自己破産しても他人に迷惑をかけることは、まずありません。
もちろん債権者には迷惑をかけることになりますが、それ以外の人たちには基本的に迷惑がかからないのが原則です。
夫婦や親子などであったとしても、自己破産の影響がほかの家族の誰かに及ぶということはあまりありません。
しかし、自己破産の対象となる債務の中に保証人を立てて借りた借金がある場合は話がまったく異なります。
お金を借りた本人が自己破産すると、確実に保証人に迷惑がかかることになるのです。
今回は、自己破産した場合の保証人への影響についてご紹介します。
- 「自己破産すると保証人にどのような影響が及ぶのか?」
- 「保証人に迷惑をかけずに債務整理する方法とは?」
- 「債権者から請求を受けた場合、保証人はどのような対応をすればよいのか?」
上記のような疑問にお答えしますので、ぜひ最後までお読みください。
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1.自己破産すると保証人にどんな影響が及ぶ?
主債務者が自己破産すると保証人に一括請求が!
たとえば、A銀行から甲さんが100万円を借りる場合を例として考えてみましょう。
お金を貸す条件としてA銀行が保証人を求めたため、甲さんの借金について乙さんが保証人になりました。
この場合、A銀行のことを「債権者(さいけんしゃ)」といいます。
そして、お金を借りた本人である甲さんのことを「主債務者(しゅさいむしゃ)」、乙さんのことを「保証人(ほしょうにん)」といいます。
借金を借りた本人である主債務者が自己破産した場合、債権者は保証人に対して借金の残額について一括で返済を求めることが一般的です。
このため、借金の主債務者が自己破産すると保証人に迷惑をかけることになります。
家族が保証人の場合|家族に迷惑がかかる
家族の誰かが自己破産しても、ほかの家族に対しては悪影響が及ばないのが原則です。
しかし、家族が自己破産の対象となる借金の保証人となっている場合には話がまったく異なります。
主債務者が自己破産する以上、債権者は保証人である家族に対して借金の返済を要求してきます。
このため、このようなケースでは自己破産することによって家族に迷惑をかけることになるので注意が必要です。
自己破産する際には保証人に連絡を!
主債務者が自己破産する場合、このように保証人に対して大きな迷惑をかけることになってしまいます。
そのため、自己破産する際には事前に保証人に対して連絡し、破産することに対して理解を得ることが大切です。
連絡するタイミングとしては、自己破産することを検討し始めた時点などをおすすめします。
とにかく大切なのは、なるべく早い段階で保証人に連絡することです。
なるべく早く事情を伝えることで、保証人としても事態への対処について熟慮する時間的な余裕を得ることができます。
2.保証人に迷惑をかけずに債務整理する方法とは?
自己破産や個人再生する場合、債権者は保証人に対して借金の返済を求めることになるため、保証人に対してどうしても迷惑をかけることになります。
保証人に迷惑をかけずに借金問題を解決するためには自己破産ではなく、つぎのような債務整理方法を選択する必要があります。
- (1)任意整理
- (2)特定調停
それぞれについて、簡単に確認しておきましょう。
(1)任意整理
借金問題を根本から法律的に解決する方法である債務整理には、基本的に4つの方法があります。
「任意整理(にんいせいり)」は債務整理の1つの方法であり、裁判所を利用しないため気軽に行えるという特徴があります。
任意整理は債権者との交渉によって行う方法ですが、好条件で話し合いが成立した場合には、自己破産せずに借金問題を解決することが可能となります。
自己破産と異なり、任意整理を行っても保証人に迷惑が及ぶことはありません。
(2)特定調停
保証人に迷惑をかけることを避けながら借金問題を解決する方法の1つに、「特定調停(とくていちょうてい)」という方法があります。
特定調停は手続きを裁判所がリードしてくれるため、債務整理の専門家に依頼せず個人だけで行いやすいというメリットがあります。
3.一括請求された場合にとるべき保証人の対応とは?
借金の主債務者が自己破産すると、債権者から保証人に対して一括請求が行われます。
請求された金額を無理なく返済できる程の財産を保証人が持っているのであれば問題ありませんが、通常はなかなか難しいのが実情です。
それでは、債権者から借金の一括請求を受けた場合、保証人としてはどのような対応をとるべきなのでしょうか?
具体的な対応の方法については、保証人の種類によって違ってきます。
そのため、まずは2種類ある保証人についてご説明いたします。
保証人には2種類ある|「通常保証」と「連帯保証」
世間ではひと口に「保証人」といいますが、法律上の保証人には以下のように2種類存在します。
- (1)「通常保証」契約による保証人
- (2)「連帯保証」契約による連帯保証人
この2種類の保証人は、法律上負うことになる保証人としての義務に関して非常に大きな違いがあります。
(1)「通常保証」契約による保証人
保証人となるためには、債権者との間で「保証契約(ほしょうけいやく)」を締結することになります。
この際に「連帯保証契約」として契約しない場合、通常の保証契約となるため、保証人は連帯保証人ではなく通常の保証人となります。
ただし、一般的な保証契約は連帯保証契約であることがほとんどであり、あまり通常保証契約は行われていないようです。
通常保証契約による保証人に認められる権利
連帯保証契約ではなく通常保証契約によって保証人となった場合、法律上、いくつかの権利が認められます。
具体的には、つぎのような権利などを通常の保証人は行使することができることになっています。
- ①催告の抗弁権
- ②検索の抗弁権
- ③分別の利益
それぞれについて、順次確認していくことにしましょう。
①催告の抗弁権
「催告の抗弁権(さいこくのこうべんけん)」とは、債権者が保証人に対して借金の支払いを請求してきた場合において、まず主債務者に対して返済を請求すべきことを請求することのできる権利です。
つまり、まず最初に主債務者に借金の返済の請求をし、それでも主債務者が返済しない場合に保証人に対して返済の請求をすべき旨を請求することのできる権利です。
通常の保証人には催告の抗弁権が認められるため、主債務者が借金の返済をしない場合に限って借金の肩代わりをすればよいことになります。
②検索の抗弁権
「検索の抗弁権(けんさくのこうべんけん)」とは、主債務者に借金を返済できるだけの財産があり、なおかつ強制執行が容易であることを証明することによって保証人への請求を拒否することのできる権利です。
主債務者が借金の返済をしないため債権者が保証人に請求してきた場合でも、たとえば主債務者に借金が返済できるだけの貯金などがあり、差し押さえが容易であることを証明することで保証人に対する債権者の請求を拒否することが認められます。
③分別の利益
主債務者が借金する際に複数の保証人を立てた場合、各保証人は保証人の頭割り分の借金を返済することで保証人としてのすべての義務を果たしたことになります。
たとえば主債務者が150万円の借金をする際にA・B・Cという3人の保証人を立てたとしましょう。
このケースにおいて主債務者が150万円を返済しない場合には、各保証人は50万円(借金額の3分の1)を債権者に支払えば、もはやそれ以上の返済義務が消滅することになるのです。
通常の保証人に認められるこのような利益のことを、「分別の利益(ぶんべつのりえき)」といいます。
(2)「連帯保証」契約による連帯保証人
世間で「保証人」という場合には、この連帯保証人のことを指すのが一般的です。
主債務者がお金を借りる際に債権者と保証人との間で「連帯保証契約」が結ばれた場合、保証人は連帯保証人としての義務を負うことになります。
もちろん主債務者が借金を無事に返済してくれるのであれば、連帯保証人として借金の支払い義務を負うことはありません。
しかし、主債務者が借金を約束どおり返済しない場合には、連帯保証人は債権者に対して借金を返済する義務を果たさなければならなくなります。
連帯保証人に認められる権利
すでにご覧いただいたように、法律上、保証人には各種の抗弁権が認められることになっています。
しかし残念ながら、連帯保証人には通常の保証人に認められるような抗弁権などがいっさい認められないことになっています。
連帯保証人には抗弁権がまったく認められないため、その分連帯保証人の責任は重いのです。
世間でよく「連帯保証人にだけはなるな」といわれるのは、このような理由があるからです。
連帯保証人には通常の保証人のように催告の抗弁権や検索の抗弁権、そして分別の利益が認められません。
このため連帯保証人は債権者から一括請求があった場合には、すぐに請求に応じる義務があり、仮に連帯保証人が複数いたとしても1人で全額を負担する義務があるのです。
4.保証人に認められる求償権とは?
主債務者が借金を返済してくれないために保証人が借金の肩代わりをした場合、保証人には主債務者に対して肩代わりしたお金を自分に返済するように請求する権利が認められます。
これを「求償権(きゅうしょうけん)」といいます。
お金を借りた張本人である主債務者に代わって借金の肩代わりをした以上、保証人には主債務者に対して求償権が認められます。
これは通常の保証人だけでなく、連帯保証人にも認められる権利です。
しかし、主債務者が自己破産することによって保証人が借金の肩代わりをした場合には求償権は認められないことになっているので注意が必要です。
自己破産したにもかかわらず、その後すぐにまた求償権に基づく債務の支払いが認められるとすれば、主債務者は再び借金生活に逆戻りしてしまうでしょう。
それでは法律上、自己破産を認める意味が失われてしまいかねないからです。
5.請求を受けた場合にとるべき保証人の対応
主債務者が自己破産したことによって債権者から保証人に対して返済の請求が来た場合、保証人として採るべき方法は主としてつぎの2つが考えられます。
- (1)素直に支払う
- (2)債務整理する
順次、確認していくことにしましょう。
(1)素直に支払う
主債務者が借金する際に保証人となった以上、債権者からの請求を拒否することはできません。
請求を無視し続ければ、最悪のケースとしては裁判を起こされる恐れもあります。
債権者の請求権は法律上認められたものであるため、拒否することができないのです。
債権者からの請求に対するもっとも基本的な対応は、素直に借金の肩代わりをすることです。
ただし、この場合の返済は基本的に一括で支払うことが必要となることが一般的ですので注意してください。
もし、一括での支払いが難しい場合には、後述するように保証人としても何らかの債務整理をすることが必要となります。
(2)債務整理する
債権者からの請求に対して主債務者の借金残額などを返済できない場合、保証人としても何らかの債務整理を検討しなければいけません。
債務整理には以下に掲げるように4つの方法がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあるため保証人として最も都合のいい方法を選択する必要があります。
- ①任意整理
- ②特定調停
- ③個人再生
- ④自己破産
このうち「①任意整理」「②特定調停」に関しては、すでにご紹介しましたので、残りの2つについて簡単に解説いたします。
③個人再生
個人再生した場合、債権者から請求を受けた金額が最大80%~90%カットされることになるため、返済が非常に楽になります。
保証人が個人再生した場合、カットされた後の残額を基本的に3年で分割返済することになります。
④自己破産
保証人が自己破産した場合、主債務者の借金を肩代わりしなければならないという義務が消滅します。
しかし、自己破産する場合には一定以上高額な財産は処分されることになるなど各種のデメリットがあるので注意が必要です。
自己破産についての詳細な情報に関しては、以下の記事を参照してください。
6.まとめ
今回は、自己破産した場合に保証人に対してどのような影響があるのか、また保証人に迷惑をかけないようにするにはどうすればよいのかなどについて解説させていただきました。
自己破産する以上、保証人には必ず迷惑がかかることになります。
そのため、自己破産する際には事前に保証人に対して事情を説明し、理解を得ておくことが大切になります。
もし保証人に迷惑をかけたくないのであれば、任意整理や特定調停などの方法で借金問題の解決が図れないかを検討してみましょう。
借金問題は人によって千差万別。人が違えば解決方法も異なるのが、債務整理の世界における常識です。
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