
「社長が会社のお金を使い込んだら横領になるのか」「社員や株主に告発されたらどうなるのか」と不安を感じていませんか。
会社の財産は社長個人のものではないため、株主が社長一人だけの会社であっても、私的に使い込めば業務上横領罪などに問われることがあります。告発されれば警察の捜査が始まり、逮捕や起訴に進む場合もあります。
この記事では、横領・背任事件に強い弁護士が、次の点を解説します。
- 1人社長でも罪に問われるのか
- 社長の横領はどのように発覚するのか
- 横領を告発されたらどうなるのか
- 発覚した後、警察に呼ばれる前にすべきこと
お読みいただくことで、ご自身の状況で何が問題になり、警察から呼び出される前に何をすべきかを整理できます。
なお、会社のお金の使い込みでお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。ご相談は地域を問わず承っています。
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社長が会社のお金を使い込んだら横領になる?
社長が会社のお金を私的流用すれば、代表取締役という立場にあっても、業務上横領罪が成立し得ます。会社の資金は法人である会社のものであり、社長はそれを預かって管理しているにすぎないからです。
私的に使えば業務上横領罪に問われる
法律上、社長個人と会社は別々の人格です。社長が自己破産しても会社の借金が消えないように、両者の財産ははっきりと分けられています。
そのため、社長が会社の財産を自分のもののように使えば、預かっている他人の財産を着服したことになり、業務上横領罪が成立し得ます。法定刑は「10年以下の拘禁刑」です(刑法253条)。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
業務上横領罪が成立するのは、おおむね次の3つを満たす場合です。
- 会社の財産を社長が預かり、管理している(業務上自己の占有する他人の財産であること)
- その管理が、会社からの委託に基づくこと(役員は会社から財産の管理を任された立場にあります)
- 任された立場に背いて、所有者でなければできない処分をすること(私的な使い込みなど)
成立要件や判例の詳細は「業務上横領罪とは?刑罰の重さと判例を解説」で解説しています。
横領にあたる使い込みの例
使い込みには、会社の資金をそのまま持ち出す形のほか、経費や取引の名目で私的な支出を会社の支払いに見せかける形もあります。告発で問題になりやすいのは、次のような行為です。
- 会社の口座から自分名義の口座へ送金し、私生活の支払いにあてる
- 家族旅行や私的な飲食、買い物の代金を法人カードで払い、会社の経費として処理する
- 実在しない取引先からの請求や、中身のない業務委託料を装って、会社の資金を外に出す
- 働いていない人を従業員として登録し、その給与を自分で受け取る
- 実際より多い出張費や交通費を会社に請求する
もっとも、行為の形によっては、業務上横領罪ではなく詐欺罪など別の罪にあたることもあります。反対に、業務との関係を説明できる支出であれば、名目だけで横領と決まるわけではなく、お金の流れや社長の権限などを踏まえて判断されます。
特別背任罪などに問われることもある
社長を含む取締役などが、自分や第三者の利益を図る目的、または会社に損害を与える目的で任務に背き、会社に財産上の損害を与えた場合は、特別背任罪にあたります。たとえば、回収できないと分かっていながら、担保もとらずに知人の会社へ会社資金を融資したようなケースです。法定刑は10年以下の拘禁刑、または1000万円以下の罰金で、両方が科されることもあります(会社法960条)。詳しくは「特別背任罪とは?成立要件・罰則と事例・判例を解説」をご覧ください。
社長が横領を隠そうとして、他人名義の領収書を作ったり、受け取った領収書の金額を書き換えたりすれば、私文書偽造等罪に問われることがあります。他人の印章や署名が使われた文書であれば、法定刑は3か月以上5年以下の拘禁刑です(刑法159条1項・2項)。
また、債権者を害する目的で、会社の財産を隠したり、譲り渡したように装ったり、債権者に不利な形で処分したりすれば、破産手続開始の前後を問わず詐欺破産罪(10年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金。併科もあり)に問われることがあります。処罰されるのは、破産手続開始の決定が確定した場合です(破産法265条1項)。
1人社長・オーナー社長・雇われ社長でも成立する
株主が社長一人だけの会社でも、オーナーとして大半の株式を持つ会社でも、社長個人と会社が別の人格である以上、会社の財産は社長にとって刑法上の「他人の物」です。「自分の会社だから何に使ってもよい」という感覚は通用しません。個人事業主であれば事業の収益はそのまま本人の財産ですが、会社を設立している以上、1人社長であっても会社の収益は会社の財産です。
株主が社長一人の会社では、会社が告訴することは考えにくいものの、社員や取引先、債権者などの告発で捜査が始まる場合もあります。
出資者ではない雇われ社長は、会社や株主から経営を任された立場であり、その信頼を裏切る使い込みは業務上横領罪に問われ得ます。刑事責任に加えて、株主総会の決議で取締役を解任される可能性もあります(会社法339条1項)。
社長の横領はどう発覚する?
社長による横領は社内では気づかれにくい一方、外部のチェックや周囲の指摘で表に出ます。代表的なきっかけが、税務調査と、社員や株主からの告発です。
税務署の税務調査で発覚する
税務調査では、経費の内訳や帳簿のつじつまが合っているか、売上の規模に比べて特定の勘定科目が不自然に膨らんでいないかが確認されるため、社長が私的な支出を経費に紛れ込ませていれば指摘を受けやすくなります。
税務署がさかのぼって税額を正せる期間は原則5年ですが、偽りその他不正の行為によって税を免れていた場合は、最長7年分までさかのぼって課税されることがあります(国税通則法70条)。長く続けた横領ほど、まとめて発覚するおそれがあります。
税務上は、私的流用した分が経費と認められず、社長への役員賞与とみなされることがあります。その場合、会社には法人税などの追徴(仮装や隠蔽があれば重加算税も)が、社長個人には所得税が課されます。
社員や株主からの告発で発覚する
犯罪の被害を受けた人(ここでは会社)が捜査機関に処罰を求めることを「告訴」、被害者以外の人が犯罪を申し出て処罰を求めることを「告発」といいます。告発は、犯罪があると考えれば誰でもすることができます(刑事訴訟法239条1項)。
帳簿を扱う経理担当者や元社員は、社長の公私混同や不自然な支出に気づいていることがあり、対立や退職をきっかけに資料をそろえて内部告発に踏み切るケースもあります。少数株主や取引先が、社長による横領を疑って告発することもあります。告発状の出し先など具体的な手続きは「告訴・告発の方法|告訴状を受理してもらうための5つの注意点とは」をご参照ください。
横領を告発された社長はどうなる?
社長が横領で告発されると、警察の捜査が始まり、呼び出しを受けて事情を聴かれたり、場合によっては逮捕されたりしたうえで、検察官が起訴(刑事裁判にかけること)か不起訴かを判断します。
並行して、会社から損害賠償請求(与えた損害の穴埋め)を受ける場合もあります。刑事手続きの大まかな流れは次のとおりです。
警察の捜査が始まり、呼び出しを受ける
社長による会社の財産の横領は、告訴がなくても起訴できる犯罪(非親告罪)です。会社からの告訴に限らず、社員や株主などの告発でも捜査は進みます。
告訴や告発を受けた警察は、関係する書類と証拠物を速やかに検察官へ送らなければならないと定められています(刑事訴訟法242条)。捜査の中では、社長本人も警察に呼び出され、お金の使い道や経緯について事情を聴かれます。処分までの流れは「横領で刑事告訴されたらどうなる?流れと取り下げのための対応」にまとめています。
逮捕されることはあるのか
社長が告発されたからといって、必ず逮捕されるわけではありません。逮捕状は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときに出されますが、明らかに逮捕の必要がないと認められるときは出されません(刑事訴訟法199条)。
実務上、逮捕の必要性は逃亡や証拠隠滅のおそれを中心に判断され、横領による被害額が大きい、長期間繰り返していた、余罪がある、共犯者がいるといった事情があると、逮捕の可能性は高まります。
逮捕されなければ、普段どおり生活しながら呼び出しに応じて取調べを受けます。ただし、正当な理由なく呼び出しに応じないでいると、逮捕されることもあります。
有罪になれば前科がつき、実名報道のおそれもある
捜査を終えると、検察官が起訴するか不起訴にするかを決めます。起訴されて有罪判決が確定すれば、前科がつきます。量刑の目安や執行猶予の条件は「業務上横領は初犯でも実刑?刑罰と執行猶予の条件を弁護士が解説」で解説しています。
また、社長による横領は取引先や従業員などへの影響が大きく、報道されることもあります。実名で報じられれば、社長本人だけでなく、会社の信用も大きく損なわれかねません。
会社から損害賠償を請求される
刑事手続きとは別に、民事責任も生じます。取締役などの役員は、任務を怠って会社に損害を与えたとき、その損害を賠償する責任を負うためです(会社法423条1項)。社長が横領した場合、その額はそのまま会社の損害になります。
会社に対するこの責任は、総株主の同意がなければ免除できないと定められています(会社法424条)。裏を返せば、株主が社長一人の会社では、唯一の株主である社長自身の同意で、自分の賠償責任を免除できてしまいます。
ただし、免除できるのは会社に対する責任だけです。職務について悪意や重大な過失があり、取引先や債権者などの第三者に損害を与えた場合の責任(会社法429条1項)や、刑事責任までは消えません。
横領が発覚した場合に社長が取るべき対応
告発や税務調査で横領が発覚したら、社長は警察から呼び出しを受ける前に、会社への報告と被害の弁償、弁護士への相談を進めておくことが大切です。捜査が進んでからでは、会社との示談(話し合いによる解決)の交渉などに使える時間が限られていくためです。
会社に報告し、被害を弁償する
横領が明らかになった以上、社長はまず事実関係を整理して会社に報告し、謝罪したうえで、使い込んだお金を返済する準備を進めます。
被害の弁償を済ませ、会社が告訴や被害届(被害を警察に申告する届出)を見送れば、刑事事件にならずに済む可能性があります。ただし、社員や取引先などの告発があれば、会社が告訴しなくても捜査は進みます。すでに捜査が始まっていても、弁償や示談ができているかどうかは、検察官が起訴するかどうかを判断する際に考慮される事情のひとつです。
あわせて、経費として認める範囲を社内のルールで明確にし、支出の承認や帳簿の確認を社長以外の人も担う形に改めておけば、今後、私的な支出を疑われることも防げます。
返済計画の立て方や会社との示談の進め方は「業務上横領の示談金相場は?示談を成功させる5つのポイント」をご参照ください。
警察から呼び出されたら弁護士に相談する
社長が警察から呼び出しを受けたら、出頭する前に弁護士へ相談してください。取調べで話した内容は供述調書にまとめられ、起訴するかどうかの判断材料になります。使い込んだ金額や時期、使い道を整理し、どのように説明するかを事前に確認しておくことが大切です。
弁護士に依頼すれば、会社との示談交渉を任せられるほか、事実と異なる告発に対しては意見書で反論するなど、不起訴に向けた活動を早い段階から始められます。依頼する弁護士の選び方や費用は「横領事件に強い弁護士とは?依頼するメリットと費用を解説」もあわせてご確認ください。
社長による横領・背任や告発でお困りの方へ
社長であっても、1人社長の会社であっても、会社の資金を私的に使えば罪に問われるおそれがあります。告発を受ければ、警察の捜査が始まります。
弁護士が間に入れば、会社との示談交渉を代わりに進められ、警察や検察に事情を説明する準備も整えられます。早い段階で動き始めるほど、逮捕や起訴を避けるために取れる手立ては多くなります。
税務調査で指摘を受けた、社内で告発の動きがある、警察から呼び出しを受けたといった状況では、動ける時間は限られています。一人で抱え込まず、まずは現状を整理することが、不利益を抑える第一歩になります。
当事務所は横領・背任の弁護活動を得意とし、多くの実績があります。ご相談者の状況に合わせて弁護士が迅速に動き、解決まで全力を尽くします。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

