
横領罪とは、自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。横領罪には「単純横領罪」「業務上横領罪」「占有離脱物横領罪」の3種類があり、それぞれ構成要件や罰則が異なります。
「自分の行為が横領罪にあたるのだろうか」「どのような罰則を受けるのか」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、刑事事件に強い弁護士が、横領罪の種類ごとに構成要件と罰則をわかりやすく解説した上で、窃盗罪・背任罪との違いや弁護活動のポイントについてもご説明します。
- 横領罪の3つの種類と構成要件・罰則
- 横領罪と窃盗罪・背任罪・着服との違い
- 不起訴・早期釈放につながる弁護活動のポイント
なお、横領罪について早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。
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横領罪とは?3種類の構成要件と罰則
※2025年6月1日施行の改正刑法により、「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。本記事の法定刑は改正後の内容で記載しています。
横領に関する罪は横領罪(刑法252条)、業務上横領罪(刑法253条)、占有離脱物横領罪(刑法254条)の3つです。
以下、それぞれの構成要件や罰則を解説します。まずは3種類の横領罪の根拠条文と法定刑を一覧で整理します。
| 種類 | 根拠条文 | 法定刑 |
| 単純横領罪 | 刑法252条 | 5年以下の拘禁刑 |
| 業務上横領罪 | 刑法253条 | 10年以下の拘禁刑 |
| 占有離脱物横領罪 | 刑法254条 | 1年以下の拘禁刑、10万円以下の罰金または科料 |
単純横領罪
(横領)
第252条自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の拘禁刑に処する。
自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
出典:e-Gov法令検索
横領罪が成立する例としては、AがBから借りたビデオカメラを自宅に保管中、質屋に勝手に売却したというケースが典型例です。
このケースでは、AがBのビデオカメラを自宅に保管している点が「自己の占有する」にあたり、Bのビデオカメラという点が「他人の物」にあたり、質屋に売却したという点が「横領」にあたります。
このように、まず、「他人の物を占有」していることが横領罪(及び業務上横領罪)が成立するための前提となります。
次に、他人の物を占有しているということは、その他人からの信任を得ていること、すなわち、受託者(A)と委託者(B)との間に委託信任関係があることも横領罪(及び業務上横領罪)の成立要件です。
最後に、「横領」は横領罪、業務上横領罪、占有離脱物横領罪に共通する成立要件です。
横領罪、業務上横領罪は委託信任関係が成立要件であることから、同罪の「横領」とは占有者(A)が、所有者(B)の委託の意図に反して、本来所有者ができる行為を行うこと、と解されています。
売却、贈与、貸与などの法律上の行為のほか、着服、費消、拐帯(持ち逃げ)、隠匿、会社財産の支出、預金の引き出しなどの事実上の行為も「横領」にあたります。
横領罪の罰則は「5年以下の拘禁刑」です。
単純横領罪が実際に問題となった裁判例については「単純横領罪の判例を弁護士が解説」で詳しく紹介しています。
業務上横領罪
(業務上横領)
第253条業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の拘禁刑に処する。
出典:e-Gov法令検索
業務上横領罪の特徴は、横領罪の成立要件に「業務上」という要件が加わった点です。
すなわち、「業務上の占有者」であることが業務上横領罪では求められます。
業務とは人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う事務のことをいいます。
お金の管理、保管、集金などはすべてここでいう事務にあたり、繰り返し行ってきた場合はもちろん、たとえ経歴、経験が浅い場合でも、職務として将来、反復継続して行う予定がある場合はやはり業務にあたります。
以上より、業務上横領罪が成立する例としては、新聞社販売店Bに勤務し、新聞代金の集金等の業務に従事していたAが、客から集金した新聞代金を自己の財布に入れて着服横領したなどのケースが挙げられます。
業務上横領罪の罰則は「10年以下の拘禁刑」です。
業務上横領罪の構成要件や逮捕の可能性について詳しくは「業務上横領罪とは?逮捕されないケースと構成要件・事例・判例」で解説しています。
占有離脱物横領罪
刑法では「遺失物等横領罪」と書かれていますが、被疑者を検察に送致するときに「占有離脱物横領罪」という名称が使われており、どちらも刑法254条に規定されている同一の犯罪です。
※この記事では「占有離脱物横領罪」で統一します。
(遺失物等横領)
第254条遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
出典:e-Gov法令検索
遺失物、漂流物は「その他占有を離れた他人の物(=占有離脱物)」の例示で、遺失物、漂流物を含めて占有離脱物と表現されることもあります。
「占有離脱物」とは、物の持ち主(占有者)の意思によらず、かつ、窃盗、詐欺、恐喝などの犯罪行為によらないで持ち主の手元から離れ、いまだ誰の占有にも属していない他人の物のことをいいます。
たとえば、持ち主が電車や公衆トイレ内に置き忘れた財布などがこれにあたります。
もっとも、持ち主の意識や現場の客観的状況から、持ち主の手元から離れておらず、持ち主の物だと評価できる場合は占有離脱物とはいえず、その物を勝手に持ち去った場合は占有離脱物横領罪ではなく窃盗罪(刑法235条、10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)に問われてしまう可能性があります。
また、占有離脱物という性質上、受託者と委託者の存在が不要であること、すなわち、委託信任関係が占有離脱物横領罪の成立要件でないことが横領罪や業務上横領罪と異なる点です。
したがって、占有離脱物横領罪の「横領」については、委託者の委託の意図を考慮する必要がないことはいうまでもありません。
占有離脱物横領罪の罰則は「1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料」です。
占有離脱物横領罪の成立要件や窃盗罪との区別について詳しくは「占有離脱物横領罪とは?遺失物横領・窃盗との違いや時効を解説」をご参照ください。
横領罪と窃盗罪・背任罪・着服との違い
横領罪は、窃盗罪や背任罪、着服といった似た概念と混同されやすいため、それぞれの違いを整理します。
窃盗罪との違い
横領罪と窃盗罪の違いはどこにあるのでしょうか。
窃盗罪は「他人の占有を侵害して自己の占有下に移転する」ことが実行行為とされています。したがって占有侵害行為と占有移転行為が存在し、財物の占有は被害者にあることが前提です。
これに対して横領罪は、「自己の占有する他人の物」が犯罪の客体となるため、既に財物の占有は自分にあります。そのため横領罪には占有侵害と占有移転の行為がありません。
他人の占有が侵害されていない点で横領罪は窃盗罪よりも法定刑が軽く規定されています。
以上が、窃盗罪が「移転罪」、横領罪が「非移転罪」と呼ばれる理由です。
窃盗罪そのものの構成要件や刑罰については「窃盗罪とは?構成要件や刑罰は?窃盗の示談・逮捕に強い弁護士が解説」もあわせてご覧ください。
背任罪との違い
背任罪とは、「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加え」た場合に成立する犯罪です。
そこで「他人の事務処理者」が「自己の占有する他人の財物」を不法に処分した場合には横領罪と背任罪のいずれが成立するのか問題となります。
両罪の区別を「委託の趣旨に反した物の利用意思」の有無で判断するのが通説です(これを領得行為説といいます)。
すなわち自己の懐に入れていれば横領罪が成立し、自分に利益がなくても会社に損害を与えた場合には背任罪が成立すると考えることができます。
背任罪の成立要件や時効について詳しくは「背任罪とは?成立要件・時効・横領罪との違いをわかりやすく解説」もあわせてご確認ください。
着服との違い
着服とは、業務などで預かっている他人の金品を、こっそり使い込むなどして自分の物にしてしまう行為を指す言葉です。
もっとも、着服は刑法に定められた正式な罪名ではなく、その実態に応じて横領罪や業務上横領罪などとして処罰されることになります。
着服と横領の具体的な違いや、着服が発覚した後の流れについては「着服と横領の違いは?発覚後の流れと取るべき対応を解説」で詳しく解説しています。
横領罪の弁護活動
横領罪でメインとなる弁護活動は以下のとおりです。
被害弁償、示談交渉
横領罪の成立を認める場合は、被害弁償、示談交渉がメインの弁護活動です。
横領罪の場合、加害者の刑事処罰よりもお金の返済を希望する被害者も多いです。
加害者に刑事処罰を科してもお金が返ってくるわけではなく、特に横領罪や業務上横領罪の場合は、もともと被害者と加害者は信頼し合っていた仲なわけですし、捜査機関に告訴状や被害届を提出して刑事事件化し、逮捕・刑事裁判となって問題が公になることを避けたいというのが被害者の本音でしょう。
一方で、被害者が刑事事件化を望むケースもあり、加害者側は早めに動くことが重要です。横領罪の公訴時効は種類によって異なり、単純横領罪で5年、業務上横領罪で7年、占有離脱物横領罪で3年です(刑事訴訟法250条2項)。時効の起算点や民事上の時効については「横領罪の時効は何年?いつから進行する?民事の時効も解説」で解説しています。
問題が刑事事件化する前に被害弁償し示談が成立すれば、捜査機関に告訴状や被害届を提出されず、捜査機関の逮捕や刑事処分(起訴、不起訴)はもとより、起訴された後の刑事裁判や刑罰、前科を受けるおそれがなくなります。
また、万が一、刑事事件化した場合でも、起訴される前に被害弁償、示談が成立すれば、不起訴となる可能性が非常に高くなり、その後の刑事裁判、刑罰、前科を受けるおそれがなくなります。
横領事件の示談金の目安や交渉のポイントについては「業務上横領の示談金相場は?示談を成功させる3つのポイント」で具体的な方法を紹介しています。
身柄拘束に関する意見書の提出、不服申立て
横領罪で逮捕された場合は、捜査機関に対しては身柄拘束の理由や必要性がなく、早期に釈放すべき旨の意見書を提出します。
また、裁判所に対しては勾留の理由や必要性がなく検察官の勾留請求を許可すべきではない旨の意見書を提出します。
万が一勾留された場合は、裁判所の判断に対して不服を申し立てて早期釈放に努めます。
被害者に被害届、告訴状が提出される前の、横領罪が捜査機関に発覚する前の段階では、前述の被害弁償、示談交渉を中心に取り組み、示談を成立させて逮捕の回避を目指します。
なお、横領罪は初犯で被害弁償が済んでいる場合には、不起訴や執行猶予といった比較的軽い処分となることもあります。もっとも、業務上横領で被害額が高額なケースなどでは実刑が科されることもあります。初犯の場合の量刑の傾向については「業務上横領の初犯は執行猶予?それとも実刑?量刑傾向を解説」で紹介しています。
検察、裁判官へ無罪主張
横領罪の成立を認めない場合は、横領罪の成立要件を争います。
起訴前は、検察官に対して横領罪の成立要件を満たしていないことを指摘し、起訴後は刑事裁判で裁判官に対して訴えていきます。
横領罪への対応は、示談交渉から刑事裁判での主張まで事案の見通しによって幅広く分かれます。弁護士への相談の進め方や弁護士費用の目安については「横領に強い弁護士に無料相談|弁護士費用と選び方」もあわせてご確認ください。
横領罪でお困りの方は弁護士にご相談ください
横領罪は単純横領罪・業務上横領罪・占有離脱物横領罪の3類型に分かれ、成立要件や法定刑がそれぞれ異なります。いずれの場合も、早い段階で被害弁償や示談交渉に着手することが、不起訴処分の獲得や早期釈放につながる重要なポイントです。
横領罪は被害者との信頼関係の中で生じる犯罪であるため、当事者同士での交渉は感情面から困難になりがちです。弁護士が間に入ることで、冷静かつ適切な条件での示談成立が期待できます。
「すでに被害者から返済を求められている」「警察から連絡が来ている」など、お一人で対応に悩まれている方もいらっしゃるかもしれません。精神的な負担も大きい状況かと思いますが、早めに専門家に相談することで、今後の見通しを立てることができます。
当事務所は刑事事件に注力しており、横領罪を含む財産犯の弁護実績も豊富です。全国どこからでもご利用いただける無料相談を実施しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

