「遺言執行者がまじめに職務を果たしていない気がする…」
「遺言執行者が特定の相続人だけに肩入れしてるのではないだろうか…」
「遺言執行者を解任することはできるのだろうか…」
このようにお考えではないでしょうか。
結論から言いますと、遺言執行者を解任することは可能です。
この記事では、遺産相続問題に強い弁護士が、
- 遺言執行者を解任できる基準
- 遺言執行者を解任する方法
などにつきわかりやすく解説していきます。
記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。
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目次
遺言執行者を信用できないと思う具体的なケース
以下のような事情がある場合には、遺言執行者に対する信用がなくなる可能性があります。
- 被相続人が亡くなったの遺産の調査をしない
- 相続財産の管理を適切にしているようには見えない
- 財産目録を作成してくれない
- 相続人が要請しているのに事務処理の状況を報告してくれない
- しびれを切らして毎回相続人が進捗確認をしている
- 手続きが全く進んでいない
- 遺言執行者が高額な報酬を請求している
- よくわからない事務処理費用が発生している など
被相続人が亡くなって相続が開始したにもかかわらず選任された遺言執行者が適切に行動してくれない場合には、相続人は相続財産を受け取ることができません。
そのため、どのような場合に遺言執行者を解任することができるのかが問題となります。
この点、相続人が自由に遺言執行者を解任することができてしまうと、当該相続人の望まない・都合の悪い遺言を執行されそうになったらその都度遺言執行者を解任できてしまうというおそれもあります。
いずれにしても適時・適切に遺言を執行することができなくなってしまいますので、その解任事由については遺言執行の趣旨に照らして限定的である必要があるでしょう。
遺言執行者を解任できる基準
民法には、遺言執行者を解任することができる事由・理由について以下のように規定されています。
遺言執行者がその任務を怠ったとき
まず遺言執行者が「その任務を怠ったとき」(任務懈怠)には遺言執行者を解任することができます(民法第1019条1項参照)。
遺言執行者は、選任されたときから「直ちにその任務を行わなければならない」とされ、任務を開始したときは遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければなりません(民法第1007条参照)。そして遺言執行者は、遅滞なく相続財産の目録を作成し相続人に交付しなければなりません(同1011条参照)。
このような民法上の職務に違反する場合には、遺言執行者には任務懈怠があると言えます。
また、遺言執行者が不正に相続財産を使い込んでいる場合や、病気によって任務を全うできない場合にも任務懈怠といえるでしょう。
その他正当な事由があるとき
任務懈怠に該当しない場合であっても、「正当な事由」がある場合には遺言執行者を解任できます。
遺言執行者は公正な立場で遺言を執行する必要があるものの、特定の相続人の利益を実現するために行動した場合には、遺言の趣旨に反することになります。
具体的には、共同相続人の一部が遺留分減殺請求を行使したことを知りながら、無断で受益相続人のために相続財産である預貯金などの払戻しをおこなったことは、遺言執行者の解任について「正当な事由」にあたると判断された裁判例があります(東京高裁決定平成19年10月23日)。
遺言執行者を解任する方法
遺言執行者を解任するためには、「利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求する」必要があります(民法第1019条1項参照)。
そのため、以下のような手続きに従って解任を請求していくことになります。
解任を希望する利害関係人が家庭裁判所の審判を申し立てる
遺言執行者の解任を希望する相続人や受遺者などの利害関係人のうち、代表者1名が家庭裁判所に対して解任の審判を求めて申立書を提出していきます。
管轄の家庭裁判所は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申立書や必要書類を揃えて提出する
必要書類はケースに応じて異なってくる可能性がありますので、家庭裁判所の書記官に確認することがおすすめです。
一般的に解任申立てのための必要書類は以下のようなものです。
- 申立書(解任事由を記載する)
- 申立人の戸籍謄本、住民票
- 遺言執行者の戸籍謄本、住民票
- 被相続人の除籍謄本、改正原戸籍謄本、住民票の除票
- 遺言書の写し、遺言執行者の選任審判書 など
家庭裁判所が解任の審判をすると、審判書謄本が申立人に交付され、解任手続きが完了することになります。
遺言執行者を解任した後はどうすればいい?
遺言執行者が解任されたあとの相続手続きの進め方としては、以下のような方法があります。
まず新たに別の遺言執行者を選任して進めていく方法です。
遺言執行者が解任されてしまうと、遺言執行をする人がいなくなります。相続人同士が利害が対立する場合には、家庭裁判所に新たな遺言執行者を選任してもらうのが良いでしょう。そのような場合には、解任の審判と同時に選任の審判を申し立てておくことがポイントです。
2つ目の方法は、相続人だけで相続手続きを進めていく方法です。
遺言執行者を選任する必要がない場合には、新たな遺言執行者を選任せずとも相続人だけで手続きが可能です。遺言執行者の選任が絶対に必要となるのは、遺言により「子の認知」をする場合と「相続廃除」をする場合です。
そのため「遺贈」や「遺産分割方法の指定」「寄与分の指定」については遺言執行者を選任せずとも相続人が遺言の内容を実行することができます。
まとめ
遺言執行者の職務内容に不満や不安がある場合には、解任を請求できる可能性があります。しかし、相続人は法律の素人の方がほとんどでしょう。
そのため、解任事由にあたるのか、新たな遺言執行者を選任する必要があるのかなどについても適切に判断することが難しいことが多いと思います。
したがって、そのため相続にまつわるトラブルについては些細なことでも弁護士に相談しておくことが、後々の紛争・遺恨を予防するためにも大事になります。
遺言の執行などに関してお悩みの方は是非、相続問題に精通している当事務所の弁護士に一度お話をお聞かせてください。
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