夫婦間で子のために面会交流を実施することには合意したとしても、
- 離婚した相手と直接顔を合わせたくない
- 離婚した相手に子を預けることはやっぱり不安
- 離婚した相手と直接やり取りしたくない
などとの思いから、面会交流の実施までにはなかなか至れない、というお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?そんなお悩みをお持ちの際に利用を検討したいのが面会交流の第三者機関です。
この記事では、
- 面会交流の第三者機関とはなにか。その種類、支援内容
- 面会交流の第三者機関を利用するかどうかの決め方と利用を検討すべきケース
- 面会交流の第三者機関を利用する際の注意点
について、離婚問題に強い弁護士が詳しく解説してまいります。
ぜひ最後までご一読いただき、面会交流で第三者機関の利用を検討する際の参考としていただければ幸いです。
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目次
面会交流の第三者機関とは?
面会交流の第三者機関とは、面会交流がスムーズにいくよう、夫婦の間に入って面会交流をサポートしてくれる機関のことです。
第三者機関の種類
第三者機関は大きく分けて、公的機関である自治体と、民間の面会交流支援団体の2種類となります。
自治体
都道府県、市区町村といった地方自治体によっては面会交流支援(事業)を実施していることがあります。
例えば、兵庫県明石市では独自の面会交流支援を行っていますし、東京都や千葉県、熊本県では民間団体に委託する形で面会交流支援事業を実施しています。
費用については、交通費や面会交流時の施設入場料等の実費を除き無料となっています。
ただし、お子様の年齢や親の所得額などによっては支援対象から外れることもありますので、兵庫県・東京都・千葉県・熊本県にお住まいの方は、以下の問い合わせ先で支援を受けられる条件につき確認しましょう。
自治体の面会交流支援(事業)に関する問い合わせ先 | |
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兵庫県 | 問い合わせ先:明石市政策局市民相談室 住所:兵庫県明石市中崎1丁目5-1 電話番号:078-918-5002 |
東京都 | 問い合わせ先:東京都ひとり親家庭支援センター はあと 住所:東京都新宿区神楽河岸1番1号 セントラルプラザ5階 電話番号:03-3263-3451 |
千葉県 | 問い合わせ先:千葉県母子寡婦福祉連合会 住所:千葉市中央区亥鼻2-10-9 千葉県母子福祉会館内 電話番号:043-222-5818 |
熊本県 | 問い合わせ先:熊本市母子家庭等就業・自立支援センター 住所:熊本市南千反畑町3番7号 県総合福祉センター2F 電話番号:096-324-2136 |
上記以外の都道府県で、ご自身が住まわれている地域の自治体で面会交流支援が実施されているかどうかについては、お住まいの地域を管轄する市区町村役場に問い合わせて確認するようにしてください。
民間の面会交流支援団体
残念なことに、上でお伝えした面会交流支援を実施している地方自治体はそこまで多くはありません。
もしご自身(または元配偶者)が、自治体による面会交流支援を受けられない地域にお住まいの場合には、NPO法人や公益社団法人、一般社団法人などで運営されている民間団体を利用するとよいでしょう。
とくに、元家庭裁判所調査官らが中心となって設立された、公益社団法人 家庭問題情報センター(FPIC)は日本最大級の民間団体で、面会交流調停が拗れた際に家庭裁判所がFPICの利用を薦めてくることも少なくありません。
FPICでは、東京のほか、千葉・横浜・宇都宮・新潟・盛岡・名古屋・大阪・広島・松江・松山・福岡にも相談室を設け、かなり広い範囲で面会交流支援を実施していますので、該当エリアにお住まいの方は利用を検討してみても良いでしょう。
また、法務省が作成した「面会交流支援団体等の一覧表」より最寄りの団体を探されてもいいでしょう。
なお、FPIC以外にも以下のメジャーな民間支援団体もありますので、どの団体に支援を依頼するか比較検討しても良いでしょう。
第三者機関の面会交流支援の内容
第三者機関の面会交流支援の内容は大きく「付き添い型」、「受け渡し型」、「連絡(日程)調整型」の3種類に分類されます。
⑴ 付き添い型
支援員が面会交流の場に付き添い、居合わせるものです。
また、付き添い型には、以下の⑵受け渡し型、⑶連絡(日程)調整型による支援も含まれています。
付き添い型は、たとえば、
- 父、母間の仲が険悪
- 相手と直接顔を合わせたくない、直接会うことに危険を感じる
- 相手が子に暴力を振るったり、子を連れ去らないか不安
- 相手がきちんと条件を守って面会交流してくれるかどうか不安
などという場合に利用するメリットがあるといえます。他方で、支援員が面会交流に付き添う分、3種類の支援型の中で費用は最も高額となるという点がデメリットです。
⑵ 受け渡し型
子の受け渡しをサポートするものです。
もっとも、付き添い型と異なり、支援員が面会交流の場に付き添い、居合わせるものではない点に注意が必要です。受け渡し型には、以下の⑶連絡(日程)調整型による支援も含まれています。
受け渡し型は、たとえば、
などという場合に利用するメリットがあるといえます。費用面では付き添い型の次に高額となる傾向です。
⑶ 連絡(日程)調整型
第三者機関が夫婦の間に入って面会交流の日時、場所等の調整を行うものです。
付き添い型、受け渡し型と異なり、子の受け渡しは夫婦で行う必要がありますが、費用が安く、調整の負担を軽減できます。
という場合は利用するメリットがあるといえます。
第三者機関を利用するかどうかの決め方と利用を検討すべきケース
面会交流の第三者期間を利用するかどうかは、まずは夫婦間でよく話し合い、話がまとまらない場合は裁判所の力を借りる(調停・審判を申し立てる、訴訟を提起する)、という流れとなります。
(1)まずは夫婦間でよく話し合う(協議する)
子持ちの夫婦が離婚や別居する際には、そもそも面会交流を実施するかどうか、実施するとしてどういうやり方で面会交流を実施するかについて、夫婦間で取り決める必要があります。
いかなる事項をどこまで取り決めるかは、その夫婦しだい、という点につきます。
しかし、詳細に取り決めるかどうかは別として、一般的に以下についてはお互いよく検討しなければならない事項といってよいかと考えます。
面会交流に関して夫婦間で検討しなければならない事項
まずは面会交流を実施するかどうかを話し合い、実施する場合は以下の事項につき検討する必要があります。
- 面会交流の頻度
- 子の受け渡し方法
- 連絡(日程調整)方法
- 面会交流の場所
- 面会交流への立会人(たとえば元義父母など)の制限
- 父、母の面会交流への立会の要否・可否及びその方法
- 宿泊付き面会交流の可否及びその方法
- 旅行による面会交流の可否及びその方法
- 子の行事や発表会への参加の可否及びその方法
- 子が就学年齢に達した(小学校に入学した)後、改めて協議の場を設けるか否か
- 生活環境が変化した場合に、改めて協議の場を設けるか否か
- 第三者機関の利用の要否、第三者機関により受ける援助のタイプ
以上のように、話し合いでは「第三者機関の利用の要否、第三者により受ける援助のタイプ」も検討しなければならない場合があります。
第三者機関の利用を検討すべきケース
前記で紹介しましたがもう一度改めて確認しておきましょう。
- 夫婦の仲が険悪で直接顔を合わせたくない、あるいは合わせない方がよい場合
- 子と相手を一対一で面会交流させることに不安を感じている場合など
→「付き添い型」 - 子と相手とを一対一で面会交流させることに不安はないものの、相手と直接顔を合わせることに精神的負担を感じている場合など
→「受け渡し型」 - 相手と直接顔を合わせること自体に不安や負担はないものの、面会交流前の連絡(日程)調整に負担を感じている場合など
→「連絡(日程)調整型」
(2)夫婦間で話がまとまらなければ(協議不成立の場合は)調停・審判、訴訟へ
夫婦の間で面会交流を実施するかどうか、実施するとしてどういうやり方で面会交流を実施するのか話がまとまらない場合は、舞台を調停・審判、あるいは訴訟へと移行するしかありません。
「第三者機関の利用の要否」についても同様のことがいえるでしょう。つまり、面会交流の実施自体には合意したものの、夫婦のいずれかが第三者機関の利用について反対した、あるいは第三者期間の利用については合意したものの、そのやり方(付き添い型、受け渡し型、連絡(日程)調整型のいずれか)について話がまとまらない場合には調停・審判、訴訟へと移行する必要があります。
では、裁判所はどういうケースで(いかなる事情が認められる場合に)第三者機関の利用を許容しているのでしょうか?この点に関して参考となる裁判例(東京高等裁判所平成25年6月25日決定)をご紹介します。
この裁判では、子(小学2年生)と同居する母親が父親に対して第三者機関の利用による面会交流の実施を主張していました(反対に、父親は第三者機関の利用による面会交流には反対していました)。そうした中、裁判所は、面会交流を子の福祉に適う形で継続していくためには、母親と父親との間に信頼関係が形成されていることが必要としながらも、
- 離婚訴訟の係属中であること(離婚の条件を巡ってもめていること)
- 母親が別居前に父親から精神的な虐待を受けていたと主張していること
- 母親が父親による子の連れ去りを懸念していること
- 母親が面会交流に消極的態度をとっていること
などの状況を考慮すると、「母親と父親との信頼関係は失われている状況にある」とし、こうした状況を考慮すると、子と父親との面会交流を早期に開始し、正常化していくためには、当初は、母親の懸念にも配慮して、第三者機関を利用した付き添い型の面会交流を開始することが相当である、と判示しています。
もっとも、これは事例判断であって、上記で挙げた事情が認められなければ第三者機関の利用を検討すべきではないとか、利用できないというわけではありませんが、夫婦間の「信頼関係」というワードは、第三者機関を利用するかどうか検討する上でキーワードとなるのではないでしょうか?
面会交流の第三者機関を利用する場合の注意点
最後に面会交流の第三者機関を利用する場合の注意点について解説いたします。
⑴ 利用するには条件がある
無条件に第三者機関を利用できるわけではありません。
特に、自治体による面会交流の援助は無料である反面、夫婦が面会交流の実施に同意していること(夫婦片方が一方的に利用することはできない)、一定の所得以下であることなど条件が厳しいです。
利用の条件は第三者機関によって異なりますから、事前にHPなどで確認しましょう。
⑵ 利用するには費用がかかる場合がある
民間の第三者機関を利用するには基本的には費用がかかります。援助の内容(付き添い型、受け渡し型、連絡(日程)調整型)や依頼する第三者機関によって金額が異なりますので、事前に電話・メール、あるいは各第三者機関のホームページで料金を確認しましょう。
また、第三者機関を利用するとしていずれのタイプを利用するのか、夫婦で費用をどう負担するのかについても決めておきましょう。一般的には父母間で折半することが多いでしょう。
以下は、面会交流にかかる費用のおおよその目安です。あくまでも目安ですので必ず各第三者機関に問い合わせるようにしてください。
- 連絡調整型:3000円~5000円程度
- 受け渡し型:8000円~10000円程度
- 付き添い型:1時間5000円~8000円程度
なお、自治体では支援費用は無料となっており、民間支援団体においても、先ほど触れた、東京都ひとり親家族支援センターやNPO法人ウィーズでも支援料金は無料です。ただし、実費は自己負担で、その他、年会費等がかかることもありますので必ず問い合わせ確認をしましょう。
⑶ 面会交流にも制限がある
第三者機関による面会交流の回数は基本的には月1回、支援期間を1年間と定めているケースが多いです。そして、支援期間が経過した場合は、父、母同士で面会交流を継続していかなければなりません。
したがって、第三者機関から援助を受けている期間から、徐々に父、母同士で連絡を取り合い、受け渡しなどを行うなどして慣らしていった方が、期間経過後の面会交流がスムーズにいくでしょう。
ただし、民間の第三者機関の場合は、父、母双方の同意があれば期間の更新可ですので、父母同士ではどうしても円滑な面会交流が実施できない場合には、期間の更新をする必要があります。
まとめ
夫婦間で面会交流の実現が難しいと感じる場合は第三者機関を利用した面会交流を検討しましょう。まずは夫婦間でいかなる第三者機関を利用し、いかなるタイプの援助を受けるのかよく話し合うことです。
もっとも、子と同居していない親からは、特に付き添い型による面会交流に対しては消極的な態度を取られることも多いはずです。そこで話がまとまらない場合は調停・審判、訴訟によって決着をつけるしかありません。
そして、第三者機関の利用にあたっては条件や費用、守るべきルールをよく確認しましょう。
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