ご存じのように、自己破産には借金を帳消しにしてくれるというメリットがあります。しかし、その反面としてデメリットもいくつか存在します。
自己破産すると住所・氏名が官報によって公告されたり、一定の場合には「破産者名簿」に名前が記録されたりすることもあります。そのほかにもデメリットはいくつかありますが、その中でも自己破産する以上かならず受けることになるデメリットとして「ブラックリスト」に名前が載せられてしまう、というものがあります。これを「ブラックリスト入り」ともいいます。
それでは、自己破産でブラックリストに名前が載ると、いったいどのようなデメリットが発生するのでしょうか?また、ブラックリストから名前が抹消されるまでには、どれくらいの年月が必要なのでしょうか?
今回は、自己破産した場合のデメリットのひとつである「ブラックリスト」に関する各種の事柄について解説させていただきます。
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そもそも「ブラックリスト」とは?
「ブラックリスト」とは、一般的にはある特定の「要注意人物」の名前が記載されたリストといった意味でつかわれることが多いようです。自己破産した場合には「ブラックリストに載る」などといわれますが、実際にはそういった特別なリストがあるわけではありません。
ブラックリストに載っても日常生活には支障なし
自己破産したからといって、警察や役所などに要注意人物として登録されるようなことはありません。そのため、当然ですが日常生活で特別扱いされるようなこともありません。
自己破産した場合に問題となるブラックリストとは、各種信用情報機関が保有している個人の信用情報に関するデータのことなのです。
ブラックリストとは信用情報のこと
あとで解説しますが、個人の金融機関の利用履歴などを登録し、データとして管理している組織に「信用情報機関」というものがあります。このデータに「事故情報」(長期の延滞や自己破産などの正常の取引ではないデータ)が記録された場合、「ブラックリスト入り」することになるのです。
デメリットは金融機関の利用が制限されるだけ!
信用情報機関のブラックリストに名前が載ってしまうと、その後一定の期間、金融機関などからお金を借りられなくなるなど一定の不利益を被ることになります。これが自己破産した場合に、ブラックリストに載ることから発生するデメリットなのです。
逆に言えば、自己破産した後には金融機関を利用しないと決意することで、この問題はデメリットではなくなるともいえます。
「信用情報」とは?
「信用情報」とは、個人に関する各種金融機関の利用記録のことを言います。この信用情報の中には、金銭を借りたり返したりしたときの日時や金額、延滞の有無など多種多様な情報が記録されています。金銭の借り入れ・返済だけでなく金融機関にローンを申し込んだような場合でも、その情報がデータとして残ることになっています。
信用情報の具体的な中身とは?
それでは、信用情報の具体的な中身とはどうなっているのでしょうか?
CICでの登録事項を例として、見てみることにしましょう。つぎの3種類の項目が主な事項として記録されています。
①「申込情報」
「申込情報」は、クレジットやローンなどの申し込みを受けたクレジット会社などが、その審査のために申し込みをした人の信用情報を照会したときに記録される情報です。
記録される情報:名前、申し込んだ契約の内容など
記録される期間:情報登録後、6か月
②「クレジット情報」
「クレジット情報」は、クレジットやローンなどを契約した時やカードの利用、返済した時などに記録されることになります。
記録される情報:クレジットやローンなどの契約内容、残高、支払い状況など
記録される期間:契約継続中はずっと。契約終了後5年間。
③「利用記録」
「利用記録」は、クレジット会社などが継続中の契約のために利用者の信用情報を確認した場合に記録されます。
記録される情報:名前、情報を確認した理由など
記録される期間:情報登録後、6か月
……などなど、各種の情報が記録されています。これ以外にも登録される情報は、まだあります。
これらの個人の金融機関における利用履歴に関するデータを、信用情報機関が記録・管理しているのです。そして金融会社などは必要に応じて、それぞれが加盟している信用情報機関のデータを参照し、各種審査などの判断材料としているのです。
なお、これらの登録事項に関しては、各信用情報機関によって多少の差異があります。
カードの発行申請などの際には審査がある
Aさんがカード会社に対して、新しくクレジットカードの発行を申し込んだとしましょう。この時、カード会社は審査を行います。「Aさんにクレジットカードを発行しても大丈夫だろうか?ショッピング代金やキャッシングの借金を、ちゃんと返済してくれるのだろうか?」ということを確認する必要があるからです。
信用情報は審査の判断材料
この審査の際に、カード会社は信用情報機関に記録されているAさんのデータにアクセスします。いままでのAさんの金融機関の利用データの中には、現在の債務残高や過去に延滞していないかなどの情報が含まれています。
カード会社などは、これらの情報を確認し、審査の判断をしているのです。
知らないうちに金融機関の利用履歴が記録されている!
しかしここで驚くのは、金融機関が審査のためにAさんの情報を確認したという事実までが記録されるという点です。つまり、Aさんのデータには、このカード会社が審査に際してAさんの信用情報にアクセスしたという事実までが記録されるのです。
このように、本人の知らないうちに信用情報には金融機関の利用状況が記録されています。
「事故情報」があった場合、審査に落ちる!
このように、カード会社が審査をする際には、Aさんの信用情報をチェックすることになります。このとき、Aさんのデータに「事故情報」が見つかったとしましょう。これが、いわゆる「ブラックリスト」に載っている状態です。この事故情報がカード会社に判明した場合、かなり高い確率で審査に落ちることになるのです。
「事故情報」とは?
うえでご覧いただいたように、個人の信用情報には各種の情報が記録されています。この中でブラックリスト入りに関係するのが「事故情報(「異動情報」)」というものです。
これは簡単に言ってしまうと、金融機関に対して各種「迷惑をかける行為」があった場合に記録される情報と考えてよいでしょう。
「事故情報」とは業者に「迷惑をかける」行為のこと
いうまでもないことですが、金融機関からの借金などはあらかじめ定められた期日までに返済しなければなりません。これは法律上の義務でもあります。それにもかかわらず、その期日に決められた金額を返済できないことが世間ではよくあります。これは金融業者からすれば、債務者によって「迷惑」をかけられていることともいえます。このような場合に、その人の信用情報に「事故情報」が記録されることがあるのです。
「迷惑」の程度が重大なときに事故情報となる
金融業者に対して迷惑をかける行為があったとしても、その程度が軽微である場合には事故情報が記録されることはありません。しかし、それが一定以上重大である場合には事故情報が記録され、ブラックリスト入りすることになるのです。
具体的に言うと、借金やショッピング代金などの延滞状態が長期間継続している場合や、各種債務整理を行った場合などが、これに該当します。
個人信用情報機関とは?
信用情報機関とは、その名前のとおり、個人の信用情報を管理・記録する機関のことです。銀行、消費者金融やカード会社などの金融機関は、ローンの申し込みなどがあった場合にその審査を行うための材料として、申し込みしてきた人の信用情報が必要です。そのため各種金融機関は、それぞれが加盟している信用情報機関のデータを利用し、審査を行う際の判断材料としているのです。
個人信用情報機関にはどんなものがあるのか?
現在、経済産業大臣の指定する信用情報機関には3種類があります。金融業者は大きく分けると①銀行系、②クレジット会社系、③消費者金融系に大別することができます。そして各信用情報機関はこれに対応する形で存在し、それぞれ情報を提供しています。
それでは、各信用情報機関について見てみることにしましょう。
①KSC(全国銀行個人信用情報センター)
これは主として銀行や信用金庫、農協などが加盟している機関です。簡単に言ってしまえば、「銀行系」の信用情報機関と考えてよいでしょう。銀行などが、ある人の信用情報を必要とするとき、KSCが保有している個人の信用情報を利用することになっています。たとえば、ある銀行が住宅ローンの申し込みを受けた場合に、申し込みした人の信用情報を照会するときに利用するのです。
3つある信用情報機関の中で、このKSCはもっとも事故情報に対し厳しい扱いをする機関です。
②CIC(株式会社シー・アイ・シー)
こちらは主に信販会社、つまりクレジットカード会社が加盟しているものです。個人のクレジットカードの残高など各種利用状況が記録されています。
自己破産する際に、債権者の中にクレジット会社が含まれている場合には、CICの保有している信用情報に事故情報が記録されます。つまり、クレジットカードを使ったショッピングやキャッシングなどの残債務がある状態で自己破産した場合、CICのブラックリストに名前が載ることになると考えてよいでしょう。
③JICC(株式会社日本信用情報機構)
これは主に、消費者金融会社などが利用している情報機関です。各種消費者金融会社からの借入額や返済状況などが記録されています。自己破産するときに、債権者の中にJICCの加盟会社が含まれていた場合、JICCの信用情報に事故情報が記録されブラックリストに載ることになります。
KSCは官報の破産情報も収集している!
自己破産や個人再生をした場合、それに関する情報が数回官報に掲載されることになっています。
一般的には、このような情報をいちいち確認する人はまずいないと思われますが、KSCだけは事情が異なります。KSCは官報で公告されるこのような情報を確認し、それをそれぞれ個人の信用情報として記録しているのです。このため、仮に破産債権の中に銀行関係のものがなかったとしても自己破産した場合には、その後銀行関係の金融機関からお金を借りることが難しくなるのです。
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基本的には各信用情報機関の情報は独立している
このように、個人の信用情報を記録している機関には3種類あることが分かりました。①「銀行系」、②「クレジット会社系」、③「消費者金融系」です。これらは、それぞれ独立した機関であるため、それぞれが保有している信用情報も基本的には独立しています。そのため、たとえば消費者金融に多額の債務のある人がクレジットカードの発行申請をした場合、申し込みを受けたカード会社には、カード関係の信用情報しか知ることができないのです。
このため、つぎのような疑問を持つ人もいるかもしれません。
事故情報は共有されない?
たとえば、銀行からしか借り入れのない人が自己破産する場合を考えてみましょう。
この場合、銀行に「迷惑をかける」ことになるのですから、KSCの信用情報に事故情報が記録されることになります。しかし、この人が破産しても消費者金融系の会社やクレジット会社系の業者には何の迷惑もかけていません。そして、この3つの信用情報機関の情報は相互に独立しています。となると、自己破産後においてもCICやJICCではブラックリストに入っていないため、「カードの発行を受けたり、お金を借りたりできるのでは?」という考え方もできそうです。しかし、さすがに世の中はそんなに甘くはないのです。
事故情報だけは共有される!
各信用情報機関のデータは相互に独立しており、これらの機関の間では、ほかの機関の保有する情報を閲覧することはできません。しかし、その扱いは通常の情報に限られているのです。つまり、「事故情報」だけは、3つある信用情報機関のどれか一つにでも記録されている限り、ほかのどの機関でもその事実を知ることができるのです。そして、KSCは官報から自己破産者の記録を見つけ出し、信用情報として登録しています。このため、自己破産する以上、すべての情報機関においてブラックリストに載るのと同じことになるのです。
どんな場合に「ブラックリスト入り」することになるのか?
それではここで、どのような場合にブラックリスト入りすることになるのか見てみましょう。
信用情報機関においてブラックリスト入りするのは、主としてつぎのような場合となります。
①債務の返済がある程度以上遅れた場合
ローンやキャッシング、またはカードでのショッピングなどをした場合、一定期間の経過後、その返済を行う必要があります。通常は毎月特定の日に銀行口座から引き落とされたり、金融機関の窓口・ATMなどで返済することになります。しかし、この返済期日までに支払いがなされない場合があります。これが「延滞」状態です。
「延滞」について
債務の返済は、毎回指定期日までに行う必要がありますが、どうしても何らかの事情によって期日までに間に合わないこともあるでしょう。わずかな日数の延滞は世間では、よくあることです。「延滞するとブラックリストに載せられるのでは?」と心配される人もいるかもしれません。しかし一般的な感覚として、このような場合にまでブラックリスト入りさせられては困りますよね。でも大丈夫です、さすがに信用情報機関も鬼ではありません。常識的な期間の延滞であれば、その事実をもってブラックリストに入れるようなことはしていないので安心してください。
軽微な「延滞状態」ではブラックリスト入りしない!
世間にはよく、「一日でも延滞すると、即ブラックリスト入り」と考えている方がいらっしゃいます。しかし、これは間違いです。もちろん延滞などしないに越したことはありませんが、延滞も2か月程度までであれば大丈夫。通常の場合であれば、ブラックリスト入りすることはありません。
3か月以上延滞するとブラックリスト入り
一般的には延滞状態が3か月以上継続した場合、信用情報機関では「事故情報」がその人のデータに記録されることになります。
延滞も3か月以上続くとなると、相当悪質。返済の意思がないと判断されても仕方ありませんせん。
延滞を繰り返している場合は注意が必要
延滞でブラックリスト入りすることになるのは、その状態が3か月以上継続した場合が基本となります。しかし、これより短い期間の延滞であったとしてもブラックリスト入りする可能性があるので注意が必要です。
たとえ1、2か月程度の延滞であったとしても、これまでにも延滞を頻繁に繰り返しているような場合、ブラックリスト入りの扱いを受けることもあります。
期日までに返済できそうにない場合の対処法とは?
期日までに返済できそうにない場合には、事前に相手業者にその旨の連絡を入れるようにしましょう。返済が遅れるのであれば、返済できる期日を伝えるなどして返済の意思があることを示す必要があります。こうして債務者としての誠意を示すことで、延滞から発生するデメリットを減少させることができるかもしれません。
②債務整理した場合
債務整理には大きく分けて4種類あります。「任意整理」「特定調停」「個人再生」、そして「自己破産」です。債務整理を行った場合、これらどの方法を利用しても基本的にはブラックリストに載ることになります。
債務整理する以上、ブラックリスト入りすることは仕方ないと覚悟する必要があります。
「過払い金」請求の問題について
債務整理と類似した問題として「過払い金請求」があります。過払い金の請求は、現在では基本的にブラックリスト入りする原因とはなりません。ただし、一定の場合にはブラックリストに載るなど例外もありますので注意が必要です(参考:「過払い金の請求をしてもブラックを回避する方法とは?」)。
③携帯・スマホの分割払いを3か月以上延滞した場合
ブラックリストに入る原因の中で、意外と盲点となることが多いのがこのケースです。
スマホや携帯本体を購入する際、2年間の継続利用を条件に分割払いにすることは一般的に広く行われているものだと思います。こうすることで、スマホなどの端末代金を実質的に安く購入することができるからです。
スマホなどを分割払いにすると信用情報に記録される!
スマホなどを購入するに際して、その購入代金を分割払いにした場合、CICにおける個人の信用情報にその旨が記録されることになっています。このため、当然ですが毎月の分割金の支払を滞らせた場合、延滞情報が記録されることになります。
そして、この延滞状態が3か月以上続いた場合には、信用情報機関のデータに事故情報が記録されることになるのです。
スマホ代金などの支払いも、なるべく滞らせないほうがよいでしょう。
ブラックリストに名前が載るタイミングとは?
それではここで、自己破産した場合にどのタイミングでブラックリストに載ることになるのか考えてみましょう。
ブラックリストに載るタイミングは、ブラックリスト入りすることから発生するデメリットが、いつ解除されるのかを考えるうえで重要な問題です。
自己破産したことを信用情報機関が知った時に載る
自己破産した場合に各信用情報機関でブラックリストに載るタイミングは、自己破産の免責許可決定があったことを債権者が知った時が基準となります。この事実を知った金融業者である債権者は、加盟している信用情報機関におけるその人の信用情報に債務がゼロになったという記録をするのです。そして、この時を基準としてブラックリストの不利益が解除される期間を計算することになります。
ブラックリストに載ると、どんな不利益を受ける?
ではここで、ブラックリストに載ると、どんな不利益が発生するのか具体的に見てみることにしましょう。
信用情報機関においてブラックリストに載ると、つぎのようなデメリットを受けることになります。
お金を借りられなくなる
信用情報機関においてブラックリストに載っている状態の場合、各種金融機関からお金を借りることが難しくなります。ローンの申し込みをした場合、その審査の段階で自己破産したことが判明する可能性が高いからです。
自己破産した場合には実際問題として、新たに金融機関からお金を借りるのは、まず無理になると考えておいて方がよいでしょう。
クレジットカードを作れなくなる
ブラックリストに名前が載っている状態の場合、新規にクレジットカードを作ることが難しくなります。新規にカードを作る場合にはカード会社に対してカード発行の申し込みをすることになるのですが、この時カード会社は信用情報機関に申し込みをしてきた人の情報を照会するのです。このとき、かなり高い確率で自己破産した事実がカード会社にバレることになります。「お金を借りられなくなる」場合と同様、自己破産した場合には一定期間は新しくクレジットカードを作ることはできないと考えなければなりません。
同居の親族も不利益を受ける可能性がある
自己破産した人と一緒に住んでいる親族がいる場合、その同居の親族が金融機関にローンの申し込みをすることがあります。このとき、同居の親族の中に自己破産などをした人がいる場合には審査に通らない可能性があると言われています。
しかし、これはあくまでも「可能性」がある、という話ですので過度に心配する必要はありません。
ブラックリストから名前が削除されるまでの期間とは?
ブラックリストに名前が載った場合でも、その状態が一生続くわけではありません。一定期間の経過によって、自己破産したというその「事故情報」は抹消される扱いとなっているのです。信用情報機関のデータから「事故情報」が抹消されることによって、晴れてブラックリストから名前が抹消されることになります。
なお、事故情報が抹消されるまでの期間は、それぞれの信用情報機関ごとに運用が異なっています。
5年から10年でブラックリストから名前が消える
ブラックリストから名前が抹消されることになる期間は、各情報機関によって扱いが異なっています。しかし、これを大まかに言うと「5年から10年」でブラックリストから名前が消される、ということができます。つまり、この期間が経過すれば、また金融機関からお金を借りるなどできることになります。
各信用情報機関における抹消までの期間
ブラックリストから名前が抹消されるまでの期間は「5年から10年」と解説しましたが、これは各信用情報機関によって抹消までの期間に違いがあるからです。
それでは、具体的に各機関の抹消までの期間を見てみましょう。
- KSC:10年間
- CIC:5年間
- JICC:5年間
このうち、CICとJICCは事故情報が5年で抹消されますが、KSCはその倍の10年もの間ブラックリストに名前が載り続けることになります。このため、自己破産後も銀行系の金融機関では長くローンなどを組むことができなくなるのです。
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ブラックリストから名前が消えても不利益が続くことも!
自己破産した場合にはブラックリストに載るため、そこから名前が削除されるまでは、上記のような不利益を被ることになります。
それでは、自己破産後これらの期間が経過した場合、すぐに不利益を受けることがなくなるのでしょうか?みなさんも気になるところでしょう。しかし残念ながら、実際にはすぐに不利益が解除されないことが存在するのです。つまり、ブラックリストから名前が抹消される期間が経過した後も、お金を借りたりクレジットカードを作ったりすることができないことがありうるということです。
この原因には、いくつかの可能性があります。
①信用情報機関の個人データに誤りがある可能性
自己破産手続きをとり、無事に免責ももらえたとしましょう。この場合、債権者の持っていた債権(借金などを返してもらう権利)は法律上消滅します。法律的に正確に言うと、裁判所の出してくれた「免責許可決定」が確定することで、その瞬間に債権が消滅することになります。しかし、裁判所はその旨の通知を各破産債権者に送るようなことはしません。そのため、債務者が免責を受けたことを(元)債権者である金融業者が知らない可能性があるのです。
金融業者が免責を受けた事実を知らない場合
(元)債権者である金融業者が、その顧客であった債務者に対して免責許可が出たという事実を知った場合、本来であればその業者はその者の債務がゼロとなった旨の処理をします。これをうけ、信用情報機関におけるその債務者のデータは、各社に対する債務がゼロとなるのです。しかし、この一連の手続きの中に手違いが生まれることがあるのです。
債務が残ったままの状態が続いていることも!
金融業者が債務者に対する免責の事実を知らなかったため、うえで述べたような債務をゼロにする手続きをとらなかった場合、信用情報にはずっと「債務残高」が残ったままとなってしまいます。つまり、事故情報が何年間もずっと放置され、「ゼロ」に更新されていない可能性があるのです。
自分の信用情報は確認すべき!
免責を受け、法律上の債務が消滅しているにもかかわらず、信用情報機関のデータ上では債務が残ったままとなっていては大変です。なぜなら、このような場合には自己破産後どれだけ長い期間が経過したとしてもブラックリストのデメリットを受け続けることになるからです。
もし、自己破産した時から5年あるいは10年経過しているにもかかわらず、ブラックリストの不利益をこうむり続けているような場合には、のちに述べる方法で自分の信用情報を確認してみることをお勧めします。
②「スーパーホワイト」が問題視されている可能性
一般的な場合、日常生活を送るうえで金融機関の利用は欠かせないものです。銀行でローンを組んでお金を借りたり、クレジットカードを使ってショッピングやキャッシングしたりすることもあるでしょう。こういった場合、これらの事実はすべて信用情報機関に登録されています(これは通常の「情報」であり、決してブラックリストに載る「事故情報」ではありません)。つまり通常の場合であれば、日常的にこれらの情報がその人のデータに記録されているはずなのです。しかし、自己破産した場合には5年から10年間金融機関を利用できなくなるため、この期間中のデータがまったく記録されていないということになります。これが、いわゆる「スーパーホワイト」(または「ホワイト」)という状態です。
「スーパーホワイト」とは?
すでに述べましたが、自己破産すると5年から10年は金融機関をほぼ利用することができなくなります。正確には、金融機関でお金を借りたりクレジットカードの発行を受けてカードを利用することができなくなるのです。このため、通常であれば日常的に記録されるはずの金融機関の利用履歴が各機関での信用情報にまったく記録されていないことになります。データ的に見た場合、この状態はまさに「空白」。この状態を「スーパーホワイト」というのです。
長期間金融機関を利用していないことがネックとなる
たとえば、ブラックリストから名前が削除された後に、ある消費者金融会社にお金を借りる申し込みをする場合を考えてみましょう。その会社は融資できるかどうかについて、加盟している信用情報機関にその人のデータを照会します。この時には、当然ですが「事故情報」はすでに抹消されているため、問題となるような情報はなにも記録されていません。しかし、5年から10年もの長期間、金融機関を利用した情報もいっさい登録されていないのです。このような場合、申し込みを受けた金融会社は、このことを不審に思い、自己破産したのではないか?との懸念を持つことがあるのです。このため、審査が通らないケースがあると言われています。
③「自社ブラック」の可能性
うえで解説したように、世の中には個人の信用に関する情報を管理し、いわゆるブラックリストを持っている機関が主に3つ存在します。しかし、ブラックリストを持っているのは、これに限られるわけではないのです。「自社ブラック」という問題です。
各金融機関が個別に持っているブラックリストがある
実は、ブラックリストを持っているのは信用情報機関だけには限りません。自己破産することで債権の回収をできなかった業者が独自で持っていることがあるのです。これは簡単に言うと、過去において「迷惑」をかけられた顧客情報を記録して各金融会社が保有しているものです。この場合、その業者に対してローンの借り入れなど新規の申し込みをしても、審査に落とされることになります。これが「自社ブラック」です。
系列会社も共有している
この扱いは、何もその直接の貸し手であった金融会社だけにとどまりません。その会社が属している系列会社も、この情報を共有している可能性があるのです。このため、自己破産で「迷惑をかけた」直接の金融業者などでなくても、ローンなどの審査に通らない可能性があるのです。
事前に系列会社のチェックを!
せっかくローンの申し込みなどをしたのに審査に通らなかったような場合、手間も時間も無駄にすることになります。これを避けるためには、新規にローンなどの申し込みをしようとする場合には、以前の破産債権者である金融業者と、今回申し込もうとしている会社が同一グループの系列会社ではないかを事前に確認するとよいでしょう。同一グループである場合には、自社ブラックの影響で審査に落とされる可能性があります。
「自社ブラック」から名前が削除されるまでの期間とは?
自社ブラックの情報は、各社の内部的な情報にすぎません。信用情報機関における事故情報などは、5年から10年で抹消されるというルールとなっていますが、自社ブラックの場合はそうはいきません。各業者独自の運用となっているため、場合によっては一生ブラックから名前が削除されることはないかもしれません。
④「申し込みブラック」の可能性
各信用情報機関は、利用者からあった各種申し込みの事実に関しても記録しています。つまり、ある人が金融機関に対して行ったローンや新規クレジットカードの発行などの申し込みについても、その事実を記録しているのです。これを「申込情報」といいます。
このため、ある程度以上の短期間に何度も複数の金融機関に対してローンなどの申し込みをした場合、「申し込みブラック」扱いを受け、審査に通らない可能性があるのです。
「申し込みブラック」とは?
自己破産後5年から10年経過すると、「これでやっとローンが組める!」「クレジットカードが作れる」との思いから、複数の金融業者に対して申し込みをする人がいます。これらの申し込みを受け、各業者は審査をしますが、この時に信用情報から短期間に複数の申し込みをしていることが判明してしまうのです。このような状態を「申し込みブラック」といいます。このような場合、審査で落とされる可能性が高くなるのです。
なぜ「ブラック」として扱われるのか?
ある程度短い間にローンやクレジットカードの発行などの申請があった場合、金融業者はこう考えます。「短い間に、こんなに何度もローンなどの申し込みをしているということは、お金にかなり困っているんじゃないのか?」と。お金に困っている人にお金を貸すということは、回収できる可能性が低い……「貸さないほうが賢明」と判断されてしまうのです。このため、短期間のうちに複数の業者に対してローンなどの申請をすることは、避けたほうがよいと言われています。
申し込みの間隔は6か月以上空けたほうがよい!
このように、短期間での複数の申し込みは不利益となることがあります。それでは、どれくらいの間隔を空ければこのような扱いを受けずに済むのでしょうか?
一般的には、6か月は空けたほうがよいとされています。これは、信用情報機関におけるデータの削除期間と関係があります。ローンやクレジットカードなどの「申込情報」は、信用情報機関では6か月保有されることになっているのです。つまり、6か月以上経過した場合には、この情報が削除されるため「申し込みブラック」となる可能性がなくなるためです。
⑤そもそも審査の条件を満たしていない可能性
これは各種審査に落ちる理由の中でも、もっともシンプルなものです。「自己破産するとブラックリストに載る」という考えから、自己破産後に審査に落ちた場合、その原因をブラックリストのせいだと勘違いしてしまうことがあります。
しかし、金融各社がローンやクレジットカードの発行などの審査をする際には、それぞれ各社ごとの審査基準があるのです。年齢・勤務先・勤続年数・収入・資産など、その一定の基準をパスできなければ、ブラックリストの影響とは全く別の理由で審査に落ちる可能性があります。審査に落ちる場合には、この点もチェックしておいたほうがよいでしょう。
自分がブラックリストに入っているかは自分で確認できる!
実は、各信用情報機関における自分の信用情報の内容は、申請することによって自分で確認することができるのです。これを、信用情報の「開示請求」といいます。
もし、自分の登録情報がどうなっているのか、特にまだブラックリストに載っているのかを確認したい場合には、つぎのような方法を試してみるのもよいでしょう。
各信用情報機関での確認方法
自分の信用情報を確認するためには、各機関の定める方法に沿って請求する必要があります。
具体的な請求方法は、下の各リンクから確認してください。
①KSCの場合
KSCに対する開示請求に関しては、つぎのリンクを参照してください。
参考:本人開示の手続き | 全国銀行個人信用情報センター | 一般社団法人 全国銀行協会
開示請求は郵送のみで行うことができ、手数料は1000円です。
②CICの場合
CICでは、ネット上・郵送・窓口による方法で開示請求することが可能です。
特にスマートフォンでの開示請求は、簡単・迅速に自分の信用情報を閲覧することができるためお勧めです。
参考:インターネット開示(スマートフォンで開示)|自分の信用情報を確認|指定信用情報機関のCIC
手数料は1000円となります。ただし、支払いはクレジットカードのみとなっています。
その他の開示請求方法については、下のリンクを参照してください。
③JICCの場合
JICCでは、郵送や窓口での開示請求のほか、CIC同様、スマートフォンでの請求も可能となっています。スマートフォンによる開示請求に関しては、下のリンクを参照してください。
参考:スマートフォンによる開示申込手続き |日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関
開示手数料は1000円です。JICCでは、クレジットカードのほかに定額小為替での支払いも可能です。
その他の開示請求方法に関しては、つぎのリンクが参考になります。
参考:信用情報の開示手続き |日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関
自分の信用情報に間違いがある場合
上記方法で自分の信用情報を確認した結果、その登録内容に間違いがある場合があります。そのような場合は、それが間違い出ることを証明する書類を提出することにより、データの訂正を求めることができることになっています。
もし、ご自分のデータに間違いがあった場合には、できるだけ早く訂正を申請したほうがよいでしょう。
開示請求できるのは本人だけ
開示請求という制度がある以上、これを利用して他人に自分の信用情報が漏れてしまうのではないか?と心配する人もいるでしょう。しかし、その必要はありません。なぜなら、開示請求することができるのは、各信用情報機関ともに本人だけとされているからです。たとえ家族であったとしても、本人以外の信用情報を知ることはできません。
まとめ
今回は、自己破産した場合かならず受けることになるデメリットのひとつである「ブラックリスト」について解説しました。
自己破産した場合、個人信用情報機関において、かならずブラックリストに名前が載ることになります。このため、それ以降一定の期間が経過するまでは自己破産の手続きが終了した後においても各種の不利益を受けることになります。一般的にこれは、自己破産した場合のデメリットのひとつといわれています。
しかし冷静に考えてみると、これらの不利益は金融機関などからお金を借りたり、新規のクレジットカードの発行を申請したりする場合など、ごく限られた範囲のデメリットにすぎません。
自己破産する方の大半は、それまで日常的に生活に困り、どこかからの借金なしには生活することが苦しい状態だったと思います。そのために借金することが日常当たり前で不可欠な行為と認識されているのではないでしょうか?そのためか、自己破産後には新たな借金ができなくなることを恐れ、自己破産に踏み切ることを躊躇する人がたくさんいます。
しかし、借金をしたり、クレジットカードで買い物をすることなどは生きる上で必要不可欠なものではないのです。自己破産が認められれば借金生活からは解放されるため、これまでのように借金に頼らなくてもよくなるはずです。あとは自分で稼いだお金の範囲で生活すればいいのです。借金できなくなることを、必要以上に不安に思う必要はありません。
つまり自己破産後は、ほかからの借金などに頼ることなく自分の稼いだお金だけで生活を送ることにすれば、これらの不利益はまったくデメリットではないのです。
ほかからお金を借りることができないという状態をデメリットととらえるのではなく、逆に借金をせずに生活する習慣を習得するチャンスととらえるべきです。
ブラックリストのデメリットを考えて自己破産することをためらっている人は、ぜひ前向きに自己破産を検討していただきたいと思います。
なお、最後に念のため付け加えておきます。
自己破産することでブラックリストに入るのは、あくまでも個人信用情報機関においてのみの話です。警察・役所や、それ以外のブラックリストに載るということではありませんので誤解しないようにしてください。
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