このような悩みを抱えていませんか?
もしかすると、「脅されて怖いし何をされるかわからないからこのまま離婚できないのではないだろうか…」このような絶望感に打ちひしがれているかもしれません。
しかし、配偶者の言動はその内容によっては刑法の「脅迫罪」にも該当する立派な犯罪行為です。後述しますが、配偶者からの脅しを理由に離婚をすることもできますし、身の安全のために公的機関に支援してもらうことも可能です。犯罪行為や犯罪まがいの行為に屈して離婚を諦める必要は一切ありません。
この記事では、離婚問題に強い弁護士が、以下の事項についてわかりやすく解説していきます。
- 配偶者のどんな言動が脅迫罪にあたるのか
- 配偶者の脅しは法律上の離婚原因となるのか
- 脅されて離婚できない時の対処法
記事を読むことで、脅されて離婚できない状態から抜け出すための解決方法がわかりますので最後まで読んでみて下さい。
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目次
離婚の話しをして脅された場合、脅迫罪は成立?
離婚話をして配偶者に脅された場合、刑法の「脅迫罪」が成立する可能性があります。そこでここでは、配偶者のどのような言動が脅迫罪になるのかを解説していきます。配偶者を警察に逮捕してもらいたい場合はもちろん、後述するように、脅迫言動があったことで裁判での離婚請求が認められたり、公的機関による保護を受けることができますので、脅迫罪についての理解についてもここで深めておきましょう。
脅迫罪とは?
脅迫罪とは、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」場合に成立する犯罪です(刑法第222条1項参照)。
また、害を加えると告知された人の「親族の」生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合にも同罪は成立します(同条2項参照)。親族にあたるのは「6親等内の血族」「配偶者」「3親等内の姻族」です(民法第725条参照)。
つまり、夫婦の一方が他方に害を加える告知をする場合はもちろん、夫婦間の子供、他方の親兄弟に対して害を加える告知をした場合にも脅迫罪は成立します。
なお、「脅迫」とは、人を畏怖させるに足りる害悪の告知のことをいいます。
脅迫罪は私生活の平穏や安全感、意思活動の自由を侵害する犯罪です。そして害悪の告知者が直接または間接に告知した内容を支配・左右することができるものである必要があります。したがって「離婚したら恨んでやる・許さない」などは意思活動の自由を侵害するとは言いにくいですし、「別れたら呪ってやる・祟ってやる」に至っては告知者が内容を支配・左右できることではないので脅迫にはあたりません。
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脅迫罪になる言葉は?
これは脅迫罪になる言葉?ならない言葉?で詳しく書かれていますが、相手が以下のような発言をすれば脅迫罪に該当する可能性があります。
- 生命に対する脅迫行為:
「殺すぞ」「お前の親を殺すぞ」「子どもを殺すぞ」などの脅しはすべてあなたやあなたの親族の生命に対する害悪の告知にあたります。 - 身体に対する脅迫行為:
「殴るぞ」「痛い目に遭わせてやる」「しばくぞ」「子どもに怪我をさせてやる」などはすべて身体に対する害悪の告知にあたります。「覚えておけよ」という言葉もその言葉が発せられた状況や当事者の認識によっては生命や身体に対する害悪の告知と解釈できるケースがあります。 - 自由に対する脅迫行為:
「監禁してやる」「子どもや親をさらってやるぞ」「ここから帰れると思うなよ」という脅し言葉は自由に対する害悪の告知です。 - 名誉に対する脅迫行為:
「裸の画像をインターネット上で公表してやる」「不倫・浮気していることを勤務先に言いふらしてやる」「隠している経歴を世間の目に晒してやる」などの脅し言葉は、名誉に対する害悪の告知にあたります。 名誉とは人の社会的評価のことを言いますので、リベンジポルノや不貞行為を公表するという脅しは人の社会的な評価を低下させる行為と言えます。 - 財産に対する脅迫行為:
「大切にしているコレクションを捨ててやる」「自動車を破壊してやる」「家に火をつけてやる」「ペットを殴り殺してやる」という脅し言葉はすべて財産に対する害悪の告知にあたります。ペットは子ども同然と感じている方も多いでしょうが、刑法的にはあなたの所有物として扱われるため器物「傷害」罪(刑法第261条参照)が成立するにとどまります。
なお、言葉を発しなくともナイフを突きつけたり殴る素振りを見せるなど態度で示す場合や、「俺と離婚したら俺の両親(妻からしたら義父母)が憎い嫁を殺すって言ってた」のように告知者以外の第三者が害悪をもたらすことを告げる場合も脅迫罪になり得ます。
脅された証拠を残しておく必要性
配偶者に脅迫罪が成立するためには、「実際に害悪の告知を相手が行った」ということが証拠によって認定される必要があります。しかし、密室空間で対面で言われた場合や電話で脅迫された場合のように口頭で行われる脅迫行為は、発せられた言葉自体はあとから確認することが難しいものです。
そのため、被害者が害悪の告知を受けたと訴えても、「全く言っていない」「そのようなことは言ったが違う意味である」「相手方誤解して理解している」などと配偶者に反論されてしまう可能性があります。証拠が「あなた自身が聞いた」という証言しかない場合には、言った・言わないの水掛け論に終始してしまい、結局のところ真相は分からないと判断されるリスクがあります。
そのような事態を回避するために脅された証拠を複数確保しておくことは重要です。
まずは人的証拠としてあなた以外の目撃者がいないかという点が重要です。子どもや同居の親族・近所に住んでいる人が聞いていた場合その証言は証拠となります。
メールやLINE、手紙、SNSなどの書き込みなどによって害悪の告知を行っていた場合には、それらを保存しておけば物的証拠として提出することができます。この場合、アプリのメッセージやSNSの投稿などは事後的に消去・抹消されるリスクがありますので、証拠隠滅される前にスクリーンショットなどによって保存しておくようにしておきましょう。
また会話の内容をスマホのアプリやICレコーダーで録音されものは物的証拠として極めて高い信用力のある証拠となります。
上記のような人的・物的証拠については、後述する「保護命令」の申し立てを認めてもらうために提出する証拠としても利用することができます。
配偶者による脅しは法律上の離婚原因になる?
それでは配偶者から脅迫行為を受けている場合、そのことを理由として離婚を請求することができるのでしょうか。脅迫が離婚原因に該当するかという点が問題となります。
まず夫婦が離婚する際には、「協議離婚」「調停・審判離婚」「裁判離婚」のいずれかを利用することになります。
まず「協議離婚」は夫婦の話し合いで離婚を取り決めることです。そのためどのような離婚原因であっても当事者間に合意ができれば離婚することができます。そして当事者の話し合いで決着することができない場合には裁判官と調停委員を間に入れて話し合いを行う「調停・審判離婚」を利用します。あくまで話し合いでの解決を目指す手続ですので調停が不調となり審判でも解決できない場合には、次の「裁判離婚」によって最終的な決着をつけます。
裁判離婚にまでもつれ込んだ場合、当事者は自由に離婚原因を主張することができません。裁判離婚ができる理由は5つに限定されています。この5つを「法定離婚事由」といいます。
具体的な「法定離婚事由」は以下の5つです(民法第770条1項各号参照)。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
配偶者から日常的に脅迫行為を受けている場合には「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性が高いです。他方で離婚を申し出た際に相手が激昂して暴言を吐いた程度では離婚原因として認められない可能性があります。
また、脅迫的な言動を繰り返して生活費を渡してくれなくなったような場合には「悪意の遺棄」の離婚事由に該当する可能性もあります。
脅されて離婚できない場合の対処法
まずは時間と距離を置く(別居)
脅されて離婚できない場合であっても、別居することで離婚が認められやすくなる可能性があります。なぜなら、現行の離婚制度は「破綻主義」が採用されていますので婚姻関係を維持する必要がない程夫婦関係が破綻している場合には離婚が認められる傾向があるからです。
また日常的に脅迫行為を受けて身の危険を感じている場合には、緊急避難として家を出て離れて暮らす必要があります。実家や知人の家に身を寄せられる場合には協力をお願いすべきですが、そうでない場合にも「配偶者暴力相談支援センター」や「民間シェルター」などを利用することができます。
「配偶者暴力相談支援センター」は都道府県が設置する婦人相談所その他適切な施設において配偶者からの暴力の防止や被害者の保護を行っています。ここでは被害者や同伴者の緊急時における安全の確保や一時保護、自立して生活することを促進するための情報提供などの援助を行っています。また「民間シェルター」とは民間団体によって運営される暴力を受けた被害者が避難できる施設です。
さらに内閣府が実施している「DV相談+(プラス)」は専門の相談員が24時間態勢で電話相談を受け付けており、面談、同行支援など直接的な支援も実施しています。
婚姻費用分担請求をする
「婚姻費用」とは、夫婦と未成熟の子どもが通常の日常生活を営むために必要となる生活費用のことをさします。具体的には家賃や水道光熱費、食費などの生活費や医療費、子どもの学費などが含まれます。
民法には「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生じる費用を分担する」と規定して、「婚姻費用」の分担については規定しています(民法第760条参照)。
この婚姻費用については夫婦が別居していたとしても法律上夫婦である以上分担義務があります。そしてこの婚姻費用は、収入が高い方が低い方に払う必要があります。そのため仮に夫の方が収入が多い場合、婚姻費用として不足している金額について妻に支払わなければなりません。
脅してくる配偶者から逃げるように家を飛び出たものの、生活費が底をついてはまた家に舞い戻らなくてはならない羽目に陥る可能性もあります。別居を開始したら早い段階で婚姻費用分担請求調停を家庭裁判所に申し立てましょう。
それでも配偶者が婚姻費用を払わない場合には、上記でお伝えしたように、法定離婚事由である「悪意の遺棄」に該当し、裁判での離婚請求が認められる可能性が高まります。
DV防止法に基づく保護命令を出してもらう
脅されて離婚できない場合にはDV防止法に基づく「保護命令」の申し立てを行うこともできます。「保護命令」とは配偶者からの「生命などに対する脅迫」を受けた被害者が配偶者から受ける「暴力により生命や身体に重大な危害を受けるおそれ」が大きいと判断される場合に、裁判所が被害者からの申し立てにより発する命令です。
この「保護命令」には以下のように5つの類型があります。
- 被害者への「接近禁止」命令
- 被害者への「電話等禁止」命令
- 被害者の同居の「子どもへの接近禁止」命令
- 被害者の「親族等への接近禁止」命令
- 被害者とともに生活の本拠としている「住居からの退去」命令
配偶者が保護命令に違反すると「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」に処せられます。申し立ては申立書の必要事項を記載して管轄のある地方裁判所に提出します。
ただし、配偶者暴力相談支援センターや警察に相談せずに保護命令の申立てを行うと、別途書面を作成し公証人による認証(認証を受けるための費用11000円)も必要となるため、保護命令の申立て前に事前相談をしておいた方が良いでしょう。
弁護士を介して離婚手続きを進める
配偶者から脅迫されて離婚の話が進められずに困っている場合には、弁護士を通して離婚手続きを進めることがおすすめです。
弁護士に依頼した場合にはあなたの代理人として当事者の間に入って行動してくれますので、配偶者との話し合いの席に同席する必要はありません。
さらにあなたの現在の居住先などを秘匿しながら安全に手続きを進めることも可能になります。
また、配偶者が離婚の話し合いに応じない場合には「離婚調停」や「離婚裁判」を起こす必要があります。その場合にも弁護士に手続きをお願いしておけばあなたは調停期日に出頭する必要はなく、弁護士があなたの代わりに出頭してくれますので報告を受けるだけで済みます。
また早い段階で弁護士に相談しておくことで後の裁判を見越して適切に証拠を収集したり、あなたに有利となる主張・反論をしてもらえる可能性が高いです。
弊所では、配偶者から脅されて離婚できない方の離婚問題を解決してきた実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力でサポートしますのでまずはお気軽にご相談ください。相談する勇気が新しい人生への第一歩です。
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