
- 「前科とはどういう意味?前歴と何が違うのだろう…」
- 「前科がつくとどんなデメリットがあるの?」
- 「前科は消えるの?」
- 「前科が調べられて他人にバレることはある?」
この記事では、刑事事件に強い弁護士がこれらの疑問を解消していきます。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|
目次
前科とは?前歴との違い
前科とは、刑事裁判で有罪判決となり、刑が確定した(不服申し立てができない状態になった)事実をいいます。前科がつく刑罰は重いものから死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料の6種類です。前科は実刑、執行猶予の場合を問わずつきます。
対して、前歴とは、警察や検察等の捜査機関から犯罪を犯したと疑われて捜査の対象になった事実をいいます。つまり前歴は、捜査を受けただけでつきますし、検挙・逮捕された、微罪処分を受けた、書類送検された、起訴猶予・不起訴処分を受けた、起訴(略式起訴を含む)されて無罪判決となった場合もつきます。検挙歴、逮捕歴という場合、それは前科ではなく前歴のことを指します。
前科がつくと生じるデメリット
①資格制限を受ける・経歴詐称で懲戒解雇になる場合がある
免許を必要とする職業(弁護士、不動産鑑定士、医師、公務員、社会福祉士など)については、前科の内容によっては欠格事由に該当し、一定期間、免許・資格を取得できないことがあります。また、既に資格のある方でも、前科がつくことで資格の停止・剥奪(失効)をされることもあります。
免許を必要としない職業については、面接時に聞かれたり、履歴書に賞罰欄が設けられている場合は正直に回答する必要があります(設けられていなければ不要)。もし前科があるのに「前科なし」と虚偽の申告をし、採用後にそれが企業に発覚すれば、経歴詐称として懲戒解雇の処分を受ける怖れがあります。
②海外旅行に行けない場合がある
海外旅行に行くにはパスポートが必要ですが、前科が「禁錮以上」の場合(執行猶予の場合を含む)だとパスポートの発給を受けることができません。
もっとも、禁錮以上とは懲役、死刑のことを指しますから、罰金の前科のみの場合はパスポートの発給を受けることができます。また、禁錮以上の前科を有する場合でも、刑の服役が終わった、執行猶予期間が経過した場合は発給を受けることができます。
ただし、滞在日数や渡航目的、あるいは渡航先の国によってはビザの申請が必要となり、申請の際にその国の大使館から「犯罪経歴証明書」の提出を求められることがあります。パスポートがあったとしても、犯罪歴があれば入国を断られることもあります。
③再び刑事事件を起こすと処分が重くなることがある
警察は、刑事事件の被疑者に前科がないかどうかを調べます。前科があれば、「またやったのでは」という疑いの目を持たれますので、新たに犯した罪については逮捕されやすくなります。特に、同類型の犯罪を犯せば(例えば、強制わいせつの前科がある者が、新たに性犯罪を犯したようなケース)、犯罪傾向が進んでいると検察官に判断されて、起訴される可能性も高まります。
また、刑事裁判においては、裁判官が量刑を決める際の情状に前科の有無が含まれます。前科者が再び犯罪を犯したことで、「反省の態度がみられない」と裁判官に判断され、厳しい刑罰を受けることもあります。
④離婚事由に該当することがある
前科があることが直ちに離婚事由になるわけではありません。例えば、交通違反の罰金刑でも前科がつきますが、それをもって離婚請求が認められるとなればあまりにも不当でしょう。
一方、配偶者が過去に殺人や強盗致死などの重大犯罪を犯していたことが結婚後に発覚したようなケースでは、「婚姻前にそれを知っていたら結婚しなかったであろう」と社会一般的には考えられるため、法定離婚事由である「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)に該当し、裁判において離婚が認められる可能性があります。
⑤その他の影響
警察の職務質問の際にその場で前科情報を調べられ、その場から立ち去ろうとしてもしつこく引き止められることもあります。また、疑わしい点があると判断されれば、前科がない人よりも任意同行を求められる可能性も高くなります。
また、禁錮以上の刑(懲役も含む)に処せられその執行を終わるまでの者は、一時的とはいえ選挙権がありません(公職選挙法第11条)。
前科を調べられることはある?消える?
前科を調べられることはある?
前科に関する情報は、
- 検察庁のデータベース
- 市区町村役場の犯罪人名簿
で厳重に管理されており、プライバシー保護の観点から民間人や民間企業からの前科の照会には応じていません。つまり、これらのデータベースや名簿から、前科があることを一般人に調べられることははありません。
ただし、有罪判決を受けたことがマスコミに実名報道されれば、ネットのニュースサイト等の掲載から調べられることはあるでしょう。
≫他人の前科・犯罪歴を調べる4つの方法【公的機関からは不可能】
前科は消える?
検察庁のデータベースから前科情報が消えることは生涯ありません。
ただし、犯罪人名簿については、刑の言い渡しの効力が失われることで前科情報が抹消されます。刑の言い渡しの効力が失われる要件は以下となります。
- ①禁錮刑以上(懲役刑も含む)の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したとき(刑法34条の2)
- ②罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したとき(刑法34条の2)
- ③刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したとき(刑法27条)
刑の言い渡しの効力が失われることで、前科があることによる資格制限がなくなります。また、履歴書の賞罰欄に前科を書かなくてもよくなります。
よくある質問と回答
しかし、信用情報機関に登録されている情報には「前科・前歴」といった項目がそもそも存在しませんので、前科があることがローン審査に不利に働くことはありません。
まとめ
前科は有罪判決を受けることでつくものであり、前歴は捜査を受けただけでつくものです。
前科がつくことで、就職、資格取得、結婚、海外旅行等の場面で不利益が生じることがあります。このような不利益を回避するためには前科をつけないようにする、つまりは、有罪判決を受けないようにしなくてはなりません。
しかし日本の刑事裁判では起訴されれば99%以上の率で有罪になります。そのため、有罪とならないためには不起訴処分を狙う必要があるでしょう。不起訴処分を獲得するには、被害者への謝罪や示談、贖罪寄付、弁護士による刑事弁護が重要です。
罪を犯してしまったが前科がつくことを避けたいとお考えの方は、刑事事件に強い弊所までお気軽にご相談ください。弁護士が依頼者を全力で守ります。相談する勇気が解決への第一歩です。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|