離婚後、子供を引き取る権利|親権を理解する2つのポイントとは?

子供のいる夫婦が離婚する場合、親権者をどちらにするかが問題となります。親権者は、まず当事者の協議により定められます。しかし、協議が成立しない場合には、家庭裁判所で調停などをする必要があります。

今回は、親権に関して解説いたします。
本記事を読むことで……

  • ①親権を理解するための2つの権利
  • ②親権者を決めるための判断基準
  • ③親権者を決めるための手順
  • ④親権を得るのは母親が圧倒的に有利

……などがお分かりいただけます。
なお、本記事は弁護士が監修しているため、記事内の情報はすべて正確です。
最後まで安心して、お読みください。

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親権者とは?

親権者とは、文字どおり子供に対する「親権」を持つ人のことです。
親権者は子供の身の回りの世話をし、子供が行うべき契約など法律上の行為に関し、必要に応じて子供を代理・同意するなどの権利義務が認められています。

離婚前は夫婦両方が親権者

離婚していない夫婦の場合、夫婦両方が未成年の子供の親権者となることが一般的です。この場合、基本的には夫婦のどちらか1人だけで親権を行うことはできません。夫婦は共同して親権を行使することが法律の原則です。

離婚後はどちらか一方が親権者となる

これに対して夫婦が離婚する場合、一般的には夫婦は別々に生活することになります。この場合、夫婦共同で親権を行使することができなくなるため、離婚に際しては夫婦のどちらか一方を親権者として定めなければなりません。
国際的に見た場合、諸外国では離婚後においても両親の共同親権を定めることが主流となっています。しかし日本では上記のように、夫婦が離婚した場合には、どちらか一方だけが親権を行使することになっています。このため、離婚後も共同親権(「離婚後共同親権」)を認めるべきだとする批判がなされています。

なお、協議離婚する場合には、夫婦のどちらが親権者になるのかは離婚届の記載事項となっています。万一、親権者が決まっていない場合には、離婚届が受理されない扱いとなっているので注意してください。

親権は権利と同時に義務!

親権という言葉は、「権」という文字が付いているため、親の子供に対する一方的な権利だと思われている方も多いのではないでしょうか?しかし、この考え方は間違っています。
法律上、親権とは親の子供に対する権利義務。つまり、「権利」であると同時に「義務」なのです。
親権とは、子供を自分の手元に置き、育てることができるという権利だけではなく、子供の財産を管理したり子供の世話をしなければならないという義務でもあるということです。
法律上、親権者は子供に対して権利を持つと同時に、義務も負っているのです。

親権の義務違反は犯罪となることも!

上記のように親権は、親の子供に対する権利であり、義務でもあります。このため、親権者が子供に対して親権の行使を怠った場合、刑罰を受けることもあるのです。
たとえば、最近ニュースなどで話題になることの多いネグレクトが、その好例といえます。親権者には、子供の世話や食事の面倒などをみて、子供を育てる法律上の義務があります。そのため、子供の面倒を見ることを放棄することは、「保護責任者遺棄罪」に該当する犯罪行為となるのです(刑法218条)。

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親権を理解するための2つの権利

世間ではひと口に「親権」と呼んでいますが、法律的にみた場合、親権は2つの権利によって構成されています。
具体的には、子供の「財産管理権」と「身上監護権」です。

①子供の財産管理権

親権者は、判断能力の未熟な子供に代わり、子供の財産を管理しなければなりません。この子供の財産に関する管理権は、さらにつぎの2つに分けることができます。

子供の財産を管理すること

親権者は子供に代わり、子供の財産を管理する必要があります。
たとえ未成年の子供とはいえ、子供が財産を所有することは珍しいことではありません。子供がお年玉をもらえば銀行にお金を預けることがあるでしょうし、相続によって不動産の所有者となることもあり得ることです。
このような場合、親権者は子供の財産の管理人として、それら財産を管理しなければならないのです。
世間でよく見る事例ですが、親権者が子供の財産を勝手に消費してしまうことがあります。しかし子供の財産を自分が管理しているからといって、正当な理由なく、その財産をみだりに消費する行為は慎まなければなりません。それらの各財産は、親権者のものではなく子供の財産なのです。

子供を代理して法律行為を行うこと

親権者には、本来子供が自分自身で行うべき法律上の行為を、子供に代わって行う権利があります。これを「法定代理権」といいます。
また、法定代理権のほかに、子供が法律上の行為をすることに対して同意を与えることもできます。
子供がゲームソフトなどをショップに売ろうとした場合、親権者として同意が求められることがありますが、これが上記の好例です。

財産管理権を喪失することもある

上記のように、親権者には子供の財産を管理する権利が認められます。
しかし、親権者に一定の事情がある場合には、家庭裁判所の判断によって財産管理権を喪失するケースもあります。たとえば親権者において子供の財産を私的に消費してしまうなどの事情がある場合などが、これに該当します。
財産管理権を喪失した親権者は、子供の身上監護権だけを持つ親権者となります。

②子供の身上監護権

親権には、子供の身上監護権が含まれます。これは、子供の身柄を引き取り養育する権利義務です。子供の身上監護権を持つ者は、子供を引き取り一緒に生活する権利が認められますが、子供をきちんと育てなければならない義務も負うことになります。
世間で「親権」という言葉を使う場合、この身上監護権のことを指すのが一般的といえるでしょう。
身上監護権の内容は、主につぎのようなものとなります。

監護教育権

監護権を持つ親には、子供を保護し、適切な教育を受けさせる義務があります。
憲法上定められている「教育の義務(保護する子女に教育を受けさせる義務)」は、この義務のことを指すと考えられます。

居所指定権

監護権を持つ親には、子供の生活場所を指定する権利が認められます。実際上、子供は親と一緒に生活することになるのが通常ですから、この権利は実質的に親が子供と一緒に住むことのできる権利と考えることができます。
なお、意思能力の認められる子供(小学校5,6年生程度)が監護親ではない親と同居を望んでいるような場合、監護親による居所の指定よりも子供の意思を尊重しようというのが実際の運用です。

懲戒権

監護権を持つ親には、子供を適切にしつけするために、懲戒する権利が認められます。「懲戒」とは、「罰する」ことです。基本的には、「体罰」などを指します。
つまり監護親には、必要に応じて子供を罰する権利が認められるのです。ただしこれは、あくまで「しつけ」の目的の範囲内でなければいけません。
子供をたたく・つねる、子供を縛る、押し入れなどに閉じ込める、などという行為が懲戒権行使の具体例です。
ただし、繰り返しになりますが、上記のような懲戒権の行使は「しつけ」の目的の範囲内であることが必要です。万一、懲戒行為が行き過ぎた場合には、虐待となるため注意が必要です。

職業許可権

監護権を持つ親は、子供が職業に就こうとする場合、許可を与える権利があります。
たとえば子供がアルバイトなどをする場合、職業許可権を持つ親は、子供と会社の間の労働契約などについて許可を与えることができます。

身分上の行為の代理・同意権

「身分上の行為」とは、子供が養子縁組や相続の承認・放棄をするなど、子供の法律上の身分に影響を与えるような行為のことをいいます。
たとえば子供が15歳未満の場合、子供は自分自身で養子縁組をすることが法律上認められていません。この場合には、親が子供に代わって子供のために縁組の承諾をする必要があります(「代諾縁組」)。
このように監護権を持つ親は、子供の身分上の行為に関して、子供の代理や子供が行う身分上の行為に対して同意を与えることができるのです。

親権者と監護親は別々に決めることも可能!

このように親権には、子供の財産管理権と身上監護権という2つの側面に分けることができます。
法律上の原則では、親権者には上記2つの権利が認められます。しかし、当事者の協議次第では離婚する夫婦がそれぞれ「財産管理権」と「身上監護権」を別々に持つことも認められているのです。この場合、財産管理権を取得する者を「親権者」、身上監護権を持つ者を「監護親」と呼びならわしています。

監護親が子供を引き取る

上記のように離婚に際して親権者と監護親を別々に定めた場合、離婚後子供を引き取ることができるのは親権者ではなく監護親となります。この点が、もっとも注意すべきポイントです。「親権を得る」というと、子供を引き取れることだと思っている方が多いでしょうが、親権者と監護親を分けた場合には親権者には子供を引き取る権利が認められないのです。
親権者と監護親を分けた場合、監護親は子供の身の回りの世話などに関して権利義務をもち、親権者は子供の財産など法律上の行為に関して代理・同意などをすることになります。

親権者と監護親を分けるメリット

離婚に際して、夫婦をそれぞれ親権者と監護親に分ける場合、つぎのようなメリットが考えられます。

親権に関する協議が成立しやすくなる

夫婦間において、どちらを親権者にするか話し合いが成立しない場合、親権者と監護親を分けることで協議が成立しやすくなることがあります。
親権と監護権を分けた場合、親権者となったものは子供を引き取ることができないとしても、親権者として子供の財産管理権を取得することができます。この場合、離婚後も子供とのつながりを保つことができます。子供が契約などをする際には、親権者の代理または同意が必要となり、その度に子供とのやりとりをすることができるからです。
離婚後も子供とのつながりを持つことができるようにすることで、相手も監護権を渡すことに同意しやすくなる可能性があります。

離婚後も子供とのつながりが保てる

離婚に際して親権者と監護親を分けた場合、子供は監護親が引き取り育てることになります。この場合、親権者は子供の財産の管理や法律上の行為の代理権などが認められます。
未成年の子供が他者と契約するなど法律上の行為をする場合、親権者には代理権や同意権があるため、離婚後も子供とのつながりを保つことができます。

子供のショックを緩和できる可能性も!

親権者と監護親を分けた場合、子供の側から見た場合にもメリットが考えられます。
両親の離婚は、子供にとって大きなショックを与えるものです。場合によっては、子供の心に大きな傷を残すことになるかもしれません。
しかし、両親がそれぞれ親権者と監護親となれば、子供は両親の離婚後にも親権者になった親とやり取りを続けることができることになります。たとえ親権者である親と一緒に生活することができなくなったとしても、親権者は離婚後も子供の法律行為の代理や財産の管理などを行うことができます。これらの行為を通じて、子供としては親権者とのつながりを実感できるでしょう。親権者とつながりがあるという実感は、両親の離婚というショックを和らげるのにプラスに働く可能性があるのです。

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親権者を決めるための判断基準とは?

子供のいる夫婦が協議離婚する場合には、離婚の前提として親権者を決める必要があります。親権者を夫婦のどちらにするかに関しては、当事者の協議により自由に定めることが可能です。親権者を母親とすることはもちろんのこと、父親を親権者とすることもまったく問題ありません。
しかし、当事者で親権者をどちらにするか協議が成立しない場合には、家庭裁判所で調停などを行う必要があります。

家庭裁判所が親権者を決めるときの基準とは?

家庭裁判所で親権が争われる場合、どちらを親権者にするかに関しては一定の基準が定められています。
具体的には、主につぎのような10個の要素ごとに夫婦のどちらが、より重要な役割を担っているのか評価します。そして、それらを総合的に判断し、最終的に親権者が決定されることになるのです。

①現在の監護状況

現在の監護状況とは、現在、子供を夫婦のどちらが面倒見ているのかということです。家庭裁判所が親権者を決定する際に、もっとも重要視する要素の1つと考えてよいでしょう。
子供の送り迎え、食事の世話、洗濯など、総合的に子供の世話をしているのが夫婦のどちらなのかが問題となります。また、子供が小さいほど、この項目はより重視される傾向にあります。

②現在に至るまでの監護状況

親権者を定める際に、上記「現在の監護状況」と同様に重視される項目です。
今までに夫婦のどちらがメインとなって子供の世話を行ってきたのかが問題となります。当然、子供の面倒を見てきた側が有利になります。

③子供の意思

これは離婚後、子供が父母のどちらと一緒に生活することを希望しているのかを考慮するものです。
ただし、子供が小さい場合には、子供の意見はそれほど重視されない傾向があります。これに対し、子供が小学校卒業以降には、子供の意見は非常に尊重されることになっています。

④住環境

これは離婚後、子供がどのような住居で生活することになるのかということに着目するものです。
特に子供が学校に通っている場合には、両親が離婚することによって引っ越しや転校が必要となるのかどうかが重要なポイントとなります。

⑤監護補助者の有無

これは離婚後、子供の世話を補助してくれる人がいるかどうかという点に着目するものです。
子供を引き取った親が忙しい時などに、補助的に子供の面倒を見てくれる肉親などがいるかどうかが問題とされます。当然、監護補助者がいる場合の方が有利となります。
ただし、この項目は、通常それほど重要視される要素ではありません。

⑥経済力

これは、夫婦の収入・資産の額がどれくらいあるのかに着目するものです。
離婚後子供を引き取り、成人するまで育て上げるには、言うまでもないことですがお金が必要です。離婚に際して親権者となるためには、親権者の収入や資産の額なども判断材料となります。
ただし、夫婦に経済力の格差がある場合でも、養育費の授受により夫婦間の経済的格差の平均化ができるため、それほど重要視される要素ではありません。

⑦離婚における有責性

家庭裁判所が、夫婦のどちらを親権者にするかの判断をする際には、離婚原因も考慮に入れることがあります。
浮気や暴力、モラハラなどによって離婚の原因を作った場合、離婚原因を作った者は、親権者の判断に関して不利になる可能性があります。
ただし、離婚原因と子供の養育問題は、基本的にはまったく別問題です。そのため、場合によっては離婚原因は問題とされないこともあります。夫婦の一方に子供への暴力やモラハラ、ネグレクトなどがあった場合には、当然ですが親権の取得に大きくマイナスの影響を及ぼすことになるでしょう。

⑧母性の有無

母親には一般的に、母性があるとみなされます。子供のために親身になって世話をするためには、母性が必要とされます。母性のある者は、親権を得る場合には有利に扱われる傾向があります。
このため、子供の親権争いがおこった場合には、実際の事例では母親が親権を獲得することが圧倒的に多くなっています(後述)。

⑨面会交流の許容度

面会交流の許容度とは、夫婦のどちらかが親権者となった場合に、相手方に対して子供との面会交流を認めているかどうかという点に着目するものです。
親権者とならなかった者は、一般的に言って離婚後、子供を引き取ることができません。親権者が子供を引き取り、養育することになるからです。ただしこの場合でも、子供を引き取らなかった側は定期的に子供と会い、一緒に一定の時間を過ごす権利が認められています。これを「面会交流権」といいます。
家庭裁判所が親権者を決定する場合には、夫婦がお互い相手方に対して面会交流権を認めているのかどうか、という点が判断材料のひとつとされます。
たとえば妻が、夫と子供の面会交流を認めていない場合、妻の親権獲得のためにはマイナス材料となります。
この要素は、最近だんだん重要視されるようになってきています。子供の親権を取得したい場合には、できるだけ面会交流に関しては寛容になることが大切です。
なお、子供に対する虐待行為などを行っていた親には、面会交流権が制限されることがあります。

⑩兄弟が別れて生活するかどうか

これは、夫婦の間に子供が複数いる場合、兄弟がバラバラになるかどうかという点に着目した要素です。
家庭裁判所としては、なるべく兄弟は一緒に生活することが望ましいと考えます。このため、兄弟が一緒に生活するためには、夫婦のどちらに親権を認めたほうがよいのかが判断されます。この要素は、子供が小さいほど重要視される傾向にあります。
たとえば、経済的理由から妻が子供の一部しか引き取れない事情がある場合に、夫であれば子供全員を引き取れるというケースがあったとしましょう。この場合には、親権は夫に有利に判断されることになります。

家庭裁判所調査官による面談・家庭訪問

家庭裁判所が親権者を決定する際には、以上のように主に10個の項目を重視して判断することになります。しかし、家庭裁判所が必要と判断した場合には、家庭裁判所調査官が子供と面談したり家庭訪問するなどして詳細な調査をすることになっています。
そして家庭裁判所は、その調査の結果も含めて総合的に判断し、最終的に親権者を決定することになるのです。

親権の目的は子供の幸福の実現

家庭裁判所が親権者を決定する際、何よりも重要な判断基準があります。それは、夫婦のどちらを親権者にした方が、より子供の利益(福祉)のためになるのかということです。
親権者は、子供の幸福の実現を目的として決定されるのです。

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親権者の決め方の手順

それではここで、実際に親権者を決めるための具体的な手順について見てみることにしましょう。

当事者で話し合う

離婚に際して子供の親権者を決める場合、まずは当事者が話し合うことから始まります。
繰り返しになりますが、親権者は当事者の協議によって自由に決めることができます。母親が親権者とされることが一般的ですが、父親を親権者とすることも十分可能です。
夫婦が親権者に関して話し合う場合には、つぎの事項について具体的に取り決めすると、のちのちのトラブルを避けることができます。

養育費についての条件

離婚に際して子供を引き取った側は、引き取らなかった方から養育費をもらう法律上の権利が認められます。
このため親権者となり子供を引き取る場合には、養育費の各種条件(養育費の額・いつまで支払うのかなど)に関して明確に定めておくことが大切です。その際には、取り決め内容をかならず書面で残しておくと安心です。

面会交流権の条件

離婚に際して親権者とならなかった者は、通常、離婚後は子供と一緒に生活することができなくなります。このような場合には、法律上、離婚後も子供と定期的に面会する権利(面会交流権)が認められています。
当事者で面会交流権を定める場合には、面会の方法や頻度(「月に一度」「毎週末」など)、面会の時間などについて具体的に定めておいたほうがよいでしょう。
なお、これら面会交流の条件に関しても書面に残しておくと、のちのトラブル防止に役立ちます。
面会交流の方法としては、実際に親子が面会するだけでなく、現在では電話やメールなどでのやり取りをすることも含まれます。
親権が欲しい場合には、相手方に面会交流権を広く認めることが有効です。相手に面会交流を寛容に認めてあげることで、親権を取得できる可能性が高くなります。

協議が成立しない場合:まずは調停

当事者の協議によって親権者が決まらない場合、家庭裁判所で調停(「夫婦関係調整調停」)を行うことになります。
当事者の協議が調わない場合、法律上の基本としては訴訟の前に調停を行う必要があります。これを「調停前置主義」といいます。調停では家庭裁判所の調停委員などが夫婦の間に入り、夫婦間に合意が成立するように努めることになります。この際、基本的に夫婦が同室することはありません。夫婦の関係によっては、お互いが顔を合わせると、話し合いがかえって進まない可能性もあります。そのため調停では、夫婦はお互い顔を合わせることなく手続きが進められるのが一般的です。

調停は複数回行われることもある

調停は、一度だけで話し合いがつくとは限りません。一度の調停で話し合いがつかない場合でも、当事者に合意成立の可能性があると認められる場合には、引き続き調停が継続されることになります。この場合、基本的には月に一度のペースで調停が行われることになります。
そして最終的に、親権者をどちらにするかについて当事者に合意が成立した場合には、その旨の調停調書が作成され調停は終了することになります。

いきなり訴訟が可能な場合も!

当事者間で親権者を誰にするか協議が成立しない場合には、上記のように、まずは家庭裁判所で調停を行う必要があります。しかし、これには例外もあります。
相手方が調停に非協力的であるなど一定の事情があり、調停の手続きをしても不成立になることが明らかである場合などには、調停を経ず訴訟を提起することが認められることもあるのです。

参考:「夫婦関係調整調停(離婚)」(裁判所サイト)

調停が成立しない場合:離婚訴訟

調停を経ても当事者に合意が成立しない場合、基本的には離婚訴訟を提起することになります。離婚訴訟では、当事者の提出する証拠や当事者の主張を裁判所が判断し、最終的に夫婦のどちらを親権者とするのかについて判決が出されることになります。この判決によって、夫婦のどちらが親権者となるかが決定されます。
なお、判決に不満がある場合には、控訴など不服の申し立てをすることが可能です。ただし、その場合には、さらに紛争の解決までに長い時間がかかることになります。

なるべく訴訟は避けるべき

親権争いが訴訟まで発展した場合、紛争の解決に長い時間と多大な労力が必要となってしまいます。裁判が終わるまでには、通常長い時間がかかります。その間、夫婦はもちろんのこと、子供も心理的にマイナスな影響を受けることも考えられます。
そのようなことを避けるため、面会交流や養育費などの条件に関して多少譲歩するとしても、なるべく調停までの段階で話し合いを成立させるように努めたほうがよいでしょう。

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親権の取得は母親が有利!

夫婦の間で子供の親権が争われた場合、どちらが親権者として適しているのかについては、家庭裁判所が判断することになります。この際には、上記のように一定の基準をもとに親権者が決定されることになっています。
しかし、結論から先に申し上げますと、親権者は母親とされることが圧倒的に多くなっています。近年の司法統計によると、調停や裁判で母親が親権者とされる率は約90%。母親が親権を希望した場合、ほとんどの事例で親権を取得できていることがわかります。

子供が小さい場合、親権者は母親

上記のように、家庭裁判所で親権者が決められる場合、ほとんどのケースで母親が親権を取得しています。
この傾向は、特に子供が小さい場合に顕著に強くなっています。子供が小さい場合、なんといっても母親による各種のケアが子供には必要です。子供が中学校に入学する程度まで大きくなれば話は別ですが、小学生くらいまでの間であれば、かなり高い確率で母親が親権を取得できると考えてよいでしょう。
ただし母親が育児放棄をしていたり、子供に対して虐待をしていたなど特別な事情がある場合には、親権を取得できない可能性が高くなります。

妻の浮気で離婚した場合でも親権者となれる

夫婦が離婚に至る原因は、世の中さまざまです。離婚原因で常に上位を占めるものとして、配偶者の浮気が挙げられます。浮気といえば、通常は夫が行うイメージがありますが、実際の事例の中には妻が行うケースもあります。
それでは、もし妻が浮気をしてしまい、これが原因で離婚に至った場合、母親は親権を取得することができなくなってしまうのでしょうか?

離婚原因と親権者の判断基準は別

すでにご紹介しましたように、家庭裁判所が親権者を決める際の判断基準は、離婚の原因も要素とされています。しかし、この要素は、それほど重視されているものではありません。なぜなら離婚原因は夫婦関係に関するものであって、基本的には子供の養育に関係するものではないからです。

親権を取得することは十分可能

すでにご覧いただいたように、夫婦で親権が争われた場合には家庭裁判所によって母親が親権者とされる事例が圧倒的に多くなっています。親権の取得を希望する場合、母親は非常に有利な立場にあるのです。
これは、離婚原因が妻の浮気の場合でも、基本的に異なることはありません。夫婦間で親権が争われたとしても、母親として親権の取得を希望する以上、かなり高い確率で親権の取得が認められるでしょう。
しかし、つぎのような事情がある場合には話が変わってきます。

親権が取得できないケース

一般的に考えた場合、浮気したという事実が親権の取得の妨げになる可能性は低いと考えられます。しかし、つぎのような事情がある場合には、親権を取得できなくなる可能性が高くなりますので注意してください。

育児がおろそかになっていた場合

浮気が原因で子供の世話が不十分となっていた場合、親権の取得のためには大きなマイナス材料となります。
特に子供が小さい場合、親権が取得できなくなる可能性が高くなるので注意が必要です。

浮気相手による子供への虐待がある場合

母親による虐待がなかったとしても、浮気相手によって子供に虐待が行われていた場合、親権が取得できない可能性が高くなります。
離婚後、母親は浮気相手と結婚や同棲する可能性が考えられます。この場合、再び子供への虐待が行われる可能性が高いと判断されるからです。

親権を得られなかった場合の2つの対策

親権を得たいにもかかわらず、当事者の協議や調停・裁判などによって親権を得ることができなかった場合、どのような対策を講じればよいのでしょうか?
そのような場合には、つぎのような方法を検討してみるとよいでしょう。

①親権者変更の申し立てをする

現在の親権者に関して一定の事情がある場合、家庭裁判所に申し立てることによって親権者の変更が認められる場合があります。
親権を取得した者に、つぎのような事情がある場合には親権者変更の調停を申し立てることが認められているのです。

親権者変更が認められる事由
  • 親権者である親が子供に対して暴力・虐待・ネグレクトなどをしている場合
  • 親権者が恋人と同棲するなどによって子供の養育環境が悪くなった場合
  • 子供自身が親権者の変更を望んでいる場合
  • 親権者が病気などの事情により、子供の面倒を見ることができなくなってしまった場合
  • その他、親権者を変更したほうが子供の利益になると判断される場合

上記のような理由があり、家庭裁判所が親権者を変更したほうが子供の利益になると判断した場合には、親権を獲得できる可能性があります。

参考:「親権者変更調停」(裁判所サイト)

②面会交流権を認めさせる

通常の場合、親権を取得できなかった側の親は、離婚することによって子供と一緒に生活することができなくなります。
しかし、だからといって一生子供に会えなくなってしまうわけではありません。上述のように、親権を得られなかった親には法律上「面会交流権」が認められるからです。

面会交流の頻度・方法は当事者の自由

離婚後も子供に会いたいと思う気持ちは、大半の親が強く抱くものだと思います。
たとえ親権を取得できなかったとしても、離婚後定期的に子供に会いたい場合には、親権者に面会交流権を認めさせることが大切です。
その場合には、なるべく自分にとって有利な条件になるように努めるとよいでしょう。子供と会う頻度や毎回の時間などを、なるべく自分の希望に近いものにするように条件を交渉しましょう。
離婚に際して子供を手放す親からすれば、面会交流権は非常に大切な権利となります。面会交流の条件を有利にするためには、相場よりも高めの養育費を支払うことにするなど、一定の譲歩をすることも必要かもしれません。

調停が必要となることも

親権を手放す側の親にとって、離婚後の面会交流は子供との絆をつなぐ重要な問題です。
そのため、当事者間で面会交流の条件に関する協議をする場合には、自分の理想とする条件を躊躇なく主張すべきです。
繰り返しになりますが、面会交流は何も実際に子供と実際に会うことばかりに限定されるものではありません。現在は技術の進歩により電話はもちろんメールや、テレビ電話などで子供と交流することも可能です。このような方法も検討しつつ、視野を広くして面会交流の条件を検討してはいかがでしょうか?
なお、当事者の協議によって面会交流の諸条件について合意が成立しない場合、親権の場合と同様、家庭裁判所で調停などを行うことになります。

まとめ

今回は、離婚後の子供の親権に関してご説明させていただきました。

離婚する夫婦に未成年の子供がいる場合、離婚に際して夫婦のどちらかを親権者として定める必要があります。日本における離婚では、母親が親権者となることが圧倒的に多くなっていますが、当事者の協議や事情によっては父親が親権者となることも十分可能です。また、必要に応じて親権者と監護親を分離することも可能です。
今回ご紹介した知識が、みなさんの参考になれば幸いです。

親権を夫婦のどちらが取得するかは、親にとって重大な問題です。もし親権の取得に関して疑問や悩みがある場合には、お気軽に当事務所へお問い合わせください。
離婚問題に精通した弁護士が、懇切丁寧に対応させていただきます。

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