- ハプニングバーは違法なの?
- ハプニングバーが摘発されて客が逮捕されることはある?
- 逮捕される場合、どんな犯罪に問われるの?
結論から言うと、ハプニングバー自体は違法ではありませんが、人に見える状態で性的行為を行った客は公然わいせつ罪に問われますし、そういった場所を提供した店側も、公然わいせつ罪の幇助や風営法違反で逮捕されることもあります。
以下では、上記内容に加え、
- ハプニングバーの摘発(逮捕)事例
- ハプニングバーで逮捕されるとどうなるのか
- 逮捕された場合の対処法
も合わせて、性犯罪に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
これからハプニングバーで遊びたいと考えているが、安全なのか、危険性はないのかとご不安な方、在宅捜査を受けておりいつ逮捕されるかご不安な方、ご家族が逮捕されてしまったがどう対処すればいいのか分からない方は最後まで読んでみて下さい。
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目次
ハプニングバーは違法?逮捕されるケースは?
ハプニングバーとは、客同士でハプニングが起こることを楽しむという名目で営業されているバー(飲食店)です。あくまでも飲食店ですのでハプニングバー自体は違法ではありません。
しかし、ハプニングバーには様々な性的嗜好を持った男女がその性的欲求を満たすために来店し、人目に触れる形で性行為に及ぶことも少なくありません。また、店側が客の行為を助長しているケースもあります。
以下では、お客や店(経営者・従業員)の行為がどのような犯罪に該当し、違法行為として逮捕される可能性があるのかを解説していきます。
公然わいせつ罪にあたるケース
前述したように、実際のところ、来店する客のほとんどが、性的関係を前提としたパートナー探しを目的としているのが実情です。そして、他人から見えるような状況の中、あえて性交などのわいせつな行為に及んだ場合には公然わいせつ罪で検挙される可能性があります。公然わいせつ罪は「公然」と「わいせつな行為」に及んだ場合に成立しうる犯罪だからです。
ここでいう公然とは不特定又は多数人から見られる状態のことをいいます。現実に見られている場合はもちろんですが、見られていなくても見られる可能性があれば公然にあたります。
また、わいせつな行為とは、その行為者又はその他の者の性欲を刺激興奮又は満足させる動作であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するものをいいます。少し内容が漠然としていますが、性器の露出や人前で行う性交又は性交類似行為(手淫、口淫など)がわいせつな行為にあたることは明らかです。
ハプニングバーについてみると、他人から見られる可能性ある個室には公然性が認められますから、その個室で性交や性交類似行為などのわいせつな行為を行った場合は公然わいせつ罪で検挙される可能性があります。一方、壁などで完全に仕切られており、他人から完全に見られる可能性のない個室は公然性が認められませんから、その個室で性交などのわいせつな行為に及んだとしても公然わいせつ罪で検挙されることはありせん(もっとも、相手の同意なく行った場合は強制わいせつ罪や強制性交等罪などの罪に問われる可能性はあります)。
客だけでなく従業員が検挙されることも
また、ハプニングバーの経営者や従業員は公然わいせつの幇助で検挙される可能性があります。幇助とは、ある特定の犯罪の実行を物理的に、あるは精神的に容易にした、という意味です。つまり、ハプニングバーの経営者や従業員は、客に性交や性交類似行為などのわいせつな行為をするためのハプニングバーの個室を提供し、客が個室でわいせつな行為をすることを容易にしたと判断される可能性があるということです。
公然わいせつの幇助は、公然わいせつの刑(6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)を減軽されます。つまり、懲役刑を科される場合は15日以上3月以下の懲役に、罰金を科される場合は5000円以上15万円以下の罰金まで刑が軽くなり、この範囲内で実際の刑(量刑)が科されます。
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風営法違反となるケース
ハプニングバーの経営者は風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)でも検挙される可能性がありますので注意が必要です。
深夜営業の届出違反
ハプニングバーの中には深夜(午前0時から午前6時まで)にお酒を提供しているお店もあるでしょう。この場合のハプニングバーの経営者は風営法第33条1項に規定されている「酒類提供飲食店営業を深夜において営もうとする者」にあたります。
そして、酒類提供飲食店営業を深夜において営もうとする者は、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する公安委員会に、氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名、営業所の名称及び所在地、営業所の構造及び設備の概要を、当該営業所の所在地を管轄する公安委員会に届け出なければなりません。
この届出を怠った場合、または虚偽の届出を行った場合は50万円以下の罰金を科されることがあります。
性風俗営業の届出違反
また、性的サービスを提供する場合にも公安委員会に対する届出が必要です。ハプニングバーという名目を隠れ蓑にしてこの届出を怠っていた場合、あるいは虚偽の届出をした場合は風営法違反で検挙され、6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、またはこの両方の刑を科される可能性があります。
ハプニングバーで摘発(逮捕)された事例
ここでは、過去にハプニングバーで逮捕された事例を4つご紹介します。
老舗ハプニングバーに捜査のメス
2022年5月、東京渋谷にある老舗ハプニングバー「眠れる森の美女」において、他の利用客からみえる状況で性行為をした男女が公然わいせつの疑いで、性行為を可能にするため、男女に性行為用の部屋を提供したとしてハプニングバーの経営者らが公然わいせつの幇助の疑いで逮捕されています。風営法上の「深夜酒類提供飲食店」として警察に届け出ていたものの、実体は男女に性行為用の部屋を提供し、それを楽しむ客からお金を徴収する違法バーでした。
東京上野のハプニングバー摘発
2015年3月、利用客がわいせつな行為をする際に部屋を提供してわいせつな行為を容易にしたとして公然わいせつの幇助の疑いで、東京上野のハプニングバー「Dark Night」の経営者2名が現行犯逮捕されています。
また、警察が摘発のためハプニングバーに踏み込んだ際、店内には20歳から66歳の男性35人、22歳から51歳の女性13人の合計48人の客がおり、うち7人が裸でわいせつな行為をしていたとして公然わいせつの疑いで現行犯逮捕されています。
摘発歴のあるお店が再度摘発
2017年10月、東京都上野にあるハプニングバー「私のハーモニカ」の経営者と従業員の合計4人が公然わいせつ幇助の疑いで逮捕されています。逮捕容疑は、24歳~41歳までの男女の客が、他人に見えるような状態でわいせつな行為ができるよう部屋を貸すなどして容易にしたというもの。店内でわいせつな行為をした男女は公然わいせつで現行犯逮捕されています。
実は、このハプニングバーは過去に同じような摘発を受けたお店をリニューアルしたお店。今回で2度目の摘発となったのです。
客からの情報提供で逮捕
2015年11月、埼玉県内にあるハプニングバー「BAR 999」の経営者が、客に部屋を貸すなどして客が店内でわいせつな行為をすることを容易にしたとして公然わいせつ幇助の疑いで現行犯逮捕されています。当日はお店の1周年記念イベントが開かれており、店内には25人の客がいました。そのうち2人の客が、他人に見えるような状態でわいせつな行為をしたとして公然わいせつで現行犯逮捕されています。過去に入店を拒否された客から警察へ情報提供があったと言われています。
ハプニングバーで逮捕される経緯
ハプニングバーで逮捕される種類には現行犯逮捕、後日(通常)逮捕があります。
現行犯逮捕
前述の事例からもおわかりいただけるとおり、ハプニングバーの事例では現行犯逮捕されるケースが圧倒的に多いです。現行逮捕とは、逮捕者にとって犯人と犯罪事実が明白な場合に、裁判官が発布する逮捕状なしに被疑者を身柄拘束できる逮捕のことです。
ハプニングバーにおける逮捕者とは、ハプニングバーの現場に踏み込む警察官です。警察官の目の前で客が公然とわいせつな行為を行っている場合は、警察官自身が客を公然わいせつで現行犯逮捕できます。
捜査機関側からすれば、犯人が犯行を否認したり、目撃者から有力な証言を得ることができなかった場合でも、警察官の証言で公然わいせつを立証できるという点が、ハプニングバーの事例において現行犯逮捕がよく用いられる理由です。
また、客だけなくその場に居合わせたハプニングバーの経営者・従業員も現行犯逮捕されることが多いです。客の公然わいせつを容易にしたことも、現場の状況などから明白だからです。
もっとも、警察官がハプニングバーに踏み込んだ時点で公然わいせつが行われていなければ現行犯逮捕できません。そのため、警察は事前に入念な下調べを行い、公然わいせつが行われる可能性が高いタイミング(たとえば、お店のイベントや記念日など)を狙って、ハプニングバーの現場に踏み込むものと思われます。
後日逮捕
後日逮捕とは、文字どおり、犯行から一定期間を経た逮捕のことで、現行犯逮捕と異なり裁判官の逮捕状を必要とします。
前述のとおり、客やその場に居合わせたハプニングバーの経営者・従業員は現行犯逮捕されることが多いですが、何かの理由でその場に居合わせない経営者・従業員は後日逮捕されることがあります。
ただし、後日逮捕されるケースはそれほど多くはありません。ハプニングバーでは撮影禁止のルールが設けられている店がほとんどですので、後から公然わいせつの証拠が出てくることが少ないためです。
もっとも、店が摘発されて現行犯逮捕されたお客のスマホなどから隠し撮りされた現場の映像が見つかったようなケースでは、店から押収した会員名簿とその映像、他の客の証言などを証拠として、別のお客も芋づる式に後日逮捕される可能性はあるでしょう。
ハプニングバーで逮捕されたらどうなる?
ハプニングバーで逮捕された後は、以下の流れで手続きが進んでいきます。
- 警察官の弁解録取を受ける
- 逮捕から48時間以内に検察官に事件と身柄を送致される(送検)
- 検察官の弁解録取を受ける
- ②から24時間以内に検察官が裁判官に対し勾留請求する
- 裁判官の勾留質問を受ける
→勾留請求が却下されたら釈放される - 裁判官が検察官の勾留請求を許可する
→10日間の身柄拘束(勾留)が決まる(勾留決定)
→やむを得ない事由がある場合は、最大10日間延長される - 原則、勾留期間内に起訴、不起訴が決まる
- 正式起訴されると2か月間勾留される
→その後、理由がある場合のみ1か月ごとに更新
→保釈が許可されれば釈放される - 勾留期間中に刑事裁判を受ける
このように、逮捕から勾留請求までは最大で72時間(48時間+24時間)、勾留されてから刑事処分(起訴または不起訴)が決定するまでは最大20日間、つまり逮捕されてから刑事処分が決定するまで最大23日間は身柄拘束されることになります。これだけの長期間、会社や学校を休めば、事実を隠し通すことが困難になってきます。また、有罪判決を受ければ懲戒解雇や退学もあり得ます。そのため、逮捕された後は早急に弁護士と接見し、早期釈放に向けた活動をお願いすべきでしょう。
また、早期釈放に向けた弁護活動に加え、不起訴処分獲得に向けた弁護活動も必要です。日本では起訴されると99%以上の確率で有罪判決が下ります。実刑となれば刑務所に収監されてしまいますし、執行猶予付き判決となっても有罪である以上は前科がついてしまいます。不起訴となれば刑事裁判にかけられることもなく前科もつきませんので実質的には無罪と同様の効果を得ることができます。
なお、令和3年度版犯罪白書によると、令和2年に公然わいせつで起訴された者のうち、約77%が略式起訴されています。略式起訴とは、簡略化した起訴のことで、検察官が提出した書面(証拠)のみで裁判官が審査して罰金または科料を科す裁判手続きを求めるための起訴です。略式起訴されるとその日のうちに略式命令が発布され、言い渡された罰金や科料を支払うとその時点で釈放されます。ただし有罪であることに変わりはありませんので前科はつきますし、会社や学校から何らかの処分を受けるリスクはあるでしょう。そのため、やはり不起訴処分獲得に向けた弁護活動が重要といえるでしょう。
ハプニングバーで逮捕された時の対処法
再犯防止策を示す
人前で性行為をしたり性器を露出することで性的興奮を得る方は、性依存症や露出症の可能性もあり、ご自身だけの力で克服することは困難です。そのため、再犯防止に向けた取り組みが必要です。
具体的には、性依存症や露出症を克服するために今後は専門の医療機関で治療を受けることを証明したり(逮捕・勾留されている場合は医師等に接見に来てもらうことも検討)、通院のサポートや本人の行動の監督・監視をしてくれる家族がいることを警察や検察、裁判所に示すことで、早期釈放や不起訴処分、執行猶予付き判決や減軽も期待できます。
参考:全国の相談窓口・医療機関を探す - 依存症対策全国センター
弁護士に依頼する
性的行為をしている最中に突然警察が店に踏み込んて来て逮捕され警察署に連行された方の精神的な動揺は計り知れないものがあります。正常な判断能力が低下している状態で警察による厳しい取り調べを受け、不利な内容の供述調書にサインしてしまうリスクも十分あります。
供述調書は、検察官が起訴・不起訴するかを判断する時の材料となります。また、裁判官が量刑を決める場合も同様です。後々ご自身の立場を危うくしないためにも、ハプニングバーで逮捕されてしまったらすぐに弁護士と接見をしたい旨、警察に伝えましょう。知り合いに弁護士がいない場合は1回だけ無料で接見してくれる当番弁護士を呼んで欲しいと伝えましょう。逮捕されたご家族の方であれば、公然わいせつなどの性犯罪の刑事弁護に強い弁護士を探して依頼することもできます。
弁護士が到着するまでは黙秘権を行使してください。弁護士と接見することができれば、不利な供述をしないための様々なアドヴァイスが貰えますし、ご家族との連絡役にもなってもらえます。
早期釈放・不起訴処分に向けた弁護活動
また、依頼を受けた弁護士は、逮捕の根拠である「罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれ」がないことを捜査機関に主張します。これにより早期釈放されて在宅事件のまま捜査がすすめられることもあります。その場合、今まで通りに会社や学校に通うことができます。
もっとも、在宅捜査に切り替わり身柄を解放されたとしても、不起訴処分となるまではいつまた逮捕事件に切り替わるかわかりません。そのため、弁護士のアドバイスに従い、前述の再犯防止策をしっかりと講じ、弁護士から捜査機関に意見書を提出するなどして不起訴処分に向けた弁護活動を継続していきます。
弊所では、公然わいせつ事件の早期釈放、不起訴処分の獲得を得意としております。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、逮捕された方のご家族の方は弁護士までご相談下さい。相談する勇気が解決へと繋がります。
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