現行犯逮捕とは?逮捕できる要件と身柄拘束された時の対応方法

現行犯逮捕(げんこうはんたいほ)とは、現行犯人を逮捕することです

現行犯人は、

  • ①現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者
  • ②罪を行い終わってから間がないと明らかに認められ、かつ、法に定める一定の要件を満たす者

の2種類があります。

②の現行犯人は①の現行犯人に準じるという意味で準現行犯人とも呼ばれ、②の現行犯人の逮捕を準現行犯逮捕といいます。一方、この記事では、①の現行犯人の逮捕を狭義の現行犯逮捕といいます。

現行犯人は、逮捕者にとって犯罪と犯人が明白であることから、誤認逮捕の可能性が限りなく低く、犯人をその場で確保し、犯罪を制圧するなどの速やかに犯人を逮捕する必要性が高いことから、何人(私人・一般人・民間人)でも、裁判官が発する令状なしに逮捕することができることとなっています

第213条
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

刑事訴訟法第213条 - Wikibooks

この記事では、刑事事件に強い弁護士が、

  • 現行犯逮捕できる要件
  • 現行犯逮捕と他の逮捕との違い
  • 現行犯逮捕されやすい罪と現行犯逮捕できない罪
  • 現行犯逮捕された場合の対応方法

などについてわかりやすく解説していきます。

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現行犯逮捕の要件

前述のとおり、現行犯逮捕には狭義の現行犯逮捕と準現行犯逮捕の2種類があります。それぞれ逮捕の要件が異なりますので、以下わけて解説します。

狭義の現行犯逮捕の要件

狭義の現行犯逮捕の要件は次のとおりです。

現に罪を行い、又は現に罪を行い終わったこと

まず、犯人が現行犯人であること、すなわち、現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者であることが必要です

「現に罪を行い」とは、逮捕者の眼の前において、犯人が特定の犯罪の実行行為を行っている場合をいいます。

「現に罪を行い終わった」とは、犯人が特定の実行行為を終了した直後、あるいはそれに極めて近接した段階にあることをいいます。現に罪を行い終わったかどうかは、時間的接着性のみならず、場所的接着性、犯行発覚の経緯、犯行現場の状況、追跡継続の有無などの事情を総合的に勘案して判断されます。

犯罪と犯人の明白性

次に、犯人が現行犯人であること、すなわち、現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者であることが逮捕者にとって明白であることが必要です

逮捕者の眼の前で犯罪が行われ、現に逮捕者が犯罪を目撃していた場合は明白性の要件に欠けることは少ないと思われますが、犯行を現認していない逮捕者が、逃走する犯人を一時見失い、その後発見して逮捕したような場合は明白性の要件に欠け、違法な現行犯逮捕と判断される可能性はあります。

準現行犯逮捕の要件

続いて、準現行犯逮捕の要件は次のとおりです。

罪を行い終わってから間がないと明らかに認められること

まず、犯人が準現行犯人であること、すなわち、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる者であることが必要です

「罪を行い終わってから間がない」とは、犯行終了時から時間的に近接した時点をいいます。その時間に対応した場所的な近接性も考慮されます。

法定の条件を満たすこと

次に、刑事訴訟法第212条2項各号の状況が存在し、かつ、逮捕者がいずれかの状況を認識していることが必要です

第二百十二条
(省略)
② 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。

刑事訴訟法 | e-Gov法令検索

1号の「追呼」とは、犯人として追跡、又は呼称されることをいいます。声を出して追っている必要はなく、身振り手振りで追いかけている場合も追呼にあたります。犯罪終了後、継続して追呼されることが必要ですが、逮捕者が一時犯人を見失った後、間もなく発見して追呼した場合も適法と解されています

2号の「賍物(ぞうぶつ)」とは窃盗や強盗などの財産犯によって得られた物のことです。「凶器」とは、ナイフ、ピストルなど人を殺傷し得る物をいいます。紐など、使い方によっては人を殺傷し得る物であっても、通常の使い方ではその危険を感じさせない物は凶器にはあたりません。「その他の物」とは、賍物や凶器以外の物であって、これらの物と同様に犯罪と犯人とを結びつける物をいいます。盗みで使ったバールやドライバー、懐中電灯などがこれにあたります。

3号の「身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき」とは、たとえば、身体に負傷していたり、被服に血痕が付着していたりして殺人罪が推認される場合や、放火犯人の手に石油が染みついているような場合を指します。なお、「被服」には、被服に準じる帽子及び履物を含みます。

4号の「誰何(すいか)」とは、必ずしも「誰か」と問われる必要はなく、制服姿の警察官を見て逃げ出したような場合も含まれます。私人による誰何も含まれます。

現行犯逮捕は一般人でもできる

刑事訴訟法第213条では「現行犯人は、何人でも(誰でもという意味)、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と規定されており、現行犯(準現行犯も含む)であれば、一般人による逮捕(これを「私人逮捕」といいます)が法律上認められていることがわかります。

ただし、上記で説明した現行犯逮捕の要件を満たしていない場合には逮捕罪(刑法第220条)に問われる可能性があります。無抵抗の現行犯人に殴る蹴るの暴力をくわえるなど、社会通念上、逮捕のために必要かつ相当を認められる限度を超えて実力行使をすると、暴行罪や傷害罪に問われることもあります。

また、以下で説明しますが、一般人が現行犯逮捕した場合には直ちに警察官等に現行犯人を引き渡さなくてはならないため、取り押さえた後に直ぐに警察官を呼ばず、必要以上に長時間現行犯人を拘束すれば、逮捕監禁罪(刑法第220条)に問われる可能性もあります。

なお、一般人による現行犯逮捕は、刑事責任のほかにも民事責任(不法行為にもとづく損害賠償責任)を負うこともあります。

私人逮捕とは?一般人(民間人・市民)が逮捕できる要件と事例

現行犯逮捕されるとその後はどうなる?

上記の通り、一般人でも現行犯逮捕できますが、一般人が現行犯逮捕した場合には、その後、直ちに現行犯人を警察官等に引き渡す必要があります(刑事訴訟法第214条)。

第214条
検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。

刑事訴訟法第214条 - Wikibooks

警察官に身柄を引き渡された後の流れは?

警察官に身柄を引き渡された後は、被疑者は警察署で事情聴取を受けることになります。警察が犯罪事実がないと判断した場合や、微罪の場合にはその場で釈放されることもあります。釈放されなかった場合には、逮捕から48時間以内に事件と身柄が検察官に送致されます。

送致を受けた検察官は被疑者を受け取った時から24時間以内かつ被疑者が逮捕されてから72時間以内に裁判官に勾留請求をするか、あるいは、被疑者を釈放するかを判断します。逃亡・証拠隠滅のおそれがない場合には釈放されることもあります。しかし釈放されずに勾留請求が認められると、最高で20日間身柄を拘束されその間に検察官が起訴するか不起訴にするかの判断を下します。なお、釈放された場合にはこれまで通りの生活に戻ることができますが、被疑者が在宅のまま捜査が進められ(在宅捜査)、その後、起訴または不起訴が決定されます。

現行犯逮捕と他の逮捕との違い

逮捕には現行犯逮捕のほかに通常逮捕と緊急逮捕があります。ここでは、現行犯逮捕と通常逮捕、緊急逮捕との違いについて解説します。

逮捕の種類は3パターン!通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕の違いとは

通常逮捕との違い

通常逮捕との違いは次のとおりです。なお、通常逮捕とは、あらかじめ裁判官から発布された逮捕状に基づく逮捕のことです

逮捕状を必要とするか否か

現行犯逮捕では、裁判官が発する逮捕状を必要としませんが、通常逮捕では逮捕状を必要とする点が異なります

逮捕にあたって裁判官の逮捕状を必要とするのは、逮捕が人の人権を大きく制限する行為であって、捜査機関による濫用の危険もあることから、裁判官の事前審査を必要とすることでその危険を抑制する狙いがあります(令状主義)。もっとも、現行犯逮捕するケースでは、逮捕者にとって犯罪と犯人が明白であって、誤認逮捕(人権侵害)のおそれが限りなく低く、かつ、裁判官に事前審査を求める暇がないことから、令状主義の例外として逮捕状を不要としているのです。

誤認逮捕とは|警察を冤罪の賠償金・慰謝料請求で訴えることは可能?

逮捕権限がある人

次に、現行犯逮捕では誰でも逮捕することができますが、通常逮捕では警察官や検察官など一定の人にしか、裁判官に逮捕状の発布を請求する権限や実際に犯人を逮捕する権限が認められていません

緊急逮捕との違い

次に、緊急逮捕との違いは次のとおりです。なお、緊急逮捕とは、裁判官に逮捕状の発布を求める暇がないような逮捕の緊急性がある場合に、一定の重大な犯罪に限って逮捕状なしに逮捕し、逮捕した後に、事後的に裁判官の逮捕状の発布を必要とする逮捕のことです。逮捕の時点で、逮捕状を必要としない点は現行犯逮捕と共通しています。

逮捕できる罪に制限があるか否か

現行犯逮捕では、30万円以下の罰金、拘留又は科料にあたる罪を除いては、逮捕できる罪に制限はありません

一方、緊急逮捕では、「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪」と、逮捕できる罪が限定されています。なお、死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪とは、たとえば、殺人罪、現住建造物等放火罪などの重大犯罪をあげることができます。

逮捕状を必要とするか否か、逮捕権限がある人

緊急逮捕では、逮捕時点では、逮捕状は必要ありませんが、事後的に必要となります。仮に、裁判官により逮捕状が発布されない場合、犯人は釈放されます。

また、現行犯逮捕と異なり、緊急逮捕では誰でも逮捕できるわけではありません。警察官、検察官など一定の人にしか逮捕権限が認められていません。

現行犯逮捕ができない罪

30万円以下の罰金、拘留又は科料にあたる罪(「軽微犯罪」といいます)については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合、又は犯人が逃亡するおそれがある場合でなければ現行犯逮捕することができません刑事訴訟法第217条)。

拘留とは、1日以上30日未満の範囲の期間、刑事施設に収容される刑罰、科料は1000円以上10000円未満の範囲で金銭の納付を命じられる刑罰です。

30万円以下の罰金、拘留又は科料にあたる罪としては、過失傷害罪(30万円以下の罰金又は科料)、軽犯罪法違反(拘留又は科料)などがあります。

現行犯逮捕できる罪と現行犯逮捕されることが多い罪

現行犯逮捕では、上記の軽微犯罪(30万円以下の罰金、拘留又は科料にあたる罪)を除いては、逮捕できる罪に制限はありません

実務上、現行犯逮捕されることが多い罪としては以下の罪を挙げることができます。

痴漢

痴漢は、被害者はもちろん、犯行を目撃した目撃者、被害者から被害申告を受けた目撃者や駅の鉄道警察隊の警察官に現行犯逮捕されるケースが多いです。

また、痴漢は各都道府県が定める迷惑行為防止条例違反で処罰されます。非常習の場合の罰則は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」、常習の場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」と定めている自治体が多いです。

盗撮

盗撮も、痴漢と同様、被害者や目撃者、駅の鉄道警察隊の警察官に現行犯逮捕されることが多いですが、現場に張り込んでいた警察官に犯行を現認されたときに現行犯逮捕されるケースもあります。

盗撮も各都道府県が定める迷惑防止条例違反で処罰されます。非常習の場合の罰則は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」、常習の場合は「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と定めている自治体が多いです。

万引き

万引きは、テレビなどでよく見るように、万引きG面に現行犯逮捕されるケースが多いです。また、特定の店で万引きを繰り返している場合は店の店員や店長に警戒されている場合も多く、店員や店長に万引きを現認されたときに現行犯逮捕されるケースも多いです。

万引きは窃盗罪にあたる立派な犯罪です。罰則は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

薬物の所持

薬物関連で現行犯逮捕されるケースとして多いのが、大麻や覚せい剤などの所持です。薬物を持っているときに警察官から職務質問を受け、所持品検査の結果、薬物を指示していることが発覚してしまうと、そのまま警察官に現行犯逮捕されてしまうことが多いです。薬物の所持では、捜査機関が、犯人が薬物を持っていることをおさえないと所持の立証が難しいことから、捜査機関は何とかして犯人を現行犯逮捕することに努めています。

交通違反、交通事故

交通違反の中でも多いのが酒酔い、酒気帯び、無免許運転です。警察官の検問にひっかかって発覚して現行犯逮捕される場合や、人身事故、物損事故を起こした際に発覚して現行犯逮捕されるケースが多いです。

交通事故では、比較的軽微な事故で逮捕されることは稀ですが、被害者の怪我の程度が大きいなど事故の規模が大きいケースや飲酒や無免許が絡む事故では、現行犯逮捕されるケースもあります。

現行犯逮捕された場合の対応方法

最後に、万が一現行犯逮捕された場合は対応について解説します。

態度を明確にする

まずは、自分自身で態度を明確にする必要があります

罪を犯した認識がある場合は、警察官に正直に事実を話した方が、場合によっては、早期に釈放される可能性があります。反対に、罪を犯したことが明らかであるのに、不合理な理由で黙秘や否認を続けていると、いたずらに身柄拘束期間を長引かせてしまうことにつながりかねません。

一方、自分は冤罪だと思っているという場合は、弁護士と接見してアドバイスを受けるまでは黙秘した方が賢明です。逮捕初期の段階で冤罪を証明しようと積極的に話しても、残念ながら相手は聞く耳をもってくれないことが多いです。また、揚げ足を取られ、厳しい追及を許してしまうおそれもあります。

弁護士との接見を要請する

次に、弁護士との接見を要請することです。

逮捕直後に面会できるのは弁護士のみです。家族や友人などの身近な人は逮捕直後は面会できないことがほとんどです。

弁護士と接見すれば、今後の事件の見通しや取調べに対する対処法などのアドバイスを受けることができ、精神的に落ち着くことができます。

知り合いの弁護士がいる場合は弁護士を指定し、いない場合は当番弁護士との接見を要請しましょう。いずれも要請したからといってすぐに面会に来てくれるわけではありませんので、逮捕された直後に警察官に要請することが大切です。接見した弁護士に刑事弁護活動を依頼したいと思う場合は、弁護士にその旨申し出てみましょう。

弊所では、現行犯逮捕された方の早期釈放、不起訴処分を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、現行犯逮捕されてその後在宅捜査に切り替わって不安な生活を送られている方、現行犯逮捕されたご家族の方は、弊所の弁護士までご相談ください。

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