児童ポルノの有名判例を弁護士が解説

判例①CGで加工された画像の児童ポルノ該当性を判断した判例

事案の概要

この事案は、児童ポルノ法の施行前(昭和 57 年ないし昭和 59 年頃)に実在した児童を被写体として撮影された写真を基にして作成された CG 画像データに関して、児童ポルノ提供目的製造罪及び提供罪が成立するのか否かが争われた事案です。

判例文抜粋

最高裁判所は以下のように判示しています。

「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの。以下「児童ポルノ法」という。)2条1項は、「児童」とは、18歳に満たない者をいうとしているところ、同条3項にいう「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、同項各号のいずれかに掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい、実在しない児童の姿態を描写したものは含まないものと解すべきである」。

また、児童ポルノ法 7 条 5 項の「児童ポルノ製造罪が成立するためには、同条4 項に掲げる行為の目的で、同法 2 条 3 項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した物を製造すれば足り、当該物に描写されている人物がその製造時点において 18 歳未満であることを要しないというべきである。」と判示しています(最高裁判所令和2年1月27日決定)。

弁護士の解説

本判例は「児童ポルノ」には、「実在しない児童の姿態を描写したものは含まない」としつつ、「当該物に描写されている人物がその製造時点において 18 歳未満であることを要しない」という判断を示しています。

なお、児童ポルノ法の趣旨・目的については、同決定に付された山口厚裁判官の補足意見が非常に参考になります。

「児童の心身に有害な影響を与えるものとして処罰の対象とされているものであるが、実在する児童の性的な姿態を記録化すること自体が性的搾取であるのみならず、このように記録化された性的な姿態が他人の目にさらされることによって、更なる性的搾取が生じ得ることとなる。児童ポルノ製造罪は、このような性的搾取の対象とされないという利益の侵害を処罰の直接の根拠としており、上記利益は、描写された児童本人が児童である間にだけ認められるものではなく、本人がたとえ18歳になったとしても、引き続き、同等の保護に値するものである。児童ポルノ法は、このような利益を現実に侵害する児童ポルノの製造行為を処罰の対象とすること等を通じて、児童の権利の擁護を図ろうとするものである。」

判例②児童ポルノの「公然と陳列した」該当性を判断した判例

事案の概要

この事案は、被告人は共犯者と共謀の上、共犯者がインターネット上に開設したウェブページに、第三者が他のウェブページに掲載して公然陳列した児童ポルノのURLを、その「bbs」部分を改変した上で掲載したことが、児童ポルノを「公然と陳列した」と言えるかが争われた事案です。

判例文抜粋

最高裁判所は、特に職権判断を示すことなく被告人の上告を棄却しています。

なお、控訴審である大阪高等裁判所は、「他人がウェブページに掲載した児童ポルノのURLを明らかにする情報を他のウェブページに掲載する行為は、当該ウェブページの閲覧者がその情報を用いれば特段複雑困難な操作を経ることなく当該児童ポルノを閲覧することができ、かつ、その行為又はそれに付随する行為が全体としてその閲覧者に対して当該児童ポルノの閲覧を積極的に誘引するものである場合には、当該児童ポルノが特定のウェブページに掲載されていることさえ知らなかった不特定多数の者に対しても、その存在を知らしめるとともに、その閲覧を容易にするものであって、新たな法益侵害の危険性という点においても、行為態様の類似性という点においても、自らウェブページに児童ポルノを掲載したのと同視することができるのであるから、児童ポルノ公然陳列に該当するというべきである」と判示して有罪を言い渡しています(大阪高等裁判所平成21年10月23日判決)。

弁護士の解説

インターネット空間における児童ポルノ公然陳列罪の成否については、児童ポルノ画像が掲載されたURLにリンクを貼ってこれをさらに掲載するという行為態様がしばしば問題となります。

しかし、本事案はリンクを貼らずにURLを掲載するという行為態様が問題となりました。すなわち、被告人は処罰を逃れるためにURLの一部を別の文字に改変して掲載しており、閲覧しようとする者は改変された部分を別の正しい文字に修正しなければならなかったという事情があったのです。

控訴審は、「児童ポルノ画像を閲覧するための作業が多くなるに連れて、閲覧者が児童ポルノ画像を閲覧するに至る危険性が減少する」という前提のうえで、①あるウェブページに児童ポルノが掲載されている場合、②ハイパーリンクが他のウェブページに掲載されている場合、③ URL のみが掲載されている場合、及び④ URL が改変されている場合を想定し、①から④の順に新たな法益侵害の危険性が減少していくと説明しています。

ただし、上記のような場合であっても、被告人の行為が本件児童ポルノ画像の閲覧を積極的に誘引したという事情があれば、法益侵害の危険性は減少しないと考えることができ、結論として被告人には、被告人は懲役8月執行猶予3年および罰金30万円が科されています。

判例③児童に淫行させる罪・児童買春と児童ポルノ製造罪は別々に成立すると判断された判例

事案の概要

この事案は、中学校の教員として勤務していた被告人が、勤務する中学校に生徒として在籍していた被害児童(被害当時14から15歳)と性交又は性交類似行為をし、児童に淫行をさせました。

そして20回の淫行の機会のうちの13回において、性交等に係る姿態をデジタルビデオカメラで撮影して、それら姿態を視覚により認識することができる電磁的記録媒体であるミニデジタルビデオカセットに描写し同児童に係る児童ポルノを製造したという事案です。

この場合、児童福祉法34条1項6号違反の「児童に淫行をさせる罪」と「児童買春」、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項の「児童ポルノ製造罪」は科刑上一罪となるのか別々に犯罪が成立するのか、という点が争われました。

判例文抜粋

最高裁判所は職権で、「本件のように被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては、被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは、一部重なる点はあるものの、両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや、両行為の性質等にかんがみると、それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁参照)、両罪は、刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく、同法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである」と判示しています(最高裁判所平成21年10月21日決定)。

弁護士の解説

最高裁判所は、被告人が被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合、児童福祉法違反と児童ポルノ禁止法違反の2つの罪については観念的競合ではなく併合罪であると判断しました。

併合罪も観念的競合も複数の罪にあたるという点では似ていますが、観念的競合は1個の行為が複数の罪名に触れることを指すのに対し(刑法第54条)、併合罪は複数の行為による複数の罪で、確定裁判を経ていないものを指します(刑法第45条)。併合罪となった場合、刑の長期が引き上げられるため、より重い刑を科される可能性が出てきます

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