強盗予備罪とは?構成要件・法定刑・事後強盗の予備につき解説

強盗予備とは

強盗予備罪(ごうとうよびざい)とは、強盗の罪を犯す目的で、強盗の予備をした場合に成立する犯罪です。刑法237条に規定されています。

(強盗予備)
第二百三十七条 強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。

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強盗罪の危険性・重大性にかんがみ、強盗の予備を独立の罪として処罰することにしたのが強盗予備罪です。刑法には強盗予備罪のほかにも、放火罪(刑法113条、108条など)、殺人罪(刑法201条、199条)に予備罪が設けられています。

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強盗予備罪の構成要件

強盗予備罪の構成要件(成立要件)は次のとおりです。

強盗の罪を犯す目的があること

まず、強盗の罪を犯す目的があることが必要です。

強盗の罪を犯す目的は確定的なものでなければならないとされています。したがって、状況によっては居直り強盗に転ずることがあるかもしれないとか、お金がなくなって機会があれば強盗してやろうというような意図しかない場合は強盗の罪を犯す目的があったことにはなりません。

強盗の罪を犯す目的には事後強盗を犯す目的も含まれると解されています(最高裁昭和541119日)。したがって、たとえば「コンビニで万引きした後、店員に見つかって追いかけられたとき、逮捕を免れるため」と思ってナイフを所持していた場合は強盗予備罪が成立する可能性があります。

予備をしたこと

次に、強盗の罪を犯す目的をもって予備をしたことが必要です。

予備とは、犯行の実行に着手する前の、一定の犯罪を実行するためにする準備行為のことをいいます。

判例によると、

  • 凶器を携えて目的地に向けて出発する行為(最高裁昭和24年9月29日)
  • 強盗を共謀して出刃包丁等の凶器、懐中電灯を買い求め、これを携えて被害者宅付近を徘徊する行為(最高裁昭和24年12月24日)
  • 売上金を強奪するために着用している革バンドで運転手の首を絞める意図でタクシーに乗り込み、運転を命じて犯行の機会をうかがう行為(東京高裁昭和32年5月31日)

などが強盗予備罪の予備にあたるとしています。

強盗予備罪に中止犯は成立する?

犯罪の実行に着手したものの自らの意思でこれを中止することを「中止犯(または「中止未遂」)」といい、その刑は必要的に減軽または免除されます(刑法第43条但書)。

(未遂減免)
第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

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では、強盗目的で予備行為を行ったものの、自らの意思で強盗を犯すことを中止した場合に、強盗予備罪に中止犯の規定を適用して刑の減軽・免除を認めることはできるのでしょうか。

この点、判例(最高裁昭和29120日)は予備の未遂の成立を認めていません

しかし、予備行為よりも進んで実行に着手した未遂犯ですら中止犯のときは必ず刑の減軽・免除されるのだから、それ以前の予備行為を中止した場合にも必用的減免を認めるべきではないかと考える学説も有力です。

強盗予備罪の幇助が成立するケースは?

幇助とは他人が犯罪を実現することを容易にするために手助けする行為のことをいいます。

この点、強盗予備罪は「自分が」強盗する目的で予備をした場合を処罰する罪ですから、他人の強盗予備を手助けしたとしても強盗予備罪は成立しません。刑法237条に「強盗の罪を犯す目的で」と規定されているのは、あくまで「自分が」強盗する目的で、という意味も含まれており、強盗予備罪は自己予備罪とも言われます。

なお、強盗しようとしている他人の予備を手助けし、実際にその他人が強盗を実行した場合には強盗罪の幇助罪(刑法62条)に問われる可能性があります。

事後強盗の予備罪は成立する?

前述のとおり、強盗予備罪の「強盗の罪を犯す目的」の「強盗の罪」には事後強盗罪も含まれると解されており、事後強盗目的の予備も成立することがあります。したがって、強盗するつもりはなく盗みをするつもりでいるものの、もし人に見つかったときに人を脅してその場から逃走するつもりで凶器をもっていたところ警察官から職務質問を受け、凶器を押収されたようなケースでは強盗予備罪に問われてしまう可能性があります。

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強盗予備罪の法定刑

強盗予備罪の法定刑は2年以下の懲役です。

強盗予備罪の弁護活動

強盗予備罪は強盗の罪の中で最も刑が軽く、不起訴や執行猶予の可能性も十分に見込まれるため、強盗予備罪で逮捕されても早期釈放が実現しやすいといえます。万が一強盗予備罪で逮捕された場合は、弁護士から検察官や裁判官宛に意見書等の書類を提出するなどして早期釈放に努めます。

強盗予備罪で一度検挙されると、在宅でも、逮捕された場合でもいずれは起訴か不起訴かの刑事処分を受けますが、前述のとおり、強盗予備罪では不起訴が十分に見込まれる罪であるため、まずは不起訴の獲得を目指し、万が一起訴された場合は執行猶予付きの判決を目指します。

また、事案によっては、そもそも強盗予備罪が成立するのかもしっかり検討する必要があります。強盗予備罪が成立しないと考えられる場合は、弁護士がその根拠等を指摘して不起訴の獲得に努めます。

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