昨今では、クレジットカードなどのキャッシュレス決済をすればクレジットカードのポイントが貯まりますし、さらに店舗が提携しているポイントカードを提示すればそのポイントも貯まります。また、航空会社のマイレージ会員になればマイレージのマイル(ポイント)を得ることもできます。
結論から言いますと、場合によっては業務上横領罪に問われる可能性があります。
この記事では、横領事件に強い弁護士が、
- 経費立替で貯まったポイントの利用は横領になるのか
- 会社からの前払い経費で貯めたポイントの利用は横領になるのか
- ポイントの横領で負う刑事事件以外のリスク
などについてわかりやすく解説していきます。
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目次
経費立替で貯まったポイントの利用は横領になる?
従業員が会社の財産を横領すると業務上横領罪(刑法第253条)に問われます。業務上横領とは、「業務上自己の占有する他人の物を横領」することで成立する犯罪です。
この点、従業員が会社にかかる経費を立て替え、そこで従業員個人のカードに貯まったポイント(航空会社のマイレージマイルも含む)を私的利用した場合、業務上横領に問われるかどうかは見解がわかれます。
一つは、立て替え払いとはいえ従業員個人が支払ったことで発生したポイントは会社の財産とはならない、つまりは従業員によるポイントの私的利用は「他人の物を横領した」ことにはあたらず業務上横領罪は成立しないという見解です。
一方、従業員が立て替え払いをしたとしても、経費精算により最終的に費用を負担するのは会社だから、費用を負担することによって得られるポイントは会社の財産ということになる。したがって、個人が会社に無断でポイントを利用する行為は「他人の物を横領した」ことにあたり業務上横領罪が成立するという見解です。
いずれの見解が正しいのか明確な判断が示されているわけではありませんので法律的にはグレーとなります。もっとも、以下で示すケースでは業務上横領に問われる可能性がありますので注意が必要です。
業務上横領罪に問われる可能性があるケース
まず、就業規則に「経費を立て替えたことによって付与されたポイントは会社の財産に帰属する」などという規定が盛り込まれていた場合です。こうした就業規則がある場合は、ポイントは会社財産に帰属することは明らかですから、これを個人が使った場合は業務上横領罪に問われてしまう可能性があります。
また、就業規則に規定はないものの、高額備品を購入した場合や頻繁にある出張費を立て替えた場合など、およそ個人が費用負担すべきケースとは考えられないケース、つまり、会社が費用負担すべきケースの場合に発生したポイントも会社財産に帰属するものと考えられます。したがって、これを個人が使った場合は横領罪に問われる可能性があります。
会社からの前払い経費で貯めたポイントの利用は横領になる?
では、会社から備品の購入費や出張費を現金で受け取り、その購入費や出張費で物品を購入したり航空チケットなどを購入して従業員個人のカードに貯めたポイントを私的利用した場合、横領罪は成立するのでしょうか?
この点、ポイントのもととなったお金(費用)は会社が負担していますから、費用から発生したポイントも会社財産に帰属するものと考えられます。したがって、この場合も横領罪が成立する可能性があります。
会社のカードのポイントを私的利用したら横領になる?
会社のカードのポイントは会社財産に帰属すると考えられますから、これを私的利用した場合は「他人の物を横領した」ことにあたり、横領罪が成立する可能性があります。
ポイントの横領で負う刑事事件以外のリスク
上記で説明したような、ポイントが会社に帰属することが明らかなケースでは、刑事責任のみならず以下のリスクも負う可能性があります。
不当利得返還請求される
まず、不当利得返還請求される可能性があることです。
不当利得とは、法律上の原因なく、他人の財産などによって受けた利益のことです。たとえば、従業員が会社財産に帰属するポイントを私的利用した場合、その従業員は本来自分で支払うはずであった費用の負担を免れた、すなわち、会社財産のポイントによって利益を得たことになります。したがって、その従業員は会社に対し、会社財産のポイントによって得た利益分のお金を会社に返還しなければなりません。
懲戒解雇される
次に、懲戒解雇される可能性があることです。
前述のとおり、会社の就業規則には経費立替等によって得たポイントが会社に帰属することが明記されていることがあります。仮に、明記されている場合は、ポイントの私的利用が懲戒解雇事由の一つとなっている可能性があります。ポイントの私的利用が懲戒解雇事由の一つである場合は、ポイントの私的利用を理由に懲戒解雇される可能性があります。
ポイントの利用で横領とならないためにすべきこと
ポイントの私的利用でこれまでご紹介してきた不利益を被らないためには、まずは就業規則を確認しましょう。就業規則で「ポイントは会社財産に帰属する」と明記されている場合は、そのルールに従う必要があります。また、就業規則には明記されていなくても、内部文書等で注意喚起されている場合もありますから、判断に迷った場合は同僚や上司に一度確認しておいた方が安心です。
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