
「詐欺の時効は、もう過ぎてしまったのだろうか」「相手が逃げたまま何年も過ぎたら、騙し取られたお金は戻らないのか」と不安を抱えていませんか。
詐欺の時効は、刑事の公訴時効(起訴できる期限)が7年、民事の消滅時効(お金を請求できる期限)が原則3年です。
ただし、刑事の7年は加害者が国外にいる間は進まず、捜査で身元がわかって起訴されれば止まります。逃げ続ければ時効で終わる、とは限りません。
民事の3年も、被害と加害者を知った時から数えるため、被害から3年が過ぎていても請求できる場合があります。請求や訴訟によって、時効の完成を止める方法もあります。
この記事では、詐欺被害の回復に取り組む弁護士が、次の点について解説します。
- 詐欺の時効は刑事と民事でそれぞれ何年か
- 期間はいつから数え、どんなときに止まるか
- 加害者は時効まで逃げ切れるのか
- 期限が迫っているときに被害者は何ができるか
お読みいただくと、自分のケースに残された期間と、今日から何をすべきかを整理できます。
なお、時効についてお悩みの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお気軽にご連絡ください。地域を問わずご相談を承っています。
詐欺被害に強い弁護士に無料相談
詐欺の時効は何年?刑事と民事の2種類がある
詐欺の時効には、刑事の「公訴時効」(7年)と民事の「消滅時効」(原則3年)の2つがあります。
公訴時効とは、犯罪が終わってから一定の期間が過ぎると、検察官が起訴して刑事裁判にかけることができなくなる制度です。詐欺罪では7年です。
消滅時効とは、権利を一定の期間使わずにいると、相手が時効を主張すれば権利が消える制度です。
被害者が加害者に損害の賠償を求める権利の消滅時効は、原則として被害と加害者を知った時から3年です。
2つの時効は別々に進みます。
刑事の7年が過ぎても、民事上の請求権が残っていることがあります。
反対に、刑事の時効がまだ先でも、民事の3年が先に過ぎている事案もあります。
また、刑事と民事は別の手続きのため、加害者が有罪判決を受けても、それだけで騙し取られたお金が戻ってくるわけではありません。
詐欺の刑事の公訴時効は7年
詐欺罪の公訴時効は7年で、時効が止まっていた期間を除き、犯罪行為が終わった時から7年を過ぎると、もう加害者を起訴できません。
犯罪ごとの公訴時効の一覧は「刑事事件の時効は何年?公訴時効を一覧表で犯罪別に解説」でまとめています。
7年の根拠は詐欺罪の刑罰で、少額や未遂でも同じ
詐欺罪は、人を騙してお金や物を渡させる犯罪です(刑法246条1項)。
具体的には、加害者の騙す行為(欺罔行為)によって相手が事実と違うことを信じ込み、その思い違いからお金や物を渡し、それが加害者側に移ったときに成立します。
詐欺罪に法律が定める刑(法定刑)は、10年以下の拘禁刑です(刑法246条1項)。
公訴時効の長さは、一部の犯罪を除き、法定刑の重さで決まります。
刑の上限(長期)が15年未満の拘禁刑にあたる罪は7年とされ(刑事訴訟法250条2項4号)、上限10年の詐欺罪はこれにあたります。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
公訴時効の長さに、騙し取られた金額の大小は関係ありません。「すぐ返す」と偽って数百円から数万円を借り、そのまま返さない寸借詐欺のような少額詐欺でも、時効は7年です。
詐欺未遂(騙そうとしたが、お金や物を受け取るに至らなかった場合)も処罰され(刑法250条)、刑が軽くなる(減軽される)こともありますが(刑法43条)、公訴時効は減軽する前の刑で決まります(刑事訴訟法252条)。
そのため、詐欺未遂も既遂の場合と同様に7年の時効となります。
ただし、団体の活動として、詐欺を実行するための組織により行われた場合(組織的詐欺)は、刑が1年以上の有期拘禁刑(上限20年)となり(組織犯罪処罰法3条1項13号・刑法12条1項)、公訴時効は10年です(刑事訴訟法250条2項3号)。
詐欺罪が成立する条件や刑罰は「詐欺罪とは?成立要件・欺罔行為の意味・罰則・詐欺の種類を解説」で詳しく解説しています。
詐欺罪の公訴時効はいつから数える?
起算点とは、期間を計算する基準となる時点です。公訴時効は、犯罪行為が終わった時から進みます(刑事訴訟法253条1項)。
詐欺罪では、加害者がお金を受け取った時点(振込なら振込先の口座への入金時)で犯罪が終了し、そこから時効が進行します。
何度も振り込ませた場合、一連の行為が1つの詐欺と評価されれば最後の振込の日が基準になり、振込ごとに別の詐欺と評価されれば振込ごとに数えます。
欺罔行為をしたものの、お金や物を受け取るに至らなかった未遂のケースでは、欺罔行為をした時点が起算点となります。
特殊詐欺では、電話をかける「かけ子」や、現金を受け取りに来る「受け子」など、複数人が役割を分けて関わることがあります。
このように共犯者がいる場合、全員の時効は、共犯者のうち最後の行為が終わった時からまとめて数え始めます(刑事訴訟法253条2項)。先に役目を終えたかけ子だけが、早く時効を迎えるわけではありません。
加害者は時効まで逃げ切れる?
詐欺の加害者の居場所がわからないまま時間が過ぎると、「7年で逃げ切られてしまうのか」と不安になるかもしれません。
しかし、逃げていれば時効で終わるとは限りません。時効の前に捜査で身元が特定されることがあり、国外にいる期間などは時効が進まないためです。
被害届・告訴で捜査が進めば、時効前に逮捕・起訴されることがある
詐欺事件の捜査では、振込先の口座の名義や、連絡に使われた電話番号などが、加害者の身元をたどる手がかりになります。
身元が特定されれば、逮捕や取り調べを経て、起訴に至る例もあります。
起訴されると、その時点で公訴時効の進行は停止します(刑事訴訟法254条1項)。
捜査が始まるきっかけになるのが、被害者からの被害届(被害を警察に申告すること)や刑事告訴(犯人の処罰を求める申告)です。
詐欺罪は、被害者の告訴がなくても起訴できる罪で、親告罪ではありません。
そのため、犯人を知った日から6か月以内という告訴期間の制限(刑事訴訟法235条)は受けません。
公訴時効の期間内なら、時間が経っていても告訴できます。もっとも、被害届や告訴を出しただけでは、公訴時効の進行は止まりません。
加害者が親族のときは、刑や告訴の扱いが異なります。配偶者・直系血族・同居の親族なら刑が免除されます。それ以外の親族なら親告罪となり(刑法251条・244条)、被害者は上記の6か月以内に告訴しなければなりません。
なお、被害届や告訴を出しても警察が動いてくれないという方は「詐欺で警察が動かない4つの理由|民事不介入と動いてもらう方法」もご覧ください。
加害者が国外にいる間などは時効が止まる
詐欺罪の時効は、次の場合に進行が停止します。
- 検察官が起訴したとき(刑事訴訟法254条1項)
- 共犯者のうち1人が起訴されたとき(刑事訴訟法254条2項)
- 加害者が国外にいるとき(刑事訴訟法255条1項)
- 加害者が逃げ隠れているため、起訴状の謄本を届けられないとき(刑事訴訟法255条1項)
起訴されている間は時効が進まないため、裁判が長引いても、途中で時効を迎えることはありません。共犯者の起訴による停止は、その裁判が確定するまで続きます。
加害者が国外にいる間も時効は進まず、帰国してからカウントが再開されます。
国内で逃げ隠れているだけでは止まらず、時効は進み続けます。止まるのは、起訴されたものの、逃げ隠れていて起訴状の謄本を届けられなかった場合などです。
止まっている間は7年に数えませんが、止まる前に進んだ分は消えずに残ります。
加害者側から示談や返金を申し入れてくることがある
逃げ切れずに捜査が進んだ詐欺事件では、被害の弁償や示談(加害者と被害者の話し合いによる解決)の成立が、不起訴や処分の重さを判断する事情の1つになります。
有罪となっても、前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがないなどの条件を満たす人が3年以下の拘禁刑を言い渡されたときは、情状により執行猶予(刑の執行を一定期間見送る制度)がつくことがあります(刑法25条1項)。示談の成立は、この情状としても考慮されます。
そのため、詐欺の加害者の側から「示談をしたい」「被害額を返したい」と申し入れてくることがあります。被害者にとってはお金を取り戻す機会にもなり、民事の時効の完成前に支払う義務を認めさせれば時効も更新されます(後述)。
応じるかどうかを決める前に、金額や支払い方法、示談書の条件を確かめてください。
詐欺の民事の消滅時効は3年
詐欺の被害者が加害者に損害賠償(騙し取られたお金などの損失を償わせること)を求める権利の消滅時効は、被害者が損害と加害者を知った時から3年です。
この権利は、民法709条が定める不法行為(ここでは騙し取る行為)による損害賠償請求権で、時効は、民法724条に規定されています。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第724条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
期限は3年と20年の2つで、どちらか早く来た時点で時効が完成します。
民事の時効はいつから数える?
民事の3年は、詐欺の被害に気付き、かつ相手が誰かを把握した日から数えます(民法724条1号)。被害に遭った日からではありません。
例えば、令和7年5月1日に知人にお金を騙し取られ、半年後に初めて騙されたと気付いた場合は、気付いた令和7年11月1日から時効がスタートします。
令和7年6月1日にネットで知り合った人に振り込み、その日のうちに詐欺だと気付いても、相手の身元がわかったのが半年後なら、令和7年12月1日からのスタートです。
「加害者を知った時」とは、昭和48年11月16日の最高裁判例によると、加害者への賠償請求が事実上可能な程度に知った時をいい、住所や氏名がわからず請求できなかった場合は、住所と氏名を確認した時です。
一方、20年のほうは、損害や加害者を知らなくても、不法行為の時から進行します(民法724条2号)。
そのため、被害と相手を知るのが遅れると、原則の3年より先に20年の期限が来る場合があります。
契約を取り消して返金を求める場合は5年
詐欺で契約を結び、お金や物を渡してしまった場合には、損害賠償とは別の方法もあります。
詐欺を理由に契約を取り消し(民法96条1項)、渡した財産の返還を求める方法です(民法121条の2第1項)。
契約を取り消す権利(取消権)の時効は、詐欺に気付き、取り消せると知った時から5年、または契約の時から20年です(民法126条)。
損害賠償の3年が過ぎていても、契約が絡むケースでは取消権を使える可能性があります。
諦める前に、契約書や勧誘時のやりとりが手元に残っていないかを確認してみてください。
加害者が時効を主張しなければ請求権は消えない
民事の消滅時効は、期間が過ぎれば完成しますが、それだけでは請求権は消えません。
時効で利益を得る者、詐欺でいえば加害者が「時効を迎えた」と主張して初めて、時効の効力が生じます。この主張を「時効の援用」といいます(民法145条)。
援用は口頭でもできますが、証拠を残すため、内容証明郵便(送った文書の内容を郵便局が証明する郵便)で「時効援用通知書」を送るのが一般的です。
時効が完成した後でも、加害者が騙し取ったお金の一部を返金するなどして支払う義務を認めた場合は、後から時効を援用できないことがあります。
時効が迫っている・過ぎたかもしれないときにすべきこと
刑事の時効で加害者に逃げ切られないよう、早めに被害届や告訴を出します。7年が過ぎたように見えても、加害者が国外にいた期間などは数えず、組織的詐欺なら10年のため、時効が残っている場合があります(いずれも前述)。
民事の3年が過ぎているように見えるときは、諦める前に次の3点を確かめます(いずれも前述)。
- 正しい起算点から期間を数えているか
- 加害者がまだ時効を援用していないか(援用前なら、支払う義務を認めさせて援用を封じられる場合もある)
- 契約の取消し(5年)が使えないか
民事の時効の完成を防ぐには、証拠を保全したうえで、内容証明郵便での請求、支払いの約束の取り付け、訴訟を、残りの期間と相手の対応に応じて使い分けます。弁護士には、起算点の確認から相談できます。どこに相談すればよいか迷っている方は「詐欺被害はどこに相談する?相談窓口と注意点を解説」もご覧ください。
被害の証拠を保全する
最初に、詐欺行為があった事実と、詐欺の相手が誰かを示す証拠を残します。時間が経つと、相手がアカウントを消したり口座を解約したりすることがあります。次のようなものは、画面の撮影やコピーで早めに保存してください。
- 相手とのやりとり(メール、LINEやSNSのメッセージ、通話履歴)
- 契約書・申込書・パンフレット・広告の画面
- 振込明細、通帳の記帳、入出金履歴、領収書
- 振込先の口座番号と名義
- 相手の氏名・住所・電話番号・勤務先など身元がわかるもの
とくに振込先の口座名義と相手の住所氏名は、訴訟を起こすときに相手を特定する手がかりになります。
内容証明で請求して時効の完成を猶予する
民事の時効が迫っているとき、被害者自身がすぐにできるのが、内容証明郵便での請求です。相手に支払いを求める意思を伝えることを「催告」といいます。
民法150条1項により、催告があると、その時から6か月を経過するまでは時効が完成しません。これを「時効の完成猶予」といい、時効が完成する前に請求が届いていることが条件です。
口頭や電話でも催告にはあたりますが、後で立証できるよう、内容証明郵便で送り、いつ届いたかを示す配達証明も付けておくのが確実です。
ただし、猶予中に再び催告をしても、猶予は延びません(民法150条2項)。そのため、6か月の間に加害者に支払いを約束させるか訴訟を起こします。
加害者に支払いを約束させて時効を更新する
詐欺の加害者が「騙し取ったお金は必ず返す」などと、支払う義務を認めることを「債務の承認」といいます。
債務の承認があると、その時から時効は新たに進行を始めます(民法152条1項)。
それまでに進んだ期間がゼロに戻ることを「時効の更新」といいます。
示談や返金の申し入れの場面も含め、支払いの約束は口約束で終わらせず、金額と支払期日を書いた書面やメッセージの記録として残してください。
訴訟を起こして時効を更新する
加害者が請求に応じないときは、訴訟を起こし、詐欺による損害の賠償を命じる判決を求めます。
民法147条1項により、裁判上の請求などがある間は時効が完成しません。
判決で権利が確定すると時効は更新され(同条2項)、その時から10年の時効期間が新たに始まります(民法169条1項)。
相手が逃げて所在がつかめないときも、公示送達(裁判所書記官が書類を保管し、いつでも渡せる状態にあることを裁判所のウェブサイトなどで知らせる手続き)を使えば、訴訟を進められます(民事訴訟法110条1項1号・111条)。
被害額が60万円以下なら、簡易裁判所の少額訴訟も使えます(民事訴訟法368条1項)。原則1回の期日で審理が終わる手続きですが、公示送達が必要なときは通常の訴訟に移ります(同法373条3項3号)。
被害額を訴訟で回復したケースは「同僚に7年間で1700万円騙し取られた詐欺被害を解決した事例」をご参照ください。
早めに弁護士に相談する
催告や訴訟が時効の完成に間に合うかどうかは、起算点の見立てで変わります。その判断には、振込の記録や、詐欺に気付いた経緯と相手の身元がわかった時期の整理が必要です。
弁護士に相談すれば、時効の残り期間の見立てから、内容証明郵便の作成、示談交渉、訴訟や公示送達の申立てまでを任せられます。
なお、弁護士に依頼する場合の費用や、費用倒れを避ける考え方は「詐欺被害の弁護士費用と相場|費用倒れを防ぐ方法も解説」で解説しています。
詐欺被害の時効でお悩みの方は弁護士にご相談ください
詐欺被害の時効は、刑事で7年、民事で原則3年です。ただ、いつから数えるか、途中で止まっていないかによって、残された期間はケースごとに変わります。
起算点を読み違えると、まだ請求できたはずの権利を失うことにもなりかねません。
詐欺に気付いてから時間が経ってしまった方や、相手と連絡が取れなくなっている方も、すぐに諦める必要はありません。
全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
詐欺被害に強い弁護士に無料相談
この記事の監修者
詐欺被害の返金交渉に豊富な実績を持つ。一般社団法人 詐欺・不当要求対策協会の代表理事として、詐欺被害の撲滅に向けた研究・啓発活動にも取り組んでいる。投資詐欺、情報商材詐欺、占い詐欺など多様な手口に精通し、被害者の大切なお金を取り戻すために迅速に行動する。警察が動かないケースでも、弁護士による返金交渉や刑事告訴で解決に導いている。

