成年後見人の横領は親族間であっても逮捕される?
「成年後見人として預かっていたお金を使い込んでしまった…成年被後見人とは親族関係があるのだがその場合でも横領の罪に問われるのだろうか…」

このような疑問をお持ちではないでしょうか。

結論から言いますと、成年後見人と成年被後見人が親族同士であったとしても業務上横領罪が成立しますし、親族間の犯罪に関する特例を適用して刑を免除しないというのが最高裁判例の立場です

以下では、横領事件に強い弁護士が上記内容について詳しく解説するとともに、

  • 成年後見人が横領で逮捕される要件
  • 成年後見人が横領で逮捕された不正事例
  • 逮捕回避・不起訴獲得のために成年後見人がすべきこと

についても合わせて解説していきます。

記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。

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成年後見人が横領した場合の罪は?

はじめに、成年後見人が横領した場合に成立しうる罪について解説します。

成年後見人とは?

まず、成年後見人とは、日常生活で必要な判断能力を欠いている成年(18歳以上の人のことで、成年被後見人といいます。)のために、財産を管理したり、代理で手続きを行ったりする人のことです。

成年後見人は、法律で定める欠格事由に該当する人以外の人なら、誰でも成年後見人になる資格を有しています。通常、成年後見人には成年被後見人の親族がなることが多いですが、弁護士、司法書士、行政書士などの親族以外の法律の専門家がなる場合もあります。また、成年後見人には人のみならず法人でもなることができます。

成立する罪と罰則

この成年後見人が横領した場合は業務上横領罪に問われる可能性が高いです

業務上横領罪は「業務上自己の占有する他人の物を横領した」場合に問われる罪です。業務上横領罪における「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて反復・継続して行われる事務のことをいい、成年後見人として行う仕事もここでいう業務にあたります。

また、反復・継続して、とありますが、成年後見人として一定期間、職を勤める必要はなく、職に就いたばかりでも、これからその可能性があれば業務にあたることになります。そのため、成年後見人の職に就いたばかりの人が成年被後見人の預金を勝手に使い込んだ場合も業務上横領罪に問われる可能性があります。

業務上横領罪の罰則は10年以下の懲役です。

業務上横領罪とは?逮捕されないケースと構成要件・事例・判例

成年後見人が親族でも横領したら罪になる?

刑法244条には「親族間の犯罪に関する特例」の規定が設けられています。

(親族間の犯罪に関する特例)

第244条
1.配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2.前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3.前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

刑法第244条 - Wikibooks

規定の内容は「窃盗罪、不動産侵奪罪の既遂又は未遂の罪を犯した場合でも、その罪の被害者が配偶者、直系血族又は同居の親族の場合は、刑を免除する」というものです。

「法は家庭に入らず」という考え方、すなわち、親族間の内部的なことは、それが犯罪であっても、国家が積極的に介入することを差し控え、親族間相互の規律に委ねる方が親族間の秩序維持のために望ましいことであり、刑事政策上も妥当であるという考え方に基づくものです。

そして、この刑法244条は刑法255条で横領の罪にも準用されていることから、親族罪の業務上横領罪についても刑が免除されるのが基本です。もっとも、判例(最高裁判所平成24年10月9日決定)は、成年後見人が親族の場合の業務上横領罪には刑法255条は適用されない、すなわち、親族間の犯罪に関する特例を適用して刑を免除しない、との判断を示しています。

これは、成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであることから、成年後見人が成年被後見人の財産を横領した場合は、親族間の内部的な解決に委ねるのではなく、国家が積極的に介入し、刑罰をもって厳正に対処すべきとの考え方に基づくものです。

成年後見人による横領と逮捕について

以上のとおり、たとえ親族が成年後見人だったとしても、成年被後見人の財産を横領すれば業務上横領罪に問われる可能性があります。では、親族が業務上横領罪にあたる行為をした場合、逮捕されてしまうのでしょうか?

逮捕される要件

この点、親族が業務上横領罪にあたる行為をしたからといって、必ず逮捕されるわけではありません。逮捕されるには「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」の要件が必要で、事件によってこのいずれかの要件を満たさない場合もあるからです。

逮捕の理由とは、罪を犯したと疑うに足りる客観的・合理的な理由があることをいいます。逮捕の必要性とは、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがあることをいいます。逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがあるかどうかは、事件の悪質性などから判断されます。

たとえば、長期間にわたって横領を繰り返し、多額の金銭を着服していたような事件では実刑の可能性もあるため、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがあると判断されやすく、逮捕される可能性が高いといえます。

逮捕された後の流れ

横領が発覚して警察に逮捕されると、警察から弁解録取・取り調べを受け、逮捕から48時間以内に検察官に事件と身柄が送致されます(送検)。検察官は送致から24時間以内に被疑者を釈放するか勾留請求するかを判断しなくてはなりません。被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合や事件の証拠を揃えるのに引き続き捜査や取り調べの必要があると検察官が判断した場合には裁判官に勾留請求します。

裁判官が検察官の勾留請求を許可した場合には原則10日間、やむを得ない事情がある場合には最長10日間(つまり、最大で20日間)、身柄を拘束されます。この勾留期間中に、検察官が刑事処分(起訴または不起訴)を決定します。正式起訴されて被疑者から被告人となると、原則2か月間勾留され、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどの理由がある場合には1ヶ月ごとに更新されます。もっとも、起訴後に一定の条件を満たして(重大犯罪でないこと、常習性がないこと、逃亡・証拠隠滅のおそれがないことなど)保釈保証金を納付すれば身柄拘束から一時的に解放されることもあります。

そして起訴されてからおよそ1ヶ月後に第一回公判が開かれ、数回の公判を経て判決が下ります。業務上横領罪には罰金刑がありませんので、有罪判決となれば懲役刑を科されますが、執行猶予付き判決となれば刑務所に収監されることなく社会生活を送れるようになります。もっとも有罪判決であることに変わりはありませんので前科はついてしまいます。

成年後見人が逮捕された不正事例

それでは、ここで、親族が成年後見人だった場合に逮捕された実例をご紹介します。

息子名義の口座から合計3000万円を引き出して横領

未成年後見人の父親が、病死した元妻が残した生命保険金3000万円を受け取った中学生の息子(未成年被後見人)名義の口座から、28回にわたり、3000万円を引き出して横領した(判決内容:懲役3年6月)。

妻の保険金を遊興費等に費消して横領

成年後見人である夫が、成年被後見人である妻の病状が回復しないことに絶望感を抱き、妻の保険金を酒や遊興費、車代などに費消して横領した(判決内容:懲役2年、罰金10万円)。

孫の預金1500万円を着服して横領

未成年後見人である祖母らが、15歳の孫の預金1500万円を着服して横領した。孫は「祖母らに処罰を求める気持ちはまったくない。」などと発言(判決内容:懲役3年 執行猶予3年)。

弁護士が成年被後見人の預金を引き出し横領

成年後見人の弁護士が、自らの生活費や事務所経費等に充てるため、成年被後見人の80代の女性の預金を、6年の間の16回にわたり引き出し、合計743万円を横領した(判決内容:懲役2年6月 執行猶予5年)。

逮捕回避・不起訴獲得のためにすべきこと

このように、親族が成年後見人でも逮捕されたり、起訴され刑事罰を科される可能性があります。そこで、ここでは、逮捕や起訴を回避するためにやるべきことを解説したいと思います。

事実を認め、謝罪する

まずは、事実を認め、謝罪することです。

被害者とすれば、なぜ横領したのか、どういう経緯で横領したのか、どういう手口で横領したのか、金額はいくらなのか、など事実関係を洗いざらい正直に話して欲しいという気持ちです。まずは、その気持ちに正直に応えることが必要です。

横領したのに頑なに否認したり、お茶を濁すような発言に終始していると被害感情を悪化させ、後述する示談交渉に応じてくれなくなり、自ら不利な結果を招いてしまうおそれがありますので注意が必要です。

そして、事実関係を記憶のある限り話したら、次は謝罪を申し入れます。状況により応じてくれない可能性もありますが、まずは謝罪の意思があることだけでも伝えるとよいでしょう。謝罪の方法としては直接会って謝罪するか、謝罪文を書いて送るというやり方もあります。

示談を成立させる

次に、はやめに示談を成立させることです。

被害者(※)が捜査機関(警察・検察)に被害届や告訴状を提出する前に被害者と示談交渉し、示談を成立させることができれば、被害者から捜査機関に被害届や告訴状が提出されず、捜査機関に事件が発覚するのを防ぐことができます

捜査機関に事件が発覚しなければ、逮捕されることはありませんし、捜査機関から出頭要請を受けて厳しい取調べを受けたり、起訴され刑事裁判にかけられ、裁判で刑事罰を科される心配もなくなります。

このように、被害者が捜査機関に被害届や告訴状を提出する前に示談できれば、最大限のメリットを得ることができるため、できる限り、はやめに示談交渉に向けて動き出すことが必要です。

また、被害者がすでに捜査機関に被害届や告訴状を提出している場合でも示談には大きなメリットがあります。示談すれば被害者に被害届や告訴状を取り下げていただけるため、検察に送検前であれば送検が見送られ、送検後は早期釈放(身柄拘束された場合)や不起訴につながる可能性があります

※ここでいう「被害者」とは、新たに選任された成年後見人を指します。横領の被害者は被後見人ですが、成年後見人が横領した場合には新たに選任された成年後見人が被害者に代わり捜査機関に被害申告をしたり、示談の相手となります。

成年後見人が横領した場合に弁護士に依頼するメリット

業務上横領罪の疑いをかけられないか不安な場合は一刻もはやく弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。弁護士に刑事弁護を依頼するメリットは次のとおりです。

被害者が交渉のテーブルについてくれる

まず、被害者(新たに選任された成年後見人)が交渉のテーブルについてくれることです。

そもそも、謝罪するにも、示談交渉するにも被害者が交渉のテーブルについてくれなければ話を先に進めることができません。

ところが、加害者が自ら交渉をもちかけても交渉を拒否されるか、感情の対立から交渉をスムーズに進めることが難しいことが想定されます。

一方、弁護士であれば謝罪や示談交渉に応じてもよいという被害者も多く、スムーズに交渉を進めることが可能となります。また、依頼者の代わりに弁護士が交渉にあたりますから、直接交渉する精神的な負担が減ることも大きなメリットといえます。

示談が成立する可能性が高くなる

次に、示談が成立する可能性が高くなることです。

前述のとおり、直接交渉しようとすると、交渉そのものができないか、スムーズにいかず頓挫する可能性が高いです。

一方、弁護士は交渉のプロですし、第三者の立場から冷静に交渉を進めることが可能です。その結果、示談が成立する可能性も高くなるといえるでしょう。前述のとおり、示談が成立すれば、逮捕回避や不起訴獲得などのメリットを得られやすくなります。

弊所では、被後見人側との横領事件の示談交渉を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、親族の財産を着服してしまい横領の罪で逮捕される可能性のある方や、既に逮捕されてしまった方のご家族の方は弁護士までご相談ください。

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