強盗罪の時効は犯罪が終了してから10年です。また、強盗の際に人を傷つけてしまった場合に成立する強盗致傷罪の時効は15年です。
この記事では、強盗罪や強盗致傷罪の時効に加え、
- 強盗関連の犯罪の時効
- 強盗の民事(損害賠償)の時効
- 強盗の時効完成を待つリスクや時効完成を待たずにすべきこと
などにつき、強盗事件に強い弁護士が詳しく解説していきます。
なお、強盗事件を起こしてしまい、時効完成までに逮捕されるのではないかと不安な日々を過ごされている方は、全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
強盗罪の公訴時効は何年?
公訴時効とは?時効が完成するとどうなる?
「公訴時効」とは、一定の期間が経過した事件については公訴提起しても免訴判決が言い渡されるという制度です。
刑事訴訟法には、「時効が完成したとき」には判決で免訴の言渡しをしなければならないと規定しています(刑訴法第337条4号参照)。「免訴」とは刑罰権の存否について実体の内容に踏み込まず門前払いする裁判のことです。
なぜこのような公訴時効制度が存在しているのでしょうか。
まず、時間の経過により犯罪が「社会的に微弱化」することを理由に未確定の刑罰権が消滅すると考えられます(処罰する実体がなくなるためこれを「実体法説」と言います)。
また「証拠の散逸」により公正な裁判の実現が困難になることが公訴時効の制度趣旨だと考えたり、一定期間の経過により「犯人の社会的安定」や「捜査・裁判に割くマンパワーを軽減する」ことが、「犯人処罰の要請」に優先するようになると説明したりすることもできます(手続的な事情を理由にするため「訴訟法説」と言われます)。
以上のような公訴時効という制度があることから、時効期間が経過した事件については、検察官は起訴をすることはありません。
したがって、強盗罪の公訴時効が完成すれば、起訴されて刑事裁判にかけられることがない、すなわち、刑事事件として処罰されることがなくなります。
強盗罪の公訴時効は10年
強盗罪の公訴時効は「10年」です。
公訴時効は期間については法定刑の上限を基準に決定されています。
強盗罪の法定刑は、「5年以上の有期懲役」です(刑法第236条1項)。そしてこれは「人を死亡させた罪」以外で「長期15年以上の懲役」にあたるため、公訴時効は「10年」となります(刑事訴訟法第250条2項3号参照)。
それでは10年の公訴時効がスタートするのはいつからでしょうか。
時効は、「犯罪行為が終わった時」から進行すると規定されています(刑事訴訟法第253条)。この「犯罪行為が終わった時」とは、刑法に規定されている結果を含んでいると考えられています。
そのため、強盗罪の場合は財物の占有を取得した時点から時効が進行します。強盗致傷罪の場合は強盗の際に被害者を傷つけるという結果を生じさせてた時点から時効が進行します。
強盗致死・強盗殺人に公訴時効はない
強盗致死罪・強盗殺人罪に公訴時効はありません。
強盗が、人を死亡させた場合には、強盗致死罪または強盗殺人罪が成立します。強盗致死罪・強盗殺人罪に問われた場合には、「死刑」または「無期懲役」が科されます(刑法第240条後段)。
そして、2010年4月27日、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」により、一部の重大犯罪については公訴時効が廃止されました。強盗殺人罪など、「人を死亡させた罪」のうち、法定刑の上限が死刑であるものについては、公訴時効は廃止されました。これにより、犯罪行為の時からどれだけ時間が経過しても、犯人を処罰することができるようになりました。
強盗の公訴時効のまとめ
強盗関連の犯罪及び刑罰、公訴時効の期間については、以下の表のとおりです。
強盗関連の犯罪(法定刑) | 時効期間 |
強盗予備罪(2年以下の懲役) | 3年 |
強盗罪(5年以上の有期懲役) | 10年 |
強盗利得罪(5年以上の有期懲役) | 10年 |
事後強盗罪(5年以上の有期懲役) | 10年 |
昏睡強盗罪(5年以上の有期懲役) | 10年 |
強盗致傷罪(無期または6年以上の懲役) | 15年 |
強盗・不同意性交等罪(無期または7年以上の懲役) | 20年 |
強盗致死罪・強盗殺人罪(死刑または無期懲役) | 無期限 |
強盗不同意性交等致死罪(死刑または無期懲役) | 無期限 |
強盗罪の時効が停止するケース
公訴時効は一定の事由がある場合には、その進行がストップする場合があります。これが「時効の停止」という制度です。
公訴時効が停止するのは以下のような事由がある場合です(刑事訴訟法第254条、255条参照)。
- 当該事件について公訴が提起(起訴)された場合
- 共犯の1人に対してした公訴が提起された場合:他の共犯に対しても時効が停止する
- 犯人が国外にいる場合:国外にいる期間は時効が停止する
- 犯人が逃げ隠れているため有効な起訴状の謄本の送達・略式命令の告知ができなかった場合:逃げ隠れいている期間は時効が停止する
公訴時効の「停止」とは、あくまでも「一時停止」という意味合いです。例えば、強盗事件を起こしてから半年後に国外に渡った犯人が、その後日本に帰国した場合、国外に滞在していた期間は公訴時効が停止しており、帰国した時点で残りの公訴時効の進行が再開されることになります。
強盗の民事(損害賠償)の時効
強盗を行った場合には刑事責任のみならず、加害者と被害者の間に民事上の法的責任も発生します。強盗事件の場合、加害者は被害者の財産権のみならず、生命・身体などを侵害したとして慰謝料を含む高額な損害賠償を求められる可能性があります。このような責任は不法行為に基づく損害賠償責任です。
不法行為とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者がこれによって生じた損害を賠償しなければならないという責任です(民法第709条参照)。
そして、この不法行為に基づく損害賠償責任についても独自の消滅時効が規定されています。
不法行為による損害賠償の請求権は、以下の場合に時効によって消滅します(民法第724条参照)。
- 被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき
- 不法行為の時か20年間行使しないとき
そして、人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効については上記「3年間」から「5年間」に延長されます(民法第724条の2参照)。
したがって、強盗は被害者の財産・身体を害する不法行為であるため、損害または加害者を知った時から「5年」が経過することで時効消滅することになります。
強盗罪の時効完成を待つリスク
上記で解説したとおり、強盗の公訴時効は長いことが分かります。そして、令和5年度版「犯罪白書」によると、令和4年の強盗罪の検挙率は92.3%と極めて高い数値となっています。
強盗事件は重大犯罪であるため。捜査機関も被疑者の検挙に向けて全力で捜査を行います。したがって、このような統計データから、強盗事件を起こして逃げ切れる可能性は非常に低いと考えられます。
また、強盗の罪を犯した場合、執行猶予も原則としてつきません。執行猶予は、「3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたとき」にすることができます(刑法第25条1項)。しかし、号と罪の法定刑は5年以上の有期懲役であるため、原則として執行猶予を付けることができないのです。ただし、強盗罪が「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった」として未遂減軽されたり(刑法第43条)、「犯罪の情状に酌量すべきものがある」として酌量減軽されたり(刑法第66条)、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したとき」として自首減軽されたりする場合には、言い渡される刑が3年以下になることがあるため、執行猶予が付される可能性が出てきます。
逮捕される前に不起訴や執行猶予付き判決の獲得を目指して、弁護士に弁護活動をお願いすることが重要でしょう。
強盗罪の時効完成を待たずにすべきこと
被害者と示談を成立させる
強盗事件において、不起訴や執行猶予付き判決の獲得を目指す場合には、まずは事件の被害者と示談をすることが重要です。被害者との示談が成立すると、検察官や裁判官がそのことを考慮し、不起訴処分や刑の減軽につながる可能性があります。
しかし本人・ご家族が示談交渉を進めるのは困難です。そもそも被害者の連絡先を入手できず、仮に連絡先を知っていたとしても被害者の処罰感情から接触を拒否される可能性が高いでしょう。
弁護士であれば捜査機関を通じ、被害者の許可を得て連絡先を入手し、示談交渉を開始できる可能性があります。公正中立な立場の弁護士が相手であれば被害者の精神的負担が減り、示談に応じてくれる可能性もでてきます。
自首する
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首した場合には、その刑を減軽することができると刑法に規定されています(刑法第42条1項)。「捜査機関に発覚する前」とは、「犯罪事実が全く捜査機関に発覚していない場合」や犯罪事実は発覚しているものの、「その犯人が誰であるか全く発覚していない場合」であると考えられています。
そして、前述の通り、強盗罪は原則として執行猶予がつかないものの、自首したことで刑が任意的に減軽されれば、執行猶予が獲得できる可能性があります。
ただし、自首をする前にまずは弁護士に相談することをお勧めします。弁護士に相談することで、自分のした行為がどのような犯罪事実に該当し、どのような法益侵害・問題があったのかについて正確な理解を得られます。自首をして反省の態度を示したいという場合であっても、ご自身の行為がどのような犯罪に該当し、どのような法益を侵害したのかを正確に理解していることは、非常に重要なポイントとなります。自首した際に、ただ漠然と「反省している」「繰り返さない」と主張するよりも、よっぽど真摯な反省の態度だと受け取ってもらえる可能性が高まります。
また、弁護士に自首の同行を依頼することもできます。弁護士が同行することで捜査機関による威圧的な取り調べがなされる可能性が低くなりますし、弁護士が上申書を提出することで逮捕を回避できる可能性も高まります。
したがって、自首をする場合にも、弁護士に相談してアドバイス・サポートを受けるべきでしょう。
まとめ
以上この記事では、強盗に関する公訴時効について詳しく解説してきました。
強盗関連犯罪については、時効期間が長い、もしくは時効が存在しないものがあります。そして、強盗事件の検挙率は非常に高いです。したがって、強盗事件を起こして逮捕されないか不安という場合、時効の完成まで逃げ切ろうとすることは得策とはいえません。弁護士に相談したうえで、適切な対処法をとることをおすすめします。
当事務所では、強盗事件の被害者との示談交渉、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、強盗事件で逮捕の不安がある方や被害者との示談でお悩みの方は、今後の方針を立てるためにも、是非当事務所にご相談ください。
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