離婚届の証人は成人なら誰でも可能!不要な場合と自分で書くリスクを解説

協議離婚をする場合には、離婚届の証人欄に2名の証人による署名が必要です。離婚というのは、それぞれの方々の人生にとってとても重要なことです。そこで、当事者だけで離婚を決める協議離婚の場合は、その気持ちが本気なのかどうかについて確認するため、証人が2人必要とされています。

もっとも、離婚届の証人を誰かに頼もうと思っても、

  • 「どんな人が離婚届の証人になれるの?条件は?」
  • 「頼んで迷惑かけないかな…離婚届の証人になるリスクやデメリットはあるの?」
  • 「離婚届の証人を頼める人がいない場合は?」

など、様々な疑問や悩みが生じる人もいることでしょう。

そこでこの記事では、離婚問題に強い弁護士がこれらの疑問を解消していきます。

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離婚届の証人とは

離婚届の証人は18歳以上であれば誰に頼むこともできる

離婚届の証人は二人必要ですが、離婚当事者以外の、成人であれば誰でも証人になれます

民法改正による成人年齢の引き下げにより、これまで20歳以上が成人とされていたものが、2022年4月1日以降は18歳以上となりました。そのため、18歳以上であれば誰でも離婚届の証人になることができます

なお、離婚する夫婦がそれぞれ1名ずつ証人を用意する必要はなく、夫婦の片方が2名用意して構いませんし、もう片方がその証人と全く面識がなくても問題ありません。

また、離婚する夫婦と同じ住所地に住んでいる者でも全く問題ありませんし、証人二人が同じ住所(知り合いの夫婦に頼む場合など)であっても構いません。外国籍の方でも、日本に住民登録しており、本国の法律で成人となっていれば証人になれます。その場合、署名はパスポートや在留カードに記載されている本国名(住民登録で通称登録している方は通称でも可)、生年月日は西暦、本籍の欄には「国籍」を記載してもらいます。

離婚する夫婦の子どもが証人になることはできる?

離婚する夫婦の子どもであっても成人していれば離婚届の証人となることができます

もっとも、いくら成人したとはいえ子どもが両親の離婚手続きに関わることは辛く悲しい気持ちにさせるかもしれません。そのため、身内に証人を頼むにしても、子どもの気持ちに配慮し、離婚する夫婦の兄弟姉妹や親に頼むことをお勧めします。

また、身内に頼めない場合には、後述する離婚届証人代行サービスや弁護士などの第三者に依頼することもできます。

両親が証人になることはできる?

両親が離婚届の証人になることもできます

夫婦の双方の両親から1名ずつ証人になってもらうことも、夫婦の片方の両親が証人になることもできます。

離婚届の証人が不要なケースは?

離婚する場合、つねに証人が必要というわけではありません。夫婦の話し合いだけで離婚する”協議離婚”の場合のみ証人が必要で、調停離婚・審判離婚・和解離婚・裁判離婚では証人は不要なのです。

当事者だけで離婚を決める協議離婚の場合は、その気持ちが本気なのかどうかについて確認するため、証人が2人必要とされています(民法764条、739条)。

それに対し、裁判所が関与する調停離婚や裁判離婚等では、“裁判所が関与することで、しっかりと夫婦間の気持ちを確認しているから証人はいらない”ということになります。

離婚届の証人にリスクやデメリットはある?

離婚届の証人を誰かに頼む際に「お願いした人に迷惑がかかるのでは…」と考える方もいることでしょうし、逆に離婚届の証人を頼まれた方も「何かしらリスクやデメリットがあるのでは…」と不安を抱くこともあるでしょう。

そこでここでは、離婚届の証人になるリスクやデメリットについて解説していきます。

離婚届の証人は保証人ではないため基本的には法的責任を負わない

離婚届の証人は「保証人」ではありませんので、証人になったとしても基本的には法的な責任を負うことはありません

「保証人」は、債務者がその債務(借金返済など)の履行をしない場合にその履行をする責任を負う者を指しますが(民法第446条)、協議離婚に伴う「証人」の立場は、いわば“立会人”的な要素が強く、「離婚を見届けます」といった意味合いでしかないからです。

署名が求められている理由としては、離婚は婚姻関係という身分関係を解消する重要な手続きであることから、成人の第三者が離婚当事者の意思を証明するために必要とされているにすぎません。

損害賠償責任を負う可能性もある

上記で、離婚届の証人は基本的に法的責任を負わないとお伝えしましたが、離婚届に証人として署名することには、当事者に対して離婚意思が本当にあるのかどうかを確認すべき法的な義務があると考えられています。

そのため、このような義務を怠って当事者の意思を確認しないまま署名した場合には、損害賠償を請求されるリスクがあります

証人の確認義務については、当事者の一方のみの離婚意思を確認すればよいのか、当事者双方の意思を確認する必要があるのかについては争いがありますが、双方に対する確認義務を必要とする裁判例が存在しています。

裁判例においては、「離婚届に証人として署名・押印する者は,離婚が当事者双方の任意の合意に基づくことを確認すべき法律上の義務があるというべきであり,その確認にあたっては,原則として,当事者双方それぞれに離婚意思を確認しなければならないというべきである」と判示しています(東京地方裁判所平成21年1月14日判決)。この裁判例では、離婚届の証人となった夫の知人は、夫本人には離婚の意思を確認していたものの、妻側の意思を確認していなかったとして賠償責任を認めています

離婚届の証人の素性などを調べられるリスクは?

離婚届の証人になったとしても、提出先の役所からあれこれと素性を調べられて面倒な問い合わせを受けるようなことも一切ありません。

ただ、夫婦のうち離婚することに消極的であった方の目からは、離婚届の証人欄に署名押印した人は離婚することに積極的に協力した人として映る可能性もあります。

離婚届の証人欄には証人の氏名と住所を記載しますので、相手が興信所や探偵を使ってアナタの素性を調べ、逆恨みで嫌がらせ等をしに来るおそれが全くないとは言えません。そういった意味では、リスクが全くないとは言い切れません

縁起が悪いと感じてしまうことも

結婚は慶事であるため、婚姻届けの証人なってもいいと考える人は少なくありません。他方で、離婚については一般的にはネガティブなイメージをお持ちの方も多いことから、「離婚届の証人になるのは縁起が悪い」と感じる方が多いようです。また、証人を頼まれる際に、離婚寸前の夫婦の聞きたくもない争いごとを聞かされたくない方も多いです。

離婚届の証人は友人や知人に頼むこともできますが、内心では「縁起が悪いし、夫婦の争いごとに巻き込まれたくない…」と思われるかもしれません。また、上記の通り、離婚届の証人になることで一切不利益を被らないとは断言できない以上は、できるだけ身内に頼むようにした方が無難でしょう

離婚届の証人欄の書き方

離婚届の証人欄に書く内容

離婚届の証人欄には、証人になる人の署名、生年月日、住所、本籍地を記載してもらいます。

本籍地がわからないからといって空欄にして離婚届を提出しても受理してもらえません

また、住所と本籍地が一緒の場合でも、「同上」と記載するのは避けた方が良いでしょう。同上と記載しても離婚届が受理されるケースもありますが、市区町村によっては「同上」の使用を禁止しているところもあります。そのため、証人の住所と本籍地が一緒でも省略して記載しないように事前に証人をお願いする人に伝えておくようにしましょう。

なお、離婚届の証人欄は必ず証人本人が自著する必要があります。その際、鉛筆や消せるタイプのペンで書いてはダメです。書き損じた場合には、二重線をしたうえで訂正印を押してください。修正液や修正テープの使用はできません

離婚届の証人欄に印鑑は不要

戸籍法の改正により、2021年9月1日から離婚届に押印する必要がなくなりました。したがって、届出人はもちろん証人の印鑑も押す必要はありません。

ただし、役所(あるいは役所のホームページ)で入手できる離婚届には慣習でまだ押印欄が残っています。押印するかどうかは任意ですが、もし押印する場合には、シャチハタやゴム印は使用不可です。実印である必要はありませんが、認印を用いるようにしましょう。

また、証人2名の印鑑はそれぞれ別でなければなりません。例えば、証人を頼まれた山田さん夫妻が、「われわれは同じ苗字だし、印鑑も使いまわそう」と一つの印鑑で2名分の押印はしてはいけないということです。

離婚届の証人欄の本籍に間違いがあったらどうなる?

離婚届の証人欄に記載する本籍地や住所については全部事項証明書(戸籍謄本)や住民票のとおり正確に記載する必要があります。従来は証人欄の記載の正確性については厳密にチェックされていなかったようですが、最近は証人欄についても正確な記載が要求されています

そのため、証人の本籍地や住所が不正確な場合には、離婚届が受理されない可能性もあります

離婚届の証人の本籍等を記入する欄に間違いがある場合には二重線を引いてそのうえに証人の訂正印を押してください。そのうえで、正しい本籍地を余白に記入すれば問題ありません。記入するスペースがなければ欄外でかまいません。離婚届の証人の記入欄の周辺には余白があることが一般的ですので、訂正のうえ正しい内容を記載し、訂正印を押せば受理されるはずです。

離婚届の証人欄の記載を役所の人にお願いはできない

離婚届の証人を頼めるような親族、知人がいない場合には、役所の人に証人になってもらうことはできるのでしょうか。

離婚届の証人欄の記載を役所の人に依頼することはできません

法律上、離婚する当事者を知らず、離婚する事情を知らない第三者は離婚の証人になることはできません。役所は書類を受理する側の立場であり、提出する時点で証人欄を含めた必要箇所をすべて記載している必要があります。書類の不備を審査して受理する側の役所の人が、書類の内容に間違いないことを証明する証人になることはできません。

もし、役所の人に証人欄の記載を依頼したとしても、通常は断られることになるでしょう。

離婚届の証人欄を自分で書くとバレる?

離婚届の証人を頼める人が見つからないという理由で、筆跡を誤魔化し100円ショップ等で印鑑を購入して証人欄を自分で勝手に書く人がいますが絶対にやめましょう。

たしかに離婚届を提出する役所の窓口では証人の身分証等の提示を求めるわけではありません。そのため代筆がバレないこともあるでしょう。しかし、離婚届の証人欄に、離婚当事者が虚偽の署名・押印をすることは、刑法159条の「有印私文書偽造・同行使罪」に該当します

バレて逮捕され有罪判決を受ければ、3ヶ月以上5年以下の懲役刑に処せられますので、離婚届の証人欄を自分で書くことは絶対にやめましょう。

離婚届に代筆できる?同意ある場合、ない場合の離婚はどうなる?

離婚届の証人を頼める人がいない場合はどうする?

いざ離婚届の証人を探そうと思った時、次のような悩みを抱える方も少なくありません。

  • 証人を頼める人が誰も見当たらない
  • 証人を頼める人が一人しか見つからない
  • そもそも離婚することを知られたくないので周囲に頼めない

そのような場合に役に立つ対策として、離婚証人代行サービスや弁護士への依頼です。

離婚届証人代行サービスの利用

離婚届証人代行サービス(代行)は、“離婚届の証人の代行”を業務として行う業者です。

費用相場としては、証人1名(自分で1名確保できる人向け)の場合は3000円~4000円、証人2名の場合は4000円~5000円前後です。

代行サービス申し込み後の一般的な流れとしては以下のようになります。

  1. 証人欄以外を記入した離婚届、身分証のコピー、委任状(行政書士に依頼する場合)を郵送
  2. 業者が証人欄に記入、捺印し、依頼者に返送
  3. 離婚届を役場に提出

なお、業者の多くが、離婚届が手元に届いたその日、または翌営業日に、書留やレターパックなどの追跡サービスがついた郵送方法で離婚届を返送してくれます。

また、返送の際は、業者名や「離婚」という文字は封筒に記載しない、局留めでの郵送に対応してくるなど、プライバシーにも配慮してくれます。

サービスへの依頼をお考えの方は、「離婚届証人代行サービス(リンクをクリックで検索結果画面が表示されます)」のキーワードでネット検索すると良いでしょう。

離婚届証人代行サービスのデメリット

ずばり、「個人情報の管理」について、一定のリスクがあります。

離婚届証人代行サービスを行う事業者であって、顧客リスト等を作成している場合は、個人情報保護法による規制を受ける対象となります。この場合、承認代行サービスの業者はできるかぎり、その利用の目的を特定してあらかじめ本人了承を得るようにしなければなりません(個人情報保護法15条参照)

多くの証人代行サービスの業者は、事前に利用目的を明らかにし、適切な情報の管理を護っています。しかしながら、離婚届証人代行サービスの業者へ提出した個人情報の流出が0であるとは言い切れない以上、デメリットと捉えることもできます

弁護士等の士業に依頼する

いくら安くて早いとはいえ、素性もわからない業者に個人情報の詰まった離婚届を渡してしまうことに抵抗がある人もいることでしょう

個人情報の流出が心配な方は、弁護士等の士業に依頼しましょう。士業の場合、必ず各士業の会が設置され、その会所属する必要があります。したがいまして、「どこの誰?」という状況にはならず、かつ、その後の個人情報の管理等もキチンとしています。

ご不安な方は、離婚問題について相談している弁護士や協議離婚の代理人になってもらっている弁護士、あるいは、離婚届の証人代行サービスを行っている司法書士や行政書士で証人を依頼しましょう。

ただし、士業の事務所によっては離婚届の証人となることを業務として受け付けていないこともありますので、事務所に問い合わせて確認するようにしてください。

また、士業に証人の代行を依頼する場合には費用がかかります。行政書士事務所であれば3000円~6000円前後が相場、司法書士事務所であれば5000円~10000円が相場(証人2名の場合の費用)となっています。弁護士事務所の場合は、離婚届の証人代行サービスのみを取り扱っていることは稀ですが、離婚手続きを弁護士に依頼している場合には別途費用を頂かずに離婚届の証人になってくれることもあります。弁護士事務所によって対応は異なりますので事前に確認するようにしましょう。

まとめ

離婚届を提出する場合において、証人2人が求められるのは、協議離婚の場合のみです(民法764条、739条)。

そして、協議離婚における離婚届に署名・押印する証人は、“離婚の立会人”的な立場となります。そのため、原則として、離婚届に署名・押印する証人はなんら責任を負担することはありません。

ただ、もし頼める証人がいない場合には弁護士に代行を頼むと、個人情報の流出の不安は解消されるでしょう。

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