公契約関係競売入札妨害罪とは、偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした場合に成立する犯罪です。刑法第96条の6第1項に規定されています。罰則は3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金またはこれらが併科されます。
公契約関係競売入札妨害罪(こうけいやくかんけいけいばいにゅうさつぼうがいざい)は、平成23年の刑法一部改正において新設された犯罪ですが、旧刑法下には、「競売入札妨害罪」が規定されていました。
法改正により、強制執行の妨害に関するものが「強制執行関係売却妨害罪」(刑法第96条の4)に、公の競売・入札での契約に関するものが「公契約関係競売入札妨害罪」(刑法第96条の6)に分けて規定されたのです。
すなわち、旧法から強制執行において行われる売却手続きに関する犯罪は刑法第96条の4で規定し、競売や入札は契約相手の選定のための手続きに関する犯罪は刑法第96条の6で規定しているということです。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、
- 公契約関係競売入札妨害罪の構成要件
- 公契約関係競売入札妨害罪の時効
- 公契約関係競売入札妨害罪と談合の違い
などについてわかりやすく解説していきます。
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目次
公契約関係競売入札妨害罪の構成要件
公契約関係競売入札妨害罪の構成要件は、
- 偽計又は威力を用いて、
- 公の競売又は入札で契約を締結するためのものの
- 公正を害すべき行為をした
ことが必要となります。
以下それぞれの要件を解説していきます。
「偽計又は威力を用いて」とは
「偽計」とは、他人の正当な判断やその判断に基づき実行することを誤らせるに足りる手段方法をいいます。
例えば、敷礼に最も近い入札者を落札者とする競争入札において、特定の入札者にのみ敷礼額を内報して入札させる行為は「偽計」にあたります(最高裁判所昭和37年2月9日決定)。
そして「威力」とは、「犯人の威勢、人数、四囲の情勢から客観的に見て被害者の自由意思を制圧するに足りる勢力」をいいます(最高裁判所昭和28年1月30日判決)。
例えば、指名競争入札に際し、他の指名業者に談合を持ちかけ、これに応じなかった業者に脅迫を加えて談合に応じるように要求する行為は「威力」にあたります(最高裁判所昭和58年5月9日決定)。
「公の競売又は入札で契約を締結するためのものの」とは
「公の競売又は入札」とは、公の機関すなわち国・これに準じる団体の実施するものを指します。
したがって、例えば東京都保険組合の実施する入札のように、公法人であってもその事務が公務にあたらない団体の実施するものは含まないと考えられています(東京高等裁判所昭和36年3月31日判決)。
また、公の入札が行われたというためには、権限のある機関によって適法に入札に付すべき旨の決定がなされたことが必要とされています。現実に何ら入札と目すべき行為が行われず決定が適法になされたものとは認められない場合には本罪は成立しません(最高裁判所昭和41年9月16日判決)。
「公正を害すべき行為をした」とは?
偽計や威力によって、公の競売・入札に不当な影響を及ぼす行為が行われた場合には「公正を害すべき行為をした」として公契約関係競売入札妨害罪が成立します。
本罪は入札の公正を害すべき行為が行われたときは直ちに成立し、その行為の結果、現実に入札の公正が害されたことは必要ではありません。
公契約関係競売入札妨害罪の時効
公契約関係競売入札妨害罪の公訴時効は「3年」です。
「時効が完成した事件」について検察官が公訴提起をしても、裁判所は「免訴」判決を言い渡すことになります(刑事訴訟法第337条4号4号参照)。
このような公訴時効は期間については法定刑の上限を基準に決定されています。
「公契約関係競売入札妨害罪」の法定刑は、「3年以下の懲役」もしくは「250万円以下の罰金」またはこれらが併科です(刑法第96条の3)。そしてこれは「人を死亡させた罪」以外で「長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金にあたる罪」であるため、公訴時効は「3年」となります(刑事訴訟法第250条2項3号参照)。
公契約関係競売入札妨害罪と談合の違い
「談合」には、複数の入札参加者が事前に相談し、受注事業者や受注金額などを決めること(入札談合)や、発注者側の者(=公的機関の者)が自ら入札談合をさせたり、入札談合に関与したりすること(官製談合)があります。
前者のような談合は、談合罪(刑法第96条の6第2項)や独占禁止法違反罪が適用され、後者のような談合は官製談合防止法が適用されます。
他方で、公契約関係競売入札妨害罪は談合をしていなくても、予定価格を外部に漏らし特定の業者が入札で有利になるように協力した場合にも成立することになります。
なお、「官製談合防止法」( 正式名称は「入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律」といいます。)とは、国や地方公共団体等の職員が入札参加者の間で、あらかじめ受注予定者や受注価格等を取り決めるなどの入札談合に関与していた事例を受けて再発を防止するために制定された法律です。
まとめ
「入札・競売に関する不正に関わった」という場合には公契約関係競売入札妨害罪に問われる可能性があります。
競売・入札等に関する不正が明らかになった場合には、刑事罰のみならず行政処分の対象となる可能性もあります。
したがって、不利益を最小限にとどめるためには、捜査機関や当局が本格的な調査に動き出す前に、弁護士に相談して対処してもらうことが重要です。
法律の専門家であれば、事実を調査し、実際に法律に違反しているのか否か、今後どのように対応すればよいかという点についても適切にアドバイスできます。
公契約関係競売入札妨害罪により逮捕・起訴される不安がある方は、一度弁護士に相談されることをおすすめします。
当事務所では、逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、入札・競売の不正に関わってしまい逮捕のおそれがある方や、既に逮捕された方のご家族の方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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