
「あの事件の時効は、もう過ぎただろうか」「自分が犯してしまった罪は、何年で時効になるのだろう」。ふとした拍子に、こうした不安が頭をよぎる方もいるのではないでしょうか。
刑事事件の公訴時効は、軽い罪の1年から殺人などの「時効なし」まで、犯罪ごとに大きく異なります。自分に関わる罪が何年で時効を迎えるのかは、年数の決まり方を知らなければ正しく判断できません。
そこでこの記事では、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点をわかりやすく解説します。
- 犯罪別の公訴時効は何年か(一覧表)
- 時効はいつから数え、いつ止まるのか
- 殺人など時効がなくなった罪と法改正
- 時効の完成を待つことのリスク
なお、自分の罪の時効が気がかりで落ち着かない方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお気軽にご連絡ください。
| 気軽に弁護士に相談しましょう |
|
刑事事件の時効は2種類(公訴時効と刑の時効)
刑事事件で問題となる時効には、「公訴時効」と「刑の時効(刑の消滅時効)」の2種類があります。前者は起訴できる期限、後者は確定した刑を執行できる期限であり、対象とする段階が異なります。一般に刑事事件で単に「時効」と呼ぶときは、ほとんどが公訴時効を指します。
公訴時効とは?
公訴時効とは、犯罪行為を終えてから一定の期間内に起訴されないことで、検察官の起訴権限が失われる制度です。起訴権限が消滅すれば、その事件で刑事裁判にかけられることはなく、拘禁刑などの刑罰を科されることも、前科がつくこともありません。仮に時効完成後に誤って起訴されても、裁判所は有罪・無罪を判断せずに手続きを打ち切る「免訴」の判決を言い渡します(刑事訴訟法第337条第4号)。
こうした制度が設けられているのは、年月の経過とともに物的証拠が失われ、関係者の記憶も薄れて適正な事実認定が難しくなること、そして時間が経つほど処罰の必要性が小さくなると考えられることが主な理由です。
刑の時効とは?
一方、刑の時効(刑の消滅時効)は、有罪が確定したのに刑が執行されないまま所定の期間が過ぎ、国が刑を執行する権限を失う制度です。刑法第32条に定めがあります。
公訴時効が起訴の前段階に関わるのに対し、刑の時効が問題になるのは判決が確定した後の執行の場面です。もっとも、判決が確定すれば通常はすみやかに刑が執行されるため、刑の時効が問題となる場面は実務上ごくまれです。判決確定時に身柄を拘束されている人には滞りなく刑が執行されるため、適用されうるのは在宅で有罪となった後に逃亡したケースなどに限られます。
刑事事件の公訴時効は何年?犯罪別の一覧表
公訴時効の期間は、まず「人を死亡させた罪」かどうかで分かれ、次に各罪の法定刑の上限によって決まります。法定刑の上限が重くなるほど、時効も長く定められています(刑事訴訟法第250条第1項・第2項)。判断の基準となるのは、実際に言い渡される刑ではなく、条文上の法定刑の上限です。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰です。
| 【人を死亡させた罪】 | ||
| 法定刑の上限 | 公訴時効 | 主な犯罪 |
| 死刑 | 期間制限なし | 殺人罪、強盗殺人罪、強盗致死罪 |
| 無期拘禁刑 | 30年 | 不同意性交等致死罪、不同意わいせつ致死罪 |
| 長期20年の有期拘禁刑 | 20年 | 傷害致死罪、危険運転致死罪 |
| その他 | 10年 | 過失運転致死罪、業務上過失致死罪 |
| 【人を死亡させた罪以外の罪】 | ||
| 法定刑の上限 | 公訴時効 | 主な犯罪 |
| 死刑 | 25年 | 現住建造物等放火罪、外患誘致罪、殺人未遂罪 |
| 無期拘禁刑 | 15年 | 強盗致傷罪 |
| 長期15年以上の拘禁刑 | 10年 | 強盗罪、傷害罪、加重収賄罪、危険運転致傷罪、往来危険罪 |
| 長期15年未満の拘禁刑 | 7年 | 偽証罪、窃盗罪、恐喝罪、詐欺罪、詐欺未遂罪、業務上横領罪、特別背任罪、不動産侵奪罪、虚偽告訴罪、電子計算機使用詐欺罪、有印公文書偽造罪、虚偽有印公文書作成罪、営業秘密侵害罪 |
| 長期10年未満の拘禁刑 | 5年 | 監禁罪、背任罪、単純横領罪、建造物等損壊罪、保護責任者遺棄罪、電子計算機損壊等業務妨害罪、境界損壊罪、公正証書原本不実記載罪、有印私文書偽造罪、偽造有印私文書行使罪、収賄罪(加重収賄罪を除く)、未成年者略取・誘拐罪、業務上過失致傷罪、過失運転致傷罪 |
| 長期5年未満の拘禁刑又は罰金 | 3年 | 強要罪、脅迫罪、暴行罪、堕胎罪、名誉毀損罪、侮辱罪、信用毀損罪、信書開封罪、信書隠匿罪、公然わいせつ罪、贈賄罪、過失傷害罪、過失致死罪、偽計業務妨害罪、威力業務妨害罪、盗品等無償譲受罪、単純賭博罪、常習賭博罪、遺失物横領罪(占有離脱物横領罪・拾得物横領罪)、住居侵入罪、建造物侵入罪、器物損壊罪、証拠隠滅罪、犯人隠避罪、死体遺棄罪、遺骨遺棄罪、性的姿態等撮影罪、失火罪、わいせつ物頒布等罪、わいせつ物陳列罪、公務員職権乱用罪、強制執行妨害罪、私印不正使用罪、犯罪収益移転防止法違反、森林窃盗罪 |
| 拘留・科料 | 1年 | 軽犯罪法違反 |
たとえば窃盗罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」で、「長期15年未満の拘禁刑」にあたるため、公訴時効は7年となります。主な犯罪については、時効の起算点や時効完成を待つリスクも含めて、個別の記事でさらに詳しく解説しています。
あわせて読みたい:
性犯罪の公訴時効と特則
一部の性犯罪については、令和5年の法改正(令和5年6月23日施行)により、上記の基準を超えて時効期間を5年延長する特則が設けられました(刑事訴訟法第250条第3項)。たとえば不同意わいせつ罪は法定刑の上限が10年以下の拘禁刑で、基準どおりなら7年のところ、特則により12年と定められています。
| 【性犯罪の公訴時効の特則】 | |
| 時効期間 | 犯罪 |
| 20年 |
|
| 15年 |
|
| 12年 |
|
さらに、これらの性犯罪で被害者が18歳未満だった場合は、犯行が終わった後、その被害者が18歳に達するまでの日数が時効期間に上乗せされます。たとえば15歳の被害者に対する不同意わいせつなら、「12年+被害者が成人を迎えるまでの日数」が公訴時効の長さとなります。幼少期に受けた被害でも、成人後に十分な時間をもって告訴・手続きができるよう配慮した規定です。
あわせて読みたい:
殺人など時効がなくなった罪
かつて殺人罪の公訴時効は25年と定められていましたが、平成22年の法改正(平成22年4月27日施行)で、死刑が法定された「人を死亡させた罪」(殺人罪など)は公訴時効そのものが廃止されました。重大事件では遺族の処罰感情が薄れることは考えにくく、時効の趣旨が当てはまらないとの指摘を受けたためです。同時に、同じく人を死亡させた罪でも、無期拘禁刑にあたる罪は15年から30年へ、長期20年の拘禁刑にあたる罪は10年から20年へと時効期間が延長されました。
この改正は、施行日より前に起きた事件でも、その時点で旧来の時効期間が満了していなければ、撤廃・延長の対象になります。たとえば平成16年の殺人事件は、施行日にはまだ25年が過ぎていなかったため、時効のない扱いへと切り替わります。この遡及的な適用が憲法第39条に反しないかが争われた裁判で、最高裁判所は合憲と判断しています。行為時点の違法性評価をさかのぼって変えるものではないことなどが理由とされています。
公訴時効の起算点と時効の停止
公訴時効が「いつから」進み、「どんなときに止まる」のかは、時効が完成する日を左右する重要なポイントです。
時効はいつから進行するか
公訴時効は「犯罪行為が終わったとき」から進行します(刑事訴訟法第253条第1項)。窃盗罪であれば、他人の財物を盗み取って自分の手中に収めた時点がこれにあたります。
ただし、傷害致死罪のように結果の発生が必要な罪は結果が生じた時点、監禁罪のように行為が継続する罪はその状態が終わった時点が起算点です。共犯事件では、最後の共犯者の行為が終わった時点から、全員について時効が進み始めます(同条第2項)。なお公訴時効は被疑者に有利な制度のため初日も1日として数え、末日が休日でもその日が満了日となります。
進行が止まる・延長されるケース
公訴時効は、一定の事由があると進行が停止します。停止とは、それまで進んだ期間がいったん止まり、事由が終わると残りの期間が再び進むことをいい、振り出しに戻るわけではありません。主な停止事由は次のとおりです。
- 起訴(公訴提起)された
- 共犯者の一人が起訴された
- 犯人が国外にいる
- 犯人が逃げ隠れ、起訴状の謄本などを送達できない
ドラマでは時効間際の逮捕で一件落着という場面がありますが、逮捕されただけでは時効は止まりません。停止には起訴が必要です。時効満了までに捜査が間に合わなければ、時効完成を理由に不起訴となります。なお、性犯罪で被害者が18歳未満だった場合は、前述のとおり時効期間がさらに延長されます。
公訴時効と混同しやすい制度との違い
公訴時効は、名称や効果が似た他の制度と取り違えられがちです。代表的な2つとの違いを整理します。
民事の時効(消滅時効)との違い
消滅時効は民法上の制度で、一定期間権利を行使しないと、その権利自体が消滅するものです。犯罪の被害者が加害者に損害賠償を求める権利(不法行為による損害賠償請求権)は、損害と加害者を知ったときから3年(生命・身体への侵害は5年)、不法行為のときから20年で消滅します(民法第724条、第724条の2)。
刑事の公訴時効が「国が起訴できる期限」であるのに対し、民事の消滅時効は「被害者が賠償を請求できる期限」です。両者は別の制度なので、刑事の公訴時効が完成していても、民事の賠償請求が可能な場合があります。
告訴期間との違い
告訴とは、被害者などが捜査機関に対して被害を申告し、犯人を処罰してほしいという意思を示すことです。一部の犯罪は「親告罪」といい、被害者などの告訴がなければ検察官が起訴できません。名誉毀損罪や器物損壊罪などの親告罪では、犯人を知ってから6か月の告訴期間を過ぎると告訴ができなくなります(刑事訴訟法第235条)。告訴期間が過ぎれば告訴ができず、たとえ公訴時効が残っていても処罰されなくなります。公訴時効が国(検察官)の側の期限であるのに対し、告訴期間は被害者の側に課された期限といえます。親告罪の種類や告訴期間の詳細は「【一覧表つき】親告罪とは?告訴期間と非親告罪との違いを解説」をご参照ください。
時効の完成を待つ前に弁護士にご相談ください
殺人などの重大犯罪を除けば、多くの罪には公訴時効があり、完成すれば起訴も処罰も免れます。しかし、罪を犯した後に時効の完成をただ待つのは、決して得策ではありません。短い罪でも数年、多くは7年以上にわたって、いつ呼び出され逮捕されるかわからない不安を抱え続けることになります。
しかも、事件から時間が経つほど「逃げていた」と評価されやすく、証拠隠滅のおそれを理由に逮捕に踏み切られることもあります。時効を待つほど、かえって状況が不利になりかねません。
弁護士に相談すれば、逮捕を避けるための対応や被害者との示談交渉、今後の見通しについて、具体的な助言を得られます。すでに警察から連絡が来ている場合や、家族にも言えず一人で抱えている場合でも、状況に応じて打てる手は残されています。
当事務所は、逮捕の回避や不起訴の獲得に特化し、多くの実績があります。ご家族や職場に影響が及ばないよう配慮しながら、穏便な解決を目指します。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
| 気軽に弁護士に相談しましょう |
|
この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

