
会社を経営していると、「会社の社長が、会社のお金を使い込んだら横領になるのだろうか」「株主が自分一人だけの会社なら、問題にはならないのでは」と、ふと不安に思うことがあるかもしれません。
会社の代表である社長でも、会社のお金を自由に使ってよいわけではありません。会社とは法律上別個の人格であり、その資金は社長にとって「他人のお金」だからです。そのため、株主が社長一人だけの会社であっても、私的に使い込めば業務上横領罪や特別背任罪に問われることがあります。
この記事では、横領・背任事件に強い弁護士が、次の点をわかりやすく解説します。
- 社長でも横領になるのはなぜか
- 株主が社長一人でも罪に問われるのか
- 税務調査や内部告発で発覚するのか
- 発覚した後に取るべき対応
なお、横領や背任についてお悩みの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお気軽にご連絡ください。
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社長が会社のお金を使い込んだら横領になる?
会社の代表である社長でも、会社のお金を勝手に私用へ充てれば、業務上横領罪の対象になり得ます。「トップなのだから自由に使えるはず」と感じる方は少なくありませんが、それは「会社」と「社長」を同じものと捉えてしまう誤解です。ここでは、社長でも横領になる理由と、問われ得る罪、社長の立場による違いを整理します。
私的に使えば業務上横領罪に問われる
法律上、社長という「私人」と、会社という「法人」は、別個の人格を持つ存在として扱われます。
たとえば破産の場面を考えるとわかりやすいです。社長が自己破産しても会社の借金は残りますし、逆に会社が倒産しても社長個人の借金が消えるわけではありません。両者の財産は、はっきりと切り離されています。
そのため、社長が会社の財産を勝手に自分のものとして使えば、自己が預かる他人の財産を着服したことになり、業務上横領罪が成立し得ます。法定刑は「10年以下の拘禁刑」です(刑法253条)。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
業務上横領罪が成立するのは、おおむね次の3つを満たす場合です。
- 会社の財産を社長が預かり、管理している(自己の占有する他人の財産であること)
- その管理が、会社からの委託に基づくこと(役員は会社から財産管理を任された立場にあります)
- 任された立場に背いて、所有者でなければできない処分を行うこと(私的な使い込みなど)
社長による使い込みは、会社資金をそのまま私的な支払いに回すほか、生活費や趣味の出費を経費に紛れ込ませる公私混同、実在しない従業員を装った架空人件費、自分への不相当な報酬の上乗せなど、さまざまな形で現れます。業務上横領罪の構成要件や具体的な事例については業務上横領罪とは?逮捕されないケースと構成要件・事例・判例で詳しく解説しています。
特別背任罪などに問われることもある
社長の行為は、手口によって業務上横領罪以外の罪に問われることもあります。
自分や第三者の利益を図ったり、会社に損失を負わせたりする狙いで、任された職務に反した場合には、特別背任罪にあたることがあります。たとえば、回収できないと分かっていながら、担保もとらずに知人の会社へ会社資金を融資したようなケースです。法定刑は10年以下の拘禁刑、または1000万円以下の罰金で、両方が科されることもあり、業務上横領罪と並ぶ重い罪です(会社法960条)。詳しくは特別背任罪とは?事例・判例の紹介と成立要件・時効を解説をご覧ください。
このほか、使い込みを隠すために領収書を偽造・改ざんすれば私文書偽造罪が、会社の倒産にあたって財産を隠したり親族へ不当に移したりすれば詐欺破産罪が、それぞれ別に問われる場合もあります。
1人社長・オーナー社長・雇われ社長でも成立する
社長の立場がどうであっても、会社の財産を私的に使えば罪になり得る点は変わりません。
株主が社長一人だけの会社でも、オーナーとして大半の株式を持つ会社でも、社長個人と会社が別人格である以上、会社のお金は社長にとって「他人のお金」です。「自分の会社だから何に使ってもよい」という感覚は通用しません。
出資者ではない雇われ社長の場合は、より明確です。会社や株主から経営を委ねられた立場であり、その信頼を裏切る使い込みは横領そのものです。刑事責任に加えて、株主総会の決議によって役員を解任される可能性もあります。
株主が社長一人なら賠償責任を免れる?
株主が社長一人の会社では、民事の損害賠償責任については特殊な扱いになります。一方で、刑事責任は株主の同意があっても免れられません。ここが、社長による横領を考えるうえで最も誤解されやすい点です。
まず民事責任から見ていきます。役員が任務を怠って会社に損害を与えた場合、その役員は会社に対して損害賠償責任を負います(会社法423条1項)。社長が会社の財産を着服すれば、明らかな法令違反であり、着服額がそのまま会社の損害になるため、この責任が生じます。
ただし、この会社に対する責任は、総株主の同意があれば免除できるとされています(会社法424条)。株主が社長一人であれば、唯一の株主である社長自身が同意することで、自分の賠償責任を免除できてしまう、という結論になります。
もっとも、免除できるのはあくまで「会社に対する」責任にとどまります。会社が倒産して債権者が損害を受けたような場合、債権者など第三者に対する責任や、後述する刑事責任まで当然に消えるわけではありません。株主が一人でも株主代表訴訟(株主が会社に代わって役員の責任を追及する訴訟)を起こせるとされていることからも分かるとおり、役員の責任は本来それだけ重く扱われています。
そして刑事責任は、民事とはまったく別です。業務上横領罪や特別背任罪は、私人どうしの取り決めで処罰を免れられる性質のものではありません。株主全員が納得していても、取引先や債権者からの告発、捜査機関の判断によって立件・処罰される可能性は残ります。「株主は自分だけだから問題ない」とは言い切れません。
社長の横領はどう発覚する?
社長による横領は、社内で気づかれにくい一方、外部のチェックや内部からの指摘で表面化します。発覚のきっかけとして特に多いのが、税務調査と内部告発です。
税務署の税務調査で発覚する
税務調査は、社長の横領が明るみに出る代表的な入り口です。
調査では、経費の内訳や帳簿のつじつまが合っているか、会社の売上規模に対して特定の勘定科目が不自然に膨らんでいないかが確認されます。私的な支出を経費に紛れ込ませていれば、こうした点から指摘を受けやすくなります。
調査の対象期間は通常過去3〜5年分ですが、仮装・隠蔽をともなう悪質な不正と判断されれば、最長7年分まで遡って調べられます。長く続けた使い込みほど、まとめて発覚するということです。
税務上は、社長が私的に使った分が会社の損金として認められず、社長への役員賞与とみなされることがあります。そうなると会社には法人税の追徴と重加算税が、社長個人には所得税が課され、修正申告と納付を求められます。刑事責任とは別に、重い税負担が一気にのしかかる点に注意が必要です。
社員や元社員の内部告発で発覚する
経理担当者や元従業員からの内部告発も、発覚の典型的なきっかけです。
社長の公私混同や不自然な支出は、近くで帳簿を扱う社員には気づかれていることが少なくありません。横領を知りながら黙っている苦しさや、社長との対立をきっかけに、証拠をそろえたうえで告発に踏み切るケースがあります。
ある程度の裏づけを持って告発される分、発覚後は一気に刑事事件へ進みやすく、社内処分や捜査に発展する可能性が高くなります。
横領が発覚した社長が取るべき対応
発覚すれば、社長は会社からの損害賠償請求という民事責任と、刑事告訴・逮捕という刑事責任の両方に直面します。社長の横領は世間の注目を集めやすく、実名で報道されれば会社の信用そのものが揺らぎかねません。だからこそ、早い段階での対応が結果を大きく左右します。
まず重要なのは、会社に事実を報告し、謝罪とともに被害の弁償を進めることです。着服した金額を返還し、会社との示談が成立すれば、刑事事件化を避けられる可能性が高まります。返済の方法や示談金、起訴・不起訴の見通し、量刑の傾向といった具体的な対応は、弁護士に相談しながら進めるのが現実的です。なお、示談金の相場や示談を成立させるポイントについては「業務上横領の示談金相場は?示談を成功させる3つのポイント」で詳しく解説しています。
業務上横領は、被害者である会社が告訴に踏み切るかどうかで、その後の展開が大きく変わります。捜査が始まる前に会社との交渉を整えられるかが分かれ目になるため、発覚に気づいた段階で、できるだけ早く弁護士へ相談しておくと安心です。
社長による横領・背任でお困りの方へ
社長であっても、株主が自分一人だけの会社であっても、会社の資金を私的に使えば業務上横領罪や特別背任罪に問われ得ます。民事の賠償責任は株主全員の同意で免除できる場合がありますが、刑事責任は株主が同意しても消えるものではありません。
横領や背任の疑いをかけられた場面では、会社への対応を誤ると、損害賠償の拡大や刑事事件化、実名報道へと一気に進みかねません。弁護士に依頼すれば、会社との示談交渉を代理し、被害弁償の進め方を整理したうえで、逮捕・起訴や前科を避けるための手立てを早い段階から取ることができます。
すでに税務調査が入っている、社内から指摘を受けている、会社から返済を求められているといった状況では、動ける時間は限られています。一人で抱え込まず、まずは現状を整理することが、不利益を最小限に抑える第一歩になります。
当事務所は横領・背任の弁護活動を得意とし、多くの実績があります。ご相談者の置かれた状況に合わせて弁護士が迅速に動き、解決まで力を尽くします。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

