常習累犯窃盗とは?要件と窃盗罪との違い、執行猶予の条件を解説

常習累犯窃盗(じょうしゅうるいはんせっとう)とは、万引きなどの窃盗・窃盗未遂を常習的に繰り返した人に適用される可能性のある罪で、盗犯等の防止及び処分に関する法律(盗犯防止法)の第3条に規定されています。判例(最高裁昭和44年6月5日)によると、「窃盗~を行う習癖を有する者を、その習癖のない者より重く処罰するため、通常の窃盗その他の罪とは異なる新たな犯罪類型を定めたもの」とされています。

常習累犯窃盗を定めているのは、盗犯防止法の第3条です。昭和5年制定の古い法律のため、条文はカタカナ文語体で書かれています。

第三条 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ拘禁刑以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル
昭和五年法律第九号(盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律) | e-Gov法令検索

※令和7年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。拘禁刑とは、刑務所などの施設に拘束されて作業・指導などを受ける刑罰で、従来の懲役刑と禁錮刑を統合したものです。

この記事では、窃盗の刑事事件を専門に扱う弁護士が、

  • 常習累犯窃盗の成立要件
  • 常習累犯窃盗と窃盗罪の違い
  • 常習累犯窃盗と執行猶予

などについてわかりやすく解説していきます。

常習累犯窃盗の疑いをかけられている方やそのご家族で、この記事を読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメール・電話・LINEでの相談ができます。
  • 逮捕回避・早期釈放・不起訴・執行猶予の獲得を得意としております。
  • 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。

常習累犯窃盗の成立要件

常習累犯窃盗が成立するためには、単に窃盗行為を繰り返しただけでは足りません。法律上、いくつかの明確な要件をすべて満たす必要があります。以下の3つの要件を順に確認していきましょう。

  • ①窃盗の既遂または未遂の罪を犯したこと
  • ②窃盗の罪を常習として犯したこと
  • ③10年以内に3回以上、拘禁刑6月以上の刑の執行を受けたこと

これら3つをすべて満たしてはじめて、通常の窃盗罪ではなく「常習累犯窃盗」として扱われます。

①窃盗の既遂または未遂の罪を犯したこと

常習累犯窃盗の1つ目の要件は、本件において、窃盗既遂罪または窃盗未遂罪(以下、両者を合わせて「窃盗の罪」といいます。)を犯したことです。

注意したいのは、今回盗もうとして失敗しただけであっても、常習累犯窃盗では未遂を理由に刑を軽くする扱い(未遂減軽)がされない点です。未遂であることは、後述する酌量減軽の材料として考慮されるにとどまります。

②窃盗の罪を常習として犯したこと

常習累犯窃盗の2つ目の要件は、窃盗の罪を「常習として」犯したことです。

「常習として」とは、反復して特定の行為を行う習癖があることをいいます。窃盗の習癖があるかどうかは、主に前科・前歴、性格、素行、犯行動機・手口・態様・回数を総合的に勘案して判断されます。

このうち、前科・前歴が最も有力な判断要素ですが、③で前科を有することが要件となっていますから、③の要件を満たすことのみをもって窃盗の習癖があるとは判断されません。

③10年以内に3回以上、拘禁刑6月以上の刑の執行を受けたこと

常習累犯窃盗の3つ目の要件は、行為前の10年以内に、窃盗の罪(既遂のほか、未遂も含む)または窃盗の罪と他の犯罪との併合罪について、拘禁刑6月以上の刑の執行を受けたことが3回以上あることです。刑の執行を受けた場合のほか、刑の執行の免除を受けた場合もこの回数に含まれます。

「行為前の10年以内」とは、本件の窃盗行為が始まる前の10年以内という意味です。窃盗行為が複数回行われた場合は、行為が開始された時点が起算日となります。

「窃盗の罪または窃盗の罪と他の犯罪との併合罪について」とは、窃盗の罪だけで刑の執行を受けた場合に限らず、窃盗の罪と殺人罪や傷害罪などが併合罪としてまとめて一つの刑で処理された場合も含まれる、という意味です。

なお、3回に数える前科の対象は、窃盗罪(刑法235条)とその未遂罪のほか、強盗罪(同236条)・事後強盗罪(同238条)・昏酔強盗罪(同239条)とこれらの未遂罪にも及びます。これらの罪で刑の執行を受けた前科も、3回の数に入ります。

3回の数え方には注意が必要です。1回目の刑は、執行の開始が10年より前でも、執行が終わった日が10年の期間内に入っていれば数に含まれると解されています。直近の刑は、執行が始まってさえいれば刑期の途中でも3回に数えられると解されています。そのため、仮釈放中に新たな窃盗に及んだ場合でも、常習累犯窃盗罪に問われる可能性があります。

「刑の執行を受けた」とは、現実に刑務所での服役が開始したことを指しますから、執行猶予付きの判決を受けて執行猶予期間中である場合はこれにあたりません。つまり、3回という回数に、執行猶予付き判決は含まれません。

もっとも、執行猶予が取り消され、刑の執行を受けた場合には、刑の執行を受けたことにあたります。

常習累犯窃盗と窃盗罪の違い

常習累犯窃盗と窃盗罪は、名前は似ていますが別の罪です。主な違いは、根拠となる法律、法定刑の重さ、刑法上の累犯加重との関係の3点です。

根拠となる法律の違い

常習累犯窃盗は、刑法ではなく盗犯等の防止及び処分に関する法律の第3条に置かれた罪です。一方、窃盗罪は刑法の第235条に規定されています。

成立要件も異なります。窃盗罪は「他人の財物を窃取した」ことで成立しますが、常習累犯窃盗は窃盗の罪が成立することのほかに、常習性や前科の要件が必要です。常習累犯窃盗は、窃盗を繰り返す常習犯のうち、一定の前科がある人だけを対象にした処罰規定だといえます。

窃盗罪そのものの中身は「窃盗罪とは?構成要件や刑罰は?窃盗の示談・逮捕に強い弁護士が解説」で確認できます。

法定刑の違いと刑が重い理由

常習累犯窃盗の法定刑は、拘禁刑3年以上20年以下です。窃盗罪と異なり罰金刑は定められていないため、罰金で済ませるという選択肢はありません。上限が20年になるのは、有期拘禁刑の上限を20年とする刑法12条1項によります。

これに対して窃盗罪の法定刑は、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金で、下限は拘禁刑なら1月、罰金なら1万円です。同じ窃盗でも、常習累犯窃盗として扱われるかどうかで刑の出発点がまったく変わります。

ここまで刑が重くなるのは、過去に窃盗で服役しながら再び手を出した点に強い非難が向けられ、また窃盗の習癖をもつ人には重い刑罰で再犯を防ぐ必要があると考えられているためです。

刑法上の累犯加重との違い

常習累犯窃盗と混同されやすいのが、刑法上の「累犯」です。累犯とは、拘禁刑に処せられた人が、その執行を終わった日または執行の免除を得た日から5年のうちに再び罪を犯し、有期拘禁刑に処せられる場合をいいます(刑法56条1項)。

累犯にあたると、その罪について定められた刑の長期が2倍まで引き上げられます(刑法57条)。常習累犯窃盗なら20年の2倍で40年ですが、有期拘禁刑を加重するときの上限は30年ですから(刑法14条2項)、量刑は3年以上30年以下で決まります。常習累犯窃盗の前科の要件と累犯の要件は重なりやすく、両方を満たすケースも少なくありません。

累犯加重の詳しい仕組みは「累犯・累犯加重とは?再犯との違いや執行猶予との関係を解説」をご覧ください。

常習累犯窃盗と執行猶予

常習累犯窃盗で逮捕された場合、「執行猶予はつくのか」が最も気になるところでしょう。執行猶予がつけば、刑務所に入ることなく、これまでの生活を続けながら更生を目指せます。

常習累犯窃盗は重い罪ですが、一定の条件を満たせば執行猶予がつく可能性はあります。

執行猶予がつく条件

執行猶予がつくには、まず判決で言い渡される刑が3年以下の拘禁刑であることが必要です(刑法25条1項)。常習累犯窃盗の下限は3年ですから、この条件を満たすのは、酌量減軽や心神耗弱による減軽がない限り、ちょうど3年の言渡しを受けた場合に限られます。

そのうえで、①これまで拘禁刑以上の刑に処せられたことがない人、②処せられた経験があっても、前の刑の執行を終わった日または執行の免除を得た日から5年の間に拘禁刑以上の刑に処せられていない人、のいずれかにあたる必要があります(刑法25条1項1号・2号)。執行の免除とは、刑の時効の完成や恩赦により刑を執行されずに済むことです。

犯罪の情状に酌量すべき事情があるときは、酌量減軽によって長期と短期がそれぞれ2分の1になります(刑法66条・68条3号・71条)。累犯加重がなければ1年6月以上10年以下、累犯加重があれば加重後の30年を基礎に1年6月以上15年以下となり、最も軽い場合は1年6月です。

もっとも、条件を満たしても執行猶予を付けるかどうかは裁判所の判断ですから、常習累犯窃盗で執行猶予がつく可能性が高いとはいえません。

執行猶予が付けられるケースと付けられないケース

執行猶予がつくかどうかは、法律上の要件だけでなく、前の刑からの経過年数や今回の被害状況、示談の有無も踏まえて判断されます。

執行猶予が付けられるケース

常習累犯窃盗で執行猶予がつくのは、まず今回の判決が確定する時点で、前の刑の執行を終わった日または執行の免除を得た日から5年を超えている場合です(刑法25条1項2号)。この5年は判決が確定した時点を基準に判断されるため、犯行の時点でまだ5年を過ぎていなくても、判決の確定までに5年を超えれば条件を満たす余地があります。

そのうえで、新たな窃盗が未遂に終わった場合、既遂でも被害額がごく僅少だった場合、被害者と示談が成立して処罰感情が緩和されている場合には、酌量減軽によって刑が3年以下まで下がり、執行猶予となる余地が出てきます。

執行猶予が付けられないケース

一方、今回の判決が確定する時点でまだ5年を超えていない場合は、刑法25条1項2号の条件を満たさないため、同条1項による執行猶予は認められません。

また、前の刑が執行猶予付きで、今回の判決の時点でもまだ猶予期間中である場合は、刑法25条2項の再度の執行猶予が問題になります。執行猶予中の再犯の流れは「執行猶予中の再犯でどうなる?逮捕された場合の刑期・判決を解説」で解説しています。

再度の執行猶予には、言い渡される刑が2年以下の拘禁刑であることと、情状に特に酌量すべきものがあることが必要です。この「2年以下」という上限は、令和7年6月施行の刑法改正で「1年以下」から引き上げられました。

常習累犯窃盗は酌量減軽をしても下限が1年6月ですが、1年6月から2年の範囲で言い渡されれば、法律上は再度の執行猶予の余地が残ります。ただし、実際に認められるのは極めて例外的な場合に限られます。

なお、再度の執行猶予で保護観察に付された人が、その期間中にさらに罪を犯した場合は、重ねて執行猶予を付けることはできません(刑法25条2項ただし書)。詳しい要件は「再度の執行猶予(ダブル執行猶予)とは?要件・条文・確率」をご覧ください。

常習累犯窃盗とクレプトマニア(窃盗症)の責任能力

刑事責任能力は、物事の善悪を区別する能力(是非弁識能力)とこの能力にしたがって自分の行動を制御する能力(行動制御能力)から構成されます。そして、精神の障害によりいずれかの能力が完全に欠けている状態のことを心神喪失、いずれかの能力が著しく弱まっている状態のことを心神耗弱といいます。

クレプトマニアとは、物を盗みたいという衝動をコントロールすることができずに盗みを繰り返してしまう精神疾患です。裁判でクレプトマニアだと認定されれば行動制御能力が完全に欠けている(心神喪失)か、あるいは著しく弱まっている(心神耗弱)と判断される可能性はあります。

もっとも、常習累犯窃盗の裁判でクレプトマニアを理由に心神喪失や心神耗弱が認められた例はほとんど確認されておらず、これを理由に無罪や減軽を得るハードルは非常に高いといわざるを得ません。

ただ、通常の判断能力を有する方が常習累犯窃盗の罪を犯した場合と比べると、非難の度合いは低いと判断される余地はありますから、情状面を争い、量刑上有利な判決を得るよう努めていくことは可能です。

常習累犯窃盗の罪を犯した場合の対応

常習累犯窃盗は法定刑が3年以上20年以下の拘禁刑ときわめて重く、適切な対応をしなければ長期の実刑判決を受ける可能性があります。

逮捕されると、警察と検察の手続で最大72時間、その後の勾留で最大20日間、合わせて最長23日間にわたって身柄を拘束されることがあります。

常習累犯窃盗で逮捕されそう、あるいはご家族がすでに逮捕された場合、最も重要なのは被害者との示談です。逮捕前に示談が成立していれば、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがないとして早期釈放や逮捕の回避につながる可能性があります。

また、起訴前に被害弁償をして示談を成立させれば、被害回復がなされたとして検察官が不起訴処分とする可能性も高まります。起訴された後でも、示談の成立は量刑上もっとも有利に働く事情です。

もっとも、常習累犯窃盗では前科があることから被害者の処罰感情が強く、示談交渉が難航しがちです。本人が直接交渉すれば感情を逆なでしかねませんし、釈放されても、警察は原則として被害者の連絡先を被疑者に教えません。

そのため、できるだけ早急に弁護士に相談し、被害者との示談交渉を一任すべきです。弁護士になら連絡先を伝えてよいという被害者もいますし、クレプトマニアが疑われる場合には、医療機関と連携した再犯防止策を裁判所に示して情状酌量を求めることもできます。

起訴後の保釈も見落とせません。保釈は保証金を納めて身柄を解放してもらう手続きですが、常習累犯窃盗は「常習として長期3年以上の拘禁刑にあたる罪」に該当するため、請求すれば原則として認められる権利保釈の対象から外れます(刑事訴訟法89条3号)。

そのため起訴後も身柄拘束が続きやすく、裁量による保釈を求めるには、通院計画や身元引受人など釈放後の生活を具体的に整えて示す必要があります。保釈そのものの仕組みは「保釈と釈放の違いは?早期釈放のためにすべきこと」で詳しく取り上げています。

弁護士に依頼すれば、取り調べで不利な供述を取られないためのアドバイスも受けられます。

窃盗事件を弁護士に依頼する場合の費用の目安は「窃盗・万引きに強い弁護士に無料相談|弁護士費用の相場も解説」でまとめています。

常習累犯窃盗で逮捕されそうな方・ご家族が逮捕された方へ

常習累犯窃盗は非常に重い罪であり、多くの方が「もう刑務所に行くしかないのか」と不安を感じておられることと思います。しかし、適切な時期に適切な対応をとれば、状況を改善できる可能性は十分にあります。

弊所では、常習累犯窃盗の弁護活動として、示談交渉、逮捕の回避、早期釈放、不起訴の獲得を得意としており実績があります。前科があることで示談が難しいケースでも、これまで多くの事案で示談をまとめてきました。また、クレプトマニアの可能性があるときは、専門の医療機関と連携しながら、再発を防ぐ体制づくりもサポートいたします。

親身かつ誠実に、弁護士が依頼者を全力で守りますので、常習累犯窃盗で逮捕されそうな方、ご家族が逮捕されてお困りの方は、一人で悩まず、全国どこからでもご利用いただける弊所の無料相談へお気軽にご連絡ください。

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメール・電話・LINEでの相談ができます。
  • 逮捕回避・早期釈放・不起訴・執行猶予の獲得を得意としております。
  • 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。

この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

逮捕回避・早期釈放 不起訴獲得 示談交渉 痴漢・盗撮 性犯罪 暴行・傷害
メディア掲載 フジテレビ「とくダネ」/ ダイヤモンド・オンライン / @DIME / サイゾー 他多数
講演実績 「不当要求対応の基礎」「犯罪組織によるマネー・ロンダリングと投資詐欺への法的処置」等
刑事事件に強い弁護士に無料で相談しましょう

全国対応で24時間、弁護士による刑事事件の無料相談を受け付けております。

弁護士と話したことがないので緊張する…相談だけだと申し訳ない…とお考えの方は心配不要です。当法律事務所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。弁護士に刑事事件の解決方法だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。

逮捕の回避・早期釈放・不起訴・示談を希望される方は、刑事事件に強い当法律事務所にメール・お電話・LINEでご連絡ください。