内縁関係にある相手男性との関係がうまくいっている間は、多くの場合、相手男性も養育費を負担してくれるでしょうから、養育費の請求について悩む機会は少ないと思います。
しかし、相手男性との関係がこじれ、内縁関係を解消し、あなたが相手男性との間の子を引き取ることになった場合には、今後の生活のことを考えると養育費について真剣に検討しなければなりません。
そこで、本記事では、内縁関係を解消する際、相手男性に養育費を請求するための方法について解説してまいります。
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目次
内縁の場合、認知されないと養育費を請求することはできない
養育費は法律上の親子関係にある親が子に対して扶養義務を負っているからこそ負担するものです。
ところが、内縁関係にある(法律上の婚姻関係にない)男女の間に生まれた子については、母親こそ子に対して扶養義務を負うものの、相手男性は扶養義務を負っていません。
これは女性の場合、出産という事実から女性と子との間に親子関係が成立することは明らかであるのに対して、男性の場合、出産という事実がないため、自然的事象のみでは男性と子との間に親子関係を認めることはできないからです。
相手男性が子に対して扶養義務を負わないということは、あなたは相手男性に対して養育費を請求する法的根拠を有さず、養育費を請求することはできません。
もっとも、子が認知されれば、相手男性に養育費を請求することができます。
子が認知されると相手男性と子との間に親子関係が生じ、相手男性は子に対して扶養義務を負うことになるからです。
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養育費を請求するためには子を認知してもらう
前述のとおり、相手男性に養育費を請求するためには子を認知してもらう必要があります。
子の認知には「任意認知」と「強制認知」の2種類があります。
任意認知とは、文字通り、相手男性が自らの意思で子を認知することです。
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認知届に必要事項を記入してもらい、役所に認知届と必要書類を合わせて提出すれば子が認知されます。
他方で、強制認知は、相手男性が任意認知してくれない場合に、裁判手続きを経ることで子を認知してもらうことです。
具体的には、まず、家庭裁判所に対して「認知調停」を申し立て、調停委員を間に挟んで認知に関する話し合いを進めていきます。
そして、相手男性が認知につき合意すれば認知に向けた手続きを進めることができますが、合意しない場合や調停に出席しない場合などは調停不成立となります。
その後も認知を求める場合は家庭裁判所に対して「認知請求訴訟」を提起します。
なお、子が強制認知されても、父親が養育費の支払いに関して前向きになることができず、養育費を請求できる権利は獲得できても実際に養育費を支払ってくれない、という事態に陥ってしまうことも想定されます。
したがって、子の認知を望む場合は、まずは相手男性と子の今後ことについてよく話し合い、認知について理解を得られるよう努めた上で、可能な限り、任意認知してもらうことが肝要といえます。
内縁関係中に生まれた子や内縁関係解消から300日以内に生まれた子の扱い
内縁関係中に生まれた子や内縁関係解消から300日以内に生まれた子は相手男性の子と推定されます。
これは内縁関係の場合にも、法律婚の男女の間に生まれた子に関する嫡出推定規定(民法772条)が類推適用されると解されているからです。
(嫡出の推定)
第772条
1.妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2.婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
そのため、訴訟(あるいは調停)で子の認知を求める場合は上記の法理が通用し、あなたが訴訟(あるいは調停)で相手男性と子との間に親子関係が存することを立証する責任の負担はかなり軽減されます。
もっとも、あくまで「推定される」にとどまりますから、相手男性から推定を覆すだけの反証がなされた場合には認知が認めらえない可能性もあり得ます。
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子が認知された場合の養育費の請求方法
子が認知されたら子の父親となった相手男性に対して養育費を請求できます。
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もっとも、請求といっても、いきなり訴訟を提起するというわけではありません。
まずは、養育費の金額、支払時期、支払期間、支払方法などについて相手男性とよく話し合って決めましょう。
養育費の金額については家庭裁判所が公表している「養育費算定表」を参考にすることができます。
相手男性との話し合いが難しい、話がまとまらないという場合は、家庭裁判所に対して「養育費請求調停」を申し立てます。
そして、調停やその後の審判でも解決できない場合にはじめて訴訟を提起します。
また、内縁関係解消にあたって、家庭裁判所に対して「内縁関係調整調停」を申し立てた場合には、その調停の中で養育費についても話し合うことが可能です。
内縁の養育費に関する裁判例
東京家庭裁判所 平成15年2月26日審判
【事案】
平成13年6月23日に申立人が養育費請求調停を申し立て、相手方に対して月6万円の養育費の支払いを求めたもの。
なお、調停以前に、子は強制認知されています(平成12年12月16日判決確定)。
【裁判所の判断】
平成13年8月27日に相手方が再就職したなどの経緯から、相手方は平成13年9月から平成15年1月分の養育費合計42万5,000円及び平成15年2月1日から子が成年に達する日まで毎月2万5,000円を毎月末日限り支払う義務を負う。
まとめ
内縁関係を解消する場合も内縁関係中も、相手男性に当然に養育費を請求できるわけではありません。
相手男性に養育費を請求するには、まず子の認知を得る必要があります。
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