横領を認めない場合にとるべき5つの対応方法を弁護士が解説
  • 横領をやってないのに会社から疑いをかけられた…あらぬ疑いとはいえ、横領を認めないと何かしら不利益があるのでは…
  • 横領をしてしまったが、認めないととどうなるのだろう…

このような悩みや疑問をお持ちではないでしょうか。

そこでこの記事では、横領事件に強い弁護士が、

  • 横領をやっていないのに疑いをかけられ、横領を認めない場合の対応方法
  • 横領をしたのに認めないことで生じるリスク

などについてわかりやすく解説していきます。

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横領を認めない場合とは?

横領とは、店から管理を任されている売上金を自分の生活費に充てる場合のように、自分の占有する他人の物を勝手に処分する行為のことをいいます。この占有が業務上のものであった場合には業務上横領罪(刑法第253条)が成立し、10年以下の懲役刑が科せられることがあります

信じがたいことですが、会社に勤めていると、この横領をやってもいないのに、会社からやったのではないかと疑いをかけられることがあります。

横領をやってもないのにやったのではないかと疑いをかけられるケースとしては、たとえば、

  • あるコンビニ店の帳簿上の売上金と実際にある売上金とが合致しないため、勝手に売上金を持ち出したのではないかと店長が疑われるケース
  • 棚卸の際に会社の商品の在庫数が足らず、商品をオークション等で横流ししているのではないかと疑われるケース
  • 訪問販売業を営む会社の経営状況が悪化している中、営業担当者が訪問販売による売上金を使ったのではないかと疑われるケース

などがあります。

では、雇用主や職場の上司から、このようなあらぬ疑いをかけられて横領を認めない場合にはどのように対応すべきでしょうか。以下で解説していきます。

横領を認めない場合にとるべき対応

横領をしていないのに会社から横領の疑いをかけられた場合にとるべき対応は以下の通りです。

  • ①絶対に認めない
  • ②弁護士に相談する
  • ③弁償しない
  • ④証拠がない・証拠不十分の場合は調査を依頼する
  • ⑤会社を訴える

①絶対に認めない

まず、会社や捜査機関での聴き取りで「横領したのではないか?」と厳しく追及されても絶対に認めてはいけません最初から最後まで一貫して否認の態度を貫くことが大切です

特に、捜査機関での取調べでは、否認すれば否認するほど厳しい追及を受けることが予想されます。また、とても矛盾していることではありますが、否認すれば否認するほど身柄拘束され、かつ、その期間が長期化する傾向にあります。

慣れない生活環境のもと、連日厳しい取調べを受ければ、はやくこの環境から解放されたいと思い「やりました」と、横領をやってもないのにやったと認めてしまいたくもなります。

しかし、一度、横領を認めると、その後、その事実を覆すことは容易ではありません。それどころか、話が二転三転して信用できないと思われ、ますます心証を悪くし事態を悪化させる原因にもなりかねません。

相手にやってないことを強く印象付けるためにも、横領を疑われた当初から横領を認めてはいけません。

②弁護士に相談する

次に、会社や捜査機関から横領の疑いをかけられた段階で弁護士に相談することです

横領したことを認めない態度をとるといっても、会社や捜査機関での聴き取りでどう対応していいのかわからない場合も多いかと思います。

弁護士に相談すれば、会社や捜査機関の聴き取りで実際にどう対応すればよいのか、具体的なアドバイスを受けることができます。

また、弁護士に対応を依頼すれば、弁護士が依頼者の代わりに会社に依頼者の意見や主張を述べてくれます。捜査機関に対しては、弁護士がついただけでも厳しい取調べへの抑止になりますし、仮にその疑いがある場合は、捜査機関に対して異議を述べたり、取調べへの立会いを要求するなどして、厳しい取調べをやめるよう働きかけを行います。

③弁償しない

次に、会社から提示された損害について弁償しないことです

基本的には、弁償は横領を認めたことを前提とする行為です。そのため、仮に弁償すれば、会社はあなたが横領を認めたと判断するでしょう。弁償と横領を認めないこととは矛盾しますから、弁償はするけど横領は認めないというのは会社には通じない話です。横領を認めないのであれば弁償してはいけません。

なお、レジの現金がなくなったケースで、店長や管理担当者などの責任ある立場の方の中には、現金がなくなったことに責任を感じ、みずから損害を補填しようとする人がいますが、絶対にやってはいけません。補填するということは、横領の犯人ではないのに自ら横領の犯人であると宣言しているようなものだからです。別の犯人が出てくるまで、お金のことに関しては触れないようにしましょう。

④証拠がない・証拠不十分の場合は調査を要求する

次に、会社に対し、あなたが横領の犯人だと疑いをかける証拠の提示を求めることです

そもそも、いつ、誰が、どのような方法で、いくらの金額を横領したのかは会社側に証明責任があります。そして、その証明は以下であげるような客観的な証拠によって行う必要があります。あなたが横領していないことを証明する必要はありません。

横領を証明する証拠としては、

  • 防犯ビデオ映像
  • 領収書、レシート
  • 出納帳
  • レジの入出金記録
  • 会計伝票
  • 銀行などの金融機関の通帳

などがあります。

仮に、会社が確かな証拠もなくあなたに横領の疑いをかけているおそれがある場合は、さらなる調査を要求したり、後述するような別の法的措置をとる構えをみせて会社をけん制していかなければなりません。

⑤会社を訴える

横領していないのにやったと執拗に追及され、その結果、精神的苦痛を被った、会社を休職せざるをえなくなった、うつ病にかかった、などという場合は、会社に対して損害賠償金(慰謝料も含む)の支払いを求めて訴えることが可能です。また、この会社の行為はパワハラにも該当する可能性があるため、労働審判で訴えることも可能です。

また、会社が、第三者にもわかるような方法で、あなたが横領の犯人であることをいいふらしたような場合は、会社を名誉毀損で訴えることも可能です

横領が冤罪なのに解雇された場合の対応

真実、横領した場合は会社から懲戒解雇処分を受ける可能性があります。あるいは、解雇される前に自分から退職するよう勧められ、拒否した場合に解雇される可能性も考えられます。いずれにしても、横領が冤罪であるならば解雇されるいわれはありませんから、以下の対応をとって断固拒否する必要があります

解雇の撤回を求める

まずは、解雇の撤回を求めることです。

会社の解雇権は非常に強力な権限で、会社が従業員を自由に解雇できるとすれば、従業員は安心して仕事できず、従業員の生活に重大な影響を及ぼしかねません。

そこで、法律では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効とする、と定められており(労働契約法第16条)、これを解雇権濫用法理といいます。

この点、横領をしていないのに解雇された場合の解雇は解雇権濫用法理に照らして無効であることは明らかです。ただちに、会社に解雇の撤回を要求すべきです。

復職を望む場合は、会社と復職の時期・給与・勤務時間・配置部署などの復職後の労働条件を詰める必要があります。また、解雇後、支払われなかった給与に相当する金額を会社に払うよう請求する必要があります。

労働審判を申し立てる

会社に解雇の撤回を求めても撤回しない場合は、労働審判を申し立てることも検討します。

なお、必ず労働審判を申し立てなければならないわけではなく、事案に鑑みて、後述する裁判を提起することもできます。また、労働審判を申し立てても、トラブルの内容から審判になじまないと判断された場合は裁判に移行する場合もあります。

労働審判は、労働関係の専門家で構成された労働審判委員会が労働者と会社との間に入って、両者で生じた解雇、賃金の不払いなどのトラブルに関して話をまとめていく手続です

労働審判の最大の特徴は、原則として3回以内の期日で審理が終わることが法律で求められているため、トラブルの迅速な解決が期待できることです。裁判所の統計によると、平成18年から令和元年までに終了した労働審判について、平均審理期間は77.2日で、70.5%の事件が申立てから3か月以内に終了しているとのことです。

審理では、まずは話し合い(調停)で解決できないかどうか見極められます。そして、話し合いがまとまれば調停が成立し、手続きは終了です。一方、話し合いがまとまらない場合は、労働審判委員会が一定の解決策(労働審判)を当事者に示します。その後、当事者が、2週間以内に異議の申し立てをしない場合、労働審判は確定しますが、当事者のいずれかが異議の申し立てを行った場合は労働審判の効力は失われ、裁判に移行します。

裁判を提起する

最後に、裁判を提起することです。

会社が断固として話し合いに応じない姿勢を見せている場合は、労働審判を経ることなくいきなり裁判を提起することも検討する必要があります。また、前述のとおり、労働審判を申立てたものの、当事者のいずれかが労働審判に対して異議を申し立てた場合は裁判に移行します。

裁判で解雇が違法と認定された場合、解雇は無効となりますので、会社に従業員を復職させる義務が生じます。また、会社は、従業員に対し、解雇後に払っていなかった給料を支払う必要があります。解雇により精神的苦痛を被った場合は、会社に慰謝料を請求することも可能です。

もっとも、解雇の無効を争う裁判は、通常、1年から1年半ほどかかります。そこまで手間暇をかけるメリットがないとの判断に至った場合は、訴訟中に会社と和解し、解決金を受け取って退職することも一つの方法です。

横領をしたのに認めない場合に生じるリスク

これまでは横領の事実がない(やっていない)ケースについて解説してきましたが、実際に横領をやったが証拠がない又は証拠不十分であることに乗じて横領したことを認めない(自白しない)ケースもあります。

横領を疑われるパターンとしては、会社の担当者から横領について聴き取りが行われる場合、あるいは警察などの捜査機関から出頭要請を受け、取調べを受ける場合のいずれかでしょう。

ただ、いずれの場合でも、横領した認識がある場合は正直にありのままの事実を自白すべきです。被害者とすれば、どうして横領したのか、どのような経緯で横領したのか、いつから、何回横領していたのか、どんな手口で横領したのかなど、まずは事実を知りたいはずです。その被害者の気持ちに応えることが何よりも大事です。

仮に、横領した認識があるのに横領の事実を認めないと、相手の会社や捜査機関の心証を悪くします。会社は謝罪や示談交渉に応じてくれず、捜査機関に被害届を出され、刑事事件化してしまう可能性があります。捜査機関は逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがあるとして逮捕に踏み切る可能性も考えられます。たとえ横領額が少額であっても同様です。

あなたが「証拠がない、あるいは証拠不十分だから横領を認めなくても大丈夫だろう」と高を括っていても、実際は、すでに必要十分な証拠をつかまれている可能性もあります。当然のことながら、会社や捜査機関はあなたにつかんでいる証拠のすべてを見せません。自分一人の判断で証拠はない、証拠は不十分だから横領を認めなくても大丈夫と決めつけることはとても危険です

また、業務上横領の時効は7年ですので、その間に新たな証拠が発見されないとも限りません。いつ逮捕されるかわからない不安を抱えながら時効完成を待つのは精神的にもかなり辛いものがあります。

そのため、横領してしまった方は、被害届が出される前に早急に会社との示談成立に向けて動くべきでしょう。

横領であらぬ疑いをかけられた時に弁護士に依頼するメリット

横領をやっていないのにやったとあらぬ疑いをかけられた場合は、前述のとおり、はやめに弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士に依頼することは、次のようなメリットがあります。

精神的な支えになってくれる

まず、あなたの精神的な支えになってくれることです。

横領を認めない場合は、解決までに会社との長い戦いが想定されます。その間、様々な疑問や不安が出てくるかと思いますが、弁護士に依頼しておけば、基本的にはいつでも弁護士に相談し疑問や不安をぶつけることができます。いつでも弁護士に相談できる環境にあるかないかで、日々の生活の送り方も大きく変わってきます。

負担が減る

次に、負担が減ることです。

弁護士に依頼せずに会社に解雇の撤回を求める場合は、会社と直接交渉しなければなりません。労働審判を申立てたり、裁判を提起する場合は、初めて見る書類を一から自分で作る必要があります。

弁護士に依頼すれば、弁護士があなたの代わりに会社と交渉したり、手続きを進めてくれますし、依頼者の要求に沿った弁護活動を展開してくれます。依頼者は弁護士にご自分の要求を細かく伝えておく必要があります。

弊所では、横領してないのに犯人扱いされた方の冤罪の主張、会社との交渉を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力でサポートしますので、まずは当事務所の弁護士までご相談ください。

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