
「身に覚えのない横領を疑われているが、認めない場合はどうなるのか」「横領してしまったが、証拠がないなら認めなくても大丈夫だろうか」と悩んでいませんか。
身に覚えがないのであれば、どれだけ厳しく問い詰められても認めず、弁償にも応じないのが基本です。一方、実際に着服してしまった場合は、認めずにやり過ごそうとするほど状況は悪化していきます。
疑いをかけられると、会社からの追及や解雇の不安、警察沙汰になるのではないかという恐怖で、冷静な判断が難しくなります。
この記事では、横領事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。
- 横領を疑われたが認めない場合にとるべき対応
- 否認した場合に逮捕される可能性
- 冤罪で解雇や犯人扱いをされたときの対処
- 実際に横領した場合のリスクと示談
お読みいただくことで、いま会社や警察に対してどう動けばよいかを判断できます。
なお、横領の疑いをかけられてお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。ご相談は地域を問わず承っています。
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横領とは?やっていないのに疑われるケース
横領とは、会社から管理を任されているお金や物を勝手に自分のものにしてしまう行為です。業務上の立場を利用した横領行為は業務上横領罪(刑法第253条)にあたり、10年以下の拘禁刑という重い刑罰が定められています。
※2025年6月施行の改正刑法により、懲役刑と禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。
業務上横領罪の成立要件については「業務上横領罪とは?刑罰の重さと判例を解説」をご覧ください。
一方で、横領をやってもいないのに、会社から犯人扱いされ、濡れ衣を着せられてしまうこともあります。たとえば、次のような場面です。
- コンビニの帳簿上の売上金と実際の売上金が合わず、店長が売上金を持ち出したのではないかと疑われる
- 棚卸で商品の在庫が足りず、オークションなどで横流ししたのではないかと疑われる
- 訪問販売の会社の経営が苦しくなる中、営業担当者が売上金を使い込んだのではないかと疑われる
このようなあらぬ疑いをかけられ、横領を認めない場合にどう対応すべきかを、次の章で解説します。
横領を疑われたが認めない場合にとるべき対応
横領をしていないのに会社から横領の疑いをかけられた場合にとるべき対応は、次の5つです。
- ①絶対に認めない
- ②弁償しない
- ③証拠の提示と調査を求める
- ④冤罪で解雇されたら撤回を求め、犯人扱いには損害賠償も検討する
- ⑤弁護士に相談する
実際に横領した場合は、とるべき対応が大きく変わります(次の章で解説します)。分かれ目を図にすると、次のとおりです。
①絶対に認めない
横領をしていないのであれば、会社の聴き取りでも警察の取調べでも、絶対に認めないことが大切です。問い詰められても、うろたえて相手の話に合わせたりせず、無実を主張し、最初から最後まで一貫して否認してください。警察などの取調べでは、話したくないことは話さなくてよく(黙秘権)、供述調書が話した内容と違えば訂正を求め、納得できなければ署名押印を拒むこともできます(刑事訴訟法第198条)。
「横領を認めない場合は逮捕されるのでは」と心配になるかもしれませんが、否認しているだけで必ず逮捕されるわけではありません。逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されれば、逮捕もあり得ます。逮捕された場合は、48時間以内に検察官へ送られ、そこから24時間以内に勾留(逮捕に続いて身柄を拘束する手続き)を請求するかどうかが判断されます。勾留は原則10日間で、延長されるとさらに最大10日間続くため、逮捕から最長23日間、身柄を拘束されることがあります。
逮捕されない場合でも、捜査機関の取調べでは、否認を続けると追及が厳しくなりがちです。また、逮捕された後も横領を認めない場合は、証拠を隠すおそれがあるとみられ、勾留が延長されるなど、身柄の拘束が長引く場合もあります。
慣れない留置場で連日取調べを受けると、早く楽になりたくて、やってもいない横領を「やりました」と認める虚偽の自白をし、供述調書に署名してしまう人もいます。しかし、一度横領を認めると、認めた内容を後から覆すことは容易ではありません。話が変われば信用できないと受け取られ、かえって立場を悪くするおそれもあります。
警察の取調べでどう答えればよいか迷うときは、呼び出しに応じる前に弁護士へ相談しておくと安心です。会社が警察に処罰を求めた場合に、捜査や逮捕がどう進むのかについては「横領で刑事告訴されたらどうなる?流れと取り下げのための対応」もあわせてご確認ください。
②弁償しない
会社から損害額の弁償を求められても、横領していないのであれば応じてはいけません。
弁償は、通常、自分が横領したことを前提とする行為なので、応じれば、会社に横領を認めたと受け取られるおそれがあります。「弁償はするが横領は認めない」という言い分は、会社には通じにくいでしょう。
たとえば、レジの現金が合わないと、店長や経理担当者など管理を任されている人は、自分のお金で穴埋めしたくなるかもしれません。しかし、横領を認めない場合でも、自腹で補填すれば、自分が犯人だと認めたように見られかねないため、控えてください。
③証拠の提示と調査を求める
会社があなたを横領の犯人だと決めつけてくるなら、その根拠となる証拠の提示を求めましょう。
あなたの側で身の潔白を証明する必要はなく、横領があったことを証拠で示す責任(立証責任)は、疑いをかけている側にあります。刑事裁判では検察官が、懲戒解雇(制裁としての解雇)の有効性や損害賠償が争われる場面では会社が、いつ、誰が、どのような方法で、いくらを横領したのかを示さなければなりません。
会社が根拠として示してくるのは、たとえば次のような記録です。
- 防犯カメラの映像
- 領収書、レシート
- 出納帳
- レジの入出金記録
- 会計伝票
- 銀行などの金融機関の通帳
自分で証明する義務はなくても、反論に備えて、勤務表やレジの締め作業の記録など、疑われている時間に自分が何をしていたかを示せる資料を手元に残しておくと安心です。
会社が確かな証拠もないまま疑っているようなら、さらに調査するよう求めるとともに、法的な手段も考えていると伝えて、会社をけん制するのも一つの方法です。
④冤罪で解雇されたら撤回を求め、犯人扱いには損害賠償も検討する
横領を認めない場合、疑いをきっかけに懲戒解雇を言い渡されたり、退職を勧められたりすることがあります。冤罪であれば退職届は出さず、解雇には撤回を求めましょう。退職の勧めに応じる義務はなく、いったん退職届を出すと自分の意思で辞めたことになり、後から争いにくくなります。
法律では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇(不当解雇)は、権利を濫用したものとして無効とされています(労働契約法第16条)。横領の証拠が不十分なまま解雇された場合、その解雇は無効と判断される可能性があります。
会社が撤回に応じなければ、労働審判の申立てや訴訟を検討することになります。労働審判は、裁判官1名と労働審判員2名で組織する労働審判委員会が、原則として3回以内の期日で解決を図る手続きです。裁判所によると、平成18年から令和6年までの間に終了した労働審判事件のうち65.5%が、申立てから3か月以内に終わっています。解雇が無効と認められれば職場に戻ることができ、解雇後に支払われなかった賃金も請求できます。
また、根拠もないまま犯人扱いを続けたり、自白を迫ったりする会社の対応は、パワハラにあたる可能性があります。そうした対応が原因でうつ病などになり休職した場合は、会社に慰謝料を含む損害賠償請求ができることもあります。
職場の同僚や取引先など、多くの人が知りうる形で「横領の犯人だ」と言いふらされた場合は、名誉毀損(人の社会的な評価を下げること)として損害賠償を請求できる余地もあります。
⑤弁護士に相談する
会社や捜査機関から横領の疑いをかけられたら、早い段階で弁護士に相談してください。依頼する弁護士をどう選ぶか、費用はどのくらいかについては「横領事件に強い弁護士とは?依頼するメリットと費用を解説」で紹介しています。
横領を認めない場合の聴き取りや取調べで、実際にどう受け答えすればよいかは、一人では判断しにくいでしょう。弁護士に依頼すると、状況に応じて次のようなサポートを受けられます。
疑いを晴らすために弁護士が代理人として会社とやり取りし、横領を裏付ける証拠が不十分だと主張して、弁償の要求や懲戒解雇、退職の勧めに対応します。会社が警察に被害届(被害の事実を届け出る書類)を出す前であれば、横領の事実がないことを会社に説明し、刑事事件になるのを防げることもあります。
警察から呼び出しを受けたときは、取調べでの受け答えについて事前に助言します。日本では、取調べに弁護士が立ち会うことは権利として認められておらず、求めても応じてもらえないのが通常です。そのため、取調べの前後に弁護士と打ち合わせを重ね、不当な取調べがあれば捜査機関に改善を申し入れます。
逮捕された場合も、弁護士はすぐに面会(接見)に行き、取調べへの対応を助言します。検察官や裁判官に勾留の必要がないことを伝え、早く釈放されるよう働きかけます。
実際の解決例として、依頼者が横領は否認したまま、自身の対応で会社の損害の発覚が遅れた可能性がある点に限って責任を認める形で和解し、賠償請求を大幅に減額できた事例については「業務上横領疑いの賠償請求を800万円から150万円に減額できた事例」をご覧ください。
横領をしたのに認めない場合のリスクと示談の重要性
ここまでは、横領をしていない場合の対応を解説しました。ここからは、実際に会社のお金を着服したのに、証拠がない、あるいは証拠が不十分だと考えて横領を認めない場合について説明します。
横領した自覚がある場合は、弁護士に相談したうえで、正直にありのままの事実を認めるべきです。会社がまず知りたいのは、いつから、何回、どのような方法で、いくら横領したのかという事実です。正直に話すことが、謝罪や被害の弁償について話し合うための前提になります。
証拠がないと思って否認を続けると状況が悪化する
横領した自覚があるのに事実を認めないと、会社や捜査機関の心証を悪くします。会社が謝罪や弁償の話し合いに応じず、警察に被害届を出して、刑事事件になる可能性もあります。逃げたり証拠を隠したりするおそれがあるとみられれば、被害額が少なくても逮捕されかねません。
少額の横領で逮捕や解雇に至るかどうかについては「業務上横領は少額でも逮捕や解雇される?取るべき対処法」をご参照ください。
「証拠がないから認めなくても大丈夫だろう」と考えていても、会社や捜査機関は、つかんでいる証拠をすべて見せるわけではありません。証拠はないと自分一人の判断で決めつけるのはとても危険です。
起訴された場合も、事実を認めず、被害を弁償していないことは、刑を決めるうえで不利な事情として考慮されることがあります。
また、否認を続けても、逃げ切れるとは限りません。業務上横領の公訴時効(検察官が起訴できる期間)は7年です(刑事訴訟法第250条第2項第4号)。公訴時効が完成するまでは、新たな証拠が見つかれば捜査が始まる可能性があります。横領を認めない場合は、何年も発覚におびえながら過ごすことになり、精神的な負担も大きいでしょう。時効の数え方については「横領罪の時効は何年?いつから進行するかを弁護士が解説」で解説しています。
横領した場合は示談による早期解決が重要
示談とは、横領したお金の返還や損害の賠償をして、当事者間で問題を解決する手続きです。会社が被害届を出す前に示談がまとまれば、刑事事件にならずに済む可能性があります。
被害届が出された後でも、示談が成立し、会社が処罰を望まないと伝えてくれれば、検察官が起訴するか不起訴にするかを決める際に考慮されます。ただし、業務上横領は、被害者の告訴(犯人の処罰を求める申告)がなくても処罰できる犯罪のため、被害届を取り下げてもらっても、捜査が必ず終わるとは限りません。
本人が会社に直接示談を申し入れても、感情的な対立から話が進まないことがあります。示談金の額や条件の決め方にも専門的な判断が求められるため、弁護士を通じて進めるのが安心です。示談金の内訳や交渉の進め方については「業務上横領の示談金相場は?示談を成功させる5つのポイント」で詳しく解説しています。
横領してしまった自覚がある方は、一人で抱え込まず、早めに弁護士へ相談してください。
横領を疑われてお困りの方はすぐにご相談ください
やっていない横領を認めない場合は、会社の聴き取りでも捜査機関の取調べでも否認を貫き、弁償の求めにも応じないことが大切です。反対に、会社のお金に手をつけてしまったのなら、否認を続けるのではなく、早く事実を認めて示談に動くことで、刑事事件になるのを防げる可能性があります。
どちらの立場でも、会社とのやり取りや取調べへの対応を一人で抱えると、思わぬ不利益を招きかねません。「会社から突然呼び出されて問い詰められている」「すでに解雇を言い渡された」「警察から連絡が来ている」など、どの段階でも、弁護士に相談することで取れる選択肢は広がります。
当事務所は、横領の冤罪を主張する方の会社との交渉や、横領事件の示談交渉を数多く手がけてきた実績があります。依頼者の不利益を最小限に抑えるため、弁護士が迅速に動き、全力を尽くして守ります。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

