
「万引きをして逃げようとしたときに店員を突き飛ばしてしまった」「空き巣中に住人に見つかり、もみ合いになった」このような場合、単なる窃盗罪ではなく、事後強盗罪として強盗と同じ重い刑罰が科される可能性があります。
事後強盗罪とは、窃盗の犯人が盗んだ物を取り返されることを防ぐため、逮捕を免れるため、または罪跡を隠滅するために暴行・脅迫を加えた場合に成立する犯罪です(刑法第238条)。窃盗罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」ですが、事後強盗罪が成立すると「5年以上の有期拘禁刑」となり、罰金刑の選択肢がなくなります。
この記事では、強盗事件に強い弁護士が、
- 事後強盗罪の構成要件(成立要件)
- 事後強盗の既遂・未遂の時期
- 事後強盗罪の刑罰
について詳しく解説していきます。
なお、事後強盗罪で逮捕された、または逮捕の可能性があり早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。
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事後強盗の構成要件
事後強盗の構成要件(成立するための要件)は次のとおりです。
窃盗の犯人であること
まず、事後強盗の主体は「窃盗の犯人」であることが必要です。強盗の犯人が盗んだ物を取り返されることを防ぐために、被害者や目撃者に暴行を加えても事後強盗は成立せず、全体として強盗が成立するか、強盗とは別に暴行または傷害が成立するのみです。
ここでいう「窃盗犯人」とは窃盗既遂の犯人のほか、窃盗の未遂の犯人も含みます。一方、窃盗の目的で他人の家に立ち入ったところ、家人に気づかれたため、逮捕を免れるために家人に暴行を加えたケースのように、いまだ窃盗の実行の着手すら行っていない段階(未遂の前段階)では事後強盗が適用される余地はありません。
後述するように、窃盗の犯人が盗んだ物を取り返されることを防ぐために暴行または脅迫を加える場合には、当然その窃盗行為が既遂に達していることになります。一方、窃盗の犯人が逮捕を免れまたは罪跡を隠滅するために暴行または脅迫を加える場合には、窃盗行為が既遂であると未遂であるとを問いません。窃盗罪の構成要件や刑罰については「窃盗罪とは?構成要件や刑罰は?窃盗の示談・逮捕に強い弁護士が解説」で詳しく解説しています。
強盗罪とは?構成要件や刑罰は?強盗事件に強い弁護士が徹底解説
暴行または脅迫を加えたこと
次に、暴行または脅迫を加えたことが必要です。
暴行または脅迫の相手は必ずしも被害者である必要はなく、窃盗を目撃した目撃者や通報を受け現場に駆け付けた警察官などに暴行または脅迫を加えた場合でも事後強盗が成立する可能性があります。
暴行または脅迫は次のいずれかの意図をもって行われることが必要です。
- ①盗んだものを取り返されることを防ぐため
- ②逮捕を免れるため
- ③罪跡を隠滅するため
前述のとおり、①を目的とした暴行または脅迫の場合は窃盗が既遂に達していることが前提となりますが、②または③を目的とした暴行または脅迫の場合は窃盗が既遂であると未遂であるとを問いません。
事後強盗は強盗の一種ですから、暴行または脅迫は、場所的・時間的、被害者らとの人的関係を総合的に判断して窃盗と密接な関連性を有すると認められる状況のもとに行われることを必要とします。判例(最高裁決定昭和33年10月31日など)は、暴行または脅迫が「窃盗の現場」、または少なくとも「窃盗の機会の継続中」になされることが必要としています。
暴行または脅迫が、窃盗の現場ないし窃盗の機会の継続中になされたかどうかは
- ①暴行または脅迫のなされた場所が、窃盗の犯行現場またはこれに接した場所であること(場所的接着性)
- ②暴行または脅迫をした時点が、少なくとも窃盗に着手した以後であって、遅くとも窃盗の犯行後間もなくであること(時間的接着性)
- ③暴行または脅迫をなしたことと当該窃盗の事実との間に関連性があること
が必要とされています。
したがって、たとえば、スーパーで万引きした後、スーパーで万引きを目撃した保安員に声をかけられたため、その場から逃走しようとしたところ、保安員に腕をつかまれたため、その場から逃走するために保安員の顔を殴った場合は①から③の条件すべてを満たすため、事後強盗が成立する可能性が高いです。
一方、万引きした後、路上を歩いていたところ、警ら中の事情を知らない警察官に職務質問を受けたため、万引きの件で逮捕されると勘違いした犯人が、警察官に暴行を加えた場合は公務執行妨害罪が成立する可能性はありますが、少なくとも③の条件を満たさないため、事後強盗は成立しないものと考えられます。
過去には、窃盗の犯人が、犯行から約30分後に、犯行場所から約1キロ離れた場所で、通報を受け駆け付けた被害者から盗んだ物を取り返されそうになったため被害者に暴行を加えたケースで事後強盗の成立を認めた判例(広島高裁昭和28年5月27日)、窃盗の犯行とは無関係な警ら中の警察官から職務質問のために呼び止められたため、逮捕を免れるために警察官に暴行を加えたケースで事後強盗の成立を認めなかった判例(東京高裁昭和27年6月26日)などがあります。
これまで繰り返し述べてきているとおり、事後強盗は強盗の一種ですから事後強盗の暴行または脅迫の程度は、強盗の暴行または脅迫の程度と同じである必要があります。すなわち、事後強盗の暴行または脅迫は、被害者らの反抗を抑圧するに足りる程度のものである必要があると解されています。ただ、具体的状況に照らして客観的に判断して相手方の意思を抑圧するに足りる程度の暴行または脅迫を加えれば足り、現実に相手方の意思を抑圧したかどうかは問いません。
事後強盗の既遂と未遂の時期について
事後強盗の既遂時期については、窃盗の既遂・未遂を問わず、窃盗の犯人が所定の目的で暴行または脅迫を加えた時点と解する見解もありますが、判例(最高裁昭和24年7月9日)は、先行行為である窃盗の既遂・未遂に応じて、事後強盗の既遂・未遂を判断しています。
窃盗の犯人が物を盗んだ後、すなわち、窃盗行為自体が既遂に達してから、これを取り返されることを防ぐため、逮捕を免れるため、または罪跡を隠滅するために暴行または脅迫をしたときは、暴行または脅迫を加えた時点で事後強盗の既遂が成立します。窃盗が既遂に達していれば、被害者や目撃者が盗まれた物を取り返したかどうか、犯人を逮捕したかどうかに関係なく事後強盗の既遂が成立します。また、窃盗の犯人が盗んだ物を取り返されるのを防いだかどうか、逮捕を免れたかどうか、罪跡隠滅の目的を達したかどうかは関係ありません。
事後強盗の未遂が成立するのは、物を盗むために窃盗の実行に着手したものの、何らかの事情によって物を盗むことができず、未遂の状態のまま、被害者や目撃者らの逮捕を免れるため、または罪跡を隠滅するために被害者や目撃者らに暴行または脅迫を加えたような場合です。
事後強盗罪の刑罰
事後強盗は強盗の一種ですから、事後強盗の罰則は強盗と同じく「5年以上の有期拘禁刑」です。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
なお、強盗犯が強盗の機会に人に怪我をさせた場合は強盗傷人罪または強盗致傷罪、人を死亡させた場合は強盗殺人罪または強盗致死罪が成立します。強盗傷人罪・強盗致傷罪の罰則は「無期又は6年以上の拘禁刑」、強盗殺人罪・強盗致死罪の罰則は「死刑又は無期拘禁刑」です。前述のとおり、事後強盗は強盗の一種ですから、強盗が成立した以後に人に怪我を負わせた場合は強盗致傷罪、人を死亡させた場合は強盗致死罪が適用される可能性があります。事後強盗罪の公訴時効については「強盗罪の時効は10年・強盗致傷罪の時効は15年です」をご参照ください。
事後強盗罪で逮捕されそうな方・逮捕された方へ
事後強盗罪は強盗罪と同じ「5年以上の有期拘禁刑」という重い法定刑が定められており、起訴されると原則として実刑判決となる可能性が高い犯罪です。
ただし、万引き後に店員を突き飛ばして逃走したようなケースでは、事後強盗罪としては比較的軽微な部類に入ります。被害店舗への弁償と暴行被害者への慰謝料支払いによる示談が成立すれば、不起訴処分となる可能性も十分にあります。また、示談ができなかった場合でも、検察官との交渉により、事後強盗罪ではなく窃盗罪と暴行罪での処分に留めてもらえる可能性もあります。
事後強盗罪で逮捕された場合、逮捕から起訴・不起訴の判断までは最長23日間しかありません。この限られた時間の中で示談交渉を進め、有利な処分を獲得するためには、早期に弁護士に依頼することが重要です。
当事務所では、強盗事件・窃盗事件の弁護に豊富な経験を持つ弁護士が、全国どこからでも無料相談に対応しています。ご本人が逮捕されている場合はご家族からのご相談も承りますので、お気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

