2ちゃんねるの掲示板やツイッターなどのSNSを使っていると、つい感情的になって誰かと言い争いになってしまうこともあります。
また、利用したお店であった理不尽なことなどを口コミで書き込んでしまった経験もあるかもしれません。
自分ではそこまでひどいことを書いたつもりがなかったり、冗談で書いたつもりだったりとしても、相手からは「その発言は誹謗中傷だ」と言われてしまうことがあります。
このように、他のユーザーとトラブルになってしまった時には、できれば直接相手と話し合って、問題を解決することが重要です。当事者が直接話し合ってトラブルを解決することを示談といいます。
今回は、ネットの誹謗中傷トラブルと示談についてまとめました。
記事の目次
示談はどんなときに必要なの?
簡単に説明すると、示談とは、話し合いでトラブルを解決することです。
自分が書き込んだコメントなどが、誹謗中傷にあたると言われて他のユーザーとトラブルになってしまったとき、解決方法としてはいろいろな手段があります。
例えば、もっとも手っ取り早い解決手段としては、その書き込みを削除することです。
誹謗中傷を受けた側としても、一番求めているのはこの書き込みの削除です。削除要請に応じれば、それ以上トラブルが深刻になることはほとんどありません。
しかし、書き込みの削除だけでは足りず、書き込みをした人になんとかして責任を取らせたい、と考える人も中にはいます。例えば慰謝料を請求してきたり、名誉毀損罪で告訴したりといったようなケースです。
このようなケースに当たってしまった時には、放置しておくと本当に訴訟を起こされたり、警察に被害届や告訴状を出されたりして予期せぬ事態に巻き込まれてしまう可能性がありますので、お互いに話し合って示談で解決させる必要があるのです。
ネット誹謗中傷で示談する意味とは?3つのメリット
示談の必要性はわかりましたが、では示談交渉にはどんなメリットがあるのでしょうか?
1.刑事事件になるのを防ぐ
ネットの誹謗中傷は、内容によってはしばしば犯罪にあたることがあります。例えば、事実無根のことをあることないこと書いて、相手の評判を落としてしまった場合は、名誉毀損罪(刑法230条)という犯罪になることがあります。
事実を指摘しなかったとしても、「死ね」や「バカ」といったような悪口を書き込めば、侮辱罪(刑法231条)という犯罪になることも。
他にも、元交際相手の裸の画像などをSNSでアップするのはリベンジポルノ防止法に違反するなど、ネットの書き込みが犯罪にあたるケースにはいろいろなものがあります。
しかも、これらの犯罪の多くは告訴罪といって、被害者が被害を訴えなければ犯罪としては取り締まることができません。被害者が告訴をしなければ逮捕されたり起訴されたりすることがないのです。
とすれば、相手と話し合って示談交渉がまとまれば、告訴をしないように求めることもできます。
2.裁判になるのを防ぐ
誹謗中傷の書き込みをされた人は、精神的に苦痛を受けることも少なくありません。ネットで知らない人から名指しで悪口を言われたり、それを拡散されたりするだけでも眠れなくなる人もいます。
また、中にはツイッターやFacebookなどを仕事に使っている人もいますが、誹謗中傷の書き込みを受けたことによって、仕事の売り上げに悪影響を及ぼすこともあります。
そうすると、誹謗中傷を受けたことで経済的にも損害を受けてしまいます。そこで、慰謝料や損害賠償を請求するために、被害者から損害賠償請求訴訟を起こされることもあるのです。 最初から裁判を起こしてくることもありますが、多くの場合、裁判は最終手段で、まずは当事者同士で話し合うことになります。この当事者同士の話し合いが示談になりますが、この段階で解決できれば、裁判になることを防ぐことができます。
3.慰謝料や損害賠償を安く抑えやすい
示談ができる段階というのは、当事者同士で話し合って誹謗中傷のトラブルを解決できる段階です。これが、話し合いでは解決が難しくなると、裁判にして、裁判官という第三者に妥当な解決方法が何かを判断してもらわなければならなくなります。
言い換えれば、示談ができる段階では、慰謝料や損害賠償の金額についても交渉の余地がまだあるということです。一般的に、裁判によるよりも慰謝料や損害賠償の額は低めで解決させることができるのが、示談のメリットの一つでもあります。
示談書を有利にまとめる書き方と注意点
示談交渉がまとまった後には、合意した内容をお互いに「示談書」という書面にして保存します。示談書は、もしも示談で交わした約束が守られなかった時に証拠として使うためのものです。
少しでも有利に示談書を作るために、示談書を有利に書く書き方や基本的な注意点をまとめました。
清算条項を入れる
清算条項とは、「これ以上同じ問題で紛争を蒸し返さない」という内容の条項です。
例えば、誹謗中傷の書き込みについて示談交渉をして、慰謝料をどうするか、告訴はするかどうかについてお互い話し合って話がまとまったとします。
しかし、例えば後から「このあいだの示談の時には請求していなかったが、実はまだ他にも損害が出たから損害賠償を請求したい」「あの誹謗中傷の書き込みについて、まだ怒りが収まらない。精神的苦痛が続いているので慰謝料を請求する」などといって、争いをまた蒸し返してなにかと理由をつけてお金を要求されては、示談の意味がありません。
トラブルの蒸し返しが起きないよう、示談書には清算条項を入れることが大切です。
原則として示談書は覆せないのでしっかり話し合う
示談は、お互いに話し合ってトラブルを解決させるためのものです。示談がまとまったということは、お互いに話し合った内容でこのトラブルを終わりにすることに合意しているということ。 そのため、示談書に書かれた内容に実は不満があったとしても、後から覆すことは原則としてできません。
例えば、示談書には「この書き込みは誹謗中傷にあたると認めます」といった条項が入っているけれど、自分としては誹謗中傷にあたるとは認めていないということもあるかもしれません。しかし、だからといって後から「この書き込みは本当は誹謗中傷ではない」といって争うことは難しいということです。
このほかにも、示談金の金額に納得がいかない場合なども同じです。示談交渉をするときには、相手に流されないように自分の納得がいくまで話し合うことが必要です。
ネットにある示談書の雛形は使える?使えない?
示談するときに、弁護士に示談交渉を依頼したとすると、示談書まで弁護士が作成します。しかし、もしも自分で示談交渉をするときには、示談書も自分で用意しなければなりません。
インターネット上には、示談書の雛形やフォーマットがあふれています。ネットで簡単に雛形を手に入れることができますが、この雛形はそのまま使っても大丈夫なのでしょうか?
確かに、インターネットで簡単に手に入れられる雛形はとても便利です。少し書き換えて自分仕様にしてしまえば、そのまま使えるようにも思えます。
しかし、正直に申し上げて雛形をダウンロードして少し加工して使うことはおすすめできません。
もしも自分に法律的な知識があり、どこを書き換えたらいいのか、どの条項が必要なのか、またはいらないのかなどを判断できるのであれば、便利に利用することは否定しません。
しかし、法的知識がなければ、ダウンロードした雛形に付け加えるべき条項があったとしてもそれに気づくことができません。
その結果、できあがった示談書は、とてもリスクが高いものになってしまうおそれがあります。
また、ネットに上がっている示談書の雛形が想定しているケースが、誹謗中傷ではないことも多いのです。よく見かけるのが、交通事故の示談書の雛形です。
しかし、ネットの誹謗中傷に関する示談と交通事故やそのほかのトラブルに関する示談書とでは、内容が異なります。
そうすると、ネットの誹謗中傷に関する示談書にしようにも、応用できないこともあるのです。
こう言った理由から、インターネット上に流れている示談書の雛形を使うことはおすすめできません。
万が一それらを利用する場合には、弁護士に一度相談してチェックを求める必要はあるでしょう。
ネット誹謗中傷での示談金の相場とは
ネットでの誹謗中傷トラブルで示談金を要求されたとき、相場はいくらくらいなのでしょうか?
示談金の内訳にもよりますが、個人に対する誹謗中傷の場合は経済的に損害が出たというよりも、精神的に損害を受けてその賠償を求められる、すなわち、慰謝料を払うよう請求されることがほとんどです。
損害賠償と慰謝料の違いは、簡単に説明すると、損害が経済的なものなのか、精神的なものなのかの違いです。
損害賠償の場合は、どんな損害が出たのか目に見えやすいのですが、精神的苦痛は目に見えません。そのため、いくらくらいの慰謝料を請求したいと考えるかは人によっても、ケースによっても違ってきます。
ただ、それでも一般的な慰謝料の相場としては、概ね30万円前後となることが多いようです。
ネット誹謗中傷の示談交渉は弁護士に相談を
これまで、示談について解説してきました。ネットでの書き込みが誰かを傷つけ、その相手から慰謝料請求や刑事告訴を受けてしまうことがあることを説明しましたが、もしそうなってしまったら、少しでも穏便にトラブルを解決しなければなりません。
そんなときに効果的なのが、裁判をする前に当事者で話し合って解決する「示談交渉」です。
ただ、法的措置を取ろうと考えている人と話し合ってトラブルを解決させるためには、こちら側にもやはりある程度の法律的知識や経験が必要になります。
できるだけ早期に、穏便に解決させるためにも、誹謗中傷の当事者同士での話し合いは弁護士に依頼することをお勧めします。