老人や子供といった弱者の目線に立って無条件で優しさを示すことは美徳であり、それを自然とできる人は心の綺麗な優しい人です。
しかしながら、その優しさが仇となり、時に高齢者をストーカーに変貌させることもあります。
実際、弊所の弁護士にも、「老人ストーカーのつきまといで心身ともに疲弊しています。ご近所の方ですので警察沙汰にまではしたくありません。助けて下さい」といった相談も少なからずあります。
そこでこの記事では、ストーカーに強い弁護士が以下の項目について解説していきたいと思います。
- 高齢者ストーカーの実態
- 高齢者がストーカーをしてしまう理由
- 高齢者ストーカーの被害事例
- 高齢者ストーカーの予防対策
- 高齢者ストーカー被害への対処法
老人からのつきまとい行為でお困りの方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には、弁護士までご相談ください。
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高齢者ストーカーの実態
ストーカー加害者に占める高齢者の割合
ストーカー事件というと、婚姻適齢期にある若い男女の間の犯罪であるというイメージを抱いている人も多いと思います。しかしストーカー事件のデータを見てみると若者の犯罪であるとも言い切れない現状がわかります。
警視庁生活安全課総務課ストーカー対策室の公式発表によると、令和3年におけるストーカー事案で検挙された件数は、前年度から減少したものの「1102件」にのぼります。
ストーカーの加害者1102人のうち、年齢不明の46人を除いた1056人は年齢別では、20歳代が278人(26.3%)と一番多く、次いで30歳代が262人(24.8%)となっています。
一方60歳以上のストーカー加害者についても98人と全体の9.2%と決して少なくない割合を占めているのです。
何歳から高齢者とするか、という高齢者の定義については議論があるところですが、国連やWHOなど各種機関も60代から高齢者と位置付けていることが多いです。
そのため60歳以上を高齢者であると考えると、ストーカー加害者のおよそ1割程度は高齢者であると考えることができるのです。
被害者は若い女性とは限らない
ストーカーの被害者の性別については、全体の79.9%の被害者が女性(881人)で、20.1%の被害者が男性(221人)です。
ストーカー被害に遭うのは女性ばかりでなく、全体の約2割は男性もストーカー被害に遭っていることが分かります。
ストーカーの被害者の年齢については、多い順に20歳代の409人、30歳代の266人であり、20歳代と30歳代を合わせると全体の約61%を占めることになります。
他方で、50歳代以上のストーカー被害者も118人にのぼり、全体の10%近くを占めていることが分かります。
したがって、ストーカー事件の被害者は、20〜30代の女性だけではないと言うことができます。
以上のデータからストーカー行為の被害者には、女性のみならず男性も、さらに若い方だけでなく年配の方も一定程度含まれていることが分かります。
高齢者がストーカーをしてしまう理由
それでは、高齢者はなぜストーカー行為をしてしまうのでしょうか。
いくつかの理由が考えられますが、まず単純に全体人口に占める高齢者の割合が高齢社会に伴い増加したからだと考えられます。そして社会に出て活動する機会が減る高齢者が大量に増加したことで、貧困・人間関係の希薄化という問題も後押しした結果、強い孤立感を抱えている高齢者が増加したと考えられます。
そのため、同じ生活圏にいる異性に優しく接してもらうと、その人物に強く執着してしまうという傾向が高齢者に現れるようになります。配偶者に先立たれた、または仕事を定年退職した寂しさが引き金になることもあるため、若い異性ではなく同世代の異性につきまとい等を行うようになってしまう高齢者もいます。
現在の団塊の世代以降の高齢者は、厳しい受験戦争を経て、一度就職した勤め先に定年まで勤めあげる終身雇用を経験してきた人がほとんどです。
そのため仕事一筋で頑張ってきた企業戦士の場合には、退職後には友人・知人も少なく趣味もなく、日々の生活に寂しさ・孤独感を抱いている人が多いのです。
したがって、上記のような事情が高齢者がストーカーに転じてしまう理由であると考えられます。
高齢者ストーカーによる被害事例
高齢の男性から尾行されつきまとわれた事例
この事例は、年配の女性が同僚であった高齢男性からつきまとわれた事例です。
以前勤めていたパート先で同僚であった男性とは職場で少し会話する程度の関係だったものの、家の近くで待ち伏せされたり、付近をうろつかれたりして偶然を装って話しかけてくるということが複数回発生するようになりました。
女性も最初は偶然かと思っていたものの、何度も繰り返し男性が目の前に現れるようになったことで恐怖を感じるようになりました。つきまとい行為をやめてほしかったもののどうしていいか分からず悩んでいたため、役所の無料法律相談で弁護士に相談することにしました。
高齢の男性に好意を抱かれ、わいせつな行為をされた事例
この事例は訪問介護をしている年配の女性が、訪問先の高齢男性に好意を抱かれ、抱き着かれたり、強引にキスしようとしてきたり、身体を触ったりなどわいせつな行為を繰り返しされた事例です。
さらに訪問介護がない曜日も面会を要求してきたり交際を迫ったりするようになったため、女性はすっかり精神的に参ってしまい訪問介護の仕事を離れざるを得なくなりました。
高齢男性の上記のような行為を許せないと思った女性は、弁護士に対応を相談することにしました。
大量の留守番電話を吹き込んできた事例
この事例は高齢男性に大量の留守番電話が連日吹き込まれた事例です。
近所に住む高齢の男性は、被害女性がはたらいている飲食店の常連でした。接客業であるため女性はいつも男性に笑顔で接客していましたが、ある時自宅の固定電話に留守電が大量に吹き込まれるという事件がおきました。会いたいや折り返し電話をかけてきてほしいなどと要求してきているものの女性は拒否していました。
しかし、被害者が拒否しているにもかかわらず4日間で50件を超える留守電を吹き込まれたことに恐怖を感じた女性は、警察と弁護士に相談することにしました。
監視していると告げ、汚物を送付された事例
この事例は監視しているという趣旨のことを告げられ、自宅に汚物を置かれたという事例です。
この被害者は自宅に、被害者の行動や服装などを詳細に記載したり、「いつも見ている」という内容を記載したりした手紙を何度も受け取りました。また動物の糞と思われるものが自宅玄関先に置かれることが何度も発生しました。
生活圏の環境に身の危険を感じた被害者は怖くなり、警察や弁護士に相談しました。捜査の結果、女性が受付事務をしている病院に通院している高齢の患者の仕業だということが判明しました。
職場への電話、ワン切り・ワンコールなどされた事例
この事例は、職場へ電話され、なんどもワン切りの被害に遭った事例です。
職場の代表電話に対して被害者宛の電話がかかってきて、出ると切れるという出来事が何度も発生しました。さらに自宅には「死ね」「殺す」など危害を加える旨を伝える手紙が送付されたことで、いたずらの域を超えたものだと感じ恐怖を抱くようになりました。
いつか襲われるのではないかと不安になった被害者は、警察・弁護士に相談することにしました。結果的に被害者が訪問看護をしている利用者の配偶者による犯行であることが明らかになりました。
切手の貼られていない手紙が自宅ポストに何度も投函された事例
これは、ある女性の自宅郵便ポストに切手の貼られていない手紙が何度も投函された事例です。
切手が貼られていないことから何者かが自宅の郵便ポストまで持参して投函していることは明らかでした。一見すると男性が書いた文章に見え、また卑猥・わいせつな内容が多数記載されていることから被害者は気持ち悪くなりました。
見ず知らずの男性が自宅敷地内に何度も立ち入っていると考えると怖く、弁護士・警察に相談することになりました。結果的に同じ地区に住む高齢の男性による犯行だとわかりました。
1日の出来事を何度もメールで伝えてくる事例
これは、知人の高齢男性から1日に何度も電子メールを送りつけられた事例です。
被害女性は、加害男性と近所付き合いもあることから日常会話やメールアドレスを知っている間柄でした。あるとき、男性から頻繁にメールが送られるようになり、何気なく返信をしました。その後メールの頻度がどんどん増えて、結果的には1日の出来事をその日に40件近くメールで一方的に報告してくるようになりました。非常に迷惑しているので困ったこの女性は弁護士に相談して対応を依頼することにしました。
高齢男性による乱暴な言動に晒された事例
この事例は、近所に住む高齢男性から同性の男性に対して乱暴な言動を繰り返し行われたという事例です。
高齢男性は、被害男性のゴミの出し方が気に入らなかったことを契機に、ことあるごとに大声で「コノヤロー」「バカヤロー」など怒鳴りつけたり、誹謗中傷するビラを自宅前に貼り付けたりしました。また自宅前で嫌がらせのように車のクラクションを鳴らす行為を何度も繰り返ししてきました。
日常生活を送ったり通勤したりする際にも支障がでるレベルであるとして、耐えかねた被害男性は、相手の行為をやめさせるために弁護士に相談して対応を依頼することにしました。
高齢者ストーカーの被害に遭わないための対策
高齢者ストーカーの被害に遭わないようにしておくためには、勘違いさせるような言動は控えましょう。気持ちがないのに分け隔てなく親切な態度をとったり、ボディタッチを多用したり、ほめたたえて優しくしたりするのは控えるべきでしょう。
当然、高齢者というのは長く生き社会にたくさん貢献してきた方々ですので、敬うべき存在です。しかし高齢者のストーカーが増えて問題になっているのも事実です。そのため老人だからといって安心して思わせぶりな態度や過度に親切することは、ストーカー被害に遭うリスクに繋がることをしっかりと認識しておきましょう。
高齢者ストーカーの被害に遭った時の対処法
公的な相談窓口に相談する
ストーカーなどの犯罪被害に遭われた方の支援を目的に、国や市区町村が相談窓口を設置していますので、いきなり警察への相談は気が引けると思われた方はご活用ください。
警察に相談する
高齢者によるストーカー行為を一刻も早くやめさせたいとお考えの方は、警察に相談しましょう。
そのうえで警察に動いてもらう場合には、警察本部長等から高齢者ストーカーに対し、ストーカーをやめるよう「警告」を出してもらうことができます。また、都道府県公安委員会から「禁止命令」を出してもらうこともできます。さらに、警告や禁止命令以外にも、高齢者ストーカーの処罰を求めることもできます。ストーカー行為をした者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金(禁止命令に違反してストーカー行為をすれば2年以下の懲役または200万円以下の罰金)に処せられます。
なお、警察に動いてもらう前にまずは今後の対応などについてアドバイスをもらいたい場合には、警察相談専用電話#9110に相談しましょう。電話をかけた地域を管轄する警察本部等の相談窓口に繋がり、相談員から適切なアドバイスがもらえます。もっとも、ご自身やご家族の身に危険が及ぶ可能性が高いケースでは迷わずに110番通報しましょう。
弁護士に相談する
高齢者によるストーカー行為に悩まされている方は、泣き寝入りせずまずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
高齢者ストーカーは被害者の近所や生活圏内に住んでいることが多く、今後も顔を合わせる機会があることを考えれば警察沙汰にまではしたくない方も多いと思われます。この点、弁護士であれば極力角が立たないように高齢者ストーカーに交渉・警告をすることができます。
弊所では、高齢者によるストーカー問題を解決してきた実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、極力穏便に問題解決したい場合には弁護士までご相談ください。
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