刑事事件と民事事件の違いとは?2つのポイントをかんたんに解説

トラブルが起きてしまった!それが刑事事件か民事事件なのかを判別するのは、ちょっと難しいですよね?

  • 「交通事故で人の車を壊してしまった・・」
  • 「トラブルを警察に相談したら「民事だから介入できません」と言われれしまった・・」

トラブルによっては、刑事事件や民事事件、もしくは両方で争われることもあります。刑事事件と民事事件の違いは、ちょっと分かりにくいですが、2つのポイントを理解すれば簡単です。

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刑事事件とは

刑事事件とは国が社会の平和を維持するために行っていることです。わかりやすいのは警察でしょう。トラブルになったときに現れる警察官は、社会の悪と戦っています。悪いことをした人を逮捕して、社会の秩序を維持するのが仕事です。

犯罪者を逮捕し、罰をあたえることができるのは国だけです。誰もが罰を与えられるようになってしまったら、間違った正義や暴力が生まれてしまいます。その為、犯罪行為は法律によって明記されていて、警察は法律を基に行動しています。

犯罪と定義されるのはこの2つを満たしたものです。

  • 法律に「やってはいけません」と明記されていて
  • 他人に被害を与え、社会の秩序を乱す行為

これを犯罪と定義して、犯罪を犯した人を逮捕し裁判にかけるのです。

刑事事件とは国vs人の争いである

刑事事件のポイントは、国が個人と争うことです。社会の秩序を守るために、国が個人の罪を証明し、裁き、罰を与えます。国vs人の図式が刑事事件の特徴と言えるでしょう。

法律では人が人を裁くことを禁止しています。ですので、刑事事件では人vs人の争いにはなりません。警察官も、検事も、裁判官も人間ですが、彼らは国家の代表者という役割です。

国の代表者は法律を基準にして、犯罪を犯した人を裁いていきます。間違いが無いように、慎重に証拠を調べます。さらに訴えられた人にも、公平になるように権利が与えられます。

なぜなら、国の力が強すぎるからです。法律の専門家と法廷で戦っても、素人が勝てる見込みはありません。ですので、黙秘権が与えられたり、弁護士がついてくれたりします。

犯罪を犯した人を、一方的に裁くことがないよう、バランスがとられているのです。それでも、弁護士の力量によってはワンサイドゲームになることもあります。それほど、国の力は強大なのです。

民事事件とは

民事事件は、被害を回復する事が目的です。誰かから被害を受けて、その賠償を得るために、裁判所で争うこと。これを民事事件と言います。

ざっくり言うと「お金を払ってくれ」と加害者に請求して、その権利が正しいことを裁判所に認めてもらうことです。判決が正しければ、正当な権利者として加害者からお金を回収します。・・※例外もあります

例えば、民事事件を起こさずに、加害者からお金を回収したとしましょう。それは加害者が納得していないのであれば「窃盗」として刑事告訴されるおそれがあります。

人と人との「お金」の争いに、法的な根拠や強制力を与えるのが民事事件と言えるでしょう。

※お金ではなく人権を争うこともあります

民事事件とは人vs人の争いである

民事事件のポイントは、人vs人の争いであるということです。訴えた人と訴えられた人だけが当事者であり、両者の揉め事を解決するのが目的です。

民事事件では、訴えた人が自分の権利を主張し、有利な証拠を提示します。訴えられた人はその反論をして、同じように証拠を提示します。裁判所は、その争いの審判になります。

「どちらかが正しい」とジャッジを下すのが判決ですが、民事事件の場合、判決を下す前に和解になることがほとんどです。そこが刑事裁判と違うポイントになります。

刑事事件と民事事件の違い

刑事事件が「社会の秩序の維持」を目的としているのに対し、民事事件は「お金の損失を取り返す」ことが目的です。

1つのトラブルから生じたとしても、刑事事件と民事事件は別の物です。両者の違いを大きく分けると

  • 和解
  • 判決の強制力
  • 証拠
  • 裁判員裁判の有無

の3つがあげられます。

和解

和解とは民事裁判の着陸点です。判決が「どちらかが悪い!」とオールオアナッシングのジャッジを下すのに対し、和解は柔らかな解決方法といえます。

それに対し、刑事事件で和解はありません。トラブルの当事者同士、手打ちにするのは「示談」といいます。示談の有り無しは、裁判の終着点ではありません。裁判所が加害者への罰を判断する材料に過ぎないのです。

あくまで和解とは、争いの着陸点です。民事事件では和解することでトラブルは終了しますが、刑事事件では裁判所の判決まで必ず行います。

判決の強制力

判決が出た場合、民事と刑事で強制力が違います。

刑事事件では、国によって強制力の執行が行われます。それはとても強力なもので、逃げることは不可能です。

民事事件では強制力は少し弱まってしまいます。人vs人の争いなので、裁判所のジャッジが出ても「納得していない!」とつっぱねることもあるのです。

そのような場合、裁判所から民事執行手続きをとることになります。土地や不動産、給与や預金などを正式に差し押えることになります。

例えば、土地の権利民事裁判で争い、勝利したとしましょう。ですが、権利を差し押えたとしても、退去に応じない人もいます。その時は引渡し命令を行うことになります。それには、複雑な書類の準備が必要で、弁護士などに依頼して解決するのが一番です。

証拠

刑事事件では、証拠は100%間違いの無いことが求められます。間違った証拠で判決が下されてしまったら、無罪の人を有罪にしてしまう可能性があるからです。したがって、刑事事件では1%でも無罪である可能性があれば、有罪にすることはできません。

民事事件での証拠の取り扱いは、刑事事件に比べ緩いと言えます。証拠は「裁判所の裁量に委ねる」というスタンスをとっていて、裁判官が納得できれば、その証拠は正しいものとして採用されるのです。

また、民事事件では、証拠を自分で集める必要があります。法律の専門家でない限り、どれが証拠になるのか判断することは難しいでしょう。例えば、借用書のない借金。これも「お金を貸した」という証言があるのですから、証拠になる可能性があります。

このように、刑事事件と民事事件では、証拠の取り扱いに大きく違いがあるのです。

裁判員裁判の有無

裁判員裁判が刑事事件ではあり、民事事件ではありません。

裁判員裁判とは、殺人や強盗致傷などの重大犯罪の刑事裁判において、有権者(選挙権のある人)から選ばれた6人の裁判員が、裁判官とともに有罪・無罪の判断や量刑を決める日本の裁判制度のことです。

政府の司法制度改革審議会でも、民事訴訟にも裁判員制度を取り入れるかどうか議論されてきましたが、社会的影響力が大きいのは刑事裁判であるとの判断から見送られました。

また、裁判員として裁判に参加すると、仕事を休まなくてはならない等の負担が生じることから、民事事件の裁判にまで取り入れると国民の負担が大きいという判断もあったようです。

なお、アメリカの陪審員制度では、民事裁判でも国民が陪審員(日本で言う裁判員)が参加しています。

刑事事件と民事事件の手続きの流れ

刑事事件と民事事件の違いは、手続きの流れも異なります。

刑事事件の流れ

刑事事件は国が行う手続きです。訴えられた人は、裁判の判決が出るまで勾留されます。ですが、証拠の隠滅を計る恐れなどがない場合、普段の生活をしたまま起訴されることもあります。

逮捕・勾留

犯罪が行われていると警察が知った時、捜査が行われ証拠を集めることになります。そして逮捕し、逃亡や証拠の隠滅の可能性がある場合は犯人(被疑者)を勾留します。

勾留にはタイムリミットがあって、最長で48時間までしかできません。その間に、警察は証拠を揃えて検事に提出します。

送検・起訴

警察が捜査で得た証拠を基に、犯人(被疑者)は検察に送られます。これを送検といい、検察で犯人はもう一度調べられます。

検察が犯人(被疑者)を疑わしいと判断した場合、起訴されることになります。これにもタイムリミットがあり、最長で23日までとなります。それを過ぎた場合は、起訴猶予となって、裁判にかけられることも無くなります。

裁判・判決

地方裁判所や、簡易裁判所で裁判が行われます。勾留されているのであれば、裁判所まで強制的に連れられます。そうでなければ、自分の足で来なければいけません。

裁判に必要な期間は、調べるべき証拠の量によって変化します。短ければ1日で判決まで言い渡される裁判もあります。判決が決まり、その決定に不服であれば上告することができます。

民事事件の流れ

民事事件は訴えた人(原告)が裁判所に訴状を提出することから始まります。刑事裁判と違い、誰かが訴えなければ事件は存在しません。

訴状提出

訴える人や、その弁護士が訴状を裁判所に提出します。裁判所はその訴状に書類上の間違いがないかをチェックします。間違いがなければ、口頭弁論の日程を決めて、その日にちを訴えられた人に、裁判所が知らせます。

第一回口頭弁論

最初の口頭弁論で、原告の主張が述べられます。そして、その証拠も原告から提出され、それが裁判所の判断で採用されます。ですので、訴えられた側(被告)が出席しなかったり、弁護士も立てなかった場合、被告に不利な内容の判決が言い渡される可能性があります。

その後、証拠調べや争点について争い、和解か判決の道をたどることになります。

和解・判決

民事事件では和解による終了を迎えることが多いです。その場合は双方のメリットになるような、着陸点が裁判所より提示されます。

和解ができず、最後まで争った場合に判決が言い渡されます。民事事件でも裁判所の判決に納得がいかなかった場合、上告することが可能です。

刑事事件と民事事件、両方で訴えられる例

さいごに、刑事事件と民事事件で訴えられる代表例を紹介します。それは交通事故です。車で人身事故などを起こしてしまった場合、刑事と民事の両方から訴えられることになります。

交通事故

「車で人とぶつかってしまった!」そのような時は、まず警察がやってきます。警察が状況を調べ、証拠を集め、それを基に検事から起訴されることになるでしょう。

人身事故など重大な事故の場合、普通の刑事事件として取り扱われます。裁判が行われ、判決が下り、罰を受けます。

それとは別に民事裁判が行われます。被害者が車にひかれたことによる被害を弁償してもらうためです。別の裁判ですので、本来ならば証拠なども最初からやり直すのが通常です。

ですが、最近では損害賠償命令制度というものがあり、刑事事件で使われた証拠などを流用する制度が生まれました。裁判所でも部署の変更を行わず、刑事部がそのまま継続するのでスムーズに裁判に入れます。

そして、和解ができるなら和解を、それができないなら民事事件での判決を受けます。判決にしたがい、被害者に弁償しなければいけません。それをしなかった場合は、強制執行の対象になります。

まとめ

刑事事件と民事事件の違いをかんたんに説明しました。「国vs人」が刑事事件で「人vs人」が民事事件です。この2つのポイントを把握することで、両者の違いを理解する事ができるはずです。

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