「ネットで誹謗中傷されてもどうせ警察は動かないんでしょ?」そういった投げやりな意見をよく耳にします。
この点、警察庁公表の「平成30年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢について」によると、平成30年度における名誉毀損・誹謗中傷の相談が11406件あるのに対し検挙人数は240人と僅か2%程度に留まります。
この数字を見る限りネット誹謗中傷で警察が動く率は低いと言えますが、警察が全く動かないわけではないことがわかります。
ではなぜ、警察はなかなか動いてくれないのでしょうか?どのようなケースであれば警察は逮捕に踏み切ってくれるのでしょうか?
ネット誹謗中傷に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
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記事の目次
ネット誹謗中傷で警察がなかなか動いてくれないのはなぜ?
皆さん、”民事不介入の原則”という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
民事不介入の原則とは、犯罪(刑事)ではない個人間のトラブル(民事)に警察権は立ち入れないという原則です。
警察は事件を捜査し被疑者を逮捕することが仕事ですので、慰謝料請求や示談といった民事事件として扱うべきものについては動くことができないのは当然です。
この点、「人の悪口や事実無根の内容を不特定多数の人が目にするネット掲示板やSNSに書き込むことは、侮辱罪や名誉棄損罪として刑事事件になるのでは?」そう考える方もいることでしょう。
しかし、ある投稿内容が侮辱や名誉毀損にあたるかどうかの線引きは難しく、また、憲法で保障された表現の自由との兼ね合いから、そう易々と警察も立件することはできません。
そのため、よほど悪質な投稿でない限り「民事で解決してください」というのが警察の一般的な対応なのです。
警察が動いてくれるケースは?
では、ネット誹謗中傷被害を受けた場合に警察が全く動かないのかといえばそうではありません。
投稿回数や期間、書き込み内容からして”違法性が高い”事案であれば逮捕に動くこともあります。
例えば、参院選比例代表に立候補して落選した大学教授に対し、「犯罪者。死ね」等の書き込みを計33回行ったとして、大学4年生の学生が名誉棄損で警察に逮捕された事件もあります。中傷が多数回行われたことで、違法性が高い悪質な行為と警察が判断したことが考えられます。
そのほか、長崎県の県職員の男(38歳)が、同県に住む30代女性の実名を出して卑猥な投稿を掲示板サイトに10回程度行ったとして、ストーカー規制法違反と名誉毀損の容疑で逮捕された事件もあります。
直近では、ツイッターでアイドルグループのNGT48のメンバー5人を名指しして、違法薬物を使用していると中傷した男が逮捕されています。
参考:NGT48の5人をツイッターで中傷した疑い、男を逮捕:朝日新聞デジタル
名誉毀損罪や侮辱罪以外でも警察は動く
書き込み内容が名誉毀損や侮辱に該当しない場合でも、以下のような犯罪が成立すれば警察は逮捕に動きます。
書き込み内容 | 成立する犯罪 |
---|---|
ある人(またはその親族)の生命・身体・自由・名誉・財産に対して危害を加える内容 例:「お前の娘をヤクザに売り飛ばすぞ」「交際時に撮った性行為の動画をネットにばら撒いてやる」 | 脅迫罪 |
無差別殺人や施設等の爆破予告などの犯行予告、威力を用いて相手の業務を妨害する内容 例:「新宿駅に設置した爆弾が本日中に爆発する」「店員の態度がムカつくから仲間総出で店を潰してやる」 | 威力業務妨害罪 |
嘘やデマで相手の業務を妨害する内容 例:「ラーメン店〇〇のスープはネズミで出汁をとっている」「〇〇温泉は入浴剤で色付けしている」 | 偽計業務妨害罪 |
名誉棄損罪や侮辱罪は「親告罪」なので注意!
検察官が被疑者を刑事裁判にかけるためには起訴する必要がありますが、被害者が告訴をして初めて起訴できる犯罪を「親告罪」といいます。
親告罪が設けられている理由の一つは、事件として事実が明るみになることで被害者のプライバシーや利益が侵害される恐れがあるからです。
例えば、「Aさんは児童買春で逮捕歴がある」という書き込みは名誉棄損罪、「Aはどんな仕事を与えても役に立たない」という書き込みは侮辱罪が成立する可能性があります。
しかし被害者であるAさんからしてみれば、この書き込み内容が事実かどうかは別として、これ以上、この書き込み内容が人に知れ渡るリスクは避けたいと考えることもあるでしょう。
にも拘らず、Aさんの意図に反して警察が勝手に犯人を逮捕し、検察が起訴をして刑事裁判となれば、傍聴人はもちろんのことマスコミに報道されてAさんのプライバシーや平穏な生活が脅かされるリスクもあります。
そういう事態を避けるために、名誉棄損罪や侮辱罪は親告罪とされているのです。
逆に言えば、被害者が加害者の処罰を望むのであれば、警察に告訴状を提出して被害申告をする必要があります。
ただし、告訴状を受理した捜査機関は必ず捜査を開始しなくてはならなくなり、さらに、起訴や不起訴の処分を下した場合には告訴人に速やかに通知したり、不起訴にした場合の理由を告訴人に説明する義務が生じます。
そのため警察は告訴状を受理したがらない傾向があります。まずは比較的受理されやすい被害届を提出し、捜査の進展状況によって後から告訴状を出す形がベターでしょう。
諦めずに警察のサイバー犯罪対策課に相談しましょう
冒頭でもお伝えしましたが、ネットの誹謗中傷被害で警察が動いてくれる率は高くありません。
しかし、年々増加するインターネットでのハイテク犯罪対策に警察も力を入れており、ITやコンピューターの専門的な技能を有する警察官で構成されるサイバー犯罪対策課を各都道府県警察本部に設置し、ネットでの誹謗中傷の相談も受け付けています。
また、警察のホームページにおいても、名誉毀損や侮辱、業務妨害といった被害を受けた人は警察に相談するよう呼び掛けています。
名誉毀損、侮辱等により、相手方を訴える意志がある場合は、ご住所を管轄する警察署へご相談ください。
名誉毀損や業務妨害等の犯罪に該当するような場合は、お住まいの地域を管轄している警察署で相談する。
等の措置を講じましょう。
ネットの誹謗中傷は放置すると拡散して収拾がつかなくなります。諦めずに、なるべく早い段階でサイバー犯罪相談窓口に電話しましょう。
それでも警察が動いてくれないのであれば、弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、仮処分の申し立てによる投稿削除や、発信者情報開示による犯人特定、損害賠償請求もできます。
当法律事務所では、ネット誹謗中傷の刑事告訴に豊富な実績があり、被害にあわれた方の無料相談を受け付けております。弁護士が親身誠実に対応しますので、どうぞお気軽にご相談ください。
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