
ひったくりは窃盗罪で処理されるケースが多い一方、行為の態様によっては強盗罪が成立し、刑の重さが大きく変わります。窃盗罪の法定刑が10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金であるのに対し、強盗罪は5年以上の有期拘禁刑と格段に重く、被害者に怪我を負わせた場合は強盗致傷罪として無期又は6年以上の拘禁刑が科される可能性があります。
「自分のひったくり行為は強盗にあたるのだろうか」「家族がひったくりで逮捕されたが、強盗罪で起訴されるのか」といった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ひったくり事件に強い弁護士が、
- ひったくりが窃盗罪・強盗罪のどちらになるかの判断基準
- ひったくりで逮捕される確率と逮捕後の流れ
- 強盗罪で起訴された場合の実刑リスクと対処法
などについてわかりやすく解説します。
なお、ひったくりについて早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。
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ひったくりとは
冒頭でお伝えしたように、ひったくりとは、手荷物を持っている歩行者や籠に荷物を入れている自転車に近づき、その背後から、あるいはすれ違いざまに瞬間的に物を奪い取る犯罪手口の一つです。
ここでは、
- ①ひったくりの手口
- ②ひったくりの被害にあいやすい方
- ③ひったくりの被害が発生しやすい時間帯
について解説します。
①ひったくりの手口
ひったくりの手口としては、
- 深夜など人目につかない時間帯を狙う
- 気づかれないよう被害者の背後から近づく
- 女性や高齢者を狙う
- 逃走しやすいよう自転車、原付バイクを使う
といった点に特徴があります。
②ひったくりの被害に遭いやすい方
ひったくりに遭いやすいのは圧倒的に男性よりも女性です。
警察庁の「令和6年の刑法犯に関する統計資料」によると、令和6年に警察が認知したひったくりの件数「567件(性別が判明しているもの)」のうち「379件(全体の約66.8%)」が、女性が被害者のひったくり事案だったとのことです。
男性がよく利用するリュックやたすき掛けのバッグと違い、女性がよく利用している手提げバッグやショルダーバッグはすれ違いざまに奪い取りやすいといった点がその理由の一つとして挙げられます。
また、女性のほか高齢者もひったくり被害に遭いやすい傾向です。女性や高齢者がひったくりの被害に遭いやすい理由としては、抵抗がない、あるいは抵抗があっても力が弱いため比較的簡単に物を奪いやすい、逃走しやすいといった点をあげることができます。
その他、女性・男性、若年者・高齢者を問わず、
- 荷物を車道側にもって歩いている人
- 何らの防犯対策をとらずに荷物を自転車の籠に入れている人
- 電話をしながらスマホを注視しながら歩いている人
- 深夜に出歩く機会が多い人
はひったくりの被害に遭いやすいといえます。
③ひったくりの被害が発生しやすい時間帯
警察庁の「令和6年の刑法犯に関する統計資料」によると、令和6年に警察が認知したひったくりの件数「556件(被害者の年齢、発生時間帯が判明しているもの)」の時間帯ごとの件数は次のとおりです。
【午前】
| 0-2時 | 2-4時 | 4-6時 | 6-8時 | 8-10時 | 10-12時 |
| 53 | 29 | 30 | 20 | 19 | 38 |
【午後】
| 12-14時 | 14-16時 | 16-18時 | 18-20時 | 20-22時 | 22-24時 |
| 48 | 53 | 50 | 75 | 71 | 70 |
これからすると、ひったくりの件数が多いのが「18-20時」の時間帯で、次いで、「20-22時」「22-24時」が多く、「18-6時」までだと全体の約59%を占めており、暗くなった時間帯、深夜の時間帯にひったくりの被害に遭いやすいことがわかります。
暗くなった時間帯だと、日中に比べて人通りも少ないことから目撃者も少なく、バイクのナンバーや服装、背格好が覚えられにくいといった利点が加害者にあるためです。
ただし、10-16時の時間帯もひったくりの件数は少なくありません。この時間帯は買い物などで外に出ることが多い高齢者が狙われやすい時間帯といえます。
ひったくりをするとどんな罪で逮捕される?
警察にひったくりしたことが発覚すると主に窃盗罪、強盗罪で検挙・逮捕される可能性があります。
窃盗罪
※2025年6月1日施行の改正刑法により、「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。本記事の法定刑は改正後の表記で記載しています。
窃盗罪は刑法235条に規定されています。
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。出典:e-Gov法令検索
窃取とは、専門的にいうと、財物の持ち主の意思に反して持ち主の財物を奪い、自己の占有下に置く行為をいいます。ひったくりも窃取の一態様ですから、ひったくりを行えば窃盗罪の対象となります。
窃盗の罰則は、10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。窃盗と強盗の判断基準や刑罰の違いについては「窃盗と強盗の違いは?弁護士がわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
強盗罪
ひったくりの多くは窃盗罪に問われますが、たとえば、荷物とハンドルを右手で握って自転車を運転している被害者の背後から原付バイクで近づき、追い越しざまに荷物を無理やり引っ張るなどして、被害者に転倒の危険を感じさせて荷物を奪い取った、というように、物を奪い取る手段として暴行を用いた場合は強盗罪が成立することもあります。
強盗罪は刑法236条に規定されています。
(強盗)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期拘禁刑に処する。
2(略)出典:e-Gov法令検索
このように、強盗罪は暴行又は脅迫を手段として他人の財物を奪い取る犯罪です。また、強盗罪の暴行又は脅迫は、相手の反抗を抑圧するに足りる程度のものである必要があると考えられています。
この点、ひったくりでは暴行又は脅迫を手段としないものが多く、ひったくりで強盗罪に問われるケースは多くはありません。ただし、ひったくりだからといって強盗罪が適用されないわけではなく、相手の財物を奪うときにとった何らかの手段が、相手の命や体に危険を及ぼすおそれが大きいと認められる場合は、強盗罪の暴行にあたると判断されることがあります。
強盗罪の罰則は、5年以上の有期拘禁刑です。
また、強盗の結果、相手に怪我を負わせた場合は強盗致傷罪(刑法240条前段)、相手を死亡させた場合は強盗致死罪(刑法240条後段)が適用されます。強盗致傷罪の罰則は無期又は6年以上の拘禁刑、強盗致死罪の罰則は死刑又は無期拘禁刑です。強盗致傷罪の量刑傾向や執行猶予がつく割合については「強盗致傷とは?量刑(刑期)の傾向や執行猶予がつく割合を解説」もあわせてご確認ください。
ひったくりで逮捕される確率は?
2024年検察統計によりますと、令和6年中に検察庁で既済となった窃盗罪、強盗罪、強盗致死傷罪の被疑者の総数、逮捕者、非逮捕者の数は次のとおりです。
【窃盗罪】
| 総数 | 逮捕者 | 非逮捕者 |
| 80,397 | 26,613 | 53,784 |
【強盗罪】
| 総数 | 逮捕者 | 非逮捕者 |
| 777 | 487 | 290 |
【強盗致死傷罪】
| 総数 | 逮捕者 | 非逮捕者 |
| 1,066 | 591 | 475 |
以上からすると、窃盗罪は約33%、強盗罪は約63%、強盗致死傷罪は約55%の割合で逮捕されている計算です。
ひったくりで逮捕された後の流れ
ひったくりをして窃盗や強盗などの罪で逮捕された後は、以下の流れで手続きが進んでいきます。
- 警察官の弁解録取を受ける
- 逮捕から48時間以内に検察官に事件と身柄を送致される(送検)
- 検察官の弁解録取を受ける
- ②から24時間以内に検察官が裁判官に対し勾留請求する
- 裁判官の勾留質問を受ける
→勾留請求が却下されたら釈放される - 裁判官が検察官の勾留請求を許可する
→10日間の身柄拘束(勾留)が決まる(勾留決定)
→やむを得ない事由がある場合は、最大10日間延長される - 原則、勾留期間内に起訴、不起訴が決まる
- 正式起訴されると2か月間勾留される
→その後、理由がある場合のみ1か月ごとに更新
→保釈が許可されれば釈放される - 勾留期間中に刑事裁判を受ける
ひったくりで逮捕されてから最大3日間(48時間+24時間)は弁護士以外の者との連絡はとれません。そのため、会社勤めされている方や学校に通われている方は、弁護士を介して家族から会社や学校に休みの連絡を入れるようお願いしましょう。また、勾留が決定すると、刑事処分(起訴・不起訴)が決まるまで最大20日間身柄拘束されます。もし起訴されたら日本では99%以上の確率で有罪判決となってしまいます。そのため、ひったくりで逮捕されてから刑事処分が決まるまでの最大23日間の間に被害者と示談を成立させるなど不起訴に向けた弁護活動が重要となります。
ひったくりで逮捕された場合の対応
万が一ひったくりで逮捕された場合は以下の対応をとってください。
被害者との示談成立が最も重要
ひったくりで逮捕された場合、引き続き勾留される可能性も高いです。
身体拘束期間に捜査が進められ、検察官によって公訴提起(起訴)された場合には、99%以上の確率で有罪判決が出されます。執行猶予が付される可能性はありますが逮捕された段階の初動としては起訴されないように最善を尽くすべきでしょう。
そして起訴・不起訴の判断に非常に重要な影響を与えるのが、「被害者との示談」が成立しているか否かです。
示談とは、被害者が金銭を受け取る代わりに加害者を宥恕するという内容で合意書面を取り交わすことを指します。
示談が成立していれば、一定程度被害者の被害が回復していると評価されます。加えて、被害者が宥恕している点で被疑者に刑罰を科す必要性が減少したと考えられることもあります。
そのため、ひったくり事件で被害者と示談が成立している場合には、被疑者にとって有利な事情として考慮されるのです。
したがって示談が成立した場合には、被疑者が示談金その他解決金などを被害者に支払ったあとで、示談書や示談金の領収書などを証拠として検察官に提出します。示談の具体的な流れやメリットについては「刑事事件で示談するメリットは?示談金相場と流れを徹底解説」をご参照ください。
弁護士に刑事弁護を依頼する
ひったくり事件での示談の重要性についてお伝えしましたが、被疑者が身体拘束を受けている場合には、自由に被害者と示談交渉をすることはできません。
そこで、弁護士に刑事弁護を依頼して速やかに示談交渉のために活動してもらうことが不起訴を獲得するためにはもっとも重要となります。
ひったくりで逮捕された後に刑事弁護を依頼するには、警察官に弁護士との接見を要請してください。
要請するタイミングは逮捕された直後です。タイミングが遅れれば遅れるほど、弁護士と接見できる時期も遅れます。また、警察が接見を要請するまでの間、弁護士に接見を要請するまでの間、弁護士が要請を受けてから接見室に出向くまでの間と、3段階もタイムラグがありますから、できる限りはやく弁護士と接見するには、最初のきっかけとなる要請を早くするべきです。
逮捕される前に刑事弁護を依頼していた弁護士がいる場合はその弁護士との接見を要請しましょう。依頼していない場合でも、無料相談などを通じて知っている弁護士がいれば要請はできますが、必ず接見に来てくれるわけではありません。特に指定がない場合は当番弁護士との接見を要請することもできます。
弁護士との接見を通じて「この弁護士に刑事弁護を依頼したい」と思った場合は、弁護士にその旨を申し出て手続きをとってもらいましょう。弁護士に依頼した後は、弁護士が早期釈放、不起訴獲得に向けて被害者との示談交渉などの弁護活動を始めてくれます。弁護士費用の目安については「刑事事件の弁護士費用の相場は60万円~150万円程度」で詳しく解説しています。
ひったくりの逮捕事例
最後に、ひったくりの逮捕事例をご紹介します。
令和6年7月27日未明、東京都新宿区の路上で、帰宅途中の30代女性にバイクで背後から近づき、手提げバッグをひったくる際に女性を転倒させ、後頭部打撲など約2週間の怪我を負わせたとして、32歳の男が強盗致傷の疑いで逮捕されています。男は抵抗した女性を約7メートル引きずったまま逃走しており、令和6年7月下旬から8月初めにかけて都内で計4件のひったくりに関与したとみられています。
令和6年12月5日午後11時頃、広島市中区の歩道で、自転車で走行中の36歳の男性から、現金約700円や財布など7点が入ったリュックサック(計約2万2000円相当)をひったくったとして、17歳と16歳の少年2人が窃盗の疑いで逮捕されています。2人は同年1月にも同様の手口でひったくりをしたとして逮捕されていましたが、処分保留で釈放された後に再び犯行に及んでいました。
令和7年1月28日、広島県尾道市内の路上で、通行中の男性から酒が入ったトートバッグを原付バイクで追い抜きざまにひったくったとして、17歳の少年が窃盗の疑いで逮捕されています。現場近くでは同じ日に別のひったくり事件も発生しており、警察が関連を捜査しています。
令和7年5月下旬から6月上旬にかけて、埼玉県熊谷市を含む県北部4か所で、16歳の少年が他の少年と共謀し、原付バイクで被害者の背後から近づいて自転車の前かごに入れられたバッグなどをひったくる事件が相次ぎました。被害総額は約16万円で、少年は窃盗の疑いで逮捕されています。少年は「お金がなくてひったくりを思いついた」「深夜帯は人通りが少なくやりやすい」などと供述しています。
ひったくりで逮捕されてお困りの方へ
ひったくりは窃盗罪にとどまるケースが多いものの、暴行の程度や被害者の負傷状況によっては強盗罪・強盗致傷罪に問われ、実刑判決のリスクが大きく高まります。いずれの罪名であっても、被害者との示談を早期に成立させることが、不起訴や執行猶予の獲得に向けて最も重要なポイントです。
逮捕された後の限られた時間の中で、弁護士が介入することで示談交渉を速やかに進められるだけでなく、捜査機関への適切な対応や早期釈放に向けた弁護活動が可能になります。特に強盗罪の嫌疑がかけられている場合は、罪名の認定に関わる弁護活動が結果を大きく左右するため、刑事事件に精通した弁護士のサポートが不可欠です。
「自分の行為が強盗罪にあたるかもしれない」「家族が逮捕されて今後が不安」という状況でお悩みの方は、一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。当事務所は刑事事件の弁護に力を入れており、全国どこからでも無料でご相談いただけます。ひったくり事件の解決に向けて、弁護士が全力でサポートいたします。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

