準詐欺罪とは?
準詐欺罪とは、知識不十分な人から、人を欺く行為(欺罔行為)に至らない単なる誘惑的行為によって、お金などの財物を交付させた、または財産上不法の利益を得た場合に処罰対象となる犯罪で、刑法248条に規定されています。
本来、詐欺罪(刑法246条)は、欺罔行為を処罰対象とする犯罪ですが、準詐欺罪が保護する知慮浅薄な未成年者や心神耗弱者は、欺罔行為に至らない行為であっても騙される可能性があることから、欺罔行為に至らない行為であっても処罰することとしたのがこの準詐欺罪です。
準詐欺罪の犯人が未成年者からお金を騙し取るつもりで未成年者に働きかけたところ、未成年者が親に相談し、お金をだまし取られずに済んだ場合のように、準詐欺罪は未遂も処罰対象としています。準詐欺罪の罰則は詐欺罪と同じく「10年以下の懲役」です。「準」がついているからといって、詐欺罪より罰則や量刑が低くなるわけではありません。
詐欺罪とは?成立要件・欺罔行為の意味・罰則・詐欺の種類を解説
成立要件
準詐欺罪の成立要件は次のとおりです。
未成年者の知慮浅薄または人の心神耗弱
まず、準詐欺罪の保護の対象(被害者)は未成年者の知慮浅薄(①)または人の心神耗弱(②)のいずれかです。
未成年者とは18歳未満の者をいいます。20歳未満の者ではない点に注意が必要です。知慮浅薄とは、18歳未満の者で知識に乏しく、思慮の不完全なことをいいます。
心神耗弱とは、精神の健全性を欠き、物事の判断をするのに十分な普通人の知能を備えていない状態をいいます。
③「①」又は「②」に乗じること
次に、未成年者の知慮浅薄または人の心神耗弱に乗じることが必要です。
乗じるとは、誘惑にかかりやすい状態につけ込むこと、ないしその状態を利用することをいいます。たとえば、親から子どもが500万円の預貯金を相続したと聞きつけた親の兄弟(おじ、おば)が、その子どもを言葉巧みに誘惑して500万円を自分名義の銀行口座に振り込ませるような行為が典型例です。
相手が知慮浅薄な未成年者または心神耗弱者であっても、これらの者に対して欺罔行為を働いて財物を取得し、または財産上不法の利益を得た場合は準詐欺罪ではなく詐欺罪が成立します。
➃「③」により財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得ること
最後に、未成年者の知慮浅薄または人の心神耗弱に乗じて財物を交付させたこと、または財産上不法の利益を取得したことが必要です。
財物の交付または財産上不法の利益の取得は相手の財産的処分行為(※)に基づいてなされたものである必要がありますが、犯人から積極的に誘惑する必要はなく、被害者が任意に財産的処分行為をしているのに任せておく場合でも準詐欺罪が成立すると考えられています。
なお、まったく意思能力を欠く幼児、精神障害者には財産的処分行為をする能力がないため、これらの者の状態を利用して財物を取得した場合は準詐欺罪ではなく窃盗罪(刑法235条)が成立します。
※お金を直接やり取りする事案では、自分の意思で相手にお金を渡す行為が財産的処分行為にあたります
時効
準詐欺罪の(公訴)時効は誘惑的行為が行われてから7年が経過した後に完成します。
準詐欺の罪を犯した場合の対応方法
自首する
自首とは、犯罪を犯した者が、まだ事件が発覚していないか、事件は発覚しているが犯人が特定されていない段階で自発的に捜査機関に出頭し、自ら処罰を求める行為を指します。自首に関する規定(刑法第42条)には、「刑の減軽をすることができる」と明記されており、逮捕を回避する直接的な効果はありません。
ただし、自首は自ら準詐欺の罪を認めることになるため、逃亡や罪証隠滅のおそれがないことを自ら証明できます。これにより、捜査機関に有利な要素として考慮してもらえ、逮捕を免れる可能性もあります。
もっとも、自首は自身の犯罪事実を捜査機関に明かす行為であり、もしかしたら放置しておけば事件化を免れるかもしれない場合でも、自分自身で刑事事件化することになります。そのため、自首すべきかどうかは自己判断せずに、事前に弁護士に相談する必要があります。
また、一人で自首すると、逮捕や取調べへの不安は払拭できませんが、弁護士に自首の同行を依頼することで、逮捕回避の対策を講じた上で自首することができますし、取調べ中は弁護士が取調室の外で待機し、取調べが終わるまでサポートしてくれます。逮捕されない限り、いつでも取調室から退出することが可能であり、不安があればいつでも弁護士に相談することができます。
示談を成立させる
被害者が警察に被害届を出す前に示談が成立すれば、捜査機関に犯罪事実が報告されず、逮捕回避につながります。既に被害届が提出されている場合でも、示談交渉により被害届の取り下げを依頼すれば、逮捕回避の見込みが高まります。
逮捕された場合でも、示談成立は有利な要素となり、不起訴処分につながる可能性があります。不起訴となれば実質的に無罪とみなされ、前科もつきません。
しかしながら、詐欺被害者は加害者に対して好意的な態度をとらない場合もあり、示談交渉が困難となることもあります。また、感情的な反応によって示談の進展が難航することも考えられます。
この点、弁護士であれば示談交渉に応じても良いという被害者も多く、また、弁護士は被害者の感情に敏感に対応し、自身の経験に基づいて冷静かつ的確に示談交渉を進めることができます。さらに、詐欺の示談金相場に精通しているため、被害者から要求される高額な示談金にも適切に対応し、公正な金額で示談を成立させることができます。
当事務所では、準詐欺罪の被害者との示談交渉による逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、準詐欺罪で逮捕のおそれがある方、既に逮捕された方のご家族の方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
気軽に弁護士に相談しましょう