このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、窃盗と強盗の違いは次の表のとおりです。
窃盗罪 | 強盗罪 | |
手段 | 暴行・脅迫を用いずに財物を盗む | 暴行・脅迫を用いて財物を奪う |
対象となる財産 | 他人の財物 | 他人の財物+財産上の不法な利益 |
法定刑 | 10年以下の懲役または50万円以下の罰金 | 5年以上の有期懲役 |
親族相盗例の適用 | あり | なし |
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、窃盗と強盗の違いにつきわかりやすく解説していきます。
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目次
窃盗と強盗との違いは?
窃盗罪は、他人の財物を窃取する犯罪です(刑法第235条)。
強盗罪とは、暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取する、または、暴行または脅迫を用いて財産上不法の利益を得たり、他人にこれを得させる犯罪です(刑法第236条1項、2項)
窃盗と強盗の違いは以下のとおりです。
- ①手段の違い
- ②対象となる財産の違い
- ③法定刑の違い
- ④親族相盗例の適用の有無の違い
①手段の違い
まず、財産を奪うための手段が違います。
窃盗では、暴行や脅迫を用いません。スリ、万引き、置き引きなど、窃盗の方法は様々ですが、いずれも暴力的な手段や脅迫を伴わずに行われます。これに対し、強盗では、暴行(殴る、蹴るなど)または脅迫(「殺すぞ」などの言葉を使う)を用いて他人の財物を奪う必要があります。
②対象となる財産の違い
次に、奪う対象となる財産が違います。
窃盗では「他人の財物」が対象です。一方、強盗では「他人の財物」に加えて、「財産上の不法の利益」も対象とされています。「不法の利益」とは、利益が不法という意味ではなく、利益を取得した手段が不法という意味です。たとえば、レストランで食事をした後、店員を脅迫して飲食代金の支払いを免れたという場合は、脅迫という不法な手段によって、飲食代金の支払いを免れるという利益を得ており、財産上の不法の利益を得たといえます。
③法定刑の違い
次に、法定刑の違いです。
窃盗の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。一方、強盗の法定刑は「5年以上の有期懲役」です。窃盗の場合、1年や数か月の懲役刑もありえます。一方、強盗の場合、最低が5年です。執行猶予付きの判決を受けるには、3年以下の懲役の判決を受けることが一つの条件になっていますから、窃盗では執行猶予付きの判決を受ける場合が多いのに対して、強盗では実刑が基本となります(減軽により執行猶予付き判決を受けることもあります)。
④親族相盗例の適用の有無の違い
次に、親族相盗例の適用の有無の違いです。
親族相盗例とは、犯人とある一定の身分関係にある者との間に犯した罪については刑を免除するというものです。たとえば、夫が配偶者である妻の財布からお金を盗んだとしても親族相盗例が適用され、刑罰は科されません。このように、窃盗の場合は親族相盗例が適用されます。身内のことまで法はとやかく口を出さない、身内のことは身内で処理しなさい、という趣旨です。一方、強盗の場合、親族相盗例は適用されません。強盗は暴行、脅迫を手段とするなど重い罪ですから、さすがに身内で処理しなさいとはいえないからです。
窃盗と強盗のどちらが成立するかが問題となるケース
窃盗か強盗かでよく争われるのが、万引きの窃盗犯人が万引きを発見した店員に暴行を加えたという事後強盗の事案の場合です。
事後強盗とは、窃盗の既遂の犯人が盗んだ物を取り返されることを防ぐため、あるいは窃盗の既遂または未遂の犯人が、逮捕を免れまたは証拠を隠滅するために、被害者や目撃者に対して暴行または脅迫を加えた場合に成立する犯罪です(刑法第238条)。
仮に、このケースで事後強盗が成立すると、実刑となる可能性も出てきます(事後強盗の罰則は、強盗罪と同じく、5年以上の有期懲役です)。一方、事後強盗は成立せず、窃盗罪と暴行罪が成立するのみという場合は、執行猶予の可能性も十分に考えらえます。
このように、窃盗と強盗のどちらが成立するかの争点は、罪名の適用や刑罰の重さに大きな影響を与えます。事後強盗が成立するとより重い刑罰を受ける可能性があるため、被告にとっては窃盗と強盗の区別が極めて重要な争点となるのです。
まとめ
窃盗と強盗は、人の物を奪うという点では共通しています。しかし、人の物を奪う手段、奪う物の対象、法定刑、親族相盗例の適用の有無の点で大きな違いあります。窃盗と強盗の違いは、刑罰の重さに大きな影響を与えるため、窃盗犯が被害者や目撃者に暴行や脅迫を加えた場合に、窃盗と暴行罪・脅迫罪、または事後強盗のいずれが成立するかが重要な争点となります。このようなケースでは、事後強盗罪が成立すれば実刑となりやすく、刑罰が重くなります。このように、窃盗か強盗かの区別はとても重要なことなのです。
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