未公開株詐欺の手口は?事例・相談窓口・返金方法を弁護士が解説

株式上場していない会社の株を、「株式上場の予定がある。上場すると株価が倍になるのは確実」などといって買わせておき、実際には上場の予定がないどころか、会社自体が架空であるケースもあります。

こういった未公開株の購入に関する詐欺被害は後を絶ちません。もしも「この株を購入したらあとで株価が上がって得をする」などと持ちかけられたとき、また実際にその話を信じてしまって多額のお金を支払ってしまったときには、騙し取られたお金は取り戻すことができるのでしょうか?

今回は、未公開株詐欺について解説します。

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目次

あなたは大丈夫?未公開株の詐欺被害事例

未公開株詐欺の手口は様々ですが、その中でもよくある被害事例をピックアップしています。もしも今未公開株詐欺に遭っているかもしれないと感じている人は、ぜひ読み進めてください。

未公開株を購入する名義貸しをしたら、「訴える」と連絡があった

R社の未公開株を購入できる権利が当選した、といって販売業社を名乗るA社から突然連絡がありました。「可能ならその権利を譲ってほしい」と言われましたが、Yさんはそれを断りました。

するとA社は「であれば、この未公開株の購入をこちらに代わって行ってほしい」と言います。謝礼はお支払いしますから、と言われ、条件が悪くなかったため、Yさんはそれを承諾しました。

ところが後日R社の担当者から連絡があり、「名義貸しは犯罪行為だ。こちらとしては訴える用意がある」と言われました。Yさんは動揺し、できるだけ穏便に済ませてほしいと伝えたところ、R社から多額の解決金を要求されました。

「未公開株詐欺で騙されたお金は取り戻せますよ」と持ちかけられた

Bさんは以前未公開株詐欺に遭い、数百万の被害を被りました。返金を求めるためにいろいろな手段を試みましたが、未公開株詐欺は手強く、解決には至っていません。ところがしばらくしてP社から「未公開株を保有しているか」という確認の連絡が入りました。

ついては、その未公開株を買取りたいとのこと。Bさんはそれに応じ、P社とやりとりをしていましたが、実際の買取はQ社が行うとのことで担当者が引き継がれ、Q社の担当者とやりとりをすることになりました。

Q社の担当者によれば、買取額を振り込む用意はしているが、振込を完了するためにはQ社に保証金を支払ってもらわなければならないとのこと。数百万が戻ってくるならと、Bさんは保証金を支払いました。しかし、その後Q社との連絡が途絶えてしまいました。

上場すれば株価は数倍になると言われたのに、一向に上場しない

Cさんは仕事上である経営者と知り合いました。あるとき、その経営者がCさんに「うちの株を買わないか」と持ちかけてきました。

彼が経営している会社は非上場ですが、業績が上がってきており、今株式市場上場に向けて具体的に動いているとのこと。もしも上場が決まれば、今の株価が数倍に跳ね上がるのは間違いないと言います。

「Cさんにはいつもお世話になっているし、何らかの形で恩返しがしたいと思って、この話を打ち明けた。他にも取引先はいるが、誰にも話していない。くれぐれも内密にしておいてほしい」と言われたCさんは感動し、その場で株の購入を決意。

言われるままに300万円を支払いました。もちろん相手は借用書を準備してくれたため、Cさんは一切彼を疑うことはありませんでした。

その時の話では「半年以内には必ず上場する」という話だったのに、1年経っても上場の報告すらありません。しびれを切らしたCさんは、株の購入を取り消して300万円を返してもらいたいと交渉することにしました。しかし、経営者の彼とはほとんど連絡がとれません。

未公開株詐欺の手口を知っておこう

未公開株の詐欺手口は、ある程度決まっています。もしも似たような手口で話を持ちかけられている場合は、詐欺じゃないかと疑う気持ちを持つことが必要です。巧妙なその手口を見ていきましょう。

未公開株詐欺では、劇場型詐欺が横行している

先ほどのBさんの被害事例では、P社とQ社が出てきました。実はこの二社は同じ未公開株詐欺の加害者、グルなんです。このように一つの詐欺被害に複数の登場人物がでてくることを、劇場型詐欺と呼びます。

Bさんのような例以外にも、劇場型は横行しています。たとえば、ある日X社から未公開株投資に関するパンフレットが送られてきます。しかし、それだけでは未公開株を購入しようという気持ちには振り切れません。

そこで、数日後にY社を名乗る人物から「もしもX社の株を保有しているのであれば、高額で買取をする」と被害者に連絡をするのです。Y社は被害者に対し、X社の株がどれだけ有望かをアピールしてきます。

そこで「X社の株を買えばY社が高額買取してくれる」という情報を鵜呑みにし、未公開株詐欺の被害に遭うのです。第三者が登場することで、情報の信憑性が高まり、被害に遭いやすくなってしまいます。

被害者に対して「お金を取り戻します」と偽って詐欺を行う

被害事例でも書きましたが、すでに未公開株詐欺の被害に遭っている人をターゲットに、手数料や保証金と言う名目でさらにお金を騙し取ろうとする詐欺も少なくありません。

事例で書いたように「保有している未公開株を買い取りたい」と持ちかけてくるケースもありますが、この他にも期限を区切って「今しか損害を取り返すことはできない」などと迫って被害者を焦らせ、冷静な判断を奪った上でお金を出させようとします。

これは「被害回復型詐欺」とも呼ばれます。極めて悪質な詐欺形態といえるでしょう。

公的機関の職員を偽って電話をかけてくる

こちらも劇場型詐欺の一形態と言えます。まずは、未公開株を扱っている販売会社から被害者の自宅に、とある会社の未公開株についてのパンフレットなどが届きます。数日後時間を見計らって、公的機関の職員を名乗る人物から電話がかかってきます。その内容は「未公開株詐欺の被害が広がっているから注意するように」というもの。

そこで言葉巧みに被害者から「この間ある会社から▲▲社の未公開株を買わないかというパンフレットが届いた」という情報を喋らせ、「その会社は信頼できる会社だから問題ない」と伝えてきます。

公的機関の職員から「信頼できる」「問題ない」と言われれば、それを信じ込むのは当然と言えますよね。そして未公開株詐欺の被害に遭ってしまうのです。

代わりに買わせ、犯罪に加担したとして解決金を払わせる

「特定の人しかこの未公開株を買うことができない」「代わりに買ってほしい」などと持ちかけられたり、「あなたの名義を使って株を買いました」と事後報告だったりというこの手口。

のちに未公開株を売っている会社から連絡が来て、「あなたの行為は名意義貸しという違法行為だ。訴える」などと言い、解決のための損害賠償や慰謝料、解決金などを払わせると言う手口です。

SNSを使って未公開株を勧めてくる

SNS上で、投資で儲かっていることをアピールしているアカウントは少なくありません。未公開株の投資で儲かるためのクローズドコミュニティなどもあり、その中でいろいろな情報交換が盛んにされていることもあります。

未公開株については、どの銘柄が儲かりそうかなどの情報源を見つけるのが困難ということもあり、SNSなどのネットでの情報収集をメインにしている人は少なくありません。そうした人をカモにして、まずは友達申請をし、「いい未公開株があるけど買わないか」とダイレクトメールなどで持ちかけるという詐欺も横行しています。

特にFacebookなどの本名で開設するタイプのSNSでは、騙される方の警戒心も薄れやすくなってしまいます。「何かあっても連絡が取れやすい」と錯覚してしまうのです。

返金を求めると一部返金してくるなど、一定の対応をしてくる

実際にお金を払い込んだ後で、「やっぱり怪しい」「詐欺かもしれない」と勘が働くこともあります。特に、一定期間を過ぎても上場の報告がなかったり、連絡が繋がりにくいといったようなことがあるとさらに疑念は強くなっていきます。

まだ連絡が取れる段階で、警察や法律事務所などに相談して何らかの処置をとることができれば、払い込んだ額が返金される可能性も高まります。しかし、相手はそれを知っているため、できるだけ時間稼ぎをしようとするのです。

時間稼ぎの一つの手段として挙げられるのが、一部返金などの対応です。返金を求めた時に、一部でもお金が返ってくれば、「残りはもう少ししたら振り込むだろう」と油断してしまうもの。また、返金はしてこないが電話にはちゃんと出る、メールには返信があるなども同様です。

そもそも、未公開株の仕組みはどうなっているのか

しかし、そもそも未公開株は実は誰でも売れるわけではないんです。これを知っておくだけで、怪しい業者から「未公開株を買いませんか」という話があった時に対処できますね。未公開株を売ることができる人や販売できる未公開株というのは、実は限定されています。

未公開株を売ることができる人

引用:株式会社 日本証券クリアリング機構

(注)未公開株の販売等を行うことが出来るのは、当該未公開株の発行会社や第一種金融商品取引業者の登録を受けている金融商品取引業者(証券会社)に限られます

このように、発行会社か、登録を受けた業者ということになります。先ほどの被害事例でいえば、Aさんは会社の経営者本人から自社株の購入をすすめられていますが、これは問題ないことになります。

ただ、「確実に上場するから」「株価が上がる」といってAさんを欺き、Aさんにお金を出させている点で詐欺になる可能性があるということになります。一方で、Bさんの被害事例に関しては、Bさんに未公開株の購入を持ちかけてきた講師の男が「第一種金融商品取引業者の登録を受けている金融商品取引業者(証券会社)」に該当しなければ、未公開株を販売する資格すらないということになります。

グリーンシート銘柄以外の勧誘は基本的に禁止されている

グリーンシートとは、未公開株が買える市場のこと。そこで取引される未公開株を、グリーンシート銘柄と呼びます。未公開株は先ほども見た通り、発行会社か、登録を受けた業者のみが販売可能ですが、未公開株の勧誘にも制限がかかっていて、未公開株の中で勧誘行為ができるのはグリーンシート銘柄だけなんです。

要するに、グリーンシート銘柄以外の銘柄について勧誘を受けたときは、それ自体が違法であり、詐欺の可能性が高まるということ。ちなみにグリーンシート銘柄制度は2018年3月31日で廃止されますので注意してください。

参考:未公開株購入の勧誘にご注意!~一般投資家への注意喚起~ : 金融庁

未公開株詐欺に遭わないための5つの対策法

未公開株詐欺の注意喚起はいたるところでなされていますが、具体的にはどういったことに注意すればいいのでしょうか。未公開株を勧めることの全てが犯罪というわけではなく、中には自己責任として相手に返金を求めにくい状況に陥ることもあるため、未公開株詐欺の被害を最小に止める、できれば未然に防ぐことは大切です。

ここでは、未公開株をもちかけられたときにそれが詐欺かどうかを見分けるためのチェックポイントをまとめました。

1.相手が未公開株を販売できるのか、公募増資で確認する

先ほども書きましたが、未公開株を販売できる人というのは限られています。また、未公開株の多くは「もうすぐ上場する」ということをネタにしていますが、もしもその話が本当なのであれば、その会社が上場手続きを取っているのかなどを調べることで、被害を食い止められることもあります。

それを調べる一つの方法が、公募増資です。公募増資とは、新たに株式を発行するときに一般投資家に対して株主を募集するもので、公募増資をする際には有価証券届出書を内閣総理大臣宛に提出するという手続きを踏むことになります。

まずは、この公募増資がされている会社かどうかを確認してみることも一つの方法です。

参考:金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム/金融庁

2.勧められているグリーンシート銘柄が実在するか確認する

先ほど見た通り、未公開株の勧誘は原則としてグリーンシート銘柄以外は禁止されていました。そのため、もしも未公開株の勧誘を受けた時には、その銘柄がグリーンシート銘柄かどうかを確認すればよいことになります。

中には「グリーンシート銘柄である」と大々的に偽って勧誘してくることもありますので、相手の言うことを鵜呑みにせずに、しっかり裏を取りましょう。グリーンシート銘柄かどうかを確認する方法はこちらを参考にしてください。

3.会社名や住所などが実在しているか

信じがたいことですが、未公開株詐欺の被害にあった人の中には、株式を購入した会社の名前すら知らないという人が一定数います。これは、知人などから未公開株の話を持ちかけられてそこで売買が成立することが多いためです。

しかし、自分が投資する先の情報を知らないというのは、投資家として適切な対応とは言えません。その情報が怪しい、怪しくないに関わらず、どの会社の株についての話を持ちかけられているのか、業務内容や所在地、経営者は誰なのかといった基本的な情報は得るようにしましょう。そして、お金を払いこむ前に、その会社が実在しているのかどうかをしっかり調べてください。

4.「上場したら必ず株価は上がる」と言われていないか

「上場したら株価は数倍になる」というのが、未公開株詐欺の常套句の一つです。確かに上場した後で株価が上がる企業も多いため、未公開株は一つの有効な投資方法として確立しています。

しかし、だからといって100%完全に株価が上がるという保証はありません。中には、上場したけれど思ったほど株価が上がらなかったという企業もあれば、逆に下がる企業もあるのです。「投資に100%はない」ということは、しっかり押さえておきたいところです。

5.その未公開株に譲渡制限がかかっていないか

未公開株の多くは、譲渡制限がかかっています。株式上場していない会社の多くは、誰かれかまわず株主になることを嫌います。そのため、会社が認めた人にしか株を譲渡できないようにする制度があるんです。これが譲渡制限の仕組みです。

譲渡制限がかかっている株式をもしも取得した場合は、会社に「その譲渡を承認するかどうか」の判断を求めなければなりません。(会社法137条)もしも会社が承認しなければ、その株は取得できません。しかし、それを隠して株を売りつけ、お金を受け取って行方を眩ませるといった未公開株詐欺もあります。

未公開株の多くは譲渡制限がかけられているものです。まずは、購入を持ちかけられている株に譲渡制限がかけられているかどうかを確認することが重要です。会社の定款を取り寄せるか、閲覧して確認する、または、株の購入を持ちかけてきた人が現在本当に株主なのかどうかも合わせて確認しましょう。これは、株主名簿記載事項証明書でも確認ができますので、提出を求めましょう。

参考サイト:株式の譲渡制限とは?

未公開株詐欺被害に遭ったら、どこに相談すればいい?

未公開株詐欺の被害額は総じて数百万単位のものが多く、被害が大きいことが特徴です。可能なら全額取り戻したいと思うもの。未公開株の詐欺被害、どこに相談すればいいのでしょうか?

未公開株詐欺の主な相談窓口一覧

未公開株詐欺の被害に遭った場合は、基本的には警察・法律事務所・消費者センターが主な相談窓口になります。このほか、日本証券業協会でも被害防止コールセンターを設けて対応しています。

警察

未公開株被害が詐欺罪(刑法246条)に該当するということであれば、警察に被害届を出して動いてもらうことも考えられます。

消費者センター(国民生活センター)

消費者センターや国民生活センターですが、ここにも未公開株についての相談が多く寄せられています。

法律事務所

警察がなかなか被害届を受理してくれない、被害額が大きく早急に何とかしたい、といったような場合には、法律事務所に相談することが近道です。

日本証券業協会

日本証券業協会では、「株や社債をかたった投資詐欺」被害防止コールセンターを設置し、未公開株詐欺被害についての相談も受け付けています。

参考:未公開株式詐欺にご用心!/日本証券業協会

一番に相談に行くべきは「法律事務所」

警察や法律事務所、消費者センターなど、まずはどこに相談すればいいのかを迷うことがあるかもしれません。もしも迷った時には、まず法律事務所に相談にいくことをお勧めします。警察が未公開株詐欺被害に対応してくれるのか、そもそも返金が可能かなどの具体的な状況判断や対応は、弁護士が間に入ったほうがスムーズに進むためです。

詐欺被害にあったのにお金を取り返せないケースがあるので注意!

未公開株詐欺被害にあったとき、どうしてもお金を取り戻したいと考えるのは当然です。しかし被害状況によっては「詐欺被害」とは呼ぶことができず、自己責任とされてお金を取り戻せないケースもあるので注意してください。ポイントは、それが「詐欺」にあたるかどうかです。

ここで、「詐欺」という概念について確認しておきましょう。詐欺という概念は民法だけではなく、刑法にも出てきます。民法上の詐欺は不法行為といえ、刑法上の詐欺は犯罪ということになります。

どちらも詐欺についての定義は同じで、「相手を欺いて錯誤に陥らせ、義務のないことを行わせること」というのが、「詐欺」の定義です。ちなみに返金と直接関係はありませんが、刑法の詐欺罪といえるためには、財物を交付したことという要件が加わります。

これを未公開株被害に当てはめると、「上場するのは確実」「上場したら株価は倍になる」というようなことを相手に言って、相手がそれを信じ込み、上場して株価が倍になることを期待して金銭を支払った場合には、民法上の詐欺、それから刑法の詐欺罪が成立する可能性は高くなります。

一方で、自分の自発的な判断で「上場しそうだ」「上場すると株価が数倍になるはずだ」と予測を立てて未公開株を購入するような場合は、詐欺には当てはまらない可能性が高いので、この点は注意が必要です。

未公開株の返金や対策は法律事務所に相談を

未公開株詐欺はいたるところで横行しており、警察や消費者センターをはじめ、多くのところに被害相談が寄せられています。知人から持ちかけられたり、相手の連絡先がわからなくて返金をもとめにくかったりすることから、被害が明るみに出ていないケースも多くあるでしょう。

相手と連絡がつかない、返金を求めたくても求められない、といったことになってしまったら最悪です。そうなる前に、もしかしたら詐欺なのでは、というアンテナを張り巡らせて、連絡がつくうちに早急に対処する必要があります。

一刻も早い解決のためには、最初から法律事務所に相談することが近道です。未公開株詐欺は弊所にお任せ下さい。

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