一般的に、不同意わいせつ(強制わいせつ)や強姦事件などの性犯罪では、被害者と示談を成立させることで不起訴(起訴猶予)となる可能性が高くなります。
他方で、児童買春では、児童側(児童買春の示談の相手は保護者です)と示談を成立させることができても、不起訴処分を得られる可能性が非常に高くなることはありません。
なぜなら、前者が個人の性的自由を保護法益とする犯罪であるのに対し、児童買春の保護法益は児童自身の権利保護のみならず、社会的法益の保護も含まれると考えられているからです。
このように思われる方もいることでしょう。
そこでこの記事では、児童買春事件に強い弁護士が、
- 児童買春で示談はすべきか
- 児童買春の示談金相場、示談をするタイミング、示談の流れ
などについて解説していきます。
なお、児童買春をしてしまい逮捕のおそれがある方や、既に逮捕された方のご家族の方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
児童買春で示談すべき?
児童買春は示談しても起訴される可能性も十分ある
検察庁が公表している統計資料によれば、2021年度に刑事事件として立件された総数は31万6897件です。そのうち10万2769件が起訴されており、14万9678件が不起訴となっています
不起訴となった事件のうち、起訴猶予処分となったものは、10万2625件です。
起訴猶予処分とは、犯罪の嫌疑が証拠によって認められる場合でも、起訴の手続をとらず不起訴処分にすることを指します。したがって、刑事事件として立件されたもののうち全体の約32%以上は起訴猶予処分となっていることが分かります。
しかし、児童買春事件を含む児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪に限定して見てみると、立件された5027件のうち起訴猶予処分となったのは507件です。児童買春・児童ポルノ禁止法については、わずか1割程度しか起訴猶予になっていないことがわかります。
以上のように児童買春・児童ポルノ禁止法違反が起訴猶予処分になりにくい理由としては、法改正による性犯罪の厳罰化があげられます。
さらに、児童買春事件については、被害者との示談を捜査機関が重視しない点も挙げられます。
そもそも児童ポルノ禁止法は、身体的・精神的に未熟で判断能力が十分に備わっていない児童を性的搾取または性的虐待から保護するという後見的な立場から、その権利を侵害する行為を規制することを予定しているものです。
このような児童の権利侵害を防ぐという法の目的を達成するためには、現に児童の権利を侵害する行為のみならず、児童を性欲の対象としてとらえる社会的風潮が広がるのを防ぐことにより、将来にわたって児童に対する性的搾取・性的虐待を防ぐことが要請されるというべきであると考えられています。
したがって、児童ポルノ禁止法の規制の趣旨・目的には、児童自身の権利保護のみならず、社会的法益の保護も含まれると考えられています。
以上より、被害者である児童個人との示談だけを重視することはできないのです。
児童買春で示談をする意味はあるのか
前述のように、児童買春事件においては示談が重視されない傾向があることをお伝えしました。
しかし、起訴猶予処分や軽い量刑を獲得するために、被害者との示談が全く無意味なわけではありません。
他の犯罪と比較して起訴猶予となる割合は小さいものの、実際に起訴猶予処分の獲得を目指す場合には被害者と示談を成立させることが重要です。
児童買春の場合には、実際に被害者となった児童が存在しています。そして、児童自身や保護者に与える精神的な苦痛も大きくなる傾向があります。
したがって、これらの損害を補償するためには、一定の賠償金を支払う必要があるのです。
示談とは、加害者が被害者に事件を謝罪し、一定の示談金を支払うことで、被害者が加害者に対して宥恕(ゆうじょ)を与えることを指します。示談書では、「加害者を宥恕する(許す)」「処罰を望まない」などの宥恕文言が記載されることで、被害者の処罰感情が沈静化したことを確認することができます。
したがって、被害者との間で示談が成立しているか否かは、検察官が起訴・不起訴を判断するうえで重要な事情となります。また、起訴された場合であっても、裁判官が被告人の量刑を判断する際に有利な事情として考慮されることになります。事案によっては、罰金刑や執行猶予付き判決などを獲得できる可能性が高まります。
以上より、児童買春事件であったとしても、被害者やその家族と示談をすることには、大きな意味があります。
児童買春の示談金相場
児童買春事件の示談金の相場は、事案によって異なりますが、一般的に30万円〜60万円程度と考えられます。
被害児童が買春について積極的に関与しているケースや、わが子にも一定の非があることを保護者が認めているケースなどの場合には、相場の範囲内で示談できることがあります。
一方で、悪質な児童買春事件や被害感情が大きい事件の場合には、示談金が高額化する可能性があります。
例えば、同じ児童に対して繰り返し買春行為を行ったケースや、性行為や裸を撮影したケース、暴行や脅迫を伴った児童買春行為を行ったケースでは、示談金が高額になる可能性があるのです。
不同意わいせつ事件(強制わいせつ事件)や強姦事件に近い児童買春事件の場合には、それらの先例に照らして示談金が定められることもあります。
したがって、悪質な児童買春事件の場合には、示談金の相場が100万円〜300万円程度になるものも考えられます。
実際に児童買春の疑いで立件された場合には、悪質な事案なのか、示談金の相場がどの程度になるのかという点は、弁護士に相談・依頼したうえで確認することをおすすめします。
児童買春で示談をするタイミング
それでは、児童買春事件で示談をすべきタイミングはいつなのでしょうか。
検察官により不起訴処分と判断される可能性が残されている以上、検察官が処分を決定する前までに示談を成立させるべきでしょう。
そのうえで刑事事件での示談のタイミングは早ければ早いほど被疑者に有利になります。
早期に示談の成立を目指して弁護活動をするメリットとしては、以下のようなものがあります。
- 示談交渉に十分に準備したうえで臨むことができる
- 逮捕前に示談が成立することで逮捕を回避できる可能性がある
- 検察官の不起訴処分を獲得できる可能性がある
このように、捜査機関が事件について判断・処分を決定するより前に示談を成立させておくことが重要となります。
また、公訴が提起されてしまったとしても、示談の成立は量刑上有利な事情となるため、起訴以降であっても示談することに意味はあります。
児童買春の示談の流れ
児童買春事件において、被害者と示談する場合の一般的な流れは以下のとおりです。
- 捜査機関を介して被害者に示談の申し入れをする
- 被害者の保護者と示談交渉をする
- 示談書を取り交わし、示談金を支払う
①捜査機関を介して被害者に示談の申し入れをする
まず弁護士が、捜査機関を通じて、被害者との示談を希望していることを連絡することになります。児童買春などの性犯罪の場合、一般的に捜査機関は被害者の個人情報を加害者側に教えることはしません。ただし、弁護人を通じた示談の場合には、例外的に被害者の意向を確認して弁護士限りで連絡先を教えてくれます。
②被害者の保護者と示談交渉をする
捜査機関が被害者側に意向を確認し、了承が得られた場合には連絡先を教えてもらいます。弁護士が被害者の家族に示談の申し入れを行い、実際に示談交渉を行うことになります。
被害者から示談を拒否された場合には、示談をすることはできません。
③示談書を取り交わし、示談金を支払う
被害者側と示談交渉を行い、条件が整った場合には、合意した示談条件を書面に記載して確認することになります。
示談書で約束したとおりの金額・支払期限・支払方法で示談金を支払うことになります。
そして、捜査機関に対して示談書を提出して示談が成立したことを証明することになります。
児童買春の示談交渉を弁護士に依頼すべき理由
これまで児童買春で示談する必要性や示談の流れについて解説してきましたが、ご自身で示談交渉することはお勧めできません。
繰り返しとなりますが、児童買春の示談の相手は児童の保護者です。加害者として自らの子供に金銭を支払い性的搾取を行った人物と直接示談交渉に応じる保護者はまずいません。
また、前述の通り、保護者の連絡先が分からなければ捜査機関に教えてもらう必要があります。しかし、特に児童買春などの性犯罪においては、加害者からの連絡が被害者側の精神的負担になるばかりでなく、被害者側に口止めを要求したり証拠隠滅をすることなども懸念されることから、捜査機関が加害者に連絡先を教えてくれることはありません。他方で、弁護士が介入すれば、警察が保護者に意向を確認してくれますし、弁護士であれば連絡先を教えても構わないという保護者も多いです。
そのため、児童側と直接接触することは避け、弁護士を介して示談交渉を行うのが適切です。弁護士であれば、交渉のテーブルにつくことに同意していただける保護者も多く、保護者の心情に配慮してより効果的に示談を成立させることが可能です。
したがって、できるだけ早く児童買春の示談交渉に精通した弁護士に依頼することをお勧めします。
当事務所では、児童買春の示談交渉を得意としており多数の実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者のために全力を尽くしますので、児童買春での逮捕を回避したい方、不起訴処分の可能性を高めたい方は、まずは当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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