金を作った場合、免責不許可事由に該当することから破産申立書ではギャンブルの事実を隠し、なんとか免責を貰おうとすることは実務ではよく目にする事例です。
しかし、破産管財人が銀行通帳や消費者金融の借り入れ記録などを調べれば、ギャンブルをやっていることなど簡単にバレてしまいます。
ギャンブルは免責不許可事由に該当する行為であり、本来であれば免責がもらえないことになるのが法律上の原則です。
しかし、だからといって免責が絶対にもらえなくなってしまうわけではありません。
法律上、「裁量免責」によって免責を得られる可能性が十分あるのです。
「裁量免責」とは、免責不許可事由に該当する行為がある場合でも破産申立人の反省の度合いなどを考慮し、裁判官の裁量によって免責が与えられる制度です。
反省しているかどうかが重視される
免責不許可事由に該当する行為がある場合、破産管財人は破産申立人の反省の程度を観察することになります。
本人が反省し生活態度を改め、今後二度と借金を作るようなことはしないだろうと判断できた場合には、免責を認めてもよい旨を裁判所に報告します。
万一、破産申立人に反省の態度が見られず、今後も借金を作る可能性が高いと判断された場合には免責について消極的な報告をすることになります。
②免責の可否に関する裁判所への意見報告
破産申立人の免責不許可事由の有無などの調査に基づき、破産管財人は裁判所へ免責を認めるべきかどうかについて意見の報告をします。
裁判所では、実際に免責を許可するかどうかの判断材料として、破産管財人の意見は非常に重視されています。
8.免責がもらえそうにない場合の対処法|個人再生
たとえ免責不許可事由に該当する行為がある場合でも、本人が反省し生活態度を改めていれば、たいていの場合には免責をもらうことができます。
しかし特別な事情があり、どうしても免責がもらえそうにない場合には、自己破産することをあきらめる必要があるかもしれません。
そのような場合には、自己破産に代わる借金問題の解決法として「個人再生(こじんさいせい)」という手続きに変更することを検討する必要があるかもしれません。
個人再生という手続きでは、一定額の債務を支払う必要はありますが、免責不許可事由に関する制限がないなど自己破産よりも利用しやすい制度となっています。
9.まとめ
今回は、自己破産の手続きにおいて重要な役割を持つ「破産管財人」についてご紹介させていただきました。
自己破産の処理方法が管財事件となった場合、破産管財人が選任されることになります。
破産管財人は、破産申立人の財産などの処分・換金や破産債権者への金銭の分配などを行います。
そして最終的には、裁判所が免責を許可してもよいかどうかについて意見書を提出します。
裁判所は、この意見を重視し免責を許可するかどうかを判断するため、破産管財人への対応は非常に重要なものとなります。
対応を少し間違えば、せっかく破産しても免責を得られず、最終的に借金を帳消しにしてもらうことができないことにもなりかねません。
そのようなことにならないためにも、自己破産する場合には手続きの詳細や破産管財人への上手な対処法などについて、ある程度の知識を身に着けておくことは大切なことです。
自己破産の手続きをスムーズに進めるためには、まずは弁護士に相談することがベストです。
場合によっては、自己破産以外にも借金問題を解決できる方法が見つかるかもしれません。
もし、自己破産に関してお悩みの場合には、お気軽に当事務所へご相談ください。
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