
※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
事案の概要(相談前の状況)
状況:身元の分からない相手方に投資を勧誘され、200万円を渡してしまった
Aさんは真面目に仕事をしながら、コツコツと貯金を続けておりました。
ある日、SNSのダイレクトメッセージを通じて相手方であるBさんから連絡がありました。Bさん曰く、確実に儲けることのできる投資案件があるとのことでした。
Aさんはそれまで投資をしたことはありませんでしたし、ギャンブルは嫌いであったため、最初は無視をしておりました。しかしながら、Bさんからのメッセージが続いたため、話だけでも聞いてみようと思うようになります。将来に不安を感じていたところもありましたし、確実に儲かるのであれば、家族に楽をさせてあげたいと考えたようです。
Bさんに話を聞きたいと連絡をすると、実際に会って話をしようということになり、指定された喫茶店でBさんの説明を聞くことになりました。
Bさんの説明は複雑であり、投資経験のなかったAさんには、それが確実に儲かるものであるのかどうかの判断ができませんでしたが、Bさんが繰り返し、リスクがないこと、確実に儲かることを強調したため、少しずつAさんも乗り気になっていきました。
最終的にBさんに貯金していた200万円を預けて運用をしてもらうことにしました。Bさんとの間で契約書は作成せず、口約束のみで現金を預けてしまいます。
その後、AさんはBさんに投資の状況を確認するも、少しずつ連絡の頻度が下がってきました。また、具体的に投資先などの情報を確認しても、時間がかかる、ちゃんと運用しているとの回答ばかりで、具体的な説明を受けることはできませんでした。
ネットで調べると、投資名目の詐欺が横行しているという情報を見つけ、自身も詐欺に遭っているのではないかと不安に感じたAさんは、弊所に相談に来られました。
弁護士の対応と解決への流れ
Aさんから時系列で、Bさんと知り合ってから現在までの事実経過を伺った後、まず、Bさんの身元についてどの程度把握をしているのか確認しました。Aさんは、Bさんの身元について、本人が名乗っている名前と電話番号しか知らないということでした。
また、Bさんとのやり取りについてどんな証拠を持っているかを確認しましたが、契約書はなく、現金を渡したことを裏付ける預かり証などもないとのことでした。さらに、Bさんとのやり取りは、SNSのダイレクトメッセージに少し残っているものの、実際に会うまでのやり取りしかなく、Bさんから投資の勧誘時に受けた説明については何ら証拠がないことがわかりました。
Bさんとはいつ連絡が取れなくなってもおかしくない状況でした。ただ、相談時にもBさんと連絡を取り合うことはできているという状態であったことから、どこまで行けるかは分からないが、Bさんを呼び出したうえ、会話の中で投資に至るまでの経緯や渡した金額について確認しながら録音し、証拠を確保したうえで、Bさんに返金を求めるという方針を説明しました。
Aさんはこの段階で自らが置かれた状況を理解し、自分では対応ができないとのことで、弊所で対応を引き取ることになりました。
おそらく弊所からBさんに連絡をしても無視をされるか、最悪、逃げられてしまう可能性があったため、AさんからBさんに連絡してもらうことにしました。ただ、投資の状況を確認したいという用件で呼び出しても、電話で曖昧な回答をされて終わってしまう可能性もあったことから、Bさんが確実に来るであろう用件を考える必要がありました。
そこで、Bさんに対して、追加で投資をしたいと考えていると伝えてもらい、呼び出してもらうことにしました。AさんからBさんに、追加投資を希望すること、ついては実際に会ってお金を渡したいと考えていることを伝えたところ、Bさんは場所と時間を指定してきました。
Aさんには、今までの事実関係をさりげなく振り返りつつ、またお金を渡した日や金額を確認し、さらに可能であればBさんから投資勧誘時に説明のあった、確実に儲かる、リスクはないといった言葉を引き出して、会話を録音するよう指示を出しました。また、念のため、当職がAさんとBさんが話し合う場の近くにおいて、無関係の他人を装って同席し、可能であれば録音をすること、録音が出来た場合には、その場でBさんと話を進めることを確認しました。
Bさんから指定された喫茶店に着くと、運よく、奥まった場所に二つ席が並んでおりましたので、Aさんの隣に無関係の他人を装って座り、Bさんが到着するのを待ちました。
ほどなくしてBさんが到着し、Aさんと話を始めました。Aさんは、Bさんに追加の投資を考えていることを伝えたうえ、一応、今までの投資について流れを確認したいと申し入れ、Bさんからどのような勧誘を受けたか、その結果、いつ、いくらどのような方法でお金を渡したのか、渡したお金が投資に回っているというのは事実であるのかを確認していきました。BさんはAさんの質問に答え、追加の投資についても確実に儲かるものであってリスクはないと説明していました。
AさんとBさんの会話を聞きながら、気づかれないよう隣席から録画と録音を続けていたところ、追加の投資にかかるお金を渡すという状況になったことから、隣席から立ち上がり、Bさんに対して、Aさんの代理人である旨伝えて、会話に入って行きました。Bさんは突然のことに驚いた様子でした。
Bさんに対して、契約書もなく、投資の内容も分からない状況で200万円もの大金を渡し、その後も投資内容についての説明もないことを指摘し、詐欺ではないかと疑っていることを説明しました。Bさんは投資が事実であると回答しましたが、裏付けの資料を出すよう申し入れると、曖昧な回答をし始めました。
Bさんに対して、投資が事実であるかどうかはこの段階では分からないが、少なくとも名前を含めた身元をしっかり確認できない人物にお金を渡すことはできないと指摘し、身分証明書を出すよう求めると、免許証を出してきました。
氏名と住所を免許証によって確認し、200万円を投資名目で預けた事実も再度確認し、Aさんが即時返金を求めていることを伝えました。また、AさんとBさんとの会話は録音させてもらっており、このまま連絡が取れなくなったときは、詐欺事件として警察に被害相談する意向のあることを伝えました。
Bさんからは、一日に振り込める金額には制限があるが、速やかに返金するとの回答があったため、念のため、返金を約する書面を取り交わし、入金先の口座情報を伝えました。
後日、Bさんから複数回にわたりましたが、200万円全額の入金があったため、本件は終件となりました。
解決結果と弁護士のコメント
刑事処分:なし(警察への被害届提出には至らず)
その他:返金を約する書面を取り交わした
弊所では詐欺被害のご相談を多数お受けしておりますが、中でも投資詐欺被害は非常に件数が多い問い合わせとなります。最近では、本件のように、SNSを通じて連絡をしてきた人物から儲け話を紹介され、お金を渡してしまうというケースが後を絶ちません。
相手方が持ち掛けてくる儲け話は様々で、次々に新しい詐欺の手口が登場してきております。詐欺の手口を学ぶことによって、被害予防に役立つ側面があることは否定しません。ただ、詐欺グループは、今までの手口が世の中に知れ渡ったことを逆手にとりながら、より緻密な手口を考えていきます。そのため、手口を知るということも重要ですが、より根本的な対策を考えていく必要があると言えます。
詐欺被害のご相談は非常に多くいただきますが、一度、お金を渡してしまったら、取り戻すことはかなり難しいとお考えいただかなければなりません。相手方の身元が分からず、連絡を取れないことは多々あります。
最近ではLINEのやり取りのみで話が進むことも多くありますが、残念ながら、現在、弁護士の調査によってLINEのやり取りから相手方の身元を特定することは困難です。また、指定された口座に入金するというケースについて、口座名義人は無関係な第三者(口座を売却した人物や勝手に利用された人物など)であることもあり、加害者の特定には至らないことも多くあるところです。
いわばプロとして詐欺を働いている相手方は、身元を辿れるような跡を残しませんし、仮に辿られたとしても、末端の人間にしか辿り着けないようにスキームを作っております。そのため、詐欺被害対策のポイントは、いかにして詐欺被害に遭わないようにするかという予防に尽きるものであると考えております。
詐欺被害の予防は非常にシンプルに実現ができます。
まず、身元の分からない(裏付けの取れない)相手にお金を渡さないことです。
次に、自分だけで判断してお金を渡さないことです。信用できる親族や友人でも構いませんが、できれば、警察や弁護士にご相談ください。詐欺であるかの断言は難しいところがありますが、立ち止まって考える機会を作ることが重要です。一人で判断をしないようにしてください。どこに相談すればよいか迷われる場合は「詐欺被害はどこに相談する?相談窓口と注意点を解説」で目的別の窓口を紹介しています。
本件では、Bさんがプロの詐欺師ではなく、素人に近かったことから返金を実現できたレアなケースと言えます。身元不明の相手から、儲け話の勧誘やお金の請求があったときは、お金を払ってしまう前に、弊所にご相談いただければと思います。
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この記事の監修者
詐欺被害の返金交渉に豊富な実績を持つ。一般社団法人 詐欺・不当要求対策協会の代表理事として、詐欺被害の撲滅に向けた研究・啓発活動にも取り組んでいる。投資詐欺、情報商材詐欺、占い詐欺など多様な手口に精通し、被害者の大切なお金を取り戻すために迅速に行動する。警察が動かないケースでも、弁護士による返金交渉や刑事告訴で解決に導いている。

