デリヘルなどの風俗で本番行為や盗撮トラブルを起こした場合、示談をすることが解決への一番の近道です。
とはいえ、当法律事務所には次のような質問が多く寄せられます。
- 風俗での本番行為や盗撮の示談金の相場はいくらですか?
- 示談するとどんなメリットがありますか?
- 怖くて示談書にサインしましたが、取り消したり、金額を下げることはできますか?
そこでこの記事では、風俗トラブルの示談交渉を多く経験している弁護士が、これらの疑問や悩みを解消していきます。
風俗トラブルの示談で失敗しないためにも、最後までご一読されることをおススメします。
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目次
示談とはなにか
示談とは、簡単に言うと、「裁判外で和解すること」をいいます。和解とは、当事者間に存在する法律的な争いを、お互いに譲歩しあって、争いをやめましょうという契約(民法第695条)です。例えば、お客が示談金を払う代わりに、風俗嬢が警察へ被害届を出さなと約束するようなケースです。
示談は一度締結すると、原則として、後から内容を変更することができないという効果があります(この効果を「示談の確定効」といいます)。例えば、本番強要で風俗嬢が怪我をしたケースで、「予想外に治療費がかかったからもっと寄越せ」と示談後に風俗嬢が言ってきたとしても、法律的に支払う義務がなくなるということです。
示談金とは?
本番強要や盗撮をされた風俗嬢が精神的苦痛を受けた場合、その心の傷を金額に換算したものが、精神的損害、いわゆる「慰謝料」です。
また、無理やり本番行為をしたり、盗撮カメラの奪い合いをしたことで風俗嬢が怪我をした場合、治療費や通院費、仕事を休むことになって減った稼ぎが「財産的損害」となります。
示談は、終局的な解決を目的とするものですので、通常は慰謝料と財産的損害をまとめて賠償します。そのまとめて賠償するお金のことを示談金といいます。
デリヘル等の風俗で損害賠償請求されたら支払う法的義務はある?
示談書に必ず書くべき条項は?
示談書とは、示談内容を記載した文書のことで、示談が成立した証拠となるものです。
風俗嬢が示談内容と異なる請求をしてきたときに突っぱねるために用いたり、示談書に書かれた約束を破ったときに風俗嬢に違約金を請求する時の根拠としても使えます。
ただし、サインした書面に不備があったがためにトラブルが再発しては目が当てられませんので、示談書には以下の条項は必ず入れる必要があります。
秘密保持条項 | トラブルの事実をお互いに第三者に口外しないことを約束 |
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清算条項 | 示談書で定めた以外の債権債務が存在しないことを確認 |
禁止条項 | お互いに接触や連絡をしないことを約束 |
違約金条項 | 他の条項に違反した場合に相手に支払う違約金を定める |
被害届を出さない条項 | 被害者が警察に被害届を出さないことを約束(提出済みの場合は取り下げ条項が必要) |
示談金額・支払方法・支払時期 | 幾らの金額を、どのような方法(振込・現金書留等)(一括・分割)で、いつまでに支払うのか |
行為・示談相手の特定 | どのような行為(トラブル)について示談するのか。示談の相手は誰なのかを定める |
風俗トラブルで示談するときの注意点
示談する相手を間違えないようにする
上で、「示談相手の特定条項」を示談書に盛り込む必要があるとお伝えしましたが、示談相手は、風俗店ではなく「風俗嬢」ですので絶対に間違えないでください。
本番強要にしても盗撮にしても被害者は「風俗嬢」です。無関係な店を相手とした示談書を交わしても風俗嬢と示談を交わしたことになりません。つまり、風俗嬢が警察に被害届を出したり示談金を要求してくることを阻止できないということです。
ただし、風俗嬢の委任状があれば、男性従業員が代理人として示談を進めることはできますので、その場合は示談を交わす際ににその委任状の写し(コピー)を必ずもらいましょう。
示談書の氏名と住所が正しいものか確認する
示談書は2枚作成し、風俗嬢とお客がそれぞれ1部ずつ保管しますが、その示談書に記載するお互いの氏名や住所が”本物かどうか”を身分証と照らし合わせて確認する必要があります。なぜなら、示談成立後に、どちらか一方が約束違反をしたときに、正確な氏名や住所がわからなければ違約金の支払い訴訟が起こせません。つまり示談の抑止力が無いに等しい状況となってしまいますので、免許証や保険証で風俗嬢の本名と住所の確認は必ず行ってください。
ただし、自分の名前や住所を知られることに抵抗がある風俗嬢が多いため、身分証の提示を拒否するようであれば、間に弁護士を入れると良いでしょう。弁護士が互いの身分証を確認しつつ、両名の示談書を預かる形にすれば、法的に問題のない示談を成立させつつも互いの個人情報を知られずに解決することができます。
示談成立後に示談金額の変更はできる?
繰り返しとなりますが、示談を一度交わすと、その内容を後で変更したり取消したりすることが原則としてできなくなります(示談の確定効)。
これは、追加請求を拒めるというメリットでもありますが、逆にデメリットとして働くこともあります。
例えば、本番トラブルが300万円で示談が成立したとします。しかし、後で調べてみたところ、30万円程度の示談金(慰謝料)を支払えば済むとわかったとしても、300万円を減額することはできなくなるということです。
ただし例外があります。
例えば、お客の無知や窮状に付け込んで、「盗撮の示談金相場は200万円が普通だ」などといって法外な金額で示談を締結させた場合などは、反社会性のある契約として公序良俗により無効(民法第90条)となる余地があります。
また、「家族や会社に全部バラすぞ」と脅迫されたり、「金を払わないなら警察に突き出すぞ」と恐喝されて泣く泣く示談書に署名・捺印したような場合も、強迫取消(民法第96条)できる余地があります。
弁護士の交渉次第では、減額した示談金額で新たに示談を成立できることもありますのでまずは相談してみましょう。
【実例】デリヘルの本番で300万円の示談書にサイン!無効にできる?
【実例】風俗の盗撮で一度結んだ示談を取り消して30万円で解決した流れ
風俗トラブルの示談金相場。ケース別一覧
風俗トラブルの場合は、交通事故の慰謝料算定表や離婚の際の養育費算定表のような基準となる資料がありません。また、本番行為や盗撮について、費用対効果の面から、慰謝料請求訴訟にまで発展することはほぼありません。つまり、裁判事例の積み重ねによって得られる慰謝料相場というものがないため、示談金の相場を明確にお伝えすることはできないのです。
しかし、弁護士が交渉して実際に女性に支払った示談金額を示すことで凡その目安はお伝えすることができます。
以下では、弊所が受任した本番/盗撮の示談交渉で実際に支払った示談金の額を、類似事案ごとにまとめてケース別で紹介しています。
風俗での本番トラブルの示談金相場
風俗での本番行為のトラブルの示談金相場は、5万円~150万円程度です。
本番トラブルのケース | 示談金の額 |
---|---|
素股の最中に男性器が女性器に誤って挿入され、風俗嬢側では意図的に挿入されたと勘違いしたケース | 5万円~100万円 |
風俗嬢の同意のもと本番をしたが、装着方法を間違えたため途中でゴムが外れて精液が中に漏れ出していたケース | 5万円~80万円 |
いつも本番OKの風俗嬢であったため許可なく挿入したところ、強要されたとデリヘル嬢に騒がれたケース | 10万円~55万円 |
客が本番を願い出たところ風俗嬢が拒否も同意もしなかったため暗黙の同意があると思い本番行為に及んだケース | 30万円~70万円 |
口頭で1度拒否されたが、挿入しても風俗嬢に嫌がる素振りが一切なかったため最後まで続けたところ強姦を主張されたケース | 40万円~150万円 |
拒否されているのに何度もしつこく本番をお願いし、ヘルス嬢が返答しなくなったので同意したと思い込み本番に及んだケース | 60万円~90万円 |
アルコールが入っていたため羽目を外し、メンズエステで抵抗する女性に馬乗りになって本番に及んだケース(但し、逮捕後に不起訴) | 120万円 |
男性客の行為の悪質性の程度のほか、女性が「拒否したか否か」「拒否の度合い」によって示談金の額が大きく異なることがわかると思います。
最後の示談金120万円のケースでは逮捕された後に被疑者の妻から弁護士に依頼があり、風俗嬢と示談が成立して不起訴処分となりました。その他のケースでは刑事事件にはなりませんでした。
風俗での盗撮トラブルの示談金相場
風俗での盗撮トラブルの示談金相場は、1万円~185万円程度です。
盗撮トラブルのケース | 示談金の額 |
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サービス中に仕事のメールが気になり携帯を触ったところ、女性が盗撮されたと勘違いして騒ぎ出したケース | 1万円~10万円 |
イメクラで目隠しした女性とのプレイをスマホで撮影してしまい、発覚してその場で動画を削除されたケース | 15万円~35万円 |
隠しカメラで盗撮しているのがバレ、取り上げられたカメラの中に、同じお店の他のデリヘル嬢の盗撮動画が入っていたケース | 30万円~60万円 |
同じホテヘル嬢を何度か指名し、常習的にその女性との性行為を隠し撮りしていたことが発覚したケース | 45万円~65万円 |
店外デートをした際に許可なくビデオ撮影した動画で女の子を脅し交際を迫ったケース | 70万円~90万円 |
デリヘル嬢の盗撮動画をネットの動画サイト(FC2動画など)・SNSにアップロードしていたことが判明したケース | 100万円~185万円 |
常習的に盗撮していたとなると示談金も高額になる傾向があります。何度も隠し撮りされていたことがわかれば風俗嬢の受ける精神的ダメージも大きいと考えられるからです。
さらにそれをネットにアップしたり、販売していたとなると、拡散して身バレすることも考えられるため、示談金としては100万円~200万円は考えておいた方が良いでしょう。
なお、表で紹介した全てのケースにおいて、被害届(または告訴状)が出される前に風俗嬢と示談が成立しており、男性客は逮捕されていません。
風俗トラブルで示談をする4つのメリットとは?
①逮捕される可能性が低くなる
「慰謝料を支払う代わりに、被害届や告訴状を出さない」という示談を結んでおけば、本番強要や盗撮の犯罪事実が警察に知られることは通常ありません。そのため、逮捕されることを防ぐことが出来ます。仮に警察の耳に入ったとしても、被害者である風俗嬢との間で示談が成立している以上、警察がお客を逮捕する可能性は低くなります。
逮捕されれば会社の就業規則で解雇されるリスクもあり、家族に風俗トラブルを起こしたことが発覚してしまいます。示談成立によりそれが回避できるのであれば、お金に換算できないレベルの大きなメリットといえるでしょう。
②逮捕されても、釈放・不起訴になる可能性大
警察や検察は、加害者の身柄拘束の継続や起訴するかしないかの判断をするにあたり、被害者の処罰感情を考慮にいれます。逮捕されてから起訴される前に風俗嬢との間で示談を成立させ、告訴や被害届を取り下げてもらうことで「被害者の加害者に対する処罰感情が低下した」と判断されやすくなります。
それにより、お客は釈放や不起訴処分になる可能性が高くなります。
もし起訴されて刑事裁判となっても、「示談している・反省している」と裁判官に認められ、刑事罰も軽くなります。
③示談金以上のお金を払う必要がなくなる
一度取り決めした示談金額は原則的に後から変更できませんので、お客側からしてみれば、示談金以上のお金を払う必要はなくなり、示談成立後に民事訴訟をおこされる怖れがなくなるとういことです。
また、風俗トラブルにおいては、一度お金(罰金や解決金などの名目)を払ったのに、脅迫めいた言動で再度金銭要求してくる悪質な店も存在します。しかし、店のオーナーや店長、風俗嬢を交えてしっかりと交渉し、互いに納得のできる示談を結ぶことができれば再請求される心配もありません。
④家族や会社に風俗トラブルの事実を知られずに済む
風俗トラブルでは、自宅や会社に連絡する、或いは、押しかけると脅されることが良くあります。実際に、家に押しかけられたり、職場に電話され、妻や子供、勤務先の同僚に風俗で問題を起こしたことがバレてしまうケースもあります。
この点、先ほど触れたように、示談書には秘密保持条項や禁止条項、それらに反した場合の違約金条項を盛り込みますので、約束を破れば、風俗店側はお客に対し高額な違約金を支払う法的義務が生じます。そのため、風俗店側はお客の周囲への連絡や接触をすることができなくなります。
弁護士に風俗トラブルの示談交渉を依頼するメリット
弁護士に風俗トラブルの示談交渉を依頼することで以下のようなメリットがあります。
- 家族や勤務先などへの連絡を防止できる
- 不当要求の拒否、不当な支払いを取り戻せる
- 個人情報の流出を防止できる
- 相手とのやり取りを自分でしなくて良くなる
弁護士が代理人として介入したのに、依頼者本人やその周囲の者へ直接連絡することは違法であり、また、その態様によっては犯罪となります。
弁護士は示談交渉に入る前にしっかりとそのことを風俗店側に認識させ、相手の出方次第では刑事告訴や民事訴訟も辞さない旨の警告を与えます。
妻や子供、会社の同僚などに絶対に内密にしておきたいのであれば、弁護士に相談し、必要に応じて対応を依頼しましょう。
当事務所では、不当な示談金要求の阻止や減額交渉はもちろんのこと、刑事事件を回避し、家族や会社に知られずに元の安心した生活に戻れる”示談”を結ぶことを徹底しています。親身誠実に、弁護士が全力で依頼者を守りますので、どうぞお気軽にご相談ください。相談する勇気が解決への第一歩です。
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