前科とは?前歴との違いと前科がつくと生じる5つのデメリット

警察に逮捕された、嫌疑をかけられたなどというだけで「私は前科がつくから」、「前科持ちだから」と勝手に決めつけていませんか?

実は、警察に逮捕されただけ、嫌疑をかけられただけでは前科はつきません

この記事では刑事事件に強い弁護士が、

  • ①前科とはなにか
  • ②前科と前歴との違い
  • ③前科がつくことで生じるデメリット
  • ④前科をつけないためはどうすればいいのか

について、刑事事件に強い弁護士が徹底解説していきます。

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前科とは?前歴との違い

前科とは、刑事裁判で有罪判決(略式命令を含む)となり、刑が確定した(不服申し立てができない状態になった)事実をいいます。

前科がつく刑罰は重いものから死刑、懲役、罰金、禁錮、拘留、科料の6種類です。前科は実刑、執行猶予の場合を問わずつきます。

≫執行猶予でも前科はつくの?猶予期間満了で前科は消える?

一方、前歴とは、警察や検察等の捜査機関から犯罪を犯したと疑われて捜査の対象になった事実をいいます。

つまり、前歴は、捜査を受けただけでつきますし、検挙・逮捕された、微罪処分を受けた、書類送検された、起訴猶予・不起訴処分を受けた、起訴された(略式起訴を含む)場合もつきます。検挙歴、逮捕歴という場合、それは前科ではなく前歴のことを指します。

前科を調べられることはある?消える?

罰金以上の前科情報は、検察庁で厳重に管理されています。警察など特定の機関から照会があった場合にのみ、検察庁は前科調書を作成して前科情報を回答しています。プライバシー保護の観点から民間人や民間企業からの照会には応じていません

また、前科者の本籍地にある市区町村役場では、罰金以上(交通違反を除く)の刑に処せられた者の情報を検察庁から提供を受け、犯罪人名簿という文書で管理保管しています。この名簿は、前科により選挙権・被選挙権を失っていないか、特定の資格(弁護士・弁理士等)を要する職業に就く場合の欠格事由に該当しないか、国家試験の受験資格の有無、を確認するために用いられます。そのため、民間人、民間企業からの照会に応じることはありませんし、市区町村も前科情報を厳重に管理しています。

従って、通常は、前科があることを調べられることはありません。ただし、殺人等の重大犯罪を犯し、有罪判決を受けて裁判が確定したことがマスコミに実名報道されれば、ネットのニュースサイト等に掲載されますので、名前の検索で前科が調べられることはあるでしょう。もっとも、裁判確定まで報道されるような事件は稀ですので、バレるとすれば、「逮捕・検挙された」といった”前歴”についてがほとんどでしょう。

前科は消える?

検察庁が保管している前科情報は、検察庁の犯歴係事務官が前科者の死亡したことを知ってから削除するよう法律で定められています(犯歴事務規定18条)。つまり、前科者が死ぬまで一生、検察庁のデータベースから前科情報が消えることはありません

ただし、犯罪人名簿については、刑の言い渡しの効力が失われることで前科情報が抹消されます。刑の言い渡しの効力が失われる要件は以下となります。

  • ①禁錮刑以上(懲役刑も含む)の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したとき(刑法34条の2)
  • ②罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したとき(刑法34条の2)
  • ③刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したとき(刑法27条)

また、刑の言い渡しの効力が失われることで、資格制限をうけなくなりますので、一定の資格・免許を必要とする職業に就けるようになります。さらに、就職活動で提出する履歴書の賞罰欄に前科を記載しなくてもよくなります。

≫前科は消える?前科を調べることはできる?

前科がつくと生じるデメリット

①資格制限を受ける・経歴詐称で懲戒解雇になる場合がある

免許を必要とする職業(弁護士、不動産鑑定士、医師、公務員、社会福祉士、警備員など)については、前科の内容によっては欠格事由に該当し、一定期間、免許・資格を取得できないことがあります。また、既に資格のある方でも、前科がつくことで資格の停止・剥奪(失効)をされることもあります。

免許を必要としない職業については、面接時に聞かれたり、履歴書やエントリーシートに賞罰欄が設けられている場合は正直に回答する必要があります(設けられていなければ不要)。もし前科があるのに「前科なし」と虚偽の申告をし、採用後にそれが企業に発覚すれば、経歴詐称として懲戒解雇の処分を受ける怖れがあります

≫前科があると就職できない?様々な疑問に弁護士が解説

②海外旅行に行けない場合がある

海外旅行に行くにはパスポートが必要ですが、前科が「禁錮以上」の場合(執行猶予の場合を含む)だとパスポートの発給を受けることができません

もっとも、禁錮以上の前科を有する場合でも、刑の服役が終わった、執行猶予期間が経過した場合は発給を受けることができます。また、禁錮以上とは懲役、死刑のことを指しますから、罰金の前科のみの場合はパスポートの発給を受けることができます。

ただし、滞在日数や渡航目的、あるいは渡航先の国によってはビザの申請が必要となり、その申請の際に「犯罪経歴証明書」の提出を求められることがあります。パスポートがあったとしても、犯罪歴があれば入国を断られることもあります。

≫前科があっても海外旅行に行ける?パスポートは取得できる?

③再び刑事事件を起こすと処分が重くなることがある

警察は、刑事事件の被疑者に前科がないかどうかを調べます。被疑者に前科があれば、「またやったのでは」という疑いの目を持ちますので、初犯では在宅事件だったものが、新たに犯した罪については逮捕されやすくなります。特に、同類型の犯罪を犯せば(例えば、強制わいせつの前科がある者が、新たに性犯罪を犯したようなケース)、犯罪傾向が進んでいると検察官に判断されて、起訴される可能性も高まります

また、刑事裁判においては、裁判官が量刑を決める際の情状に前科の有無が含まれるます。そのため、前科がある者が再度犯罪を犯したことで、「反省の態度がみられない」と裁判官に判断され、厳しい刑罰を受けることもあります

④離婚事由になる

前科があることで、一方の配偶者からの離婚請求が認められるかどうかは、前科があることが「婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)」に該当するかどうかを検討する必要があります。この点、前科があることが、直ちに「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するわけではありません。例えば、交通違反の罰金刑でも前科がつきますが、それをもって、結婚生活を維持することが困難と解釈することは社会一般的に考えても無理があるでしょう。

一方、配偶者が過去に殺人や強盗致死などの重大犯罪を犯していたことが結婚後に発覚したようなケースでは、「婚姻前にそれを知っていたら結婚しなかったであろう」と社会一般的には考えられるため、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、裁判において離婚が認められる可能性があります

⑤その他の影響

警察の職務質問の際にその場で前科情報を調べられ、その場から立ち去ろうとしてもしつこく引き止められることもあります。また、疑わしい点があると判断されれば、前科がない人よりも任意同行を求められる可能性も高くなります。

また、禁錮以上の刑(懲役も含む)に処せられその執行を終わるまでの者は、一時的とはいえ選挙権がありません(公職選挙法第11条)。

前科をつけないためには不起訴処分を目指す

犯罪白書によると、令和元年の裁判確定人員(令和元年に最終的な判決が下った人員)に対する無罪確定者が占める割合は約0.4%、つまり、起訴されて刑事裁判にかけられれば、99.6%の人が有罪判決を受けることになります。既にお伝えしたように、実刑、執行猶予を問わず、有罪判決を受ければ前科がつくわけですから、起訴された人のほとんどに前科がつくことになります

裏を返せば、不起訴処分(起訴されないこと)になれば前科はつかないわけですから、前科をつけたくない人は不起訴処分を目指す必要があります

不起訴処分の主な種類としては、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」の3つがあります。否認事件(無罪主張)の場合は、取り調べに対して罪を犯していないことを主張して、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」による不起訴処分を目指します。自白事件(罪を認める)の場合は、被害者と示談を成立させることで「起訴猶予」による不起訴処分を目指します。

≫起訴猶予とは不起訴処分の理由の一つのこと|前科・前歴はつく?

とはいえ、捜査官による厳しい取り調べにより、逆に、自身に不利な供述調書を作られてしまうことも少なくありません。また、被害者と示談をしたくても、連絡先が不明であったり、被害者が加害者本人とのやり取りを拒絶することもあるでしょう。そうなれば、起訴される可能性が高くなってしまいますので、事件発生からなるべく早い段階で弁護士を介入させ、取り調べでの注意点や法的アドバイスを受けたり、被害者との示談交渉を任せた方が良いでしょう

当法律事務所では、依頼者の不起訴処分獲得のために弁護士が全力を尽くして対応しています。親身誠実をモットーとしておりますので、前科をつけたくない方は、まずはお気軽にご相談ください。

前科についてよくある質問と回答

前科は戸籍には載らない?
戸籍や住民票、その他、住民基本台帳に前科が記載されることはありません。
交通違反でも前科はつく?
道路交通法では、軽微な交通違反の場合、一定期日までに反則金を払うことで刑事手続きを免除される制度(交通反則通告制度。いわゆる青キップ)が定められています。この「反則金」は行政罰であり、刑事罰である「罰金」とは異なるため前科はつきません。ただし、悪質なスピード違反や当て逃げ、飲酒・酒気帯び運転、無免許運転、人身事故などの交通事故で罰金刑以上の刑を受ければ前科がつきます。
万引き、器物損壊、痴漢でも前科はつく?
万引き、器物損壊、痴漢は軽い罪だと思われがちですが、どれも懲役刑がある立派な犯罪です。
略式起訴(裁判をせずに簡易的に罰金刑で刑事手続きを終わらせる起訴方法)で罰金刑を受けただけでも前科はつきます。
運転免許証を見れば前科があるかわかる?
運転免許証に記載されている12桁の運転免許番号から前科があるかどうかがわかるといった誤った情報がネットで見受けられますが、間違いです。この番号は、各都道府県公安委員会のコード番号や、公安委員会の管理番号、初めて免許を取得した年(西暦)、紛失等による免許証の再発行の回数を示しています。この番号から前科の有無はわかりません。
少年院に入ると前科がつく?
少年院送致を含め、保護観察や児童自立支援施設等送致といった保護処分を受けた場合も前科はつきません。ただし、殺人や傷害致死、放火等の重大事件を起こし、検察官送致されて通常の刑事裁判で有罪判決となった場合には、未成年であったとしても前科がつきます。
前科があると生活保護や年金の支給を受けられない?
生活保護や年金の制度と前科の有無は無関係です。それぞれの支給要件を満たしていれば受給することが可能です。
前科があるとローンの利用はできない?
クレジットカード、車、住宅など、様々な場面でローンを組む機会がありますが、審査のために、過去の滞納状況などの履歴がないか信用情報機関に照会されます。
しかし、信用情報機関に登録されている情報には「前科・前歴」といった項目がそもそも存在しませんので、前科があることがローン審査に不利に働くことはありません。
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