特別寄与料とは?相場・計算方法をわかりやすく解説

2018年、相続制度に関して大改正が行われ、相続に関する各種の制度が変更・新設されました。

この改正によって新たに創設された制度のひとつに、「特別寄与料」があります。

特別寄与料(とくべつきよりょう)とは、相続人以外の親族で、被相続人の相続財産の維持・増加に貢献した人(「特別寄与者」といいます)がいる場合に、その人から相続人に対して、その寄与に応じて請求できる金銭のことをいいます。

この記事では、遺産相続問題に強い弁護士が、

  • 特別寄与料とはどのような制度か
  • 特別寄与料の計算方法と相場
  • 特別寄与料の時効・税金

などについてわかりやすく解説していきます。

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特別寄与とは

特別寄与料とは

特別寄与料とは、相続人以外の親族で、被相続人の相続財産の維持・増加に貢献した人(「特別寄与者」といいます)がいる場合に、その人から相続人に対して、その寄与に応じて請求できる金銭のことをいいます。

遺産分割に際して、特定の相続人には「寄与分」が認められることがあります。

「寄与分」とは、相続人の中に被相続人の生前において身辺の世話をすることなどによって相続財産の維持・増加に努めた者がいる場合に、遺産分割に際してその者の貢献を評価し、その度合いに応じて相続分を増加しようという制度です。

これまでは、この寄与分が認められるためには、その特別な貢献をした人が相続人であることが必要でした。たとえ特別の寄与をした人がいたとしても、その人が相続人でない場合には、相続財産を取得する方法がなかったのです。

しかし現実的によくある事例として、相続人ではない者でありながらも被相続人の介護や面倒を見るなど、被相続人に対して特別な貢献のある人もいるものです。たとえば、被相続人からみて息子の嫁は相続人にはあたりませんが、息子の嫁に介護してもっている家庭は少なくないでしょう。

このような特別の貢献があるにもかかわらず、その人に相続権が認められないという事実のみをもって、その貢献が報われないのは不公平ではないかという指摘が以前からありました。

そのため2018年の相続法の改正では、このような特別な貢献をした人が相続財産を請求できるよう「特別寄与料」を創設するに至ったのです

特別寄与料を請求できるのはいつから?

特別寄与料の制度が施行された2019年7月1日以降に開始した相続で特別寄与料が請求できるようになっています。

特別寄与料の条文は?

特別寄与料については民法第1050条に規定されています。

第千五十条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
(省略)

民法 | e-Gov法令検索

特別寄与料を請求できる要件

①被相続人の親族であること

特別寄与料請求できる人は、相続人以外の、被相続人の親族(※)であることが必要となります

したがって、仮に被相続人の生前に被相続人に対して特別の貢献をした人でも、その人が被相続人の親族でない場合には、この請求権は認められません。たとえば、献身的に介護してくれたヘルパーさんや、長年夫婦同然の生活を送り相手を支えてきた内縁(事実婚)のパートナーであっても、親族以外の者である以上、特別寄与料を請求する権利はありません。

なお、たとえ親族であっても「相続人」は特別寄与料の請求権者(「特別寄与者」といいます)にはなれません。前述の通り、相続人については「寄与分」の制度が既に存在しているためです。

また、相続人以外にも、以下に該当する者は特別寄与者となることはできません。

  • 相続放棄をした者
  • 相続人の欠格事由にあたる者
  • 相続廃除された者

※親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族をさします(民法725条)。誰が被相続人の親族にあたるかは、「親族図で見る親族の範囲」ですぐに確認していただけます。

②被相続人に対して療養看護その他の労務の提供をしたこと

特別寄与料の請求権が認められるためには、まず被相続人に対して療養看護や何らかの労務の提供があったことが必要となります。

③労務の提供が無償で行われたこと

特別寄与料が認められるためには、労務の提供が無償で行われることが必要とされます。

このため、いかに生前の被相続人に対して特別の貢献があったとしても、対価をもらっていた場合には特別寄与料の請求は認められないことになります。

④相続財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと

特別寄与者として金銭の請求権が認められるためには、その者の行為によって相続財産が維持または増加されていることが必要です。

いくら無償で療養看護などに当たったとしても、その行為によって相続財産が維持・増加していない場合には、特別寄与料の請求は認められません。

特別寄与料の請求方法

当事者間の協議

民法には特別寄与者は相続開始後、相続人に対し特別寄与料を請求することができる旨が規定されています(民法第1050条1項参照)。そのため特別寄与料の請求は原則として当事者間の話し合い・協議によって進めることになります

ただし、特別寄与者になれる者は被相続人の親族が対象とされていますが、相続人らとは人間関係が希薄なケースも多いでしょう。

そのような場合には円滑に特別寄与料の話し合いができない可能性もあるため、弁護士に依頼して代理人として話し合いを行ってもらう方がスムーズに手続きを進められる可能性があります。

家庭裁判所への申し立て

特別寄与料の支払いについて、当事者間で協議が調わないとき・協議をすることができないときは、特別寄与者が家庭裁判所に対して「協議に代わる処分」を請求することができます(民法第1050条2項参照)。具体的には、特別寄与者は家庭裁判所の調停または審判の手続きを利用することになります。

調停手続きでは、当事者双方から事情を聴いたり必要に応じて資料などを提出したりするなどして、解決案を提示してもらったり解決に必要な助言をしてもらったりして合意を目指して話し合いを進めることになります。

なお調停手続きで話し合いがまとまらず、調停が不成立となった場合には、審判手続きが開始されることになります。

特別寄与料の時効(請求期限)

特別寄与料の支払いを請求する場合には、「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6カ月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したとき」はできない旨が規定されています(民法第1050条2項但書き参照)。

「6カ月」の期間については消滅時効と考えられていることから、相続人が時効の利益を受けようとする場合には、時効の援用(時効の利益を有する者が時効の完成を主張すること)をする必要があります。

「1年」の期間について除斥期間と考えられているため、この期間が経過すると当事者の援用を要することなく自動的に権利が消滅することになります。

特別寄与料請求は、特別寄与者の相続人に対する債権としての性質を有しています。一般的な債権の消滅時効が債権者が権利を行使することができることを知った時から「5年間」行使しないか、権利を行使することができる時から「10年間」行使しないときと規定されているのと比べて、特別寄与料請求権の時効は早期に経過します

したがって特別寄与者は、相続人に対して早期に請求していくことが要請されています

特別寄与料の計算方法と相場

当事者間で協議した場合

特別寄与料の算定について、当事者間で話し合いをする場合には、合意により自由に決めることができます

したがって、特別寄与者と相続人の間で特別の寄与の期間や程度・相続財産の総額などさまざまな事情を考慮して特別寄与者に支払うべき特別寄与料を決めることができます。

療養監護をした場合

特別寄与者の寄与に応じた額の金銭について家庭裁判所が決定する場合には、「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して」特別寄与料の金額を定めると規定されています(民法第1050条3項参照)。

特別寄与者が被相続人の療養看護をした場合には、以下のような計算式で特別寄与料を算出することになります。

「介護日数」×「介護報酬相当額」×「裁量割合」=特別寄与料

まず「介護日数」には、入院や施設入所期間または介護サービスを受けた期間は原則として含まれません。

次に「介護報酬相当額」とは、介護保険制度で要介護度に応じて規定されている介護報酬基準額にしたがって決定されることになります。ケースによって変動する可能性がありますが、1日当たりの報酬は5000円~8000円程度です

「裁量割合」とは、元来親族には扶養義務があり介護などの専門家でもないことから報酬を割り引いて計算するための指標です。概ね0.5〜0.9を乗じて実際の寄与料が算出されることになります。

例えば、介護日数が600日で、介護報酬相当額が1日あたり5000円、裁量割が0.7であるとされた場合、この特別寄与者の特別寄与料は210万円(=600×5000×0.7)と算定されることになります。

家事従事した場合

特別寄与者が被相続人の家業に無償で従事した場合には、以下のような計算式で特別寄与料が算出されることになります。

「特別寄与者が通常得られたであろう給与額」×(1-生活費控除割合)×「寄与の期間」=特別寄与料

「特別寄与者が通常得られたであろう給与額」は賃金センサスを基準に、特別寄与者と同様な条件での一般的な年間給与額を参考にして算出することになります。賃金センサスとは、毎年実施されている政府の「賃金構造基本統計調査」の結果に基づき、労働者の性別、年齢、学歴等の別に、その平均収入をまとめた資料のことです。

「生活費控除割合」とは、家業に従事するケースでは労働の対価が生活費などの形で家業収入の中から支出される場合が多いのでこれを差し引くための指標です。

特別寄与料の上限

具体的にいくらの特別寄与料を受け取ることができるのかは、当事者間での話し合いの状況や家庭裁判所の判断によってケースバイケースです。

ただし特別寄与料が最大でいくら受け取ることができるのか、すなわち特別寄与料の上限については明確に制限が規定されています。

特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時に有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない」とされています(民法第1050条4項参照)。

このように規定されている理由は、相続においては遺贈を受け取る受遺者の方が特別寄与者よりも優先すると考えらえているからです。

そして相続人が複数いる場合には、一人の相続人に対して特別寄与料を全額請求することができません。各相続人の負担割合は、特別寄与料の全額を「法定相続分」に応じて負担すると規定されています(民法第1050条5項参照)。

特別寄与料と相続税

特別寄与料をもらった側

特別寄与料を受領した特別寄与者側は、被相続人から遺贈を受けたものとみなされるため、受け取った特別寄与料は相続税の課税対象となります(相続税法第4条1項参照)。

相続税には基礎控除額というものがあるため、特別寄与料がこの基礎控除額以下の場合であれば相続税の申告をする必要はありません。

基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算することになります。

そして特別寄与料を受け取ったことを申告する必要がある場合には、特別寄与料の金額が定まったことを知った日の翌日から「10カ月以内」に行う必要があります。

また、相続税は被相続人の1親等の血族・配偶者以外の人については税額が2割加算されることになります。特別寄与者はこの2割加算の対象となるケースが多いため注意しておく必要があります。

特別寄与料を支払った側

特別寄与料を支払った相続人の側は、課税対象となる相続財産の中から特別寄与料を差し引いて相続税の申告をすることができます

すでに特別寄与料を控除することなく相続税を負担してしまった場合には、更正の請求をすることで多く納めすぎた相続税の還付を受けることができます。

更正の請求は「特別寄与料の金額が定まったことを知った日の翌日から4カ月以内」にする必要がありますので注意が必要です。

まとめ

今回は、2018年に行われた相続法の改正によって新たに創設された「特別寄与料請求権」についてご紹介しました。

この法改正によって、相続権が認められない者であっても、一定の親族には相続財産を請求する権利が認められることになりました。以前までは、生前の被相続人に対していくら大きな貢献がある人でも、その人に相続権が認められない場合には相続財産から金銭をもらう方法がありませんでした。この問題を解決するため、特別寄与料請求権が認められることになったのです。

もっとも、相続人からすれば特別寄与料を支払うことで自分の相続分が減ることになるわけですから、いくら特別寄与者が相場通りの額を提示しても納得してもらえずにトラブルに発展してしまうこともあります。

そのため、ご自身が特別寄与者に該当する可能性のある方は弁護士に相談してみましょう。弁護士に相談することで、ご自身が特別寄与者に該当するのか、該当するとして請求できる特別寄与料のおおよその相場も弁護士に教えてもらえます。また、相続人との交渉から調停・審判の手続きも弁護士に一任することができますので、精神的負担が軽くなるほか、経験に基づく冷静な話し合いにより、無用な揉め事に発展することを抑えることも可能です

弊所では、特別寄与料の請求、相続人との交渉を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力でサポートしますので、相続人への特別寄与料の請求を自分一人では対応しきれないとお考えの方はまずは弁護士までご相談ください。お力になれると思います。

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