このような悩みをお持ちの方のために、業務上横領に強い弁護士が、業務上横領の示談書の書き方をわかりやすく解説していきます。
また、業務上横領の示談書のテンプレート(word形式)もダウンロードできますので、自分で一から示談書を作成するのが難しい方はご利用下さい。
なお、記事を最後まで読んで、被害者との示談交渉やご自身のケースに合わせてカスタマイズされた示談書の作成が必要とお考えの方は、弁護士による全国無料相談をご利用ください。
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目次
業務上横領の示談書の書き方
刑事事件の被害者と示談交渉を臨むにあたっては、示談書の原案を作っておくと、交渉内容やご自分の主張を整理できて便利です。示談書の原案は被害者、加害者のいずれが作ってもよいですが、被害者が示談交渉に応じてくれそうな場合は、ご自分が作ることを提案してみてもよいでしょう。
以下では、業務上横領の事件で示談交渉する際に示談書に盛り込む一般的な内容を解説していきます。示談書の原案を作る際の参考にしていただければと思います
なお、以下の示談書は次のケースを前提に作成しています。
事 案:被疑者(乙)が、株式会社(甲)の新聞の購読代金の集金係として勤務中に、購読代金を費消して横領した。
示談金:示談金は横領額とし、分割で弁済する
その他:公正証書を作成する
標題
標題は「示談書」のほか「合意書」、「和解書」とすることもあります。いずれの標題にしても、書面の効力に差が生じることはありません。
【例】
示談書
合意書
和解書
頭書き
「株式会社○○○○~示談した。」までの頭書きでは、まずは、被害者を「甲」、加害者を「乙」として特定します。そして、標題を「示談書」とした場合は、結びは「示談した。」とし、標題を「合意書」とした場合は、結びは「合意した。」とし、標題を「和解書」とした場合は、結びは「和解した。」とします。
また、どの事件について示談するのか、事件の内容を書きます。「乙が、令和×年×月×日に行った新聞購読代金の業務上横領事件(以下「本件事件」という。)に関し、」などと書くやり方もありますが、あとでどの事件で示談したのか争いとならないよう、できる限り詳細に書いた方が安心です。
【例】
株式会社〇〇〇〇を甲、●●●●を乙として、甲と乙は、乙が、令和×年×月×日から同月×日までの間、約◎回にわたり、客から集金した新聞の購読代金合計△△万円を費消して横領した件(以下「本件事件」という。)に関し、下記の通り示談した。
弁済債務の承認
ここでは、被害者と加害者とが損害金(示談金)に合意した旨を書きます。具体的には、加害者が本件事件に対する損害金の支払義務があることを承認して、弁済することを約し、被害者がこれを承諾したことを書きます。
【例】
乙は、甲に対し、本件事件に対する損害金として、金△△万円の支払義務があることを承認し、これを以下の条項に従い弁済することを約し、甲は、これを承諾した。
債務の弁済
ここでは、債務を具体的にどのように履行していくかを書きます。分割で弁済する場合は、弁済期間・回数、毎月の弁済期限・弁済額、弁済方法を書きます。弁済方法を口座振り込みとする場合の振込手数料は、加害者が負担するのが通常です。
【例】
乙は、甲に対し、前条の金△△万円を令和×年×月×日から令和×年×月×日まで◎◎回に分割して、毎月末日までに金△万円を、甲の指定する金融機関の口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は、乙の負担とする。
期限の利益の喪失、遅延損害金
示談金を分割弁済する旨の合意をした場合は、期限の利益の喪失と遅延損害金についてもあわせて合意することが多いです。
期限の利益の喪失とは、示談金を一括で支払う必要のない加害者の利益が失われること、すなわち、一括で支払わなければならないことを意味します。いかなる場合に期限の利益を喪失するのかを明確に書いておきます。
遅延損害金とは、示談金の支払が滞ったことによる賠償金のことで、別名遅延利息ともいいます。遅延損害金は未払の示談金に対して年率をかけた額を計算します。遅延損害金について定める場合は年率について取り決める必要があります。
乙が前条の分割金の支払を1回でも怠ったときは、当然に期限の利益を失い、乙は、甲に対し、第2条の金△△万円(既払分があればこれを控除する。)及びこれに対する期限の利益を失った日の翌日から支払済みまで年□パーセントの割合による遅延損害金を支払う。
被害届等の不提出
ここでは、示談金を支払った場合に、被害者側が捜査機関に対して、事件の被害届や告訴状を提出するなどして被害を申告しないことを書きます。
示談金を一括弁済する場合は、弁済が確認できた段階で被害届等を提出するなどして被害を申告しないとする内容を書きます。
また、示談金を分割払いする場合は、基本的には、全額弁済した段階で被害届等を提出するなどして被害を申告しないとする内容を書きます。ただ、弁済額が大きい場合は、ある一定の金額を弁済した段階で申告しないとする内容を書くこともあります。
なお、被害者がすでに捜査機関に被害届等を提出するなどして被害を申告している場合は、「被害届(申告)を取り下げる。」旨を書きます。
甲は、乙が支払う第3条の分割金の金額が金△△万円に達したときは、捜査機関に対し、本件事件に関する被害届または告訴状を提出せず、かつ、その他の方法で被害の申告をしない。
守秘義務
示談成立後、相手に事件のことや示談の内容のことを第三者に開示されると名誉を害され、新しいスタートを切ることができないおそれが生じます。そこで、示談書の中に守秘義務に関する条項を設けておきます。
ただし、一切開示できないとするとお互いに不都合が生じますので、「正当な理由がある場合を除き」という文言を入れて、開示の例外を認める形にしています。
甲及び乙は、正当な理由がある場合を除き、口頭、電話、メール、LINE、SNS等の手段を用いて、本件事件に関する情報、本示談書の存在及び内容を第三者に対し開示しない。
清算条項
清算条項は、示談成立後に被害者から金銭的請求をされないための条項です。示談は、被害者と加害者との間で生じたトラブルを終局的に解決する手段ですから、示談書を書くにあたって清算条項は必須の条項といえます。清算条項を設けることで、示談した内容に違反しない限り、紛争の蒸し返しを防ぐことができます。
甲及び乙は、本件事件については、本示談をもって全て解決したものとし、本示談に定めるほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。
公正証書の作成
示談金の額が大きい場合や示談金の支払方法を分割にする場合など、未払いのリスクが高くなる場合は、被害者から公正証書の作成を求められることがあります。公正証書を作成するには、公正証書を作成することについての合意が必要です。
また、公正証書を作成するには費用を負担する必要があります。例文は、被害者と加害者で折半するとしていますが、どちらか一方が負担する取り決めも可能です。その場合は、「ただし、公正証書作成費用は、甲(乙)が負担する。」と書きます。
なお、強制執行認諾文言付公正証書とは、仮に、弁済を怠った場合は、財産を差し押さえられる手続きをとられてもよいという加害者の承諾文言を盛り込んだ公正証書です。
強制執行認諾文言付公正証書を作成することは被害者にとっておおいにメリットとなるため、被害者から公正証書を作成することにつき同意を求められる場合は、この強制執行認諾文言付公正証書を作成することについて同意を求められるでしょう。
甲及び乙は、本示談書と同趣旨の強制執行認諾文言付公正証書を作成することに合意する。ただし、公正証書作成費用は、甲乙折半で負担する。
業務上横領の示談書テンプレートのダウンロード
以下のリンクから、業務上横領の示談書のテンプレートをダウンロードできます。
ただし、事案によって示談書に記載すべき内容は異なりますので、上記で説明した、「業務上横領の示談書の作り方」を繰り返し読んだうえで、加除修正を行うようにしてください。
なお、示談は法律的には和解契約に該当しますが、和解契約で規定した権利関係に反する主張は後からできなくなるのが原則(「和解の確定効」といいます)です。記載に不備のある示談書を取り交わしてしまうと取り返しのつかない事態にもなりかねませんので、ご不安な方はテンプレートを使用せずに、弁護士に示談書の作成を頼るようにしましょう。
弊所では、業務上横領の示談書の作成のほか、被害者との示談交渉も得意としており実績があります。逮捕回避・不起訴獲得のために示談を成立させたいけど自分一人で解決できそうにないとお困りの方は、全国無料相談の弁護士までご相談ください。弁護士が依頼者を全力で守ります。
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