
出張先で風俗店を利用した際に盗撮行為をしてしまい、その場で30万円の示談金を支払ったものの、後日になって「女性が退職した」との理由でさらに100万円の損害賠償を請求された――そんな不安と困惑の中、弁護士に相談された方の事例です。
今回のケースでは、最初の示談に問題があるとして取消しを主張し、あらためて被害女性本人との間で正式な示談を結ぶことで、最終的に30万円の支払いのみで解決に至りました。
この記事では、相談者が置かれた状況と、弁護士がどのように問題を整理・交渉し、穏当な着地点へと導いたのかを詳しくご紹介します。
※プライバシー保護のため、ご相談内容は一部変更しています。
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【依頼までの経緯】出張先での盗撮発覚とその後のトラブル
相談者は、出張先の大阪でビジネスホテルに宿泊中、デリヘルを利用しました。普段はそのような行為に及ぶことはなかったものの、出張先という気の緩みから、「盗撮してみたい」という衝動に駆られ、携帯電話を枕の下にセットして録画状態にしていました。
その後、女性が部屋に到着し、特にスマートフォンには気づいていない様子で、通常どおりサービスを受けることができました。
ところが、女性が帰った直後に相談者の携帯電話に着信が入り、電話に出ると男性の声で「先ほど対応した女性から盗撮されたと報告があった。本当ですか? 利用規約に禁止と書いてありますよね? 一度ちゃんと話をしたいのでそちらに伺います」と言われました。間もなくドアがノックされました。
盗撮が犯罪であることは事前に調べて知っていたこともあり、相談者は強い恐怖を感じ、ノックを無視していました。しかし「おい! いるのはわかってるんだ、出てこい」と怒鳴られ、ドアを激しく蹴る音が聞こえるようになり、このままではフロントなどに通報されてしまうのではという恐怖から、やむを得ずドアを開けました。
わずかに開けたドアの隙間から男性が強引に中に入り、「枕の下に携帯を置いて盗撮したらしいな」と言って、携帯電話を出すよう要求。観念した相談者が携帯を渡すと、その場でデータを確認された上で、「これは預かる」と一方的にカバンへしまわれました。
携帯電話がなければ仕事に支障が出ることから返却を求めましたが、「お前、あれだけのことしといてふざけるなよ」と怒鳴られ、恐怖のあまりそれ以上は何も言えなくなってしまいました。
続けて、男性はカバンから紙を取り出し、「警察に行かれたくないやろ? こっちも兄ちゃんがかわいそうやから警察には行かん。その代わりこれにサインして」と穏やかな口調で示談書とボールペンを差し出してきました。
相談者は、恐怖と緊張で冷静な判断ができない状態のまま、記載内容をきちんと確認しないままサインをしました。内容として、「盗撮を認める」との記載と、「示談金として30万円を支払うことに同意する」との文言があったことだけは記憶に残っていたといいます。
金額に驚いて「30万円もするんですか?」と恐る恐る尋ねると、「規約にも書いてある。他の店なら100万取る」と言われ、「読んでいなかった自分が悪い」と思いながらも、すぐにはサインできずにいました。
すると、男性は急に態度を一変させ、ベッドを蹴り上げながら「示談で済ますんか、警察行くか、どっちにするか決めろ!」と怒鳴りつけてきました。
盗撮が刑事事件となる可能性を理解していた相談者は、恐怖から震えながら示談書にサインをしました。心の中では「30万円で済むなら安いほうかもしれない」と必死に自分に言い聞かせていたといいます。
サイン後、男性から「控えは後で送るから。あと念のため免許証見せて」と言われ、財布から免許証を取り出すと、男性はスマートフォンで写真を撮影。そのまま「じゃあまた連絡するから」と言って部屋を去っていきました。
後日、男性から「一週間以内に示談金を振り込め」との連絡があり、相談者は指定された口座に30万円を振り込みました。支払いが完了したことで、ようやく一連の騒動が終わったと安心していました。
しかし、示談金の支払いから約1ヶ月後、再び男性から連絡がありました。「盗撮の件でうちの子(女性)が精神的に参って店を辞めた。固定客も減った。だから損害賠償金として100万円を支払え」という要求でした。
相談者は「示談したのだからそれはおかしい」と勇気を出して伝えましたが、「それとこれとは別だ。払わなければ警察に行く」と言われ、全く取り合ってもらえませんでした。
このままでは本当に警察沙汰になり、また身の危険すら感じると考えた相談者は、支払済みの30万円で今回の問題を全て解決したいという希望を持って、弁護士に相談することを決意しました。
【弁護士の対応と結果】示談取消しを主張し、風俗嬢本人と再交渉
弁護士はまず、店舗スタッフに対して当初の示談書の控えを提示するよう求めました。示談書には相談者の署名があったものの、被害女性本人の委任状が添付されておらず、法的には「店舗との間で示談したに過ぎない状態」であることが判明しました。
つまり、すでに30万円を支払ったにもかかわらず、女性本人から改めて損害賠償請求を受ける可能性が残されていたのです。
さらに、相談者が示談書にサインする際、店舗スタッフから「警察に行くか、示談で済ませるか、どっちか決めろ」と怒鳴られていたことから、弁護士は次のような主張を行いました。
- 民法第96条(強迫による意思表示)により、最初の示談は無効であると主張
- 盗撮による損害が生じたとしても、店舗側には法的な請求権がないことを説明
- スタッフの行為が恐喝罪や脅迫罪に該当する可能性があることを指摘
これらの法的根拠に基づく説明に対し、店舗側は強く反論することができず、最終的には態度を軟化させました。
その後、弁護士は被害女性本人と正式に交渉を行い、すでに支払った30万円ですべてを解決する旨の新たな示談書を締結することで合意に至りました。
相談者も「今後は絶対に軽率な行動をしない」と反省の意を示し、今回の一連の出来事を大きな教訓とされた様子でした。
本件のように、一度示談したにもかかわらず、後から高額な損害賠償を求められるケースでは、冷静な法的判断が必要です。
盗撮の法的リスクや、示談金の相場・正しい対処法については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
風俗で盗撮がバレた場合の逮捕リスクや正しい対処法
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