嫡出子とは?非嫡出子との違いやケースごとの対処法などを解説

嫡出子(ちゃくしゅつし)という言葉は多くの方にとって馴染みのない言葉だと思います。日常生活の中で、嫡出子、非嫡出子という言葉を使う機会は少ないでしょう。

しかしながら、たとえば、人として生まれてくる、あるいは生まれてきた以上、誰もしもが嫡出子、あるいは非嫡出子のいずれかに該当します。そして、その違いが出産や相続の場面などで大きく影響してきます

その意味ではこれから生まれてくる子は嫡出子なのか非嫡出子なのか、あるいは我が子は嫡出子なのか非嫡出子なのか知っておいて損はありません。

そこで、この記事では、相続に詳しい弁護士が嫡出子、非嫡出子の違いなどについて詳しく解説してまいります。

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嫡出子とは?非嫡出子とは?

嫡出子とは婚姻関係にある男女の間に妊娠・生まれた子のことをいいます。他方、非嫡出子(民法上は「嫡出でない子」)とは婚姻関係にない男女の間に生まれた子のことをいいます。

法律上「婚姻関係にある」というためには、少なくとも男女の間に①婚姻意思があり、②市区町村役場に婚姻届を提出すること、が必要です。他方で、①、②のいずか一方が欠けている場合は法律上「婚姻関係にない」とされます。したがって、事実婚関係、愛人関係、恋人関係という場合、通常①あるいは②が欠けていると思いますから、こうした関係の間に生まれた子はすべて「非嫡出子」ということになります。

嫡出子のメリットと非嫡出子のデメリット

嫡出子のメリット、非嫡出子のデメリットについては以下のとおりです。

⑴ 法定相続分について

法律で規定された相続財産の取り分のことを法定相続分といいます。かつて民法(9004号ただし書)にはこの法定相続分について、「非嫡出子の法定相続分は嫡出子の1/2とする」という規定が設けられていました。しかし、その後、最高裁判決(最大決平成2594日)でこの規定は法の下の平等を定めた憲法に反するとされました。これを受けて上記規定が削除され、現在では嫡出子の法定相続分と非嫡出子の法定相続分は同じとされています。

⑵ その他

とはいえ、嫡出子と非嫡出子とでは主に以下の点で違いが生じます。

①相続権の有無

被相続人(亡くなった人で相続される人)の財産を相続する人を「相続人」といいます。

父が亡くなった場合、嫡出子は父親の相続人となります。他方で、もともと非嫡出子と父とは父子関係にありません。したがって、そのままでは非嫡出子は父の相続人となることができません。認知を受けることによってはじめて父と父子関係が生じ、父の相続人となることができます(認知については「6」で詳しく解説します)。

②扶養義務の有無

親子間には扶養義務が発生します。したがって、父は嫡出子に対して扶養する義務を負います(子は親に扶養を請求できる権利があります)。他方、①のとおり、もともと非嫡出子と父とは父子関係にありません。したがって、認知によってはじめて父子関係が生じ、父に嫡出子となった子を扶養する義務が生じます。

嫡出推定とは?

嫡出子とは婚姻関係にある男女の間に出生した子という意味ですが、そうはいっても、その子が本当に夫の子であるかどうか証明することは容易ではありません。そこで、民法では

①婚姻中に妊娠した子

は夫の子と推定するとしています。その他、

②婚姻成立の日から200日を経過して出生した子

③婚姻解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子

は「婚姻中に妊娠した子」と推定され、結果として夫の子と推定される、としています。こうして夫の子と推定されることを嫡出推定といいます。

あくまでも「推定」ですから、証拠によってこの推定を覆すことはできます。

嫡出子は推定の如何によって、推定が及ぶ嫡出子推定が及ばない嫡出子推定されない嫡出子、の3つにわけることができます。なお、いずれも嫡出子であることにかわりはありません。

⑴ 推定が及ぶ嫡出子

推定が及ぶ嫡出子とは嫡出推定が及ぶ子のことをいいます。嫡出推定が及ぶ子と夫との間には父子関係が形成されます。推定を否認したい夫は嫡出否認の訴えを提起する必要があります(後記5⑴)。

⑵ 推定が及ばない嫡出子

推定が及ばない嫡出子とは、形式的には嫡出推定が及ぶものの、実質的には嫡出推定が及ばないことが明白な子のことをいいます。「嫡出推定が及ばないことが明白」な場合としては、たとえば、

  • 夫が長期間、海外に滞在中だった場合
  • 夫の生殖能力がないと医学的に認められた場合
  • 夫が長期間、行方不明だった場合
  • 別居などによって夫との性交交渉が長期間ないと認められる場合

などがあります。

もっとも、推定が及ばない嫡出子であっても形式的には⑴と同じですから、やはり子と夫(上記類型の夫)との間には父子関係が形成されます。この関係を認めたくない人は親子関係不存在確認の訴え(後記5⑵)を提起する必要があります。

⑶ 推定されない嫡出子

推定されない嫡出子とは、婚姻成立の日から200日「以内」に生まれた子のことをいいます。婚姻成立の日から200日以内に生まれた子は嫡出推定を受けません(上記②参照)。しかし、嫡出推定を受けないからといって非嫡出子とするには実情に合いません(∵いわゆる「できちゃった婚」などもある)。そこで、婚姻成立の日から200日以内に生まれた子も嫡出推定が及ぶ子(上記⑴)と同様、嫡出子として扱われています。

この場合に父子関係を認めたくない人は親子関係不存在の訴え(後記5⑵)を提起する必要があります。

父子関係を否定する方法

父子関係を否定する方法としては嫡出否認の訴え親子関係不存在確認の訴え父を定める訴えがあります。

⑴ 嫡出否認の訴え

嫡出否認の訴えとは、嫡出推定が及ぶ場合(前記3⑴)に、夫が子又は子の親権を行う母(親権を行う母がいない場合は特別代理人)に対してする、嫡出推定を否認する(その子は自分の子ではないとする)訴えをいいます。訴えといっても、調停(当事者間の話し合い)と裁判の2通りの方法があります。訴えの提起期間は夫が子の出生を知ったときから1年以内です。

調停や裁判で嫡出推定が否認されると、子は出生時から夫の嫡出子ではなかったことになります(母の嫡出子ではあります)。

⑵ 親子関係不存在確認の訴え

親子関係不存在確認の訴えとは、嫡出推定が及ばない(前記3⑵)又は嫡出推定されない場合(前記3⑶)に、確認の利益がある人から相手方に対してする、親子関係がないことの確認を求める訴えをいいます。⑴と同様、調停と裁判の2通りの方法があります。

しかし、⑴と異なり、訴えることができるのは「確認の利益がある人」で、夫に限定されません。また、提訴期間の期限がありません

⑶ 父を定める訴え

父を定める訴えとは、女性が再婚禁止期間内に再婚し、再婚の日から200日以降、離婚の日から300日以内に子を出生した場合における、父を定める訴えのことをいいます。この場合に出生した子は後夫、前夫双方の(二重の)嫡出推定を受けます(前記3①、②あるいは4参照)。この場合にいずれか一方を父とすること確定させる(つまりもう一方の父子関係を否定する)訴えが父を定める訴えです。

子、母、前夫、後夫が訴えることができます。提訴期間に期限はありません

父子関係を肯定する方法

5に対して父子関係を肯定する方法もあります。それが認知です。

⑴ 認知とは

認知とは、非嫡出子について、その父(または母)との間に、意思表示または裁判により父子(親子)関係を発生させる制度をいいます。前記3、4、5では嫡出子に関する話でしたが、ここでは非嫡出子に関する話となります。

⑵ 認知の効果

認知をする、されると主に次の効果が発生します。

① 扶養義務

父は自力では生活を維持できない子(未成年者など)に対して、自分の最低生活を割ってでも自分と同程度の生活をさせる義務を負います。

② 相続権

子は父が亡くなった場合に父の財産を引き継ぐことができます。もっとも、ここでいう財産とはプラスのみならずマイナスの財産も含まれます。引き継ぎたくない場合は相続放棄などの手続をとる必要があります。

③ 親権

父の子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行います。親権の具体的内容としては大きく財産管理権、身上管理権に分けることができます。

⑶ 認知の方法と認知できる期間

認知の方法は任意認知強制認知2種類があります。

① 任意認知

任意認知とは、父が自発的に市区町村役場に認知届を提出し、父子関係を認める方法です。任意認知は遺言によってすることもできます。その場合、認知の効力(父子関係)は子が生まれたときではなく、父が死亡したときから生じます。

② 強制認知

強制認知とは、父の自発的な意思によらない方法、つまり訴訟という手段を用いて強制的に父子関係を確定させる方法です。認知の訴えによる必要があります。

認知の訴えは非嫡出子である子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人が提起することができます。父が死亡した場合は、父が死亡してから3年以内に限り、検察官を被告として提起することができます。

⑷ 非嫡出子が嫡出子になる方法

非嫡出子が嫡出子になるための方法は婚姻準正認知準正があります。

婚姻準正とは、認知後に父母が婚姻した場合をいいます。

認知準正とは、父母が婚姻後に認知した場合をいいます。

いずれの場合も、非嫡出子は父母の婚姻時から嫡出子としての身分を取得します。

⑸ 認知の撤回

民法上、子の身分関係の安定のため、認知は撤回(取り消す)ことができないとされています。しかし、子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実(たとえば、子とは血縁関係にないなど)を証明して認知の無効を主張することができるとされています。そしてこの「利害関係人」には父も含まれ、父が認知を撤回することも可能と解されています。

ケースごとの対処法と注意点

以下、ケースごとの親の対処法や注意点をご説明します。

⑴ 婚姻成立から婚姻成立後200日の間に出生した場合(前記3⑶の場合)

婚姻前から妊娠していたなどという場合で、子は「推定されない嫡出子」(嫡出子)となります。出生届時には「嫡出子」として届け出ましょう(出生届に「嫡出子」か「嫡出でない子(非嫡出子)」かのいずれかにチェックする欄があります)。仮に、父子関係を認めたくない場合は親子関係不存在確認の訴えを提起する必要があります。

⑵ 婚姻成立前の期間、または婚姻解消後300日以降の期間に出生した場合

前者は事実婚などという場合で、子は「非嫡出子」となります。母親が出生届を行う必要があります。そして、任意認知、強制認知によって父子関係を確定させ、その後、婚姻した場合に準正によって子は「非嫡出子」から「嫡出子」となります。

後者は前夫との間の子という場合は「非嫡出子」です。出生届は母親が行います。子は母親の戸籍に入ります。前夫に扶養を求めたい場合などは、強制認知する必要があるでしょう。前夫との子でない場合は、子が生まれた時期によっては嫡出推定を受けることができます。この場合は後夫の「嫡出子」として出生届を提出すればよいでしょう。

⑶ 婚姻成立後200日経過後から婚姻終了までの間に出生した場合(前記3⑴の場合)

この場合は嫡出推定が及びますから子は「嫡出子」です。出生届時に「嫡出子」として届け出ればよいでしょう。

⑷ 婚姻成立後200日経過後から婚姻終了までの間に出生したが嫡出推定が及ばない場合(前記3⑵の場合)

この場合の子は形式的には嫡出推定が及び、子は現在婚姻関係にある夫の「嫡出子」となります。したがって、いったんは婚姻関係にある夫の「嫡出子」として出生届を提出する必要があるでしょう(出生届は出生から14日以内)。

もっとも、実体は婚姻関係にある夫の子ではありません。そこで、子と婚姻関係にある夫との父子関係を否定したい場合は、親子関係不存在確認の訴え(前記5⑵)、あるいは血縁上の父を相手とした強制認知の訴え(前記6⑶②)による裁判手続の中で、嫡出推定が及ばない事情(婚姻関係にある夫が長期海外出張で不在だったことなど)を明らかにする必要があります。

⑸ 婚姻終了後300日以内に出生した場合(前記3⑴の場合)

この場合の子は嫡出推定が及びますから、子は前夫の「嫡出子」です。したがって、前夫の「嫡出子」として出生届を提出する必要があります。しかし、これでは前夫と離婚したにもかかわらず、子が前夫の戸籍に入ってしまいます。そこで、これを避けるには、医師に婚姻中に妊娠したのではないこと(離婚後に妊娠したこと)の証明書(懐胎時期に関する証明書)を作成してもらい、出生届の提出と併せて提出します。生まれた子が婚姻中に妊娠した子でなければ、前夫の嫡出推定は及ばないからです。

他には、前夫に嫡出否認の訴え(前記5⑴)を提起してもらうか、前夫の協力が得られない場合は血縁上の父を相手として強制認知の訴えを提起し、その訴訟の中で前夫のとの子でないことを証明する必要があります。

⑹ 婚姻終了から婚姻終了後300日以内に出生したが推定が及ばない場合(前記3⑵の場合)

この場合の子も形式的には前夫の嫡出推定が及びます。しかし、子と前夫との父子関係を否定したい、子を前夫の戸籍に載せたくないなどという場合は、⑸と同様、出生届時に懐胎時期に関する証明書を併せて提出します。

その他、親子不存在確認の訴え、あるいは血縁上の父に対する強制認知の訴えによって前夫の嫡出推定が及ばない事情を明らかにすることも⑷と同様です。

まとめ

嫡出子とは婚姻関係にある男女の間に生まれた子をいいます。そして、嫡出子には嫡出推定が及ぶ嫡出子、嫡出推定が及ばない嫡出子、嫡出推定されない嫡出子があります。他方、婚姻関係にない男女の間に生まれた子を非嫡出子といいます。嫡出子か非嫡出子かによって、出生時や相続時、父子関係を否認、認めるための手続が異なり、複雑です。お困りの際は弁護士にご相談ください。

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