
※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
1. 事案の概要(相談前の状況)
状況:交際相手である外国人男性に事業資金として400万円を渡してしまった
Aさんは外国籍のBさんとマッチングアプリを通じて知り合い、交際をしておりました。
Bさん曰く、海外の弁護士資格を有しており、日本には仕事で来ている、六本木のタワーマンションに住んでいるとのことでした。
Bさんとデートに行った際には、Aさんが飲食代などを出しておりましたが、金額はそこまで大きくなく、好意もあったことから気にしておりませんでした。
ある日、Bさんから、日本での事業に必要な資金が足りないという話をされ、400万円を貸してほしいと頼まれました。Bさんは事業内容の説明として、いくつか資料を開示してきましたが、内容は複雑であったためAさんには理解はできませんでした。
AさんはBさんに対して好意があったことや、内容はよく理解できなかったものの、事業に関わる資料まで見せてくれたことから、Bさんにお金を貸すこととします。後日、Bさんから指定された口座に400万円を振り込みました。
AさんはBさんと結婚することを考えており、Bさんの家を訪問したいと伝えるも、Bさんからは断られていました。また、お金を貸した後、連絡が取れないことも増え、事業の進捗について質問をしても曖昧な回答しか返ってこなくなります。
そんな中、AさんはBさんが海外の弁護士資格を有していないことを知ります。Bさんの説明が嘘であったことを知り、自身が渡した400万円も騙し取られたのではないかと考えたAさんは、弊所に相談に来られました。
2. 弁護士の対応と解決への流れ
Aさんから時系列で、Bさんと知り合ってから現在までの事実経過を伺うと、Bさんの身元に関して知っていることは名前と口座情報くらいであることが分かりました。
また、Aさんが持っていた証拠を拝見すると、英語でのメッセージが多数残っており、Bさんが借り入れを受ける際に、Aさんに対して、かなり具体的な説明をしていたことが分かりました。
身元が十分に分からない状況ではありましたが、証拠として使うことのできる資料が多数あったため、Aさんに対して、一度、最寄りの警察署に被害相談に行くよう伝えました。
しかし、警察は資料を十分に精査することなく、詐欺であるかどうかの断言はできないと回答をするのみで、逆に弁護士に相談するよう言われてしまったようです。
そのため、やむを得ず民事事件として対応することになったのですが、そもそもBさんがどこの誰であるか分からなければ対応のしようがありません。Aさんにその旨を伝えると、丁度、Bさんと会う予定が近くあるとのことであったので、付近で待機し、Bさんの帰住先を尾行によって把握できないかトライすることになりました。
尾行による住所特定
AさんとBさんが会うと約束をしていた日は、朝から尾行の準備をしました。複数名のスタッフを待ち合わせ場所付近に配置し、念のため、車も用意しました。
その後、AさんとBさんが待ち合わせ場所に現れ、遠くから尾行をスタートしました。Aさんから移動の度に連絡をもらって状況を把握しつつ、AさんとBさんが別れるまで待機しました。
数時間後、AさんとBさんが別れたことから、Bさんの尾行を開始しました。Bさんが電車で移動を始めたため、車での尾行はできなくなり、電車に乗り換えて後を追って行きました。
そうすると、Bさんの行き先は六本木ではなく、全く別の場所であることが判明しました。幸運にも外からBさんの帰宅した部屋も確認でき、おそらくは住所地であろう場所を確認することができました。
口座凍結と刑事事件化
その後、Bさんについての身元がある程度分かってきたものの、弁済の資力が十分にあるようには見えなかったこと、海外に逃げられてしまう可能性もあることを考え、Bさんの口座を凍結するよう要請しました。
無事に口座凍結は完了したものの、Bさんから連絡はなく、代わりにBさんに代理人として弁護士が就きました。
当該弁護士からは、口座凍結によってBさんは生活費の決済もできず困っているとの連絡があり、口座凍結の解除はできないか申し入れがありました。当方からは、400万円の返金を確実にしてもらうことが条件であり、確実に返金されることが分からない段階では凍結を解除することはできないと伝えました。
結局、Bさんの代理人とは話が平行線のままになってしまいました。
その後、新たに手に入った情報を持参し、警察に改めて被害相談を行ったところ、被害届を受け付けるとのことで刑事事件として進むことになりました。
時間はかかりましたが、暫くして警察からBさんを逮捕した旨連絡があり、さらにBさんの代理人から改めて、400万円を確実に弁済する旨の提案があったことから、口座凍結の解除を金融機関に申し入れたうえ、Bさんの代理人経由で400万円全額を回収することができました。
3. 解決結果と弁護士のコメント
刑事処分:相手方が逮捕
弊所では詐欺被害のご相談を多数お受けしてまいりました。しかしながら、詐欺被害金の取り戻しは一般的に難しいと言わざるを得ないところがあります。
その理由としては、本件のように相手方の身元が分からず連絡の取りようがないといったケースが多いという点が第一に挙げられるでしょう。SNS等で知り合った相手方との間で、どこの誰であるか分からないまま話が進んでしまうことがよくあります。マッチングアプリで知り合った外国人から金銭を騙し取られる手口については「国際ロマンス詐欺の手口と見分け方|被害事例3選」で詳しく解説しています。
相手方から、氏名や住所、電話番号など個人情報が提供されることもありますが、偽名など虚偽の情報であることが多くあります。また、免許証など身分証明書を提示してくるようなケースもありますが、偽造されており、裏付け資料として役に立たなかったというケースもありました。
身元が分からない場合は当然のこと、身元に関する情報や裏付けとなる証拠を出してきた場合でも、本当に相手方が実在しているのか、複数の方法によって確認していただく必要があるでしょう。
本件では、相手方が外国籍を有する方であるということもあり、通常の事案よりも身元の特定が困難になる可能性がありました。また、海外に逃亡されてしまえば、それ以上の対応は現実的に難しく、回収を断念しなければならなくなる可能性もありました。
そこで、功を奏するか分からない状況ではありましたが、Bさんを物理的に追跡し、幸運にも住所と思われる場所を発見したため、より積極的なアクションを取ることができました。
口座にお金が残っていたこと、Bさんに代理人が就いたこと、警察が当初の態度を変え刑事事件として進めてくれたことなど、様々な幸運が重なり、全額の回収に結びついたケースでした。
本件のように、詐欺被害のケースで全額を取り戻せるケースは決して多くありません。皆さまには繰り返しお話をしておりますが、詐欺への最も有効な対抗手段は予防になります。
身元の分からない人物にお金を渡さない、自分一人で判断しないといった基本的なことを心掛けるだけでも、被害の予防は可能です。大事なお金を渡してしまう前に、弊所までご相談いただければと思います。
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この記事の監修者
詐欺被害の返金交渉に豊富な実績を持つ。一般社団法人 詐欺・不当要求対策協会の代表理事として、詐欺被害の撲滅に向けた研究・啓発活動にも取り組んでいる。投資詐欺、情報商材詐欺、占い詐欺など多様な手口に精通し、被害者の大切なお金を取り戻すために迅速に行動する。警察が動かないケースでも、弁護士による返金交渉や刑事告訴で解決に導いている。

