
「婚約破棄を理由に訴えられたけれど、言われた額を全部払うしかないのか」。裁判所から訴状が、あるいは家庭裁判所から調停(裁判所での話し合い)の申立書が届き、そんな不安を抱えていませんか。
訴えられたからといって、相手の言い値をそのまま支払うことになるとは限りません。婚約の成立も、破棄に至った事情も、額の妥当性も、これから争える点です。
ただし、争える時間には限りがあり、反論の書面(答弁書)の提出期限と最初の期日(裁判所に呼ばれる日)を確かめるのが出発点です。
内容証明や請求書などで慰謝料を請求された段階の方も、届いた書面と証拠を手元に残し、相手への連絡を控えることから始めてください。
この記事では、男女トラブルの解決実績が豊富な弁護士が、次の点を解説します。
- 婚約破棄で訴えられたらまずやるべきこと
- 訴訟の進み方と和解で終える方法
- 慰謝料の支払いを左右する2つの争点
- 相手の請求額が妥当かどうかの見分け方
お読みいただくと、答弁書の期限までに何を確かめ、どこを争うかを整理できます。
なお、訴訟への対応にお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。
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婚約破棄で訴えられたらまずやるべき対応
婚約破棄で訴えられた後に書面を無視・放置すれば、相手の主張どおりの判決が出て、給与や預金を差し押さえられかねません。まずは書面を読み、残された時間を把握してください。
答弁書の提出期限と第1回期日を確認する
婚約破棄の訴状は、受け取りを拒んでも裁判所が別の方法で届けるため、手続きは止まりません。
確認すべき日付は、答弁書の提出期限と、第1回口頭弁論期日(最初に法廷が開かれる日)の2つです。いずれも訴状と一緒に届く呼出状などに書かれており、提出期限は第1回期日の1週間ほど前に設定されるのが一般的です。
家庭裁判所から調停の申立書が届いた場合も、押さえるのは指定された期日と書面の提出期限です。
期限内に答弁書を提出する
答弁書は、訴えられた側を守るための書面です。
書く内容の中心は、認否(相手が訴状に書いた事実を、認める・争う・知らないに仕分けること)と反論の柱です。婚約は成立していない、破棄はやむを得なかったといった骨格を示せば足ります。
期限内に答弁書を出しておけば、第1回期日に出頭できない場合でも、裁判所は書いた内容を法廷で述べたものとみなすことができます(民事訴訟法158条)。
反対に、答弁書も出さず第1回期日にも欠席すると、相手が主張した事実を認めた(自白した)ものとみなされるのが原則です(同法159条1項・3項)。
答弁書は本人が作っても構いませんが、争うべき事実を一度認めると後から覆すのは簡単ではないため、期限が迫っているなら早めに弁護士へ連絡を取ってください。
正当な理由を裏づける証拠を保全する
婚約破棄がやむを得なかったこと(正当な理由)を示す資料は、早めに手元にまとめてください。審理では、記憶だけでなく形に残った資料が判断材料になります。
たとえば次のような資料です。
- 異性関係:第三者との関係がうかがえる画像やLINE
- 重大な詐称:事実と違う説明を受けたとわかる記録
- DV・モラハラ:けがの写真、診断書、暴言の録音
相手へ謝罪や言い訳のメッセージを送ると、その文面が相手の証拠に使われるおそれがあります。どこを争うかを決めるまで、連絡は控えてください。
早い段階で弁護士に相談する
訴えられた内容は反論の余地がないように見えても、事実の見立てが一方的だったり、根拠の乏しい額が積まれていたりすることがあります。
弁護士に依頼すれば、答弁書の作成から期日への出席、証拠の提出まで、手続きの大部分を任せられます。相手に弁護士がついているなら、法律の専門家と一人で争うことになるため、なおさら依頼を検討する価値があります。
弁護士に依頼するメリットや費用、相談の窓口は「婚約破棄の悩みは弁護士に相談|依頼する5つのメリット」で説明しています。
和解で終える選択肢も視野に入れる
第1回期日の後は、おおむね1〜2か月に1回のペースで期日が開かれ、双方が書面と証拠を出し合います。
双方が最後まで争って判決に至る場合、第一審だけで1年を超えることは珍しくありません。
ただ、婚約破棄の訴訟は判決で終わるとは限らず、審理の途中で双方が条件に納得すれば、訴訟上の和解で終えられます。判決との違いは、額や支払方法を当事者の合意で決められる点です。
和解では、今後は互いに請求しないという清算条項を必ず入れてください。分割払いや口外しない約束を加えることもできます。
早く終わらせたいからといって、言われるまま先に示談金を支払うのは避けてください。払う場合は、額を確かめ、清算条項と訴えの取下げを盛り込んだ合意書を交わしてからにするのが安全です。
婚約破棄の賠償責任を左右する2つの争点
婚約破棄で訴えられた場合の争点は、主に2つです。婚約が成立していたのか、破棄にやむを得ない事情があったのか。婚約の成立が認められないか、破棄がやむを得なかったと評価されれば、慰謝料の請求は退けられます。
婚約の成立を立証できるかどうか
婚約(婚姻予約)は、将来結婚するという当事者どうしの約束で、正当な理由なくこれを守らないことを婚約不履行といいます。
この約束が成立していたことは、訴える側である原告が立証しなければなりません。相手が裏づけを出せなければ、請求は通りません。
口約束でも成立しうる一方、争われた場合は、外から見てわかる次の事情で判断されます。
- 婚約指輪を購入していたか
- 結婚式場の下見や予約をしていたか
- 双方の両親への挨拶や顔合わせを済ませていたか
- 結納や新居の準備、同棲を進めていたか
婚約が言葉だけの場合は「口約束で婚約は法的に成立する?婚約破棄の慰謝料は請求できる?」で詳しく取り上げています。
また、話し合いで婚約解消に至っていたなら、一方的な破棄にはあたらないと主張できます。
破棄に正当な理由があったかどうか
婚約の成立が認められる場合でも、破棄にやむを得ない事情があれば慰謝料の支払義務は生じません。ただし、結婚準備の費用は、事情によって双方で分担すべきとされることがあります。
正当な理由にあたるかの基準は、夫婦として生活していく信頼関係が壊れたといえる事情があったかどうかです。例は次のとおりです。
- 相手に浮気(第三者との性的な関係)があった
- 相手から暴力や、精神的に追い詰める言動を受けた
- 収入や経歴、借金など、結婚の決め手になる点で相手から事実と違う説明を受けていた
反対に、気持ちが冷めた、性格が合わないといった漠然とした理由だけでは、正当な理由と評価されにくいのが実情です。やむを得ない事情がどう判断されたかは「婚約破棄の裁判例25選|破棄の理由の実例や判決金額が分る」で紹介しています。
正当な理由で支払義務が生じない場合は「婚約破棄で慰謝料請求された!払わなくていいケースと対処法」でまとめています。
なお、訴えられた側でも、破棄の原因が相手側にあるときは、訴訟の中で請求し返す(反訴)こともできます。
相手の請求額は妥当か?内訳と減額につながる事情
訴えられた側に届く訴状には、求める損害額を示した「請求の趣旨」と、その根拠を書いた「請求の原因」が並んでいます。
請求の内訳を慰謝料と財産的損害に分けて見る
婚約破棄の損害賠償請求で問題になるのは、性質の異なる2種類の損害です。
一方は精神的な苦痛に対する慰謝料、もう一方は実際に出ていったお金などの財産的損害です。後者には、新婚旅行や挙式のキャンセル料、新居にかけた費用などが入ります。
確かめたいのは、その支出が結婚を前提としたもので、破棄によって無駄になったといえるかどうかです。
家財道具や嫁入り道具の購入費用は、品物そのものが買った側の手元に残るため、そのまま損害と認められるとは限りません。結婚しなくても日常生活で使えるものか、その結婚のために特別にそろえたものかといった点で、判断が分かれます。
相手が結婚を理由に勤務先を退職していた場合、失った給与相当額(逸失利益)が請求に含まれることもあります。徳島地方裁判所昭和57年6月21日判決は、これを損害として認めました。ただし認められるのは例外的で、辞めるに至った経緯が厳しく見られます。
受け取った結納金は、婚約が解消された以上、原則として返還が必要です。ただし、破棄の原因を作ったのが渡した側なら、返還の請求自体が認められない場合もあります。
指輪の返還は「婚約破棄で指輪(指輪代)を返却する法的な義務はある?」で整理しています。
相場と増額・減額の事情から妥当性を確かめる
婚約破棄の慰謝料は、50万円〜200万円程度が相場の目安とされています。
請求額がこの幅を大きく超えているなら、何を根拠にその額が積まれたのかを確かめる必要があります。
一方的で突然の破棄だった、式場や新居の手配まで進んでいた、交際が長く続いていたといった事情は、額を押し上げる方向に働きます。反対に、相手の側にも落ち度があったなら、互いの責任の割合に応じて額が下がる余地があります。
もっとも、額は個別の事情で決まるため、幅に必ず収まるわけではありません。額の決まり方は「婚約破棄の慰謝料はいくらもらえる?相場や請求できるケース」で詳しく説明しています。
婚約破棄で訴えられてお困りの方は弁護士にご相談ください
婚約破棄で訴えられたとしても、婚約の成立が認められない場合や、破棄がやむを得なかったと評価される場合には、慰謝料の支払いを免れる可能性があります。支払義務があっても、過大な額は減らせる余地があります。
ただ、こうした主張が通るかどうかは、期限内に筋の通った反論を組み立てられるかにかかっています。
突然の訴状に、眠れない夜を過ごしている方もいらっしゃると思います。答弁書の期限が迫っている、相手がすでに弁護士を立てているといった方は、早めにご相談ください。相手方との交渉や裁判所への対応は、弁護士が引き受けます。当事務所は、婚約破棄をはじめとする男女トラブルを数多く取り扱ってきました。
全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。事務所全体で年間1,500件以上の男女トラブル相談を受けており、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の暴力的・脅迫的な言動にも弁護士が毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために全力を尽くしている。

