
特別公務員暴行陵虐罪(とくべつこうむいんぼうこうりょうぎゃくざい)とは、裁判官や検察官、警察官、刑務官などが、職務中に被疑者などへ暴行を加えたり、辱めや苦痛を与えたりしたときに成立する罪です(刑法195条)。刑罰は7年以下の拘禁刑(懲役・禁錮に代わる刑)で、公訴時効(起訴できる期限)は5年です。
殴る・蹴るといった暴行だけでなく、食事を与えない、眠らせないなど、暴行以外の方法で心身に苦痛を与える「陵虐(りょうぎゃく。凌虐とも書きます)」も処罰の対象です。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、次の点について解説します。
- どんな場合に成立するのか(4つの要件)
- 「陵虐」にあたる行為と裁判例
- 成立した場合の刑罰の重さと時効
なお、特別公務員暴行陵虐罪についてお悩みの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお気軽にご連絡ください。地域を問わずご相談を承っています。
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特別公務員暴行陵虐罪の成立要件と罰則
特別公務員暴行陵虐罪は、刑法195条に次のように定められています。
(特別公務員暴行陵虐)
第195条
1.裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、7年以下の拘禁刑に処する。
2.法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
特別公務員暴行陵虐罪の成立要件(構成要件)は、次の4つに整理できます。
- ①誰が(主体):裁判官・検察官・警察官・刑務官など
- ②どんな場合に:職務を行う際(1項)
- ③誰に対して(客体):被疑者・被告人・身柄を拘束された人など
- ④何を行った(行為):暴行又は陵辱若しくは加虐
①誰が(主体)
特別公務員暴行陵虐罪を規定する刑法195条は1項と2項で主体(加害者)をわけています。
1項は、裁判・検察・警察の職務を担う人と、その職務を補助する人を主体としています。具体的には、裁判官や検察官、警察官(巡査を含む)のほか、裁判所書記官や検察事務官などがこれにあたります。
2項の主体は、法令にもとづいて拘禁された人を監視(看守)したり、移送(護送)したりする人です。刑務官や、留置場を担当する警察官などが該当します。
②どんな場合に
1項の主体が職務を行う際です(2項の条文にこの限定はありません)。たとえば、警察官が職務質問を行う際に、対象者に暴行等を加えた場合は特別公務員暴行陵虐罪が成立する可能性があります。一方、警察官が職務とはまったく関係のないプライベートで暴行を加えても、暴行罪が成立する可能性はありますが、特別公務員暴行陵虐罪は成立しません。
③誰に対して(客体)
特別公務員暴行陵虐罪の客体(被害を受ける側)について、1項は「被告人、被疑者その他の者」と定めています。被疑者や被告人だけに限られず、証人や参考人、捜索・差押えに立ち会った人、鑑定人、通訳人なども「その他の者」に含まれます。
一方、同条2項で保護されるのは、法令により身柄を拘束された人です。これには、逮捕や、それに続く勾留を受けた被疑者、被告人、裁判が確定して拘置所・刑務所に収容されている人などが含まれます。
④何を行った(行為)
この罪では、暴行又は陵辱若しくは加虐を行った場合が処罰の対象です。
暴行とは、人の身体に対して直接または間接に不法な有形力(物理的な力)を加えることです。殴る・蹴る・叩くのほか、服を引っ張ったり引き裂いたりする行為も暴行にあたります。暴行の定義や成立要件については暴行罪と傷害罪の違いは?成立要件とどちらが重いかを解説で詳しく解説しています。
陵辱とは、人を辱めたり、精神的な苦痛を与えたりする行為のことです。また、加虐とは、暴行以外の方法で人を苦しめ、肉体的な苦痛を与える行為を指します。この陵辱と加虐をまとめた呼び名が「陵虐(りょうぎゃく)」です。陵虐には、暴行によらずに心や体へ苦痛を与える行為が広く含まれます。
陵辱若しくは加虐の例として、相当な飲食物を供給しない、用便に行かせない、睡眠を妨げるなどの行為が挙げられます。
相手の同意があっても、成立が否定されるとは限りません。東京高裁平成15年1月29日判決は、留置場の看守が、留置されていた人と性交した事案で、相手が承諾していたかどうかを問わず「陵辱若しくは加虐の行為」にあたるとして、特別公務員暴行陵虐罪の成立を認めた一審の判断を支持しています。
成立した場合の刑罰
特別公務員暴行陵虐罪の刑罰は、7年以下の拘禁刑です。
特別公務員暴行陵虐罪の公訴時効は5年です(刑事訴訟法250条2項5号)。
暴行や陵辱・加虐によって人を死傷させた場合は、特別公務員暴行陵虐致死傷罪となり、特別公務員暴行陵虐罪の刑と傷害の罪の刑を比べて、重いほうで処罰されます(刑法196条)。けがを負わせた場合は15年以下の拘禁刑、死亡させた場合は3年以上20年以下の拘禁刑と重くなります。
特別公務員暴行陵虐罪でお悩みの方は弁護士にご相談ください
特別公務員暴行陵虐罪は、暴行だけでなく辱めや苦痛を与える行為も処罰の対象で、人を死傷させれば刑はさらに重くなります。
内部調査を受けたり、被害を申し立てられたりして、今後どうなるのか不安を抱えている場合は、早期に弁護士へ相談することで、事実関係の整理や今後の見通しについて助言を受けられます。
当事務所では、全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

