サイレントモラハラとは、一般的なモラハラのように面と向かって相手に対してひどい言葉を浴びせかけたり態度を示したりしないタイプのモラハラ行為、具体的には、相手に気をつかわせるような空気感を出して、相手を自分の思い通りにコントロールしようとするモラハラ行為のことを指します。攻撃的なモラハラ言動がないことから「ソフトモラハラ(または、静かなモラハラ)」と呼ばれることもあります。
「私の夫の普段の態度ももしかしたらサイレントモラハラかもしれないので確認してみたい…」
と思われる方もいることでしょう。
そこでこの記事では、モラハラ離婚問題に強い弁護士が、
- サイレントモラハラとはなにか
- サイレントモラハラのチェックリスト
- サイレントモラハラの問題点
- サイレントモラハラで離婚や慰謝料請求が可能か
についてわかりやすく解説していきます。
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目次
サイレントモラハラとは
まず「サイレントモラハラ」とは、夫のどのような行為を指すのでしょうか。
前提として、「モラハラ」とは「モラル・ハラスメント」の略称で、良識とされる道徳・倫理(モラル)に基づいて行われる嫌がらせ(ハラスメント)のことを指す俗称です。
具体的には、心無い言葉を浴びせたり、ひどい態度や無視したりするなど言動によって相手を精神的に追いつめていく行為のことを指します。モラハラについて画一的な定義はありませんが、殴る蹴るなどの肉体的・身体的な暴力のようなドメスティック・バイオレンス(DV)と比較して、態度や言葉によるハラスメントを意味する言葉として用いられています。
そのうえで前述の通りサイレントモラハラとは、一般的なモラハラのように面と向かって相手に対してひどい言葉を浴びせかけたり態度を示したりしないタイプのモラハラ行為、具体的には、相手に気をつかわせるような空気感を出して、相手を自分の思い通りにコントロールしようとするモラハラ行為のことを指します。
空気感によるモラハラという点で一般的なモラハラ以上に目に見えにくいものです。
しかし、みなさんの中には、夫との間に重たい空気や相手が放つ不機嫌な雰囲気の中で息の詰まるような思いをして生活している方はいらっしゃいませんか。そのような場合には、サイレントモラハラによる嫌がらせを受けている可能性があります。
サイレントモラハラのチェックリスト
サイレントモラハラは、一般的なモラハラに比べて直接的な暴言・態度が感知しづらい分、モラハラに該当しているのか否かの判断が難しい場合があります。
そのためサイレントモラハラか否かを判断するためには、夫が以下のような行動・態度をとっているかどうかをチェックすることで確認することができます。
- 妻のことを気にもかけていないような態度が目立つ
- 話しかけても明確な返事をしてくれなくなる
- 露骨に不機嫌な態度をとる
- 無表情で睨めつけるような態度をとる
- 夫が自分に対して舌打ちをしたり、ため息をつかれたりする
- ひとり言のように不満・不平を口にする
妻のことを気にもかけていないような態度が目立つ
妻が夫に話しかけても、妻のことを気にもかけていないような態度が目立つ場合にはサイレントモラハラに該当する可能性があります。妻側から話しかけても、「へー」や「ふーん」、「あっそ」などそっけない返事・態度をとったり、明らかに妻のことを無視するような態度をとる場合には、嫌がらせ行為である可能性が高いです。
上記のような態度が目立つような場合には、妻は夫に話しかけづらくなり、相手の機嫌を損ねないようにびくびくして生活しなければならなくなってしまいます。
多くのケースで何が原因で夫の態度が変わるのか把握できないため、日々の生活に不必要な緊張感とストレスがかかってくるようになってしまうのです。
話しかけても明確な返事をしてくれなくなる
話しかけても返事をしてくれないというのも、典型的なモラハラ夫による嫌がらせであるといえます。妻が話しかけてもひたすら無視、こちらが下手(したて)に出てひたすら理由を尋ねるとようやく口を開くというようなパターンです。
「どうしたの?」「私が何が気に入らないことをした?」このように聞いてくれるのを、モラハラ夫は待っています。モラハラ夫は「黙って自分の気に入るように行動しろ」、というメッセージを伝えるためにこのような態度をとっているケースが多いのです。
そのような夫は、妻が自分に無視されていることに耐えられないと考え、自分の行為を省みて夫の思い通りに行動するようになることを望んでいます。
露骨に不機嫌な態度をとる
露骨に不機嫌な態度をとるというのも、モラハラ夫によくある行動のひとつです。
イライラしていることを第三者に分かるように行動します。具体的には、ドアをわざと大きな音を立てて閉めたり、小物や家具にあたって大きな音を出したりするという行動が目立つ場合が典型的なケースです。
何かにイラつき、内心に不満が溜まるという心理は誰にでもあります。
しかしモラハラ夫の場合には、そのことを相手に分かってもらうために物に当たったり、露骨に嫌な表情をしたりすることで妻にネガティブなメッセージを発しています。
このような行為はある種の「威嚇」のような行動です。相手を驚かしたり恐怖・畏怖の感情を与えて妻が夫に関心を持たざるを得ないように仕向けているのです。その結果、妻側は夫の一挙手一投足に怯えて生活せざるを得なくなってしまうケースもあります。
無表情で睨めつけるような態度をとる
モラハラ夫は、無表情で妻を睨めつけるような態度をとることもあります。
目つきというものは言葉と同じように多くの内容を語ります。相手を睨みつけたり、冷たい視線を浴びせたりするのは、相手に恐怖を与えるのには効果的な行為です。
喧嘩をしているわけでもないのに上記のような態度をとる夫には要注意です。
例えば、妻が何かを落としたりぶつかったりして図らずしも大きな音を出してしまったような場合に、「うるさい」と言わんばかりの冷酷な視線で睨みつけてくるといったケースがあり得ます。
このような場合には、言葉こそ発していないものの、自分の気に入らない行為は許さないというネガティブなメッセージを発しているのは間違いないでしょう。
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夫が自分に対して舌打ちをしたり、ため息をつかれたりする
目つきや表情以外にも言葉以外を用いて妻に嫌がらせを行うことはできます。妻の行動や発言に対して「はぁ〜」と大きなため息をついたり、「チッ」と舌打ちをしたりするのも、言葉によらないノンバーバル(非言語的)なコミュニケーションの一種だと言えるでしょう。
このようなため息や舌打ちは、妻に対して明らかにネガティブなメッセージとして発せられています。妻の一定の発言や行動に対して、言葉を発して伝えることもせず、ある種記号的なサインのみで不快感を表しています。
そのような単純な行為のみで「お前の行動が気に入らない」と伝えようとしている分、言語によるコミュニケーションよりも悪質かもしれません。
ひとり言のように不満・不平を口にする
ひとり言のように妻に対する不満や不平を口にするというパターンもあります。
かろうじて聞こえるような大きさで言っておきながら、妻が聞き返すと「何でもない」と言ったり無視したりという行動が典型的です。「お前に対する文句じゃない」など対象をずらして攻撃を続けてくる可能性もあります。
サイレントモラハラをする夫の特徴
それではサイレントモラハラをする夫には、どのような特徴があるのでしょうか。
妻をコントロールしたい
サイレントモラハラを行う夫の特徴としては、家庭内で妻を自分の思い通りに支配・コントロールしたいと思っているタイプの人が多いです。
夫婦の間には優劣はなく互いに協力して家庭生活を維持していくのが本来の姿です。しかしモラハラ夫は、家庭内では自分の意思が常に優先して、妻は自分に劣後する存在であると考えている人が多い印象です。
自分の考えが絶対的に正しいと考えている
モラハラ夫は、自分の考え・意見が絶対的に正しいと考えている傾向があります。
相手の意見や希望は間違っているので耳を傾ける必要はないと思い込んでいる夫が多いのです。そのため他人の意見に傾聴しようという態度は皆無で、自分の考え・意見ばかりを力説して、それ以外の考え方をする人を口汚く罵ったりするのです。
妻の話を聞こうとしない
上記のようにモラハラ夫は、自分の考えが絶対的に正しいと思っていますので、妻の話や希望を聞く必要はないと考えています。
そのうえ周囲の人間が自分の言う通りに行動すれば大概のことは上手くいくと錯覚しています。そのため、仮に何か思い通りに事態が進まない場合や、失敗した場合には、常に誰かのせいにします。
モラハラ夫は、自分の考えは正しいと思っているので、うまくいかなかった場合には自分以外の誰かによって邪魔されたという硬直的な結論をとらざる得ないのです。
外面や面倒見が良い印象を与える
意外にもモラハラ夫は外面や面倒見が良い印象を持たれがちです。モラハラ夫は他人の目や評価を非常に気にする傾向が強いため、家庭外では良いイメージを持たれている可能性があります。
実際は自分の意見や要望を他人に押し付けているだけのケースも多いですが、社会的には「頼りがいがある」「面倒見が良い」などと思われてしまう可能性があります。
サイレントモラハラの問題点
被害者がモラハラ被害に遭っている自覚が薄い
被害者がモラハラ被害に遭っている自覚が薄いという特徴があります。
サイレントモラハラの事例では、直接的に暴言やひどい態度をとられるということが少ないため、「自分のせいで、また夫の機嫌を損ねてしまった」と罪悪感を抱いてしまっているケースもあります。
表層的には、「困っているのは夫側である」という印象を与え、妻はその原因をさまざま考えざるを得ない状況に追いやられてしまいます。
そのため妻は自分が嫌がらせや攻撃を受けているという感覚になりにくいという点がサイレントモラハラの厄介な点なのです。
自分に原因があると被害者が思い込むようになる
モラハラ夫は日常のあらゆる局面に地雷が埋まっており、突然不機嫌になったり緊張感のある空気を醸し出したりします。
そのため被害者であるはずの妻側が、「自分がまた何かしてしまったのかもしれない」と自己反省に陥ってしまう可能性があります。
その結果、あらゆる場面で夫の顔色や機嫌をうかがって生活せざるを得なくなり、日頃の生活に心が休まる瞬間が無くなってしまうという悪影響が生じてしまいます。
証拠が残りにくい
またサイレントモラハラの厄介な点は、モラハラの証拠が残りにくいということです。
一般的なモラハラも言葉や行動ですので、事後的に確認することが難しい行為類型です。そのうえサイレントモラハラの場合には、特定の行動や非言語的な態度が多いため証拠によって事後的に確認するということが非常に難しい行為となってしまいます。
そのため後々問題となっても、「やった・やらない」「記憶にない」とモラハラが認定できないという事態も容易に想定できるのです。
サイレントモラハラで離婚・慰謝料請求はできる?
相手と合意できれば離婚・慰謝料請求も可能
夫と話し合いにより合意に達することができれば、「協議離婚」を成立させることができます。
そして、モラハラ行為は、妻の人格権や平和な夫婦共同生活を侵害する行為となるため、不法行為責任が成立します。
したがって、モラハラ夫は不法行為に基づく損害賠償責任として慰謝料を支払う義務が発生します。この慰謝料に関して、夫との話し合いで支払いについて合意することができれば、慰謝料を請求することができます。
しかし、サイレントモラハラをする夫が、話し合いでの離婚に応じたり慰謝料の支払いに応じたりする可能性は低いと考えられます。モラハラ夫は自分の考えが絶対的に正しいと考えているため妻の離婚の求めになど真摯に応じてくれない可能性の方が高いのです。
合意できない場合は証拠が必要
夫婦間の話し合いで離婚をまとめることができない場合には、裁判所を利用して離婚手続きを進めていくことになります。
まずは家庭裁判所に対して調停離婚・審判離婚を申し立てる必要があります。さらに「裁判上の離婚」に進む場合には、民法に規定されている「法定離婚事由」に該当する場合にのみ離婚が認められています。
離婚について当事者間に争いがある場合、サイレントモラハラを理由に離婚を裁判所に認めてもらうには、証拠に基づいて事実を立証する必要があります。
したがって、サイレントモラハラを証明するための証拠が何もないという場合には、裁判で離婚を認めてもらうことも、相手方夫に対して慰謝料を請求していくことも難しくなってしまいます。
サイレントモラハラの証拠となり得るものは?
サイレントモラハラを立証するための証拠となり得るものは、以下のようなものです。
- 夫のモラハラ行為が分かるメールやLINEのやり取り
- 夫のモラハラ行為について詳細に記録している日記・メモ・備忘録
- 夫のモラハラ行為を記録した音声データや動画データ
- 夫のモラハラ行為が原因で心療内科に通院したことが分かる診断書やカルテ など
モラハラ行為は日常的に繰り返し行われるタイプの不法行為です。そのため、日記や備忘録については一定の期間継続して記録されていることが重要です。そして上記証拠は多ければ多いほどモラハラが認定される可能性は高くなります。
サイレントモラハラで離婚したい場合は弁護士に相談
サイレントモラハラを理由として離婚を考えている場合には、弁護士に相談することがおすすめです。モラハラ離婚に精通した弁護士に相談することで適切なアドバイスやサポートを受けることも期待できます。
また、ここまでで説明したように、サイレントモラハラを行うような夫は、素直に協議離婚や慰謝料の支払いに応じない可能性が高いです。相手が話合いに応じない場合には裁判所に離婚を申し立ていったり、慰謝料支払請求訴訟を提起したりする必要があります。
この点、弁護士に依頼することで、相手方夫との話し合いや交渉、裁判所への出廷や書類の作成など必要となる手続きをすべてを任せすることができます。
弊所ではモラハラが原因の離婚請求や慰謝料請求を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力でサポートしますので、モラハラ夫との離婚に悩んでいる方は、ぜひ当事務所に所属している弁護士にご相談ください。相談する勇気が解決への第一歩です。
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