車は離婚の財産分与の対象?弁護士が事例を使って分け方を解説

離婚の財産分与の際、不動産の次に取り扱いや処分に困るのが車ではないでしょうか?

以下では、

  • そもそもいかなる場合に車が財産分与の対象となるのか
  • 車のローンが残っている場合はどうなのか
  • 車が財産分与の対象となるとして、どう分ければよいのか

などということについて、車の財産分与に詳しい弁護士が解説してまいります。

ぜひ、最後までお読みいただき、財産分与の際の参考にしていただけると幸いです。

誰でも気軽に弁護士に相談できます
  • 全国どこからでも24時間年中無休で電話・メール・LINEでの相談ができます
  • 弊所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。お気軽に無料相談をご利用ください
  • 離婚問題で依頼者が有利になるよう弁護士が全力を尽くします
  • 弁護士が親身誠実にあなたの味方になりますのでもう一人で悩まないでください

①車は財産分与の対象となるのか?

車が実質的共有財産(以下、単に共有財産といいます)といえる場合は財産分与の対象となる可能性があります

他方で、車が特有財産の場合はそもそも財産分与の対象とはなりません

実質的共有財産とは、婚姻後から離婚(又は別居)時までに、夫婦が協力して築いたと認められる財産のことをいいます。

そのため、次のようなケースでは、車は財産分与の対象となる可能性があります。

車が財産分与の対象となる可能性のあるケース
  • 婚姻後に夫婦がお金を出し合って車を購入した場合
  • 婚姻後にローンを組んで車を購入し、かつ、ローンを夫婦の実質的共有財産(生活口座の預金等)から返済していた場合
  • 車の維持費(車検代、メンテナンス代等)を夫婦の実質的共有財産から支払っていた場合
  • 夫婦の一方が婚姻前にローンを組んで購入したものの、婚姻後もローンを夫婦の実質的共有財産から返済していた場合 など車の名義は問いません。

車の場合、夫(又は妻)単独の名義(※)としていることがほとんどですが、上記のような状況が認められる限り、財産分与の対象となる可能性があります

また、財産分与では、車の購入費やローンの返済にいくら支出したのか、という点もあまり重要視されません。

つまり、たとえば、夫名義の預金を車のローンの返済に充てていたというケースでも、その預金は妻の家事労働などの協力があってこそ形成されたと認められる場合は、やはり財産分与の対象となる可能性があるのです。

車の名義人

車の名義人を知りたい方は車検証で確認してみましょう。

車を現金で一括購入した、ローンを組んだが返済したという方は(A)車検証の「所有者」欄に名義人の氏名等が記載されています。

他方で、ローンを返済中の方は、車にローン会社の所有権が留保(※)されています。

そのため、車検証の「所有者」欄にはローン会社の名前等が記載されており、「使用者」欄に名義人の氏名等が記載されています。

ローン会社の所有権留保

車の所有権留保とは車を担保にできる権利。

ローン会社は、ローン(借金)の返済が滞った場合には車を引き揚げて売却し、売却で得たお金をローンの返済に充てることができます。

次に、特有財産とは、夫婦が婚姻前から有していた財産、あるいは、婚姻後であっても夫婦の一方が単独(自己の名)で得た財産のことをいいます。

そのため、次のようなケースでは、車は財産分与の対象外とはなりません。

車が財産分与の対象とならないケース
  • 夫婦の一方が婚姻前に車を購入し、購入費用を一括で支払っていた、あるいは、ローンを完済していた場合
  • 夫婦の一方が相続、贈与によって車を取得した場合(ただし、車の維持費を夫婦の実質的共有財産から支払っていた場合は財産分与の対象となり得ます)。

こうしてみると、車が財産分与の対象となる可能性のあるケースは意外に少なくないことがお分かりいただけるかと思います。

車が実質的共有財産なのか特有財産なのかは車の財産分与を検討する際の出発点となります。

まずは、ご自身の車が実質的共有財産なのか特有財産なのか見極めることが大切です。

②ローンが残っている場合、車を財産分与の対象とできる?

ローンが残っている場合は、基本的にローンの残高が車の査定額(時価)を下回る場合(すなわち「アンダーローン」の場合)にのみ、車を財産分与の対象とすることができます

他方で、ローンの残高が車の査定額を上回る場合(すなわち「オーバーローン」の場合)は、基本的には車を財産分与の対象とはしません

すなわち、ローン残高から車の査定額を差し引いて残ったローン残高を夫婦で1/2ずつ分けるのではなく、車の名義人が車を使用し、ローン自体の名義人(=通常、車の名義人)が残ったローン全額を返済していく、ということになります。

これは、オーバーローンの場合にまで財産分与の対象としてしまうと、資力の低い夫婦の一方に重い負担を負わせ、離婚後の生活を困窮させることにもなりかねないからです。

以上より、車が実質的共有財産であることが分かったら、次は、車の査定額、車のローンの残高を調べることが必要だということが分かります。

車の査定額については、大まかな額でもよいと夫婦で合意できるのであれば、ご自身でインターネット等を使って調べるとよいでしょう。

インターネットの査定額では納得がいかない、正確な査定額を知りたいという場合は中古車販売店等の業者に査定に出すことを検討する必要があります。

ローンの残高については、ローンを組んだ際にローン会社から送付された「償還予定表」で確認することができます。

償還予定表を紛失してしまった場合は、ローン会社に問い合わせたら再送付してくれます。

③車の財産分与の方法

①、②より、車が実質的共有財産で、かつ、アンダーローンの場合に車を財産分与の対象とできることが分かります。

そのため、以下では、車が実質的共有財産で、かつ、アンダーローンの場合の車の財産分与の方法、すなわち、

  • 夫婦のいずれかが車に乗り続ける方法
  • 車を売却する方法

について解説していきたいと思います。

夫婦のいずれかが車に乗り続ける方法

たとえば、「夫が車の名義人(使用者)で、かつ、ローンの名義人(返済者)」というケースで、夫が離婚後も車に乗り続けることを希望し、妻がそれに合意するとします

この場合は簡単で、車やローンについて特別何か手続きすることはありません。

夫は、離婚前と同様、離婚後も車に乗り続ける代わりに、残ったローンを返済していくことになります。

もっとも、繰り返しになりますが、アンダーローンの場合、車という財産自体は財産分与の対象となります。

したがって、夫は車の査定額からローンの残高を差し引いて残った額の半額分の金銭を妻に支払う必要があります。

次に、上記のケースで、妻が車に乗り続けることを希望する場合は、「夫→妻」への名義変更が必要です。

この場合の名義変更は「所有者」ではなく「使用者」の名義変更です。

ローンが返済されていない段階では、所有者はローン会社です。

なお、所有者の名義変更のことを、道路運送車両法上「登録変更」といい、使用者の名義変更のことを「自動車検査証(車検証のこと)の記載事項の変更」といいます。

自動車検査証の記載事項の変更は、使用者が変更となったときから15日に以内に行わなければなりません。

仮に、この期間内の変更を怠った場合は「30万円以下の罰金」を科されることがあります。

また、使用者の名義変更を行わなかった場合、「離婚後も自動車税を納付するのは夫(=妻からすれば夫がきちんと納付してくれるかどうか不安)」、「自動車税を滞納されると車検を受けることができない」などのリスクを伴います。また、将来、車を売却する、廃車するなどとなった場合、いちいち元夫と連絡を取り合い、元夫に手続きのための協力を仰がなければなりません。

こうしたことを考えると、車の名義変更は必ず行うべきです。

さらに、車の名義変更に加えて、車のローンの問題も解決しなければなりません。

すなわち、現状のままだと、車のローンの名義人は夫のままとなっており、離婚後も夫がローンを返済しなければならない状況です。

この点、夫が離婚後もローンを返済する約束をし、約束通どおりきちんとローンを返済してくれるのであれば問題はありません。

しかし、ローンの残高や夫の資力等によっては、果たして夫がきちんとローンを返済してくれるのかどうか不安になられる方も多いでしょう。

そのため、車のローンの名義人を妻に変更したいところです。

もっとも、車のローンの名義人を妻に変更するにはローン会社の同意が必要です。

また、離婚後も妻にローンを返済するだけの資力があることが必要で、そうした見込みがない限り、ローン会社は簡単には同意してくれないでしょう。

そのため、妻が車に乗り続けることを希望する場合は、ご自身でローンを返済していく自信がない限り、離婚前にローンを完済することが一番です。

離婚前にローンを完済できれば、ローン会社の所有権留保は解除されます(※所有権解除の方法は④で解説します)。

そして、車の登録変更を行えば車は正真正銘妻の物(所有物)となりますし、ローンの返済のことを心配する必要もなくなります。

もっとも、夫が車に乗り続ける場合と同様、車は財産分与の対象となります。

したがって、妻は車の査定額からローンの残高を差し引いて残った額の半額分の金銭を夫に支払う必要があります。

財産分与による支払の総額が妻より夫の方が多い場合は、お互いの支払額を相殺することで調整されます。

車を売却する方法

車のローンを返済中は、ローン会社の所有権が車に留保されていますので、勝手に車を売却することはできません。

つまり、ローン会社の所有権を解除してから、車の名義人(所有者)を夫に登録変更し、その上で車を売却するというのが本来の流れです。

ローン会社の所有権を解除するには車のローンを完済する必要があります。

もっとも、アンダーローンであることが判明した場合には、車の売却金額をローンの返済に充てることができます。

そして、売却で得た金銭が財産分与の対象となり、それを夫婦で原則1/2ずつわける、ということになります。

そこで、車が財産分与の対象で、かつ、車を売却することを希望する場合は、可能な限り高額かつ正確な査定額を出す業者を探すことが大切です。

査定額が高ければ高いほど、売却金額をローンの返済に充てることができます(足りなかった分をあらためて支払う必要がなくなります)し、財産分与の対象となる金額も高くなるからです。

なお、中古車販売店等の業者によっては「車の査定→ローン会社の同意→売却→売却金額の支払い」までの手続きを一手に引き受けてくれるところもあるようです。

もちろん、車の売却を個人で行うことも不可能ではありませんが、車という大きな財産であるがゆえに何かとトラブルが付いて回ります。

トラブルを避けるには、中古車販売店等の業者に車の売却を任せた方が無難です。

④財産分与した後の車の名義変更(所有権解除)の方法

車の名義変更(所有権解除)は、ご自身で行う場合は軽自動車の場合、使用の本拠となる住所を管轄する「軽自動車検査協会」、軽自動車以外の場合は「運輸支局・自動車検査登録事務所」で手続を行います。

また、車の名義変更をローン会社に委任することもできます。

ローン会社が自動車メーカーの系列の会社であれば委任でき、それ以外のクレジット系信販会社等であれば委任できないことが多いです。

車の名義変更をご自身で行う場合も、ローン会社に委任する場合も、まずはローン会社に連絡を入れましょう

ご自身で行う場合とローン会社に委任する場合とで、必要書類の内容や手続きの流れが異なります

ご自身で行う場合は以下の書類をローン会社に送付し、ローン会社から車の名義変更に必要な書類の返送を受けた後に、必要書類を持参して冒頭でご紹介した機関で手続きを行います。

軽自動車の場合の送付書類
  • 自動車検査証(コピー)
  • 本年度の軽自動車税納税証明書(コピー)
  • 所有権解除依頼書兼残債照会依頼書(原本)
  • 運転免許証(コピー) など
軽自動車以外の場合の送付書類
  • 車検証(コピー)
  • 使用者の印鑑証明書
  • 使用者の印鑑証明書(発行日より3か月以内のもの)
  • 委任状
  • 承諾書
  • 完済証明書 など

ローン会社に書類を送る際、各機関で手続きをする際は書類や記載事項に不備がないかどうかよく確認してから手続きを行うようにしましょう。

まとめ

車は実質的共有財産で、かつ、購入費を一括で支払っていた、あるいはローンの支払い中でもアンダーローンの場合には財産分与の対象となります。

財産分与の対象となる場合、夫婦のいずれかが乗り続ける、車を売却するという方法が考えられます。

車を乗り続ける場合は、現在の名義人とは異なる方が乗り続ける場合は、名義変更やローンの支払いなどについて注意する必要があります。

誰でも気軽に弁護士に相談できます
  • 全国どこからでも24時間年中無休で電話・メール・LINEでの相談ができます
  • 弊所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。お気軽に無料相談をご利用ください
  • 離婚問題で依頼者が有利になるよう弁護士が全力を尽くします
  • 弁護士が親身誠実にあなたの味方になりますのでもう一人で悩まないでください
離婚問題の悩みは弁護士に無料で相談しましょう

全国対応で24時間、弁護士による離婚問題の無料相談を受け付けております。

弁護士と話したことがないので緊張する…相談だけだと申し訳ない…とお考えの方は心配不要です。

当法律事務所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。弁護士に解決方法だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。

ご相談のみで問題が解決する方も多くおられますので、誰でも気軽に相談できる法律事務所にメールまたはお電話でご連絡ください。