
電車内や駅構内での痴漢行為は、現行犯逮捕だけでなく、後日警察から「任意同行」を求められることもあります。突然の声かけに驚き、対応を間違えると、そのまま逮捕や勾留といった重大な事態に発展するおそれもあります。
「任意同行って断ってもいいの?」「拒否したら逮捕されるの?」「本当に自分が罪に問われるの?」――痴漢の疑いをかけられた方の多くが、こうした不安を抱えています。
この記事を読むことで、痴漢の疑いをかけられたときに慌てずに対応するための知識と心構えを身につけることができます。
そこで、本記事では、痴漢事件に強い弁護士が次の点について詳しく解説します。
- 痴漢で任意同行を求められた際の意味と、逮捕との違い
- 任意同行は拒否できるのか、拒否した場合のリスク
- 痴漢事件で任意同行を求められる典型的な2つのパターン
- 痴漢で問われる可能性のある罪とその罰則
- 任意同行や示談交渉で弁護士に依頼するメリット
なお、この記事を読んで、「任意同行を求められる前にできる限りの対処をしておきたい」と感じた方は、全国どこからでも無料で相談できる当事務所にご相談ください。
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目次
痴漢における任意同行とは?
まずは、そもそも任意同行とは何かについて解説します。
任意同行とは?
任意同行とは、自宅などにやって来た警察官の求めに応じて警察署まで出頭することをいいます。出頭はあくまで任意、すなわち、本人の「出頭してもよい」という意思に基づいていなければなりません。
任意同行には、①まだ逮捕状は発布されていないが、取り調べなどを行う必要があるために出頭を求めるケース、②すでに逮捕状が発布されているが、誤認逮捕の防止や名誉の保護などのために任意の形で出頭を求めるケースの2種類があります。
なお、任意同行に似たものとして任意出頭があります。任意出頭も任意である点は任意同行と同じですが、自宅などに警察官がやって来ず、あくまで自分で警察署に出頭するという点が任意同行と異なります。
逮捕との違いは?
逮捕との違いは強制であるかどうかです。逮捕は、捜査機関が裁判官の発布する逮捕状を取得すれば、被疑者の意思に反してでも警察署まで連行することができます。手錠をかけることはもちろん、相当な範囲内であれば、抵抗する被疑者を押さえつけたり、羽交い絞めにするなどの行為も許容されます。
一方、前述のとおり、任意同行はあくまで被疑者の意思に基づくものです。被疑者が拒否する姿勢を示しているにもかかわらず、無理やり手を引っ張ることや、複数の警察官が被疑者を囲んで長時間にわたり説得を続けるなど、実質的に逮捕と同視できるような行為は、違法と評価されることもあります。
任意同行は拒否できる?拒否したら逮捕される?
前述のとおり、任意同行はあくまで「任意」、すなわち、本人の意思に基づくことが前提です。つまり、同行に応じたくなければ「応じたくない」と拒否することはできます。
しかし、任意同行を求めに来た警察官が任意同行を拒否されたからといって、その場からすぐ退散するとは限りません。警察官は被疑者を警察署に出頭させるためにその場に来たわけですから、はじめは警察署に出頭してもらうよう説得を試みるでしょう。その説得が、場合によっては数時間に及ぶこともあります。
その結果、たとえ形式上は「任意」であっても、実質的には強制的に同行せざるを得ない状況となる可能性もあります。
また、拒否し続けると逮捕される可能性があることも想定しておかなければなりません。前述のとおり、任意同行には警察署で逮捕状を執行するための任意同行もあり、すでに逮捕状が発布されていて、万が一任意同行を拒否されたときのために現場に逮捕状を持ってこられていることも考えられます。
一方、逮捕状が発布されていなくても、拒否が続くことで後日逮捕状が発布され、最終的には逮捕される可能性もあります。
痴漢事件で任意同行を求められる2つのパターン
痴漢事件では、警察から任意同行を求められるタイミングや状況にはいくつかのパターンがあります。現場で求められる場合と後日自宅で求められる場合があり、それぞれ対応の仕方や注意点が異なります。警察がどのような場面で任意同行を求めてくるのかを把握しておくことは極めて重要です。
痴漢事件で任意同行を求められる代表的なパターンは次の通りです。
- ① 痴漢現場で警察官に任意同行を求められる
- ② 後日、警察官が自宅を訪ねてきて任意同行を求められる
①痴漢現場で警察官に任意同行を求められる
まず、痴漢を行った現場で、駆け付けた警察官に任意同行を求められるケースです。
たとえば、電車内で痴漢をしたところ目撃者に声をかけられ、次の駅で降りるよう言われたため、被害者、目撃者の3人で次の駅で電車を降りました。そして、目撃者が駅員に痴漢の事実を通報し、駅員に駅員室に招かれて待機していたところ、警察官が駆け付け、簡単に認否の確認などをされた後、「もっと詳しく話を聴きたい」などと言われて警察官と一緒に警察署に来るよう求められるというものです。
この際、警察官から任意同行に応じるかどうかについて、明確な意思確認がなされないケースがほとんどです。警察官の求めに応じ、警察官についていく行為そのものが、任意同行に同意したものと受け止められます。もし任意同行に応じたくない場合は、警察官から同行を求められたときにはっきりその旨を伝えることが大切です。
②後日、警察官が自宅を訪ねてきて任意同行を求められる
次に、後日、警察官が自宅を訪ねてきて任意同行を求められるケースです。
たとえば、電車内で痴漢をして、目撃者に声をかけられたものの否認し、その後停車駅で電車を降りてそのまま逃げたというようなケースです。この場合でも、被害者が警察に被害を申告し、目撃者が犯人の顔や服装、体格などの特徴を覚えており、駅の防犯カメラ映像から犯人を特定できるのであれば、その場を逃げ切ったとしても警察の捜査対象となってしまいます。
ただし、捜査対象になったからといって、必ずしも警察官が自宅を訪ねてくるとは限りません。しかし、何度呼び出しても出頭に応じない、逃げ隠れしそう、すでに逮捕状を発布しているなどの場合は、警察官が自宅を訪ねてくる可能性もあります。
痴漢で問われる罪は?
痴漢行為は単なる迷惑行為にとどまらず、刑法や各都道府県の条例により処罰対象とされています。行為の内容や状況によって適用される罪名や法的評価は異なり、その後の手続や処分の重さにも大きな影響を及ぼします。
痴漢で問われる主な罪は次の通りです。
- ① 不同意わいせつ罪
- ② 迷惑行為防止条例違反
①不同意わいせつ罪
痴漢行為の内容によっては、不同意わいせつ罪に問われる可能性があります。
不同意わいせつ罪は、殺人罪や強盗罪などと同じく、刑法に規定されている重大な犯罪です。
かつては「強制わいせつ罪」と呼ばれていましたが、刑法改正により「不同意わいせつ罪」となりました。なお、検察官が起訴するにあたり被害者の告訴を必要としない非親告罪である点に変わりはありません。
旧・強制わいせつ罪では、暴行または脅迫を手段とすることが要件とされていましたが、不同意わいせつ罪では、暴行・脅迫に限らず、およそ被害者の同意がなく、抵抗できないと認められる状況でわいせつ行為があれば処罰対象となります。
したがって、痴漢に限っていえば、以下のようなケースでは不同意わいせつ罪に問われる可能性が高いと考えられます。
- 被害者の背後から被害者に近づき、被害者の胸を両手で揉んだ
- 満員電車内で被害者の下着の中に手を入れ、陰部を触った
- 陰部の中に指を入れた
- 臀部を揉んだ
- 電車、バスの中で、熟睡・泥酔状態の被害者の胸を揉んだ
- 太ももをなでるように触った
不同意わいせつ罪の罰則は、6月以上10年以下の拘禁刑です。
②迷惑行為防止条例違反
次に、迷惑行為防止条例違反に問われる可能性があります。
迷惑行為防止条例は、各都道府県が定めている条例であり、その中に痴漢行為に関する処罰規定が設けられています。
具体的には、路上や駅のホームといった公共の場所、あるいは電車やバスといった公共の乗物において、衣服の上から、または直接被害者の身体に触れる行為が処罰の対象とされています。
迷惑行為防止条例の罰則は、6月以下の懲役または50万円以下の罰金です。
不同意わいせつ罪との主な違いは、処罰対象となる場所の限定です。不同意わいせつ罪ではプライベートな空間での痴漢も処罰対象となるのに対し、迷惑行為防止条例では、公共の場所・乗物に限定されています。
また、迷惑行為防止条例では、衣服の上から身体に触れる行為も処罰対象であること、さらに罰則が軽いことから、比較的軽微な痴漢行為が対象になると考えられます。
痴漢事件では、不同意わいせつ罪・迷惑行為防止条例違反のいずれも任意同行のきっかけとなることがあります。警察がどのような法的根拠で行動しているのかを理解しておくことが重要です。
痴漢事件を弁護士に相談するメリット
痴漢事件で任意同行を求められた場合や、警察の捜査対象となった場合、早期に弁護士へ相談・依頼することで得られるメリットは非常に多くあります。身体拘束を避けるための対応や、被害者との示談交渉など、弁護士がサポートできる範囲は広く、状況に応じた適切な対応を迅速に講じることが可能です。
弁護士に相談することで得られる主なメリットは次の通りです。
- ① 任意同行に付き添ってもらえる
- ② 被害者との示談交渉を一任できる
①痴漢の任意同行に弁護士が付き添ってもらえる
まず、痴漢の疑いで警察に任意同行を求められる前に弁護士に相談・依頼しておけば、任意同行に弁護士が付き添うことが可能です。
ある日突然、警察に任意同行を求められても、「弁護士に付き添ってもらいたい」などと伝え、一時的に任意同行を拒否し、弁護士に同行を依頼することができます。ただし、弁護士が裁判などで現場に急行できないこともあります。その場合は、警察と別の日の出頭を調整し、別日に弁護士と出頭することも可能です。
一方で、すでに逮捕状が発布されており、同行を拒否すると逮捕される可能性もないとはいえません。しかし、仮に逮捕されたとしても、あらかじめ弁護士に依頼しておけば、弁護士が即座に釈放に向けた行動をとることが可能です。
②被害者との示談交渉を一任できる
次に、被害者との示談交渉を弁護士に任せることができる点も大きなメリットです。
加害者が示談交渉を希望しても、以下のようなケースに該当することが多いです。
- 被害者と面識がないため、連絡手段がわからない
- 連絡先は知っていても、加害者本人から連絡してよいか判断できない
- 自分で連絡したが、交渉を拒否された
一方、弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉を始めることが可能になります。
たとえば、被害者と面識がなく連絡先もわからない場合でも、弁護士が捜査機関に連絡先の開示を求め、被害者の承諾が得られれば、警察を通じて被害者の連絡先を取得し、示談交渉を開始できます。
痴漢で任意同行を求められたら当事務所にご相談を
「まさか自分が…」――痴漢の疑いをかけられ、警察から突然声をかけられる。その瞬間、頭が真っ白になる方がほとんどです。
たとえその場で逃げ切れたとしても、後日警察から任意同行を求められる可能性は十分にあります。任意同行は拒否することもできますが、拒否すれば執拗な説得を受けたり、すでに逮捕状が発布されている場合には、その場で逮捕されるリスクも否定できません。
痴漢行為が疑われると、不同意わいせつ罪や迷惑行為防止条例違反といった重大な罪に問われる可能性があります。そうなれば、逮捕・勾留・起訴といった手続を経て、人生そのものに大きな影響を及ぼすことにもなりかねません。
一度警察の捜査対象となれば、時効が完成するまで、いつ捜査の手が及んでもおかしくありません。だからこそ、突然の任意同行に備えておくことが重要です。
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