離婚や別居することによって、子供と離れて暮らすことになった親(非監護親)には、子供と直接会ったり、電話やメール、プレゼントのやり取りなどの直接会わない方法で親子の交流をする、「面会交流権」という権利があります。
そして、この権利に基づき面会交流を実施するためには、まずは父母が話し合いによってその内容(面会交流の頻度や方法など)を決める必要があります。
しかしながら、
- 子供と同居している親(監護親)が子供に会わせてくれない…、面会交流の求めを無視する
- 面会交流の協議がまとまらない…、相手が協議に応じない
といった問題を抱えている方も多いのではないのでしょうか。
このような場合に、家庭裁判所に間に入ってもらい面会交流に関する取り決めをする制度のことを、「面会交流調停」といいます。
この記事では、
- 面会交流調停で話し合われる内容
- 面会交流調停の流れ
- 面会交流調停の申立て方法
- 面会交流が制限されるケース
- 相手方が面会交流の条件を守らなかった場合の対処法
について、離婚問題に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
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目次
面会交流調停で話し合われる内容
面会交流調停では、子供の福祉や利益に適うよう、また、子供の身体的・精神的負担とならないよう最大限の配慮をしたうえで、以下のような内容につき話し合いが行われます。
- 面会交流の頻度、日時
- 面会交流の場所、子の受け渡し場所
- 父母が日程調整等で連絡を取り合う方法
- 面会交流時の監護親の立ち合いの要否
- 宿泊・旅行を伴う面会交流の可否
- 子の学校行事等への参加の可否およびその方法
また、面会交流を実施することで、子供の福祉・利益を害する可能性がある場合には、「そもそも面会交流を行うべきかどうか」について議題となることもあります。
面会交流調停の流れ
①まずは、家庭裁判所に「面会交流調停の申立書」等の必要書類を提出します。
②提出後、約2週間前後で家庭裁判所から双方(監護親・非監護親)に呼出状が送られてきます。
③呼出状に書かれている第一回調停期日に従って、家庭裁判所に出廷します。面会交流は子の福祉が重要視されますので、面会交流を認めることが適当か否か、いかなる条件で面会交流を認めるかなどを判断するために、調停期間中に家庭裁判所調査官による事実調査や面会交流のテスト(試験的面会交流)が実施されることもあります。なお、1回の調停期日にかかる時間は2時間程度です。調停期日は月1回、合計で平均的に3回~5回ほど開かれます。
④調停が成立すれば、取り決めに従って面会交流が認められることになります。他方で、調停不成立となった場合には、手続きは自動的に「審判」に移行します。審判では、調停と異なり、当事者間の話し合いではなく、あくまで当事者の主張をベースとして裁判所が面会交流の条件について決めることになります。
面会交流調停の申し立て方法
協議で面会交流に関する話がまとまらず、面会交流調停に移行しなければならなくなった場合の申し立ての方法について解説いたします。
申立先の家庭裁判所
相手方(申し立てられる側)の住所地を管轄する家庭裁判所が申立先となります。
ただし、申し立てる側が相手方と距離的に離れた場所に住んでいる場合、調停のたびに遠方の家庭裁判所に出向くことは大変ですので、お互いの合意のもと別の家庭裁判所(中間地点の裁判所など)に申し立てることもできます。
申立の必要書類
- 面会交流調停の申立書及びその写し(コピー)
- 未成年者の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
- 収入印紙
- 連絡用の郵便切手
- その他、必要に応じて家庭裁判所から追加で提出を求められるもの
申立の費用
- 収入印紙代:子供1人につき1,200円
- 連絡用の郵便切手代:おおよそ1,000円
連絡用の郵便切手代は裁判所によって異なりますので事前に管轄裁判所に電話して確認しましょう。
申立書の入手方法と書き方
申立書の書式は、「面会交流調停の申立書ダウンロード」をクリックすることで入手できます。
書き方については、「面会交流調停申立書の記入例」を見ながら記載してください。
面会交流を制限されるケース
面会交流は親の権利ではありますが、無制約に認められるというわけではありません。権利といえども一定の制約にかかります。また、面会交流は子の利益のためにもあるのです。
したがって、親の権利として保護すべきではない場合のほか、面会交流を認めることが子の利益のためにならないと認められるケースでは、面会交流自体を制限されることがあります。
具体的には以下のケースです。
⑴ 同居時、子に対して虐待を加えていた
過去に、子に対して暴力を振るう、暴言を吐く、わいせつな行為をする、ネグレクト(放置)、無視するなどの虐待を加えていたなどの経歴を有する場合です。
なお、配偶者に対するDVの経歴があるからといって直ちに面会交流が制限されるわけではありませんが、DVが子に悪影響を与えており、子が面会交流を拒否する場合は制限されることとなるでしょう。
⑵ 精神的に不安定、子に悪影響・害悪を与えるおそれがある
申立人がアルコール、薬物、病による影響で精神的に不安定な場合、子に危害を加える、犯罪に巻き込むおそれがある場合などです。
⑶ 調停中、不誠実な態度をとる
相手方に「毎日会いたい」など無理な条件を突きつける、決められた調停期日に理由もなく出廷しない、調査官の調査に非協力的、感情的になって裁判官や調停委員に食ってかかる態度をとるなどです。
⑷ 子が面会を拒否している
子が本当に面会交流を拒否しているかどうかは調査官の調査によって慎重に見極められています。
もっとも、子が11歳を超えてくると子の意思が尊重されはじめ、子が高校生以上となると、ほとんどの場合、子の意思しだいで面会交流を実施するかどうかが決まります。
相手方が面会交流の条件を守らなかった場合の対処法
面会交流調停や審判で決定した条件を守ってくれない、面会交流をさせてくれない、という事態へと発展した場合の取るべき対処法を以下でご紹介します。
(1)家庭裁判所に履行勧告してもらう
履行勧告とは、家庭裁判所から相手方に対して「取り決めた条件を守ってください、面会交流させてください。」と文書で通知することです。
家庭裁判所に履行勧告してもらうには、家庭裁判所に対して申出を行う必要があります。
- 履行勧告申出書(※リンク先のページからダウンロードできます)
- 調停調書謄本のコピー(※調停調書謄本は、調停した家庭裁判所に請求して取り寄せることが可能です)
履行勧告の申し出は費用もかかりませんし、相手方には「従わなければ何かされるのではないか」と思わせ、面会交流を実現できるというメリットがあります。
他方で、履行勧告には強制力がありません。
つまり、履行勧告はあくまで相手方の「協力(任意)」によって得面会交流を実現させるもので、強制的に実現させるものではありません。
(2)家庭裁判所に間接強制命令を出してもらう
家庭裁判所に履行勧告してもらっても面会交流を実現できない場合は、家庭裁判所に間接強制命令を出してもらいます。
間接強制命令とは、相手方に対して「一定期間の間に面会交流をさせない場合は、申立人に対して〇円を払え。」という金銭の支払いを命じる命令です。
面会交流を拒否する相手方に金銭の支払いという心理的プレッシャーを与えて、結果として、面会交流を強制的に実現させようというのが間接強制命令の趣旨です。
家庭裁判所に間接強制命令を出してもらうには、家庭裁判所に対して間接強制の申し立てを行う必要があります。
- 間接強制の申立書(※リンク先のページからダウンロードできます)
- 調停調書謄本のコピー
- 2,000円分の収入印紙
- 連絡用の郵便切手(※金額の詳細は申し立て先の家庭裁判所へお尋ねください
もっとも、家庭裁判所から相手方に間接強制命令が出されたからといって、相手方がそれに従って金銭を支払ってくれる保障はありません。
仮に、相手方が金銭を支払わない場合は、間接強制とは別に相手方の財産(給与債権など)を差し押さえる強制執行の手続きを取る必要があります。
面会交流の間接強制とは?認められるケース、認められないケースを紹介
(3)慰謝料請求する
面会交流を拒否され続けることにより精神的苦痛を被った場合は、この苦痛の程度を金銭に評価しなおした慰謝料を相手方に請求することも検討しましょう。
裁判外での請求は、書面(内容証明)で行うのが一般的です。また、相手方の態度しだいでは直ちに訴訟提起する(裁判上の請求をする)ことも可能です。
ただし、請求が認められるには、一度や二度の拒否では足りず、一定期間拒否し続けられた、という事実が必要です。
また、慰謝料請求することにより、逆に態度を硬化させてしまう可能性もありますので、請求するかどうかは慎重に検討する必要があるでしょう。
面会交流を拒否されたら慰謝料請求できる?条件、相場、裁判例など
面会交流調停を有利に進めるための5つのポイント
感情的ではなく論理的に伝える
面会交流について調停になっているという場合には、父母それぞれが主張する内容に折り合いが着かない状態となっていることが一般的です。そして、そのような場合、合理的な主張よりも感情的な主張をしてしまう傾向があります。
例えばこれまで「如何に相手方が家庭を省みなかったか」「いかに子どもに対して悪い態度をとっていたか」というようなエピソードを裁判官や調停委員に伝えたくなりがちです。
しかし、多くの場合そのような相手方への愚痴に終始してスムーズな話し合いを阻害する場合もあります。
そこであなたが目指すべきであるのは子どもにとってより良い解決であるということを今一度念頭に、証拠によって証明できる有利な事実について主張を淡々と裁判所に伝えることが必要となります。
調停委員を説得する
面会交流調停を有利に進めるためにはまずは調停員を説得することが大切です。なぜなら調停員を納得させることができれば調停委員から相手方親に対して説得してくれることも期待できるからです。
調停委員は一般市民の中から選任されていますが、市民の良識を反映させるため社会生活上の豊富な知識・経験や専門的な知識を有する人が選ばれています。例えば弁護士・医師・大学教授などが調停委員を務めていますので、彼ら・彼女らを論理的に納得させることができればあなたの望む解決方法を後押ししてくれる可能性も高いのです。
調査官による調査を実施してもらう
家庭裁判所の調査官は事実を調査して家事審判官や調停員会に対して調査の結果を報告すると同時に適切な解決を図るための意見を述べます。
調査官の行う調査としては家庭紛争の真の原因を把握するために当事者と面接等を行うことです。
面会交流について監護親である親から否定的な主張がなされた場合には調査官による調査の実施を依頼してみましょう。調査官調査の結果、面会させることに問題ないと調査官が結論付ける場合もあります。
子どもと問題なく面会交流できることを示す
面会交流を実施することに対して何ら問題がないことをしっかり伝えましょう。
例えば、子どもと良い関係が築けていること、過去に虐待や暴力を振るったことがないこと、監護親のもとから連れ去るようなことはない等の事実を裁判所に納得してもらう必要があります。
また合理的な面会交流の内容を提示する必要があります。合理的で実現可能性のある方法での面会交流を主張すれば心証が悪くなることは少ないでしょう。
弁護士に依頼する
面会交流調停をスムーズに進めるためには弁護士に依頼することがおすすめです。
監護親である親が強く面会交流に反対しているような場合には手続の早期から弁護士に相談しておくべきでしょう。弁護士に依頼することで依頼者に有利な主張・証拠の提出を行ってくれますし、裁判官や家事調停委員とのやり取りもスムーズに行うことができます。面会交流調停の進め方についても弁護士が最善の方法を考えてくれますので手続に関する負担もかなり軽減されるでしょう。
弊所では、面会交流調停の豊富な実績があり、弁護士が調停に同席し依頼者を全力でサポートします。親身誠実をモットーとしておりますので、面会交流調停を申し立てたい方も申し立てられた方も、子供の為にも面会交流調停を有利に進めたいとお考えの方はまずはご相談ください。相談する勇気が解決への第一歩です。
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