誤認逮捕とは?警察を冤罪の賠償金・慰謝料請求で訴えることは可能?
なにも犯罪を犯していないのに誤認逮捕されてしまった…
冤罪で逮捕されて被った被害の賠償金や慰謝料を請求するために警察を訴えることはできるのだろうか…
なんらかの補償金を払ってもらえるのだろうか…

逮捕されれば、場合によっては長期間身柄拘束をされお仕事や学校などに影響もあります。また、手錠をかけられたり留置場に入れられることは精神的苦痛を伴います。冤罪で誤認逮捕された人が、慰謝料などの賠償金を警察に求めたいと考えるのは当然のことでしょう。

そこでこの記事では、刑事事件に強い弁護士が、

  • 誤認逮捕とは
  • 誤認逮捕の事例
  • 誤認逮捕した警察に慰謝料などの賠償金を求めて訴えることは可能か
  • 誤認逮捕されてしまった後の流れ

などについてわかりやすく解説していきます。

記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。

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誤認逮捕とは

誤認逮捕とは、刑事事件の犯人ではないのに、犯人の疑いがあるとして逮捕されてしまうことをいいます

逮捕されると留置場などの施設に収容され、釈放されるまでの間はそこで生活しなければなりません。これまで当然のように送ってきた生活を送れなくなり、仮に、釈放されたとしてもその後の生活に何らかの影響を受けることは必須です。

逮捕そのものが人の人権を大きく制限する行為であるため、誤認逮捕は絶対あってはならない行為なのです。

冤罪との違い

冤罪とは、真実は無実であるのに、刑事裁判で有罪の判決を受けてしまうことをいいます

刑事手続は「逮捕→捜査→起訴→刑事裁判→判決」という流れで進みますが、誤認逮捕は刑事手続の初期段階、冤罪は刑事手続の終盤で使われることが多い言葉という点で違いがあります。

もっとも、逮捕や捜査、起訴段階でも冤罪の言葉が使われることもありますので、その意味では、冤罪の中に誤認逮捕が含まれていると考えておけば間違いありません。なお、誤認逮捕も冤罪も法律上の言葉ではありません。

誤認逮捕が発生してしまう原因

誤認逮捕が発生してしまうのは、捜査機関が十分な裏付け捜査をしていないことが大きな要因です

本来であれば、捜査機関は十分な裏付け捜査をして、犯人であることを確証できた時点で逮捕に踏み切るべきです。しかし、現在の日本の法制度上は、捜査の初期段階では、犯人であることの「疑い」がある、すなわち、実際は犯人ではなくても逮捕できる仕組みになっています。そのため、十分な裏付け捜査がなされないまま逮捕に踏み切られ、誤認逮捕につながってしまうおそれがあるのです。

また、捜査機関による十分な裏付け捜査がなされないのは、捜査員による思い込みや先入観によるところも大きいといえます。つまり、捜査機関がいったん「この人物が犯人」と決めつけると、その人物が犯人であることに有利な証拠や情報だけに目を向ける傾向があります。他方で、その人物が犯人であることに不利な証拠や情報には目を向けず、別に犯人がいる可能性すら疑わなくなってしまうのです。

前科はついてしまうのか

誤認逮捕されただけでは前科はつきません

前科は刑事裁判で有罪の判決を受け、その判決が確定(検察、被告双方が不服申し立てをできなくなった状態)後につきます。そのため、有罪か無罪か不明な刑事手続の初期段階の逮捕では前科はつきません。

もっとも、事件の内容などによっては、逮捕されるとインターネット上に実名で報道されることがあり、仮に実名報道されると、誤認逮捕であることが判明する間は何らかの不利益を受ける可能性が考えられます。

なお、冤罪だと前科がついてしまいます(ただし、裁判で無罪獲得した場合は前科はつきません)。

前科とは?前歴との違いや前科がつく5つのデメリット

前歴(逮捕歴)はついてしまう

前歴(逮捕歴)とは、捜査機関から犯罪の嫌疑をかけられて捜査の対象になった履歴のことを指します。

前科は有罪判決が確定した時点でつきますが、前歴は、逮捕された場合はもちろん捜査対象となっただけでついてしまいます。

したがって、誤認逮捕後に疑いが晴れて釈放された場合や、不起訴処分、無罪になった場合でも前歴(逮捕歴)はついてしまいます

前歴(逮捕歴)がついただけでは生活に影響を与えることはありませんが、前科の場合と同様にインターネットで実名で逮捕報道がされてしまうと、近所で噂が広まり、イメージが悪くなります。近所の人からの冷たい視線に耐えかねて引っ越しを余儀なくされる方もいます。また、就職の際に名前をネット検索されて就活に悪影響を及ぼすことも考えられます。

なお、誤認逮捕や冤罪による前歴(逮捕歴)が会社に知られてクビを言い渡されたとしても、誤認逮捕や冤罪での解雇は不当解雇として無効になります。ただし、社内では「警察に犯罪の嫌疑をかけられた人」という視線で見られるようになり、社内での立場が悪くなることもあるでしょう。

誤認逮捕は違法ではないのか

誤認逮捕は絶対にあってはならない行為ですが、それを直ちに違法と評価できるかどうかは別問題です

誤認逮捕を違法と評価するには、逮捕を含めた捜査を行う警察官等の公務員に故意あるいは過失あるといえなければなりません。ここでいう故意とは、誤認逮捕であると(うすうすでも)わかっていながらあえて逮捕したというような場合ですが、このようなケースはまずないといってよいでしょう。

一方、過失とは、警察官等が捜査を行うにあたって通常要求される水準の注意義務を尽くしていなかった、つまり、通常要求される水準の注意義務を尽くしていれば誤認逮捕は防げたという意味です。こちらはケースとしてはありえますし、実際、過去に民事裁判で誤認逮捕が違法と評価され、国や地方公共団体に損害賠償命令を命じた判決もあります。もっとも、事後的に誤認逮捕だったことが判明したとしても、捜査の時点では、警察官等が通常要求される水準の注意義務を尽くしていたと判断されれば、違法と評価されない可能性もあります

誤認逮捕の実例

ここで過去に実際にあった誤認逮捕の事例をご紹介します。

運転をめぐるトラブルでの誤認逮捕

警察は、運転をめぐるトラブルで、日本刀で被害者を威嚇したとして神奈川県に住む男性を暴力行為等処罰に関する法律違反でトラックの所有者を逮捕。ドライブレコーダーに写ったナンバーなどからこのトラックの所有者を犯人と特定し逮捕したところ、男性が否認することから、あらためてドライブレコーダーや防犯ビデオカメラ映像を確認したところ、新犯人であるトラック運転手と所有者の体格の特徴が異なり、所有者の男性が犯人ではないことがわかったとのことです。

暴行の疑いで外国籍の男性を誤認逮捕

警察は、「外国人が騒いでいるのを注意したら胸ぐらをつかまれた」という110番通報を受け現場に駆け付けたところ、現場にいた被害者と目撃者から「あの人です」と言われたため、近くにいた外国籍の男性らを暴行の疑いで現行犯逮捕。

後日、警察署で被害者に男性の姿を確認させたところ「犯人はこの人ではない」と言ったことから、逮捕から約2時間半後に男性を釈放しました。男性を逮捕した警察官は、防犯ビデオカメラなどの客観的な証拠を精査することなく、被害者や目撃者の供述のみを根拠に男性を逮捕したとのことです。

傷害の疑いで誤認逮捕

警察は、見知らぬ人物の顔面を殴打し怪我を負わせたとして青森県内に住む男性を逮捕。警察官が、「酔っ払いに殴られた」との110番通報を受け、現場に駆け付けたところ、その場にいた男性を現行犯逮捕。男性は容疑を認めていたものの、目撃者が事件の犯人ではないと証言したため、警察は誤認逮捕と判断し男性を釈放しています。警察は、真犯人から頼まれて自ら犯人だと申し出る「身代わり事案」の可能性もあるとみているようです。

誤認逮捕された場合の補償と賠償について

誤認逮捕された後には国に対して補償と賠償を求めることができます。

被疑者補償規定による補償

まず、被疑者補償規定による補償です。

補償内容は、身柄拘束期間1日につき1,000円以上1万2,500円以内の範囲内で、金銭の支払を受けることができるというものです。

被疑者補償規定による補償を受けるには、

  • 身柄拘束を受けたこと(誤認逮捕に引き続き勾留されたこと)
  • 勾留された事実で不起訴処分を受けたこと
  • 「被害者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があること」を理由に不起訴処分を受けたこと

が必要です。

つまり、誤認逮捕により身柄拘束を受けたものの、起訴されてしまった場合は被疑者補償規定による補償の対象外です

また、不起訴処分を受けたものの、不起訴の理由が起訴するに足りる十分な証拠を集めるおとができなかったこと、すなわち、嫌疑不十分による不起訴の場合も被疑者補償規定による補償の対象外です。被疑者補償規定による補償を受けるには「罪とならず」、あるいは「嫌疑なし」を理由とする不起訴処分を受けることが必要です。

刑事補償法による補償

次に、刑事補償法による補償です。

補償内容は、被疑者補償規定と同様に、1,000円以上1万2,500円以内の範囲内で、金銭の支払を受けることができることです。

刑事補償法は憲法40条の趣旨を受けて設けられた法律で、身柄拘束されたことのみをもって補償を求めることができます。

第四十条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

日本国憲法 | e-Gov法令検索

つまり、誤認逮捕されたこと、誤認逮捕に引き続き身柄拘束(勾留)されたことだけでも補償を求めることができます。被疑者補償規定による補償と異なり、不起訴処分を受けることは条件ではありません。

また、懲役、禁錮などで刑務所に服役したものの、その後冤罪であることが判明した場合も刑事補償法により補償を求めることができます。

国家賠償法による賠償

以上のほか、国家賠償法による賠償を求めることも考えられます。

賠償額は定められておらず、警察官らの落ち度や身柄拘束期間、損害の程度などによりケースバイケースで判断されます。

国家賠償法による賠償を受けるには「国又は地方公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたこと」を賠償を求める側が証明しなければなりません

もっとも、前述のとおり、警察官らが故意に誤認逮捕するケースは稀ですし、過失があったことを主張しても、裁判では、捜査の時点で警察官などの公務員が通常要求される水準の注意義務は尽くしていた、つまり、過失はなかったと判断されるケースも多く、上2つの補償と比べると賠償を受け得るハードルは極めて高いと言わざるをえません。

誤認逮捕された後の流れ

誤認逮捕された後は、警察署内の留置施設に収容されます。釈放されるまでは、生活の本拠は留置場内となります。

逮捕後は48時間以内に検察庁へ送検され、送検から24時間以内に勾留請求される可能性があります。勾留請求され、勾留が許可されるとはじめは10日間、さらにその後最大で10日身柄拘束期間が延長されることもあります。

もっとも、身柄拘束期間中に、捜査機関側が誤認逮捕であることに気づけば、捜査機関の判断で釈放されることがあります。誤認逮捕だった場合も誤認逮捕ではなった場合も、最終的には起訴、不起訴の刑事処分を受けます。

不起訴だった場合、前科はつきませんが、起訴され裁判で有罪判決を受け確定すると前科がつきます

誤認逮捕されたら直ちに弁護士を呼ぶこと

万が一、誤認逮捕された場合は、直ちに警察官に弁護士との接見を要請しましょう。知っている弁護士がいる場合は弁護士を指定して要請することができますし、知らない場合は当番弁護士との接見を要請することもできます。要請を受けた警察官が、法律事務所や弁護士会に接見要請があった旨を連絡してくれます。

もっとも、弁護士との接見を要請して実際に弁護士と接見するまでにはタイムラグがあります。接見を要請したからといって、すぐに弁護士と接見できるわけではありません。接見を要請してから弁護士と接見するまでの間にも、警察官や検察官の取調べを受けることがあります。

取調べで何かしらの供述をしてしまうと、それをきっかけに間違った方向へことが運ばれてしまう可能性もありますので、弁護士と接見しきちんとしたアドバイスを受けるまでは黙秘権を行使して何も話さないことが大切です。万が一、供述調書を作成され、サイン・押印を求められても絶対に応じてはいけません。

弁護士と接見した上で、今後どのように対応すべきか決めていきましょう。

弊所では、誤認逮捕を証明する証拠の収集、早期釈放、賠償請求のサポートの実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守ります。誤認逮捕された方やそのご家族の方は弊所の弁護士までご相談ください。

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