メンズエステは、女性セラピストが男性客にエステやマッサージを提供する店舗であり、性風俗店ではありません。メンズエステ店の経営自体に違法性はありませんが、風営法に基づく性風俗関連特殊営業の届出をせずに客に性的サービスを提供すると、風営法違反として経営者やセラピストが逮捕される可能性があります。
また、セラピストの同意なく客がセラピストに対して性的な行為を行った場合、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪で客が逮捕される可能性があります。
この記事では、風俗トラブルや風営法違反事件に強い弁護士が、以下の点について詳しく解説します。
- メンズエステで逮捕される可能性のあるケース
- メンズエステで逮捕されるとどうなってしまうのか
なお、メンズエステで逮捕のおそれがある行為をしてしまった方で、逮捕回避に向けて早急な対応をお考えの方は、記事を最後までお読みいただいた上で、全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
そもそもメンズエステとは?
メンズエステとは、女性従業員(セラピスト)が男性客に対してリラクゼーションを目的としたエステやマッサージなどのサービスを提供する店舗のことです。店舗型のほか、セラピストが出張で来る無店舗型(派遣型)という営業形態もあります。
メンズエステでは、女性従業員が男性のみを対象にサービスを提供していることから、「性風俗店」と勘違いされることがあります。また、実際にメンズエステ店では、鼠径部や下腹部のマッサージが行われることや、女性キャストが露出度の高い衣装で施術を行うことがあるため、両者を同一視する人も少なくありません。
しかし、メンズエステはあくまでエステやマッサージを提供する店舗であり、風営法(正式には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」といいます。)に基づく性風俗特殊営業としての届出は行っていません。メンズエステ店の経営自体は違法ではありませんが、仮に無届で性的なサービスを提供した場合、風営法違反として店が摘発されるリスクがあります。
メンズエステで逮捕されるケースは?
では、メンズエステで逮捕されるのはどのような場合でしょうか。ここでは、
- ①店側(経営者や従業員であるセラピスト)が逮捕されるケース
- ②お客が逮捕されるケース
に分けて解説します。
①店側が逮捕されるケース
前述のとおり、一般的なメンズエステ店は性的なサービスを行う性風俗店ではありません。店舗型・無店舗型どちらにおいても、性的なサービスを提供する場合には、風営法に基づき公安委員会に所定の届出を行わなくてはなりません。
もし、メンズエステ店が届出をせずに店の方針として性的なサービスを提供していた場合、風営法に違反する無届営業や禁止区域営業(各都道府県が条例で定めた禁止区域内での営業)に該当し、経営者やセラピストが逮捕される可能性があります。
ここで補足ですが、 セラピストが経営者に黙ってお客と性的な行為をしており、店側が一切関与していなかった場合、セラピストが個人的に行った行為として、経営者は逮捕されません。ただし、セラピストが個人的にお客と性的な行為をしていたとしても、経営者がそれを認識し黙認していた場合、経営者も風営法違反で逮捕される可能性があります。経営者が「知らなかった」と主張しても、経営の実態や経営者の行動・発言等の客観的な事情に照らし、違法行為を黙認していたと評価される恐れがあるため、注意が必要です。
無届営業の罰則は、6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその併科です。禁止区域営業の罰則は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその併科です。
さらに、 セラピストが裏オプションとしてお客から金銭を受け取って性行為を行った場合、セラピストもお客も売春防止法第3条(単純売春)に違反することになります。ただし、同条には罰則規定がないため、逮捕されることはありません。
風営法違反は逮捕される?よくある違反行為と罰則を弁護士が解説
②お客が逮捕されるケース
まず、メンズエステ店が風営法違反で摘発を受けた場合、その店を利用していたお客は逮捕されることはありません。逮捕されるのは、風俗店を経営している経営者や、違法行為に加担した従業員です。メンズエステ店を利用したお客は、風営法の規制の対象ではないため、仮に店が摘発されても逮捕されることはありません。
ただし、摘発された店舗を利用していたお客が判明した場合、重要な参考人として警察から任意で事情聴取を受ける可能性があります。これは店側の違法行為を裏付けるための捜査であり、いずれにしてもお客が風営法違反で逮捕されることはありません。
一方、メンズエステ店を利用したお客がセラピストに対して性的な行為をした場合、そのお客は逮捕されるおそれがあります。
例えば、お客がセラピストの同意なしに本番行為を強要した場合、不同意性交等罪(5年以上の有期懲役)で逮捕される可能性があります。また、セラピストの同意なしに胸を揉んだりキスをしたりした場合は、不同意わいせつ罪(6ヶ月以上10年以下の懲役)で逮捕される可能性があります。
繰り返しになりますが、性風俗特殊営業の届出をしていない一般的なメンズエステ店は、エステやマッサージを提供する店であり、性的なサービスを受けることはできません。そのため、性的なサービスを受けられると勘違いして、メンズエステ店の女性セラピストに性的な行為を要求すると、上記のような刑事事件に発展するおそれがあるため、注意が必要です。
メンズエステのお客が逮捕されるケースや対処法については、メンズエステトラブルの対処法は?警察から電話があったら?で詳しく解説されていますので、ご覧ください。
メンズエステで逮捕された場合のリスク
違法なメンズエステ店の経営により逮捕された場合、経営者やセラピストは次のようなリスクを負うことになります。
- ①実名報道される
- ②本業を解雇される・退学処分になる
- ③前科がつく
①実名報道される
違法なメンズエステ店の経営により逮捕された場合には、実名報道される可能性があります。メンズエステ店の規模の大きさやお客の数、違法行為の程度や営業期間の長さなど、事件としての悪質性が高い場合や公益に関わる場合には、実名報道される可能性が高まります。
インターネット上で動画やニュース記事で実名が報道されてしまうと、誰でも簡単に事件の概要を知ることができ、また長期間にわたって報道内容がネット上に残り続けてしまうおそれがあります。このように実名報道されることで、再就職をしようとする場合にも、過去の犯罪行為が簡単に明らかになってしまうため、採用が見送られる可能性もあります。
②本業を解雇される・退学処分になる
近年では、メンズエステ店を副業で始める人が増えてきました。メンズエステ店を始めるためには、普通のマンション一室を契約し、タオルやマット、紙パンツやオイルを購入すれば誰でも始められ、初期費用も比較的少額で済みます。また、できるだけ費用をかけたくないという場合には、エステ店ごと借りることで営業することもできます。
しかし、違法なメンズエステ店を経営したとして逮捕された場合には、本業の勤め先から解雇される可能性があります。多くの企業は、就業規則や服務規程に「犯罪を行い刑に処せられたとき」や「会社の信用を著しく害したとき」には懲戒解雇することができると規定していることが一般的です。
また、セラピストが学生の場合には、通っている大学や専門学校を退学させられる可能性があります。学校を退学処分になるかどうかは、在籍している学則に従うことになりますが、一般的に「著しい非行」は退学の原因となる可能性が高いでしょう。
③前科がつく
風営法違反の罪で逮捕・起訴され、有罪判決を受けた場合には、前科が残ることになります。前科とは、刑事裁判で有罪判決を受け、その刑事罰が確定した経歴のことを指します。懲役刑や罰金刑など実際に刑罰を科された場合のみならず、執行猶予が付されて刑罰が科されなかった場合であっても、前科は残ることになります。
有罪判決によって前科が残ると、以下のような不利益を受けることになります。
- 検察庁や警察に前科記録が残る
- 再犯で逮捕された場合、重い刑罰が科される可能性がある
- 前科が付されることで、就業規則上の懲戒事由に該当する可能性がある
- 就職活動・転職活動の際に、前科を秘匿すると経歴詐称に当たる可能性がある
- 前科があることで、警備員など一定の職業に就くことができない など
メンズエステで逮捕されたらどうなる?
メンズエステで逮捕された場合の流れは次の通りです。
- 逮捕
- 検察官送致・勾留
- 起訴・不起訴の判断
- 刑事裁判
①逮捕
違法なメンズエステ店を経営していた場合、経営者やセラピストは警察に逮捕される可能性があります。逮捕とは、勾留に先立ち、被疑者の身体を一時的に拘束する処分です。逮捕後、警察署で取り調べを受けることになり、警察官は被疑者を逮捕してから48時間以内に事件の内容および被疑者の身柄を検察官に送致(送検)するか、釈放するかを判断しなければなりません。
なお、風営法違反で警察が被疑者を逮捕するには、被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあることが求められます(刑事訴訟法第199条1項2項)。そのため、逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合、逮捕せずに刑事手続きが進むこともあります。このような事件は「在宅事件」と呼ばれます。
一方、逮捕されると、自宅へ帰れないだけでなく、弁護士以外の者と自由に連絡を取ることができなくなります。特に本業がある経営者やセラピストの場合、勤務先や学校に無断で休むこととなり、状況がさらに複雑化します。このため、逮捕された場合には、弁護士を通じて家族に事情を説明してもらい、勤務先や学校に病欠などの理由で休む旨を家族から連絡してもらう必要があります。
②検察官送致・勾留
事件が検察官に送致された場合には、送致から24時間以内に被疑者を勾留するかどうかが判断されます。
検察官が勾留の必要があると判断した場合には、裁判所に被疑者を連れて行き、勾留質問を行ったうえで裁判官が勾留決定を下します。
勾留が決定されると、10日間の身体拘束が継続することになります。ただし、実務的には勾留が延長されることが多く、捜査のため必要な場合には、さらに10日間を上限として勾留延長が決定されることがあります。
したがって、逮捕に引き続き勾留された場合には、最長で23日間(48時間+24時間+20日間)の身体拘束が継続する可能性があるのです。
③起訴・不起訴の判断
検察官は、被疑者を勾留している間に、起訴または不起訴の判断をすることになります。
起訴される場合には、正式起訴または略式起訴の2つの中から選択されます。正式起訴の場合には、刑事裁判を受けて判決の言い渡しを受けることになりますが、略式起訴の場合には、100万円以下の罰金刑が即時確定して身柄を釈放されます。
略式起訴の場合には、即日判決が確定し釈放されるというメリットがありますが、被疑者には弁解の機会が与えられていないというデメリットがあります。この場合、取り調べの内容が事実としてそのまま刑が確定してしまうことになります。
④刑事裁判
検察官により起訴され、刑事裁判を受ける場合には、判決によって有罪・無罪かが判断されることになります。有罪判決では、どのような刑罰に処すのかが言い渡され、判決に不服がある場合には控訴することができます。
刑事裁判により言い渡された有罪判決が確定した場合には、その刑罰に従って刑に服することになります。懲役刑の場合には、刑務所に収監されることになります。罰金刑の場合には、言い渡された金額を支払うことで刑の執行は終わります。罰金を支払わない場合には、労役場留置となります。
なお、有罪判決であっても、執行猶予が付された場合には、直ちに刑の執行は行われません。執行猶予期間中に問題を起こさなければ、その刑の執行を免れることができます。
メンズエステで逮捕されたらどうすればいい?
風営法違反の罪で逮捕された場合には、できるだけ早めに弁護士に相談するようにしてください。風営法違反事件の場合には、さまざまな資料や関係者が存在していることが多く、経営者が逮捕される可能性が高いです。
また、メンズエステ店の経営者や従業員も風営法の規制について正確に理解していないことが多く、警察や検察の取り調べで聞かれている内容がどのような問題点を内包しているのか分からないというケースもあります。良く分からないまま取り調べを受けていると、不当に被疑者に不利な供述調書が作成されてしまうというリスクもあります。
そのため、経営者や従業員が逮捕された場合には、風営法に詳しい弁護士に相談したうえで、取り調べへの対応などについてアドバイスを受けることが重要となります。逮捕直後に弁護士に依頼して弁護活動に動いてもらうことで、早期釈放や不起訴獲得の可能性も高まります。
できるだけ早めに弁護士と接見し、被疑者にとって有利な事実や証拠を収集してもらい、身柄引受書や意見書などを捜査機関に提出してもらうことで、早期釈放や不起訴の獲得を目指していくことになります。
まとめ
以上、違法なメンズエステ店の経営をしていた場合には、店の経営者や従業員が逮捕される可能性があります。逮捕されると刑事裁判までずっと身体拘束を受けるおそれもあります。
そのため、風営法違反の罪等で逮捕された場合には、すぐに刑事弁護に強い弁護士に相談・依頼することが重要となります。風営法違反事件に精通している弁護士に任せることで、早期釈放や、不起訴の獲得を目指した的確な弁護活動を行ってもらうことができます。
当事務所では、メンズエステをはじめとした風営法違法事件の解決を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者のために全力を尽くして対応しますので、違法なメンズエステ店の経営で逮捕された場合や逮捕されそうでお困りの場合には、すぐに当事務所の弁護士にご相談ください。
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