不倫相手の子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子)には、はじめ法律上の父親はいません。
そのため、不倫相手の男性に認知してもらいたいと考える方も多いのではないでしょうか?
しかし、不倫相手がすんなりと認知してくれないのが現実のようです。
本記事では、不倫相手が認知を拒否する理由や拒否された場合の対処法について解説してまいります。
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目次
認知は任意認知と強制認知の2種類
認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子と(不倫相手の)男性との間に法律上の親子(父子)関係を発生させる法制度のことです。
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認知には任意認知と強制認知があります。
任意認知は、文字通り、不倫相手が自らの意思であなたが産んだ子を認知することです。
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手続きとしては、認知届に必要事項を記入した上で、必要書類とともに役所に提出し受理されれば、不倫相手と子との間に法律上の親子関係が発生します。
他方で、強制認知は家庭裁判所での手続き(認知調停、認知の訴え)を経た上での認知のことで、不倫相手が任意認知を拒否した場合に活用します。
認知調停、認知の訴えの方法については後述します。
不倫相手が任意認知しない理由
では、不倫相手が任意認知しない理由はどこにあるのでしょうか?
妻に不倫がばれるのが嫌
不倫相手が結婚している場合には、妻に不倫がばれるのが嫌という理由で任意認知を拒否する不倫相手は多いです。
不倫相手が配偶者と同居して生活している場合、任意認知すると、不倫相手はあなたから何らかの形で養育費の請求を受ける可能性があります。
そして、それをきっかけに、配偶者にあなたと不倫し、なおかつ、あなたとの間に子をもうけたことがばれてしまうおそれがあります。
また、任意認知すると、不倫相手の戸籍の「身分事項」の欄に「認知」の文字が、その横に「認知日」、「認知した子の氏名」、「認知した子の戸籍」が記録されます。
そうすると、配偶者がパスポート申請の際などで戸籍を取得した際に、戸籍に認知の情報が記録されているわけですから、配偶者にあなたと不倫し、なおかつ、あなたとの間に子をもうけたことがばれてしまう可能性があります。
なお、戸籍から認知の記録を消すには「転籍」と「分籍」の方法があります。
転籍とは、不倫相手が現在の戸籍の本籍地を別の本籍地に変えることです。
この場合、確かに新しい本籍地の戸籍には認知の情報は引き継がれません。
しかし、配偶者に転籍する理由を疑われ、問い詰められた挙句、不倫したことがばれる可能性があります。
また、転籍前の戸籍には認知の情報は記録されたままです。
転籍したとしても、配偶者は転籍前の戸籍を取得することは可能ですから、やはり不倫したことがばれてしまう可能性があります。
次に、分籍ですが、分籍とは戸籍の筆頭者や配偶者以外の成人が、在籍している戸籍を離れて新しい戸籍を作ることです。
この場合も、新しい戸籍には認知の情報は引き継がれませんが、不倫相手が結婚している場合は、不倫相手が戸籍の筆頭者となっていることが多いでしょうから、分籍の手段を取ることはできないでしょう。
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養育費を支払いたくない
不倫相手が任意認知を支払いたくない理由の二つ目として養育費の問題を挙げることができます。
任意認知すると不倫相手と子との間に親子関係が生じ、不倫相手は子に対する扶養義務を負います。
この扶養義務に基づいて請求できるのが養育費です。
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不倫相手が養育費を支払わない場合は、将来的には不倫相手の財産を差し押さえることも可能となります。
特に不倫相手が無職の場合や年収が低い場合は、上記のような重い負担を負うことを嫌って、任意認知を拒否される可能性が高いです。
不倫相手が任意認知してくれない場合の対処法
最後に、不倫相手が任意認知してくれない場合に、強制認知を得るための方法についてご紹介します。
強制認知を得るための方法は以下の2つです。
家庭裁判所に対して認知調停を申し立てる
認知調停とは、家庭裁判所を交えて認知のことについて話し合いをする手続きのことです。
強制認知を得るには後記の「認知の訴え」をいきなり提起することはできず、まずはこの認知調停の手続きを経る必要があります。
これを調停前置主義といいます。
認知調停を申し立てるには、
- 申立書(3通=あなた用、裁判所用、不倫相手用)
- 連絡先等の届出書
- 進行に関する照会回答書
- 戸籍謄本
- 陳述書(必要によって)
- 手数料(収入印紙1,200円分)
- 郵便切手代(金額、種類、枚数について、事前に家庭裁判所に問い合わせる)
を準備して家庭裁判所に提出します。
提出する家庭裁判所は、不倫相手の住所地を管轄する家庭裁判所、あるいは不倫相手と合意した任意の家庭裁判所ですが、後者の家庭裁判所を選択する場合は、あなたと不倫相手の署名・押印した、
- 管轄に関する合意書
とうい書面も併せて提出する必要があります。
申立書が受理された後は、調停期日が指定されますので、指定された日時に家庭裁判所に行きます。
1回の調停期日にかかる時間は2時間程度です。
調停期日では、あなたと不倫相手の双方が、一人ずつ調停委員からこれまでの経緯や二人の関係性、妊娠・出産までの経緯などを聴かれます。
また、必要によっては裁判所からDNA型鑑定を行うよう求められることがあります。
手続きは裁判所主導で行われますが、費用(10万円前後)は原則として鑑定を申し立てた側が負担しなければなりません。
調停期日は1.5カ月に1回ほどのペースで開かれます。
1回で終わることはなく、数回程度経た上で、認知について合意に至ることができれば「合意に相当する審判」がなされます。
そして、審判が確定した後、役所に、
- 認知届
- 審判書謄本
- 確定証明書
を提出すれば強制認知を得ることができます。
家庭裁判所に対して認知の訴えを提起する
不倫相手が認知について合意しないなどで調停不成立となった場合や、上記の「合意に相当する審判」に対して異議が申し立てられた場合は、家庭裁判所に認知の訴えを提起して強制認知の獲得を目指します。
認知の訴えを提起するには、
- 訴状(正本、副本各1通)
- 「原告(あなた)、被告(不倫相手)の戸籍謄本
- 主張を裏付ける証拠書類
- 手数料(収入印紙13,000円分)
- 郵便切手代(金額、種類、枚数について、事前に家庭裁判所に問い合わせる)
などを準備して家庭裁判所に提出します。
調停と異なり、裁判では、あなたに子が不倫相手の子であることを証明責任が課せられます。
無事に証明できた場合は勝訴判決を得て、判決謄本と裁判の確定証明書を取り寄せ、認知届とともに提出すれば強制認知を得ることができます。
まとめ
不倫で妊娠した子の認知を望んでも、不倫相手が任意認知してくれないことも考えらえます。
認知してくれない場合は、養育費のことを考えると裁判手続きを利用してでも(強制)認知を得ることを検討しなければなりません。
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